転生石好き令嬢の生存戦略

ぬるちぃるちる

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転生石好き令嬢の生存戦略<前編>

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まずはじめに思い出したのは、草原にひしめく白い石の羊群原ようぐんばる……。
幼き日、父親に連れられ、火山地帯である領地のカルスト台地に遊びに来た時の事だった。

上手く感情がコントロールできなくて、思わず涙を零しながら、
「……美しい、美しい領地ですね、父上」
 そう呟けば、大きな手が頭を撫でてくれた。

思い返してみると、前世の私は、石が好きだった。
宝石より原石。
アクセサリーより標本。

そんな私に、乙女ゲームが好きな友達がくれたのが、デンドリティックドリーム通称DDと呼ばれるゲームだった。

デンドリティッククォーツという石がタイトルの由来と聞いて興味を持った私に、
正確にいくつ買ったのかまでは知らないけど、まだ10個以上在庫があるからと一つ分けてくれた。
布教活動と言うらしい。

なぜそんなに買ったのかと聞けば、購入する店舗によって特典が異なるからだと。
そして、中古の店に売りに行っても、同じ理由で売りに来る子が沢山いる為、特典なしだと、ただ同然で買い叩かれてしまうのだと。

デンドリティッククォーツは金属が植物状に見える様に水晶の中に閉じ込められている石だ。
模様も大きさも値段も多種多様のとっても面白い石なので、私の好きな石の一つでもある。
水晶の箱庭をイメージしたというが、庭水晶ガーデンクリスタルは別にあるので、不思議だねと言う話をしたのが、
「やってみる?」
 と言われたきっかけだ。

もっとも、登場する女の子の名前に宝石由来の成分が含まれる位しか宝石要素は感じなかったけど……。
たとえば、今生の私の名前の様にグレナディア・ボルケニィウスだと、ガーネット由来の成分が入っているのだ。
……え?
……まあ偶然だろう。

そうそう。
DDは乙女ゲームといわれるゲームだった。
ヒロインのディアミリア・アストリウス伯爵令嬢(15歳)が、学園に通い、恋と学業に励む、そんな良くある物語だ。
序盤で、個別ルートに進むが、グラフィックと直感で相手を選ぶ。
王子は、一番見た目が可愛いけど、何でもできる美人の婚約者にコンプレックスを持っている。
……そんな奴に将来任せるの?不安だなこの国。
っていうか、婚約者いるのかよ!?

騎士(正確には候補の学生)は、精悍で見た目は好みだけど、数年前に目の前で婚約者が事故死。
トラウマに。
……重いな。
魔法使い(正確には候補の学生)は、美人だな。
男の人に美人て言うのもどうかと思うけど、謎に包まれたミステリアスキャラ。
前情報なしかよ??
まあいいや、魔法使いにしよう。
そう思って遊び始めたのを覚えている。

ちなみに、この3人の誰かで1じゅんすると選べるキャラが増える。
少しずつ思い出した記憶もここまでだ。

まあ所詮ゲームの内容なんて思い出しても役に立つことなんてないよね。
それより領地の石灰岩の有効活用について不自然でない程度に考えなきゃ。

と、思っていた頃が、私にもありました。

ノックの音に入室を許可すると、現役伯爵の父がわざわざ包みを持ってきた。
当たり前だが、普段は使用人の誰かが届けてくれる。
何かあったのだろうか?
「お前と同じ年の、ヴィントリアージュ公爵令嬢から手紙付きで荷が届いているが心当たりはあるか?」
 同じというと8歳。
同じ貴族とは言え、向こうは王族の血を濃くひく身。
会った事もなければ、物をおくられる関係でもない。

……サフィール・ヴィントリアージュ?
封書の名に戸惑った。
「……え?」
 驚いてペーパーナイフも使わず、指で封を切る。
サフィール・ヴィントリアージュ?
サフィニア・ヴィントリアージュなら、DDの王子の婚約者の名前だ。

友達が王子ルート攻略の時に、
「サフィニア様を嫁にしたい」
 と、良く言っていたので覚えている。
何でも家柄も良く、努力家で、非の打ちどころのない美人だそうだ。

まさかの乙女ゲー転生なの??
DDにグレナディア・ボルケニィウス辺境伯令嬢なんてキャラ居たっけ?

こんな事になると解っていたならネタバレなど気にしてないと言って、前世の友の話をもっと聞いておくのだったと後悔する。
手紙にはファーストコンタクトの挨拶と物理攻撃無効のストールの試作品のモニターになって欲しいと言う要件がかいてあった。
同じ年の令嬢(つまり私)の、領地の石灰岩の新たな活用方法の研究がご令嬢の目にとまったらしい。
物理攻撃無効のストールの方が石の活用の何倍もすごいと思うけれど……。

令嬢と言えば、家の中で読書や刺繍などをして過ごす方が主流なので、彼女の周りの令嬢ではモニターに向いてなかったのかもしれない。
自分の馬で領地の石を集めて回る私にこそと思われたのであれば納得がいく。

ストールはドレスのデザインを選ばない、触り心地も良く美しいものだった。

**************
2016年10月12日 誤字修正しました。
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