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騎士団入団
第4話
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アリアネスが屋敷にもどると、髪が短くなり、ドレスがビリビリに裂けている娘を見て、母親モリアンとと父親のイグニスは、顔を真っ青にして、卒倒してしまった。特にモリアンは「もうお嫁にもらってくれる殿方はいらっしゃらないわ!」と泣きわめいてしまった。
(今はお二人ともそっとしておいた方が良さそうね……。)
変に慰めでもしたら、面倒なことになりそうだ。アリアネスはそう判断して、そ
うそうに部屋へと引きこもった。
セレーナも一緒に入ってきたので、鍵を閉めるように命令して、すぐにボロボロになってしまったドレスを脱ぐ。コルセットもセレーナの手を借りて外してもらい、クローゼットの中から、肌触りの良いネグリジェを取り出して着込むと、そのままベッドへとダイブした。
「…アリアネス様。少しだらけすぎではありませんか。」
ベッドに大の字になって、ぼーっとしているアリアネスをセレーナが咎める。するとアリアネスが急に起き上がり、セレーナに笑いかける。
「次の手を考えているのよ。でも今のところ何も思いつかないの。こうなったら直接ラシード様を襲撃するしかないかしら。」
「さすがにおやめください。そんなことをすればモリアン様とイグニス様が卒倒どころか、命を落とされるかもしれません。」
「そうよねぇ…。」
ふぅーとアリアネスが溜息をつく。その姿はまるで一枚の肖像画のように美しい。
(お嬢様…黙っていれば本当に美しい方なのに…。)
「どうしてこんなに残念に育ってしまわれたのか。」
「聞こえているわよ、セレーナ。」
「いつも気が強いのに、こと騎士団長が関わるとすぐ弱くなってしまいますわね。まるでポンコツ……。」
「うっ、うるさいわ!これからラシード様にも強くなるのよ!」
「今までできなかったのにこれからできるんですか?」
「できるわよ!」
二人はメイド長が「何事です?」と部屋を訪れるまで言い合いを繰り返していた。
修練場での決闘から1週間たったが、結局アリアネスには名案が思い浮かばなかった。しかも状況はさらに悪化してお、娘の将来を心配した両親が、せめて若いうちに嫁がせようと無理やり縁談を進めているのだ。
「わたくしはラシード様と結婚いたします!そのようなご老体と結婚する気はありませんわ!」
「ご老体って失礼ですよ!キオネスク様はまだ45歳であられます。実業家で資産もるし、何よりあなたのようないわくつきの女性でも構わないといってくださっているのです!」
すでに昼時だが、アリアネスと母のモリアンは朝食時から押し問答を繰り返していた。
「わたくしは騎士団に入団するといったではありませんか!」
「結局入団はできなかったのでしょう!いい加減に諦めて現実を見るのです。……あなたには美しさがある。女性としての幸せをつかみなさい!」
「わたくしはラシード様としか結婚したくありません!」
「二人とも落ち着きなさい。」
仕事に出ていた父・イグニスが食堂に入ってくる。
「アリアネス、お前の気持ちもわかる。私たちもお前の意見を尊重したい。しかし、このチャンスを逃せば、世間体を気にする社交界でお前の伴侶を見つけることは難しくなる。いつまでも私たちがお前のそばにいられるわけではないのだ。分かっておくれ。」
(そんなの、分かってるわ……。)
父と母がどれだけ自分を心配しているのか十分に伝わっている。婚約破棄を言い渡された場であれだけ両親が取り乱したのも、娘のことを思ってだ。
「お願い、アリアネス。わかって頂戴。」
「お父様、お母様…。」
ここであきらめないといけないのか?今までラシード様のために10年間努力してきたのだ。努力とは報われないものなのか。そもそも努力は報われると考えること自体が世間知らずということなのか。
(これ以上両親を心配させるわけにはいかないわね…。)
政略結婚も貴族の務め。その相手がラシード様ではなくなっただけだ。
アリアネスが口を開きかけたとき、扉がノックされる音がした。
「今は取り込み中だ。」
イグニスが冷たい声で言う。しかし扉の向こうからは「緊急の案件でございます。」と反論してくる。その声は確かにセレーナだった、
「……よし、入れ。」
「失礼します。」とセレーナが入ってきた。
「セレーナ、今は大事な話の途中だ。」
イグニスが暗に用事を終わらせてすぐに出ていくように促すが、セレーナは「アリアネス様に急ぎの手紙が届いております」と言って一通の手紙をアリアネスに手渡した。
「どこから…っ!?」
宛先を見るとそこに記されていたのは、第10支団の紋章だった。
あわてて封を切ると、一枚の便箋がはらりと床に落ちる。アリアネスが拾い上げ、その文面に目を走らせるた後、固まってしまった。
「アリアネス?どうした?」
「アリアネス?」
イグニスとモリアンが声をかけると同時にアリアネスは「やったわ!」とセレーナに抱きついた。
「お父様、お母様、第10支団から手紙よ!わたくしの入団を許可すると書いてあるわ!これで縁談に行く必要はないわね!」
「そんな…どうして!」
モリアンが茫然とつぶやく。
