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舞台裏(リュシオル・ライトブリンガー8)
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旅の直前に、兄様が、ボルケニィウスの固有種の動植物図鑑を差し入れてくれました。
「こんな高価なものを……。」
ずっしりとした重みの皮の表紙を撫でながら、大きな兄を見上げてお礼を言うと、
わしゃわしゃとリュシオルの頭をかき回しながら頑張れよと、応援してくれました。
「はい。兄様みたいに余計な事を言って、拗れない様に、気をつけます。」
元気に答えた途端、兄様の顔が曇った。
「……悪気がない分、不安しかない。」
どういう意味だろう?
まあいいや、早く図鑑の中を見たい。
馬車に乗り込むと、クッションをぎゅぎゅっと押して、座りやすい場所を確保する。
先に乗っていた父に、図鑑を見ても良いけど、酔わない様に注意を受けた。
ゆっくりと馬車が走りだし、窓から外を見ると、食べ物屋さんが多いなと思った。
とても活気があって面白い。
本の中に書いてあったデートをしてみたい。
女の子がいっぱい集まってる店では、やっぱり子猫ちゃんとか言ってるのだろうか?
背の高い花屋の笑顔を思い出す。
沢山に好かれなくて良いから、婚約者には好かれたいなと思った。
「父様はどうやって母様を口説いたのですか?」
聞くと、母様が扇子で顔を隠したまま、笑いだした。
父様はきまり悪そうに咳払いをしている。
「口説いてないわ。その代わり、私と結婚したかったら俺に勝てと言って
他の求婚者を追い払ったのよ。」
なるほど、幼馴染ならその手もあったか。
「その手があったかじゃないですからね?私がリヒトの事好きじゃなかったら
不幸な事になっていたのよ?」
母様に心を読まれてしまった。
でも、笑いながらそういう母様は幸せそうだ。
「あなたはどうするか決めたの?」
昨日まで、色々見たり聞いたり本を読んだりしていた事を知っている夫人としては、
上手く行って欲しいという思いはある。
相手あっての事なので何とも言えないけれど……。
「お得感で、押して行こうと思います。」
え?
このタイミングで出た、お得感と言うフレーズに困惑したけれど、
まあ、取りあえず、見守ってみる事にした。
その場を取り繕って、後から相性が悪かったなんて事になっても悲惨だ。
両親からすれば、白金の髪にヘリオトロープの薄紫の瞳の花の様に可愛い息子も、
後、数年もすれば、淑女をエスコートする側の、立派な青年になる。
せっかく、政略結婚が不必要な家に生まれたのだから、
そのままのリュシオルを好きになってくれる子がお嫁さんになってくれると良いと願った。
「ねえ、父様は、このレンズが大好きで栗みたいな味がする虫、食べた事ありますか?」
ちょっと、グランツ、なんて本を渡しているの?
「ないな。それに、栗みたいな味がするなら、栗を食べるな。栗は逃げないしな。」
真面目に答える父に納得したのか、リュシオルの手は、次のページに進んだ。
こうして馬車は平和に進み、三日目に、予定通りボルケニィウス辺境伯邸に辿り着いた。
出迎えにご令嬢の姿が無い事にがっかりする息子に、
女性は仕度が大変なのよと慰めの言葉をかけながら、
一度も会った事無いのになぜそれほどまでに気にかけるのか、
ずっと心に引っかかっていた、一つの言葉を思い浮かべる。
「彼女が、あなたの『運命の人』なら、どっしり構えていらっしゃい。」
リヒトも私の存在を知った時、絶対に自分の嫁にすると思ったらしい。
グランツの時もそう。
だから、エミリオがどんな子を選んでも反対する気はない。
これは、ライトブリンガーの血なのかもしれない。
リュシオルも相手の子を大切にするだろう。
運命の人を、失うことなんてあってはならないのだから。
「こんな高価なものを……。」
ずっしりとした重みの皮の表紙を撫でながら、大きな兄を見上げてお礼を言うと、
わしゃわしゃとリュシオルの頭をかき回しながら頑張れよと、応援してくれました。
「はい。兄様みたいに余計な事を言って、拗れない様に、気をつけます。」
元気に答えた途端、兄様の顔が曇った。
「……悪気がない分、不安しかない。」
どういう意味だろう?
まあいいや、早く図鑑の中を見たい。
馬車に乗り込むと、クッションをぎゅぎゅっと押して、座りやすい場所を確保する。
先に乗っていた父に、図鑑を見ても良いけど、酔わない様に注意を受けた。
ゆっくりと馬車が走りだし、窓から外を見ると、食べ物屋さんが多いなと思った。
とても活気があって面白い。
本の中に書いてあったデートをしてみたい。
女の子がいっぱい集まってる店では、やっぱり子猫ちゃんとか言ってるのだろうか?
背の高い花屋の笑顔を思い出す。
沢山に好かれなくて良いから、婚約者には好かれたいなと思った。
「父様はどうやって母様を口説いたのですか?」
聞くと、母様が扇子で顔を隠したまま、笑いだした。
父様はきまり悪そうに咳払いをしている。
「口説いてないわ。その代わり、私と結婚したかったら俺に勝てと言って
他の求婚者を追い払ったのよ。」
なるほど、幼馴染ならその手もあったか。
「その手があったかじゃないですからね?私がリヒトの事好きじゃなかったら
不幸な事になっていたのよ?」
母様に心を読まれてしまった。
でも、笑いながらそういう母様は幸せそうだ。
「あなたはどうするか決めたの?」
昨日まで、色々見たり聞いたり本を読んだりしていた事を知っている夫人としては、
上手く行って欲しいという思いはある。
相手あっての事なので何とも言えないけれど……。
「お得感で、押して行こうと思います。」
え?
このタイミングで出た、お得感と言うフレーズに困惑したけれど、
まあ、取りあえず、見守ってみる事にした。
その場を取り繕って、後から相性が悪かったなんて事になっても悲惨だ。
両親からすれば、白金の髪にヘリオトロープの薄紫の瞳の花の様に可愛い息子も、
後、数年もすれば、淑女をエスコートする側の、立派な青年になる。
せっかく、政略結婚が不必要な家に生まれたのだから、
そのままのリュシオルを好きになってくれる子がお嫁さんになってくれると良いと願った。
「ねえ、父様は、このレンズが大好きで栗みたいな味がする虫、食べた事ありますか?」
ちょっと、グランツ、なんて本を渡しているの?
「ないな。それに、栗みたいな味がするなら、栗を食べるな。栗は逃げないしな。」
真面目に答える父に納得したのか、リュシオルの手は、次のページに進んだ。
こうして馬車は平和に進み、三日目に、予定通りボルケニィウス辺境伯邸に辿り着いた。
出迎えにご令嬢の姿が無い事にがっかりする息子に、
女性は仕度が大変なのよと慰めの言葉をかけながら、
一度も会った事無いのになぜそれほどまでに気にかけるのか、
ずっと心に引っかかっていた、一つの言葉を思い浮かべる。
「彼女が、あなたの『運命の人』なら、どっしり構えていらっしゃい。」
リヒトも私の存在を知った時、絶対に自分の嫁にすると思ったらしい。
グランツの時もそう。
だから、エミリオがどんな子を選んでも反対する気はない。
これは、ライトブリンガーの血なのかもしれない。
リュシオルも相手の子を大切にするだろう。
運命の人を、失うことなんてあってはならないのだから。
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