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第二部
第11話
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「え!?ゆき、あ、山口さん!?」
「やぁ、瀬尾君。」
驚いて口が開いたままになっている瀬尾君を見てクスクスと笑ってしまう。
「今日の取引には山口にも来てもらうことになった。取引相手は山口が営業にいた時に担当していた会社だからな。関係もかなり良好だったし、話もスムーズにいくだろう。山口は残業扱いになるのが申し訳ないがな。」
「いえ、俺は大丈夫です。ありがとうございます、四宮部長。」
会社の花形、営業部をまとめ上げる四宮道隆(しのみや・みちたか)部長に頭を下げると「こちらこそ助かる」と微笑んでくれた。
四宮部長はバリバリのαで、年齢は45歳。現役のラグビー選手で体格もかなり良い。頭も良くて一流の大学を卒業している、αの中のαだ。
数日前に瀬尾君に四宮部長に話を通すようにお願いしたのは今日のことだ。瀬尾君が自分の以前担当していた会社との取引に苦戦しているという話を聞いて、自分が何か助けになれないかと考えていたのだ。そ
それに以前はそんなに難しい会社ではなかったはずなのに、今では結構な無理難題をふっかけてくるような会社になってしまっているらしく、その真相も知りたいという本音もある。それに加えて小鳥遊君の営業のやり方について自分で見極めたかった。
「や、山口さんも行くんですか?」
「そうだよ。四宮部長から許可ももらってるし、問題ないでしょ?」
瀬尾君に近づいて上目遣いで言ってやると、少しだけ頬を赤くしてうっとたじろいだ。
「も、問題はないですけど。というかむしろ山口さんの営業スタイルをまた見られて俺としては嬉しい限りなんですが。」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ!」
瀬尾君の言葉に心が弾む。思わず抱きつこうしてしまったところで、慌ててここが職場なことを思い出してたたらを踏んだ。
「…。」
そんな自分を怒りの表情で見つめているのが小鳥遊君だった。彼はピッタリと瀬尾君の隣をキープしていて、あろうことか腕に自分のそれを巻きつけている、まるでカップルのような状態になってしまっていた。
「小鳥遊、離せ。」
「えー、いいじゃないですか!Ωの僕とαの瀬尾先輩がこんな風になるのは自然なことなんです。だから恥ずかしがることなんてないんですよ?」
「そういうことじゃない!いいから離せ!」
「えー、嫌ですぅ!」
まるでカップルがいちゃついてるいるようで、