捨てられ伯爵令嬢は野獣に勝てるか

めろめろす

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マゴテリアへ

第26話

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リィルside

 リィルは順風満帆の人生を歩んできた。マゴテリアの有力貴族の次男として生まれ、見た目も良く、金も有り、好きなことを好きなようにさせてもらった。
 次男なので、家督を継ぐ必要もなく、爵位をもらって騎士団に入団。剣の才能もあり、入団してすぐに頭角を表して出世街道を突っ走ってきた。
 女にも苦労せず、声をかけてくる女と一夜を過ごしたことは数知れない。
 騎士団長になって、この国が正体のよくわからない妖精とやらに牛耳られていることが分かっても、自分の地位が約束されればさして興味はなかった。

 ただただ優秀な自分が楽しく生きることができればそれでいい。


 バライカにオネオンの世話を任された時。オネオンの事情を聞いて、本人の目の前では「可哀想に。よく頑張ってるな。」と同情してやったが、心の中では馬鹿にしていた。

(平凡な人間のくせに自分以外のことに執着するからだ。)


 自分は違う。これからも自分のことだけを考える。死ぬまで順風満帆な人生を送るのだ。








(それが!どうして!)

「くそがぁ!!」


「おっーーーーーーほっほっほっ!弱い!弱すぎますわ、マゴテリア騎士団団長リィル様!あなたの動きが悪すぎて、わたくし、あくびが出そうですわよ?」

 
 どうして仰向けに倒れて喉元に剣を突きつけられているのか。

「クソガキが調子に乗りやがって!」

「あら。お口が悪うございますわよ、リィル団長様?確かマゴテリアの貴族のご子息とお聞きしておりますけれど、マゴテリアは貴族の質も悪いのかしら。」

 コテンと首を傾げてアリアネスが妖艶に笑う。

 初めて見た時はいい女だと見惚れてしまった。なんなら、一晩を共にしてやってもいいとさえ考えた。
 今はそんなことを考えていた自分を殴り倒してやりたい。

「調子に乗るなよ、小娘が!!!!」


 体を逸らせてアリアネスの剣を自分の剣で弾く。後ろに下がって距離を取った後、間髪入れずに炎の魔法をアリアネスに放った。

「剣だけだと思うなよ、女ぁ!」



「ロヴェル!」

「分かってます、セレーナさん!」

 セレーナが叫ぶと、ロヴェルがニヤリと笑う。そして何かを唱えると、アリアネスの剣に水がまとわりついた。

「うふふ、ありがとうセレーナ、ロヴェル。…こんなぬるい炎で私を燃やせるとでも思っているのかしら?」

 巨大な炎の玉をアリアネスが一刀で消し去ってしまう。

「そん…な…。」






「終わりですわ!」

「ぐうっ!」

 いつのまにか距離を詰めていたアリアネスの拳に顎を撃ち抜かれ脳が揺れる。リィルは無様に尻餅をついた。

「どうして…お前みたいな弱そうな女に、俺が!俺は強い!平凡な奴らと違って俺は!」

「あなたがわたくしに負けたのはきっと1人だから。守り守られるものがあると人は強くなる、わたくしはそう思いますわ。」

 日を背に笑うアリアネスにリィルは見惚れた。










「いったい何の騒ぎだ?」

 大きな声ではないのによく通る声が響き渡る。



「あなたは…。」

 アリアネスがそちらに目を向ける。

 ザガルードと同じエメラルドの髪と瞳を持ち、真っ黒なマーメイドドレスを着た女性、王女ミリアンネが無表情でこちらを見ていた。


 
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