42 / 56
第二部
第6話
しおりを挟む
「幸尚さん、やっぱりあいつに何かいわれたんじゃないんですか?」
三目君がデスクの横に立って顔を覗き込んでくる。「本当に何にもないから」と朝から言い訳しているものの、三目君は全く信じてくれない。それどころかさらに厳しく追求してくる始末だ。でも小鳥遊君とのことを三目君に相談できない。
なぜなら三目君はΩだから。
小鳥遊君の「βはαとΩの恋愛に入れっこない」と言う言葉がどうしても心に引っかかってしまう。
瀬尾君は自分をΩにしようとしている。でもそれを断ったのは自分だ。βとしての自分を誇りに思っているし、βとして努力してきた自分を無くしたくない。
けれど、βがαやΩと本当に恋愛できるんだろうか。今のところ、瀬尾君も三目君も自分のことを好いてくれている。しかし彼らには「運命の番」が存在するのだ。もし、そんな人が彼らの前に現れたら、自分はどうなるんだろう。容赦なく捨てられてしまうんだろうか。
(そんなの…。)
大丈夫だなんて思えなかった。2人が離れていくとを想像して感じたのはとんでもない恐怖と孤独感。αとしてΩとして一流の男2人を独占したいという自分の醜くて浅ましい心の内に気付いてしまった。
「っ!」
「幸尚さん?」
突然立ち上がった自分に、三目君が不思議そうに声をかけてくる。それと同時に定時の合図である音楽が流れ始めた。
「きょ、今日は用事があるから先に帰る!じゃあね、三目君!」
「あ!ちょ、ちょっと幸尚さん!」
慌ててデスクを片付けて鞄を掴み部屋から飛び出した。後ろから三目君の焦った声が聞こえてきたが、構わずに全速力でエレベーターまで急ぎ、彼が来ない内に乗り込んでしまう。無事に1人で帰ることに成功して、ホッと息を吐いた。エレベーターを降りて、会社のビルを出る。
(あっ…。)
向こうから見えたのは帰社してくる瀬尾君だった。そしてその隣には小鳥遊君が笑顔でひっついている。
今は彼らに会いたくない。そう思っても、遠くから自分を見つけた瀬尾君が笑顔でこちらに駆け寄ってくる。
「幸尚さん、もう帰るんですか?」
「う、うん。」
「そうですか…。俺は今やっと営業から帰って来たところで、これから残業なんです。本当なら幸尚さんと一緒に帰りたいんですが…。」
瀬尾君が申し訳なさそうな顔をするので気にするなと返事をしようとした。
「えー、定時で帰るなんて随分と暇な部署なんですね。僕たち営業部は会社の花形部署なんで大変なんです。まぁ、だからこそ多くの人に期待されてるんですけど。」
小鳥遊君がぎゅうっと瀬尾君に抱きつきながらこちらを睨みつけてくる。瀬尾君は「こら!」といって小鳥遊君を軽く叱りつけるが、「だってぇー!」と甘えた声で返事をするだけだ。
「瀬尾先輩みたいに優秀な人がいるから、この人みたいに優秀じゃない人でもこの会社でやっていけてるんですよ。しかもβなんですよね?…αもΩの僕たちとは生きる世界が違うんですよ。」
「っ!小鳥遊、いい加減にしろ!」
瀬尾君が大きい声を出して小鳥遊君を振り払う。怒られた小鳥遊君ほ少しだけ目を見開いた後、忌々しげに自分を睨みでけてくる。
「あなたのせいで瀬尾先輩に怒られちゃったでしょ!聞きましたけど、あなた前は営業部にいたんでしょ?それで体調崩してデータベース部に移動になったとか。そんなの会社のお荷物じゃないですか!すぐ辞めれば良かったのに!体の弱いβなんかにこの会社にいてもらいたくない!格が下がるんですよ!」
「小鳥遊!!!」
「っ!僕、先に行きます!」
「待て!」
散々言いたいことを言った小鳥遊君は、本気で怒った瀬尾君の剣幕を恐れて駆け足で会社に戻っていった。
