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第一部
第19話
「あのぉ。」
「いいですから早く乗ってください。」
三目君が無理やり車に乗せようとしてきて困ってしまう。しかも車は三目君のものではなく、桝田君のもののようだ。国産車ではあるが、かなり値段が張る高級車だ。桝田君も「そうですよ、早く乗ってください」と言って急かしてくる。しかし、二人で遊びに来ていた所にお邪魔するわけにもいかない。自分で帰るからと主張してみたものの、三目君からため息をつかれてしまった。
「もう瀬尾さんは帰ってますよ?山口さん、車もないのにここからどうやって家まで戻るつもりなんですか?」
痛いところをつかれて言葉に窮してしまう。確かに駐車場を見渡してみても、瀬尾君の車は見当たらない。
「山口さんが見つかるまで帰らないって言ってたのを僕がうまく誘導して帰らせたんだから誉めてくださいね。」
「それは助かったけど…。」
そう思ったのなら乗ってくださいと詰め寄られたので、これはもう言うことを聞くしかないと思い車に乗り込んだ。三目君は助手席に乗るのかと思ったら、自分の隣に座った。それを確認すると、桝田君が車を発進させる。
「あー、お腹減りましたねぇ!何か食べて帰りましょう。」
三目君が運転席の方に身体をのり出して、桝田君と相談している。さすがにそこまでお邪魔するのは申し訳なさすぎると断ってみたものの、やはり無視されてしまった。
「明日まで休みなんですから、今日は夜更かししても大丈夫ですよね?それとも明日は何か用事があるんですか?」
ここでスラスラと嘘がつけるようであれば問題ないんだろうが、あいにくそこまで器用ではない。案の定口ごもってしまい、結局中華のお店に連れていかれてしまった。どうやら桝田君の行きつけらしく、顔見知りらしい店員さんに個室へと案内された。少し格式の高そうなお店で、財布に入ってるお金で足りるかどうかハラハラする。しかし、そんな気持ちも運ばれてきた料理を見て吹っ飛んでしまった。大皿にたっぷりと盛られたエビチリや麻婆豆腐、油淋鶏に棒々鶏など、お腹が減っている自分には魅力的すぎるメニューだ。味も最高で、無言でかきこんでいると「山口さん!」と三目君が大きな声を出してきた。
「んぐっ!み、三目君どうかした?」
「どうかしたじゃないですよ!なんでそんなに食事に一生懸命になってるんですか!食事は二の次なんですからね!」
ぷりぷりと怒っている三目君は大変に可愛らしいが、そんなことをいえばまた怒られてしまうのでここは賢く黙っておいた。
「二の次って、もしかして合コンのこと?」
嫌な予感を感じながら恐る恐る言うと、三目君は大きく頷いた。
「その通りですよ!山口さんは僕らと一緒に合コンにいくんです!そしてお似合いの相手を見つけましょう!!」
三目君が以前見たホームページのようなことをいっている。でも合コンなんて行くつもりはない。今まで一度もそんな場にはいったこともないし、何よりこんなおじさんが行ったら盛り下がるに決まっている。
「俺なんかが行ったって迷惑かけるだけだよ。」
「そんなことないです!山口さんは綺麗で優しくて、最高の人です!山口さんは自分のことを過小評価しすぎなんですよ!!!」
三目君は桝田君が盛ってくれたチャーハンをモリモリと食べながら熱弁してくる。そんなことあるわけないと半笑いで聞いていたが、なんと桝田君も「その通りです」と話にのってきてしまった。
「俺はさっき会ったばっかりですけど、山口さんはすごくお綺麗です。今まで恋人がいなかったなんて信じられません。」
桝田君がにっこりと微笑んでくれる。若い子にそんな風に言ってもらえるとお世辞でもうれしい。ありがとうと返すと桝田君はほんのり頬を赤く染めた。
「ほら!また無意識にそういうことしますよね!無自覚なんですよ、山口さんは!そこが恐ろしいんですよ!」
三目君にまた怒られてしまった。