「さて、セレーナ!準備が忙しくなるわよ!」
「望むところですわ!」
「それでは失礼いたしますわ。」
アリアネスはその場で優雅に礼をした後、呆けた両親を置いて足早に自室に戻ったのだった。
(今はお二人ともそっとしておいた方が良さそうね……。)
変に慰めでもしたら、面倒なことになりそうだ。アリアネスはそう判断して、そ
うそうに部屋へと引きこもった。
セレーナも一緒に入ってきたので、鍵を閉めるように命令して、すぐにボロボロになってしまったドレスを脱ぐ。コルセットもセレーナの手を借りて外してもらい、クローゼットの中から、肌触りの良いネグリジェを取り出して着込むと、そのままベッドへとダイブした。
「…アリアネス様。少しだらけすぎではありませんか。」
ベッドに大の字になって、ぼーっとしているアリアネスをセレーナが咎める。するとアリアネスが急に起き上がり、セレーナに笑いかける。
「次の手を考えているのよ。でも今のところ何も思いつかないの。こうなったら直接ラシード様を襲撃するしかないかしら。」
「さすがにおやめください。そんなことをすればモリアン様とイグニス様が卒倒どころか、命を落とされるかもしれません。」
「そうよねぇ…。」
ふぅーとアリアネスが溜息をつく。その姿はまるで一枚の肖像画のように美しい。
(お嬢様…黙っていれば本当に美しい方なのに…。)
「どうしてこんなに残念に育ってしまわれたのか。」
「聞こえているわよ、セレーナ。」
「いつも気が強いのに、こと騎士団長が関わるとすぐ弱くなってしまいますわね。まるでポンコツ……。」
「うっ、うるさいわ!これからラシード様にも強くなるのよ!」
「今までできなかったのにこれからできるんですか?」
「できるわよ!」
二人はメイド長が「何事です?」と部屋を訪れるまで言い合いを繰り返していた。
修練場での決闘から1週間たったが、結局アリアネスには名案が思い浮かばなかった。しかも状況はさらに悪化してお、娘の将来を心配した両親が、せめて若いうちに嫁がせようと無理やり縁談を進めているのだ。
「わたくしはラシード様と結婚いたします!そのようなご老体と結婚する気はありませんわ!」
「ご老体って失礼ですよ!キオネスク様はまだ45歳であられます。実業家で資産もるし、何よりあなたのようないわくつきの女性でも構わないといってくださっているのです!」
すでに昼時だが、アリアネスと母のモリアンは朝食時から押し問答を繰り返していた。
「わたくしは騎士団に入団するといったではありませんか!」
「結局入団はできなかったのでしょう!いい加減に諦めて現実を見るのです。……あなたには美しさがある。女性としての幸せをつかみなさい!」
「わたくしはラシード様としか結婚したくありません!」
「二人とも落ち着きなさい。」
仕事に出ていた父・イグニスが食堂に入ってくる。
「アリアネス、お前の気持ちもわかる。私たちもお前の意見を尊重したい。しかし、このチャンスを逃せば、世間体を気にする社交界でお前の伴侶を見つけることは難しくなる。いつまでも私たちがお前のそばにいられるわけではないのだ。分かっておくれ。」
(そんなの、分かってるわ……。)
父と母がどれだけ自分を心配しているのか十分に伝わっている。婚約破棄を言い渡された場であれだけ両親が取り乱したのも、娘のことを思ってだ。
「お願い、アリアネス。わかって頂戴。」
「お父様、お母様…。」
ここであきらめないといけないのか?今までラシード様のために10年間努力してきたのだ。努力とは報われないものなのか。そもそも努力は報われると考えること自体が世間知らずということなのか。
(これ以上両親を心配させるわけにはいかないわね…。)
政略結婚も貴族の務め。その相手がラシード様ではなくなっただけだ。
アリアネスが口を開きかけたとき、扉がノックされる音がした。
「今は取り込み中だ。」
イグニスが冷たい声で言う。しかし扉の向こうからは「緊急の案件でございます。」と反論してくる。その声は確かにセレーナだった、
「……よし、入れ。」
「失礼します。」とセレーナが入ってきた。
「セレーナ、今は大事な話の途中だ。」
イグニスが暗に用事を終わらせてすぐに出ていくように促すが、セレーナは「アリアネス様に急ぎの手紙が届いております」と言って一通の手紙をアリアネスに手渡した。
「どこから…っ!?」
宛先を見るとそこに記されていたのは、第10支団の紋章だった。
あわてて封を切ると、一枚の便箋がはらりと床に落ちる。アリアネスが拾い上げ、その文面に目を走らせるた後、固まってしまった。
「アリアネス?どうした?」
「アリアネス?」
イグニスとモリアンが声をかけると同時にアリアネスは「やったわ!」とセレーナに抱きついた。
「お父様、お母様、第10支団から手紙よ!わたくしの入団を許可すると書いてあるわ!これで縁談に行く必要はないわね!」
「そんな…どうして!」
モリアンが茫然とつぶやく。
「さて、セレーナ!準備が忙しくなるわよ!」
「望むところですわ!」
「それでは失礼いたしますわ。」
アリアネスはその場で優雅に礼をした後、呆けた両親を置いて足早に自室に戻ったのだった。
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