捨てられ伯爵令嬢は野獣に勝てるか

めろめろす

文字の大きさ
51 / 92
マゴテリアへ

第15話

しおりを挟む
「疲れたー!うわっ、すっごいふかふかですよ、このソファ!」

 騎士団員がいなくなると同時にソファに腰を下ろしたロヴェルが驚く。

「はしたないぞ、ロヴェル。」

 キウラが注意しながらその隣に座る。アリアネス達も続いて腰を下ろした。

「…ロヴェル、頼む。」

「分かりました。」

 アルフォンソに何かを頼まれたロヴェルが目をつむり、ぼそぼそと何かを唱える。するとキーンという高い音が部屋に響き渡った。

「はい、大丈夫ですよ。でもこれ結構きついですから早めに終わらせてください。」

 ロヴェルが疲れた顔で息を吐く。

「いったい何なのですか?」

 アリアネスが尋ねるとアルフォンソがロヴェルに礼を言った後、アリアネスの方を向いた。

「俺たちの話を妖精たちに聞かれないように結界を張った。ただ、ロヴェルにはお前たちの気配を常時消してもらってるから、かなり負担をかけてる状態になってる。さっさと説明するからよく聞け。」

 アルフォンソが身を乗り出したので、アリアネス達も顔を寄せる。

「騎士団の奴らがいるのはこの建物の東側にある騎士団専用の建物だ。ロヴェルに頑張ってもらってアリアネスとセレーナの気配を完全に消してもらうようにする。ただしゃべっちまったら気配がばれちまうから絶対にしゃべるな。」

「分かりましたわ。」 

「俺とキウラとザガルードの小僧は王女に面会だ。アリアネスとセレーナも途中までついてきて、こっそり抜け出せ。分かったな。」

「かしこまりました。」

 セレーナが頷くと同時に部屋の扉がたたかれる。

「皆様、王女の支度が整いましたのでご案内いたします。」

「よし、行くぞ。」

 全員が気を引き締めている中、ロヴェルだけが「えー、まだ何も食べてない。」と不満を口にしていた。


キウラside

 案内をしてくれる女性騎士の後ろをアルフォンソ様とザガルード、ロヴェルとともについて行く。部屋を出て少し歩いたところでアリアネスとセレーナの気配が消えたことが分かった。アルフォンソ様の方を見ると、無言で頷いてきたので、同じく頷きで返す。

「王女様は行方不明になっていた弟君が見つかったかもしれないと聞いて大変お喜びです。」

「そうですか。それは光栄です。」

 ザガルードを見ながらニコニコと笑う騎士団員に目もくれず、ザガルードは勝手知ったかのようにすたすたと歩く。

「…王女様はどんな方なのですか?」

 キウラが聞くと、騎士団員は目を輝かせる。

「王女様は本当にお美しくて、聡明な方です。この国の民のことを一番に考えてくださっています。」

「そんな人が戦争なんて起こしますかねー。」

 ロヴェルが笑いながら言うのをキウラが「こら!」とたしなめる。

「…すべては王女様の御心のままに。何か考えがあってのこと。申し訳ありませんが、王女のためなら私はオルドネアと戦います。」

 騎士団員のまっすぐな視線を受け止めるアルフォンソ様がにやりと笑う。

「それはこちらのセリフです。」

「…そうですね。お互いの国のため、どちらかが犠牲になるのは仕方ありません。…到着いたしました。少々お待ちください。」

 着いたのは巨大な扉の前だった。材質は分からないが、漆黒の扉だ。白い大理石とのコントラストで、その黒味はさら強く見える。

「ミリアンネ様。先ほどお伝えいたしました方々からをお連れしました。」

 騎士団員が扉を叩く。

「…通せ。」

 扉の向こうから聞こえたのは、少し低めだが高貴さを感じられる女性の声だった。

「私はここまでです。どうぞお入りください。」

 騎士団員は扉を開けて、その場で礼をする。

「失礼いたします。」

 ザガルードを先頭にアルフォンソ様、私、ロヴェルの順番で部屋に入る。そこは広い部屋で、奥に玉座が鎮座している。

「よく来たな、ザガルダント。」

「っ!姉さま。」

 豪華な玉座に優雅に腰を掛けているのは、ザガルードと同じエメラルドの髪と瞳を持った長身の女性だった。髪をシルバーの髪飾りで高めの位置で結わえている。肌は真っ白で、体のラインが強調された真っ黒なマーメイドドレスを着ていた。意思の強そうな釣り目だが、今は愉快そうに細められている。

「生きていてくれてとてもうれしい。お前が行方不明になった時、私は胸が張り裂けそうだったぞ!」

 玉座から立ち上がった王女は高らかに笑い出した。

「あはははは!愚か者め!どうしてきたのだ!あははは!」

 狂ったように笑い続ける王女にザガルードが歩み寄ろうとするが、危険を感じ、その体を押しとどめる。

「っ!キウラ、気をつけろ!!」

 アルフォンソ様の鋭い声が聞こえた。




「あはは!やっぱり来たんだー。」

 瞬きをしたその一瞬の間。気づけば王女の肩に頭を乗せてしなだれかかるようにして笑うバライカがそこにいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

母を亡くした公爵令嬢は、虐げられないが、今日も願いが叶わない

春風由実
恋愛
「何故お前が生きた?」 それは怪我をして長く眠っていたエルリカが、目覚めた直後に父親である公爵から掛けられた言葉だった。 「お前こそが、女神の元に行くべきだった!」 父親から強い口調で詰られたエルリカ。 普通の令嬢は、ここで泣くか、その後立ち直れなくなるという。 けれどエルリカは違った。 「あなたこそ、何をのうのうと元気にしているのですか?」 そうしてこの日父娘は、それぞれに絶縁を宣言した。 以来、母方の祖父母に引き取られ、侯爵領で過ごしてきたエルリカ。 ところが公爵は、いつまでもエルリカを除籍する手続きを実行しなかった。 おかげで名ばかりの公爵令嬢のまま、エルリカが王都へと戻る日がやって来てしまう──。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

処理中です...