「とにかく人はちゃんとこっちで集めますから。山口さんは来てくれるだけでいいんです。」
食事も終わり、デザートに入ったけれども三目君の熱弁はまだ続いていた。どうやら、自分が合コンに行くのは決定事項らしく、あとは誰が来るかの問題のようだ。
「いいですか?この合コンでは山口さんは気を遣ったりは一切しなくていいです。ご自分の好きなようにやってください。話したくなければずっと無言でもいいですし、ご飯だけ食べたければそれでもいいです。ただ、合コンの場に来てくれればいいですから!」
可愛い部下にそこまで言われると、さすがに断るのは可哀そうになる。ただ座っているだけでいいのであればという条件付きでしぶしぶ頷いた。三目君はやったー!と声をあげた後、すぐに桝田君に向き直った。
「お相手側は僕が手配するから、誠也はお店の予約をお願い。」
「分かった。」
どうやら三目君がお相手を探してくれるらしい。三目君ならどんな人でも呼び放題だとは思うが、どんな人たちが相手になるのか気になる。
「三目君、相手ってどんな人たちを予定してるの?」
「それは当日まで秘密です。ただ、極上の人たちを連れてくるのは間違いないのでご心配なく!αもΩもβも選りどりみどりですよ!!」
にっこりと笑って親指を立てる三目君は頼もしい。瀬尾君のことを考えると心が痛むが、彼のことは忘れて新しく好きな人を探すのも良いことかもしれない。せっかく三目君がセッティングしてくれたんだから楽しもう。
(そう思ってたのに…。)
三目君と約束して1週間後。ほんとにこんなところでやるの?というほどの高級ホテルに引っ張られてきた自分は、おそらくVIPしか入れないであろう豪華すぎる個室に通された。こちら側の面子は自分と三目君と桝田君。
確かに三目君は極上の男を用意するといっていたし、間違いなく向こう側には三人とも極上の男が座っている。しかし、そのうちの一人がまったく想定していない人物だ。
「今日はよろしくお願いしますね!」
にっこりと笑って挨拶をする三目君に会釈した後、無表情で自分をじっと見つめてくるのはあろうことか、瀬尾君だったのだ。
「いいですから早く乗ってください。」
三目君が無理やり車に乗せようとしてきて困ってしまう。しかも車は三目君のものではなく、桝田君のもののようだ。国産車ではあるが、かなり値段が張る高級車だ。桝田君も「そうですよ、早く乗ってください」と言って急かしてくる。しかし、二人で遊びに来ていた所にお邪魔するわけにもいかない。自分で帰るからと主張してみたものの、三目君からため息をつかれてしまった。
「もう瀬尾さんは帰ってますよ?山口さん、車もないのにここからどうやって家まで戻るつもりなんですか?」
痛いところをつかれて言葉に窮してしまう。確かに駐車場を見渡してみても、瀬尾君の車は見当たらない。
「山口さんが見つかるまで帰らないって言ってたのを僕がうまく誘導して帰らせたんだから誉めてくださいね。」
「それは助かったけど…。」
そう思ったのなら乗ってくださいと詰め寄られたので、これはもう言うことを聞くしかないと思い車に乗り込んだ。三目君は助手席に乗るのかと思ったら、自分の隣に座った。それを確認すると、桝田君が車を発進させる。
「あー、お腹減りましたねぇ!何か食べて帰りましょう。」
三目君が運転席の方に身体をのり出して、桝田君と相談している。さすがにそこまでお邪魔するのは申し訳なさすぎると断ってみたものの、やはり無視されてしまった。
「明日まで休みなんですから、今日は夜更かししても大丈夫ですよね?それとも明日は何か用事があるんですか?」
ここでスラスラと嘘がつけるようであれば問題ないんだろうが、あいにくそこまで器用ではない。案の定口ごもってしまい、結局中華のお店に連れていかれてしまった。どうやら桝田君の行きつけらしく、顔見知りらしい店員さんに個室へと案内された。少し格式の高そうなお店で、財布に入ってるお金で足りるかどうかハラハラする。しかし、そんな気持ちも運ばれてきた料理を見て吹っ飛んでしまった。大皿にたっぷりと盛られたエビチリや麻婆豆腐、油淋鶏に棒々鶏など、お腹が減っている自分には魅力的すぎるメニューだ。味も最高で、無言でかきこんでいると「山口さん!」と三目君が大きな声を出してきた。