「すいません、幸尚さん。あいつのこもは厳しく叱っとくので気にしないでください。体調崩したのだって、俺が、幸尚さんをΩに変えようとしたから…。」
「俺のことは気にしなくていいから、小鳥遊君を追いかけてあげなよ。」
「幸尚さん…?」
俯いたまま言うと、瀬尾君が気遣わしげに肩に触れてくる。
「っ俺のことはいいってば!どうせもともと営業部で働くのは限界だったんだ。俺にはαやΩみたいに人を惹きつける力なんてないんだから!じゃあな!」
「っ、幸尚さん!!」
むしゃくしゃする。そして悲しくなってくる。ぐちゃぐちゃになっている情けない自分をこれ以上見られたくなくて、瀬尾君の手を乱暴に振り払う。呆然としている瀬尾君を置いて、その場から駆け足で逃げ出したのだった。
三目君がデスクの横に立って顔を覗き込んでくる。「本当に何にもないから」と朝から言い訳しているものの、三目君は全く信じてくれない。それどころかさらに厳しく追求してくる始末だ。でも小鳥遊君とのことを三目君に相談できない。
なぜなら三目君はΩだから。
小鳥遊君の「βはαとΩの恋愛に入れっこない」と言う言葉がどうしても心に引っかかってしまう。
瀬尾君は自分をΩにしようとしている。でもそれを断ったのは自分だ。βとしての自分を誇りに思っているし、βとして努力してきた自分を無くしたくない。
けれど、βがαやΩと本当に恋愛できるんだろうか。今のところ、瀬尾君も三目君も自分のことを好いてくれている。しかし彼らには「運命の番」が存在するのだ。もし、そんな人が彼らの前に現れたら、自分はどうなるんだろう。容赦なく捨てられてしまうんだろうか。
(そんなの…。)
大丈夫だなんて思えなかった。2人が離れていくとを想像して感じたのはとんでもない恐怖と孤独感。αとしてΩとして一流の男2人を独占したいという自分の醜くて浅ましい心の内に気付いてしまった。
「っ!」
「幸尚さん?」
突然立ち上がった自分に、三目君が不思議そうに声をかけてくる。それと同時に定時の合図である音楽が流れ始めた。
「きょ、今日は用事があるから先に帰る!じゃあね、三目君!」
「あ!ちょ、ちょっと幸尚さん!」
慌ててデスクを片付けて鞄を掴み部屋から飛び出した。後ろから三目君の焦った声が聞こえてきたが、構わずに全速力でエレベーターまで急ぎ、彼が来ない内に乗り込んでしまう。無事に1人で帰ることに成功して、ホッと息を吐いた。エレベーターを降りて、会社のビルを出る。
(あっ…。)
向こうから見えたのは帰社してくる瀬尾君だった。そしてその隣には小鳥遊君が笑顔でひっついている。
今は彼らに会いたくない。そう思っても、遠くから自分を見つけた瀬尾君が笑顔でこちらに駆け寄ってくる。
「幸尚さん、もう帰るんですか?」
「う、うん。」
「そうですか…。俺は今やっと営業から帰って来たところで、これから残業なんです。本当なら幸尚さんと一緒に帰りたいんですが…。」
瀬尾君が申し訳なさそうな顔をするので気にするなと返事をしようとした。
「えー、定時で帰るなんて随分と暇な部署なんですね。僕たち営業部は会社の花形部署なんで大変なんです。まぁ、だからこそ多くの人に期待されてるんですけど。」
小鳥遊君がぎゅうっと瀬尾君に抱きつきながらこちらを睨みつけてくる。瀬尾君は「こら!」といって小鳥遊君を軽く叱りつけるが、「だってぇー!」と甘えた声で返事をするだけだ。
「瀬尾先輩みたいに優秀な人がいるから、この人みたいに優秀じゃない人でもこの会社でやっていけてるんですよ。しかもβなんですよね?…αもΩの僕たちとは生きる世界が違うんですよ。」
「っ!小鳥遊、いい加減にしろ!」
瀬尾君が大きい声を出して小鳥遊君を振り払う。怒られた小鳥遊君ほ少しだけ目を見開いた後、忌々しげに自分を睨みでけてくる。
「あなたのせいで瀬尾先輩に怒られちゃったでしょ!聞きましたけど、あなた前は営業部にいたんでしょ?それで体調崩してデータベース部に移動になったとか。そんなの会社のお荷物じゃないですか!すぐ辞めれば良かったのに!体の弱いβなんかにこの会社にいてもらいたくない!格が下がるんですよ!」
「小鳥遊!!!」
「っ!僕、先に行きます!」
「待て!」
散々言いたいことを言った小鳥遊君は、本気で怒った瀬尾君の剣幕を恐れて駆け足で会社に戻っていった。
「すいません、幸尚さん。あいつのこもは厳しく叱っとくので気にしないでください。体調崩したのだって、俺が、幸尚さんをΩに変えようとしたから…。」
「俺のことは気にしなくていいから、小鳥遊君を追いかけてあげなよ。」
「幸尚さん…?」
俯いたまま言うと、瀬尾君が気遣わしげに肩に触れてくる。
「っ俺のことはいいってば!どうせもともと営業部で働くのは限界だったんだ。俺にはαやΩみたいに人を惹きつける力なんてないんだから!じゃあな!」
「っ、幸尚さん!!」
むしゃくしゃする。そして悲しくなってくる。ぐちゃぐちゃになっている情けない自分をこれ以上見られたくなくて、瀬尾君の手を乱暴に振り払う。呆然としている瀬尾君を置いて、その場から駆け足で逃げ出したのだった。
12
あなたにおすすめの小説
α、β、Ωで結婚したら無敵だった
月田朋
BL
政府の少子化対策のためのお見合いシステム、「マッチングサービス」。α、β、Ωの男三人。
ビッグデータの解析結果によると、三人で結婚すれば相性はバッチリ!!だったら結婚してみよう。恋はその後すればいい。
【登場人物】
鳥飼誠(34歳)α 男性
井岡イオ(31歳)β 男性
淵 流助(21歳)Ω 男性
※結婚後の姓は選択制の世界です。(彼らは別姓を選択しています)
君と運命になっていく
やらぎはら響
BL
母親から冷遇されている町田伊織(まちだいおり)は病気だから薬を欠かさず飲むことを厳命されていた。
ある日倒れて伊織はオメガであり今まで飲むように言われていたのは強い抑制剤だと教えられる。
体調を整えるためにも世界バース保護機関にアルファとのマッチングをするよう言われてしまった。
マッチング相手は外国人のリルトで、大きくて大人の男なのに何だか子犬のように可愛く見えてしまい絆されていく。
運命の君
沢渡奈々子
BL
【はじめに】このお話はBL(Boy's Love)です。他の投稿作品(NL)から来られた方はご注意くださいませ。【注意】
【オメガバース】設定捏造&造語あり注意。
ごくごく普通のベータである蒼は、ある日超美形のアルファ・鳴海から友達になってほしいと言われ快諾する。それからしばらくして、蒼はオメガと間違えられてアルファの小野塚に襲われるが……。
政略結婚制度に怒っています
河野彰
BL
「政略結婚法」が施行されて十余年。政治家や俳優、高額納税者などの著名人は三十歳までに結婚をしなければならないという法律だ。
主人公末永遥(すえながはるか)はごく一般家庭に育った地味なサラリーマンだったが、ある日一通の通知が政府から届く。それは、高額納税者である久堂清継(くどうきよつぐ)との婚姻が成立したという決定通知だった。
男同士で結婚!? と驚く遥。間違いかと思い、すぐに異議申し立てをしに市役所へ行ったが、そこで事実だと告げられてしまう。トボトボと帰路につく遥の前に清継が現れて……。
ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー
紗々
BL
俺は小さな頃からずっとずっと、そうちゃんのことが大好きだった───。
立本樹と滝宮颯太は、物心ついた頃からの幼なじみ。いつも一緒で、だけど離れて、傷付けあって、すれ違って、また近づいて。泣いたり笑ったりしながら、お互いをずっと想い合い大人になっていく二人の物語です。
※攻めと女性との絡みが何度かあります。
※展開かなり遅いと思います。
【本編完結】期限つきの恋
こうらい ゆあ
BL
神崎葵は、聖桜病院の特別病棟で静かな日々を送っていた。
Ω性特有の難病『フェロモン崩壊症』に冒された彼は、かつてイラストレーターとして活躍していたが、今では病室でひとり、スケッチブックに心を刻む。
余命わずかな時間の中、担当医・佐藤悠真との出会いが、閉ざされた白い病室に温かな光を灯す。
葵の海への憧れ、恋への憧憬が色鮮やかに花開くが、時間は無情にも迫ってくる。
限られた時間の中での、儚い恋のお話。
肩甲骨に薔薇の種(アルファポリス版・完結済)
おにぎり1000米
BL
エンジニアの三波朋晴はモデルに間違われることもある美形のオメガだが、学生の頃から誰とも固定した関係を持つことができないでいる。しかしとあるきっかけで年上のベータ、佐枝峡と出会い、好意をもつが…
*オメガバース(独自設定あり)ベータ×オメガ 年齢差カプ
*『まばゆいほどに深い闇』の脇キャラによるスピンオフなので、キャラクターがかぶります。本編+後日談。他サイト掲載作品の改稿修正版につきアルファポリス版としましたが、内容はあまり変わりません。
必要だって言われたい
ちゃがし
BL
<42歳絆され子持ちコピーライター×30歳モテる一途な恋の初心者営業マン>
樽前アタル42歳、子持ち、独身、広告代理店勤務のコピーライター、通称タルさん。
そんなしがない中年オヤジの俺にも、気にかけてくれる誰かというのはいるもので。
ひとまわり年下の後輩営業マン麝香要は、見た目がよく、仕事が出来、モテ盛りなのに、この5年間ずっと、俺のようなおっさんに毎年バレンタインチョコを渡してくれる。
それがこの5年間、ずっと俺の心の支えになっていた。
5年間変わらずに待ち続けてくれたから、今度は俺が少しずつその気持ちに答えていきたいと思う。
樽前 アタル(たるまえ あたる)42歳
広告代理店のコピーライター、通称タルさん。
妻を亡くしてからの10年間、高校生の一人息子、凛太郎とふたりで暮らしてきた。
息子が成人するまでは一番近くで見守りたいと願っているため、社内外の交流はほとんど断っている。
5年間、バレンタインの日にだけアプローチしてくる一回り年下の後輩営業マンが可愛いけれど、今はまだ息子が優先。
春からは息子が大学生となり、家を出ていく予定だ。
だからそれまでは、もうしばらく待っていてほしい。
麝香 要(じゃこう かなめ)30歳
広告代理店の営業マン。
見た目が良く仕事も出来るため、年齢=モテ期みたいな人生を送ってきた。
来るもの拒まず去る者追わずのスタンスなので経験人数は多いけれど、
タルさんに出会うまで、自分から人を好きになったことも、本気の恋もしたことがない。
そんな要が入社以来、ずっと片思いをしているタルさん。
1年間溜めに溜めた勇気を振り絞って、毎年バレンタインの日にだけアプローチをする。
この5年間、毎年食事に誘ってはみるけれど、シングルファザーのタルさんの第一優先は息子の凛太郎で、
要の誘いには1度も乗ってくれたことがない。
今年もダメもとで誘ってみると、なんと返事はOK。
舞い上がってしまってそれ以来、ポーカーフェイスが保てない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる