捨てられ伯爵令嬢は野獣に勝てるか

めろめろす

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第27話

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「これはいったい何の騒ぎかと聞いているんだが?」
 
 ミリアンネがもう一歩踏み出す。

「王女ミリアンネ!どうかわたくしの話をお聞きください。」
 
 剣を鞘に収めたアリアネスがミリアンネの瞳を真っ直ぐに見る。ミリアンネは少しだけ顔を歪めると、また無表情に戻った。

「私の国の騎士団長に剣を向けていたお前の話を聞けと言うのか?随分と面の皮の厚い女だ。…こやつも犯人の仲間か、ザガルダント?」

 ミリアンネがくすりと笑いながら背後にいる人物に話しかける。

「ザガルード…?」

 ミリアンネの後ろに付き従うように立っているのはザガルードだった。しかし、アリアネスにはザガルードの様子がおかしく見える。顔には全く表情がなく、美しく輝いていた緑色の瞳が真っ黒に変わっているのだ。

「…はい、姉上。あいつらも私を小さい頃に拐った誘拐犯の仲間です。まるで自分たちが私を見つけたように偽り、私をこの城まで連れて来て、姉上から金を奪おうとしている卑しい輩です。」

「っ!?何を言っておりますの、ザガルード!」

 アリアネスが驚愕の声を上げる。ザガルードの口からはアリアネスたちが不利になるような言葉がすらすらと吐き出し続けられている。


「っ!バライカの精神汚染だ!心を乗っ取られてる!ファニア!」

「だから分かってるってば!解除に少し時間がかかるわ!集中したいから、みんな私のことを守りなさい!」

「だそうだ。ファニアに指一本触れさせるなよ!」

 ラシードが剣を構えてミリアンネたちを睨みつける。
 




「「「全てはバライカ様のために。」」」


「え?」

 ラシードのサポートに回ろうとしたアリアネスに三つの陰が忍び寄り、羽交締めにされてしまう。


「キウラ、ロヴェル、アルフォンソ様!?」

 表情をなくしアリアネスの動きを封じる三人は「バライカ様のために」と小さく呟き続けている。



「あは!現妖精王も次期妖精王もまだまだだね。僕の精神汚染に気付きやしないんだから。」

 いつのまにかミリアンネのそばに移動していたバライカが、にっこりと笑う。そしてふわりと浮き上がると、ミリアンネの頬を優しく撫でた。

「よくやったね、僕の優秀なお人形さん。」

「バライカ…。」

 ミリアンネがうっとりとした表情でその手に擦り寄る。

「っ!王女ミリアンネ!どうか目を覚まして!あなたはバライカに操られているのよ!ザガルードはずっとあなたのことを心配していた!どうか心優しい元の王女に戻ってちょうだい!」

 なんとか三人の拘束から逃れようと暴れるアリアネスが声を張り上げる。

「ファニア!」

「全員分の精神汚染解除でしょ!あともう少しよ!」

 額から汗を垂らしながらファニアがラシードに返事をする。

「セレーナ!動けるのは俺とお前だけだ!ファニアを守れ!」

「分かっています!」

 バライカが放ってくる強烈な魔法をラシードとセレーナが何とか防ぎ続けている。


「王女!どうかザガルードが愛した王女に戻って!!!」






「戻るとは?」

「あ…。」

 ミリアンネの瞳がアリアネスを見る。目の奥に感じる強い意志に、アリアネスは理解してしまった。

「あなた…。」





「どうして私がバライカに操られていると思う?」





「っ!終わったわ!」

 ファニアの体から黄金色に輝く光が溢れ出す。するとザガルード、アルフォンソ、キウラ、ロヴェルの体から力が抜けて、ガクリと地面に崩れ落ちた。

 いち早く回復したザガルードが苦しそうな表情で怒鳴る。







「気をつけろ!姉上は、精神汚染など受けていない!姉上は!!!」








「ミリアンネはだよ。」


 バライカが心底おかしそうに笑う。







「すまないな、アリアネス嬢。」

「あっ!!!」

 ミリアンネの手から放たれた真っ黒な光がアリアネスの右目を貫いた。
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