「んぐっ!み、三目君どうかした?」
「どうかしたじゃないですよ!なんでそんなに食事に一生懸命になってるんですか!食事は二の次なんですからね!」
ぷりぷりと怒っている三目君は大変に可愛らしいが、そんなことをいえばまた怒られてしまうのでここは賢く黙っておいた。
「二の次って、もしかして合コンのこと?」
嫌な予感を感じながら恐る恐る言うと、三目君は大きく頷いた。
「その通りですよ!山口さんは僕らと一緒に合コンにいくんです!そしてお似合いの相手を見つけましょう!!」
三目君が以前見たホームページのようなことをいっている。でも合コンなんて行くつもりはない。今まで一度もそんな場にはいったこともないし、何よりこんなおじさんが行ったら盛り下がるに決まっている。
「俺なんかが行ったって迷惑かけるだけだよ。」
「そんなことないです!山口さんは綺麗で優しくて、最高の人です!山口さんは自分のことを過小評価しすぎなんですよ!!!」
三目君は桝田君が盛ってくれたチャーハンをモリモリと食べながら熱弁してくる。そんなことあるわけないと半笑いで聞いていたが、なんと桝田君も「その通りです」と話にのってきてしまった。
「俺はさっき会ったばっかりですけど、山口さんはすごくお綺麗です。今まで恋人がいなかったなんて信じられません。」
桝田君がにっこりと微笑んでくれる。若い子にそんな風に言ってもらえるとお世辞でもうれしい。ありがとうと返すと桝田君はほんのり頬を赤く染めた。
「ほら!また無意識にそういうことしますよね!無自覚なんですよ、山口さんは!そこが恐ろしいんですよ!」
三目君にまた怒られてしまった。
「とにかく人はちゃんとこっちで集めますから。山口さんは来てくれるだけでいいんです。」
食事も終わり、デザートに入ったけれども三目君の熱弁はまだ続いていた。どうやら、自分が合コンに行くのは決定事項らしく、あとは誰が来るかの問題のようだ。
「いいですか?この合コンでは山口さんは気を遣ったりは一切しなくていいです。ご自分の好きなようにやってください。話したくなければずっと無言でもいいですし、ご飯だけ食べたければそれでもいいです。ただ、合コンの場に来てくれればいいですから!」
可愛い部下にそこまで言われると、さすがに断るのは可哀そうになる。ただ座っているだけでいいのであればという条件付きでしぶしぶ頷いた。三目君はやったー!と声をあげた後、すぐに桝田君に向き直った。
「お相手側は僕が手配するから、誠也はお店の予約をお願い。」
「分かった。」
どうやら三目君がお相手を探してくれるらしい。三目君ならどんな人でも呼び放題だとは思うが、どんな人たちが相手になるのか気になる。
「三目君、相手ってどんな人たちを予定してるの?」
「それは当日まで秘密です。ただ、極上の人たちを連れてくるのは間違いないのでご心配なく!αもΩもβも選りどりみどりですよ!!」
にっこりと笑って親指を立てる三目君は頼もしい。瀬尾君のことを考えると心が痛むが、彼のことは忘れて新しく好きな人を探すのも良いことかもしれない。せっかく三目君がセッティングしてくれたんだから楽しもう。
(そう思ってたのに…。)
三目君と約束して1週間後。ほんとにこんなところでやるの?というほどの高級ホテルに引っ張られてきた自分は、おそらくVIPしか入れないであろう豪華すぎる個室に通された。こちら側の面子は自分と三目君と桝田君。
確かに三目君は極上の男を用意するといっていたし、間違いなく向こう側には三人とも極上の男が座っている。しかし、そのうちの一人がまったく想定していない人物だ。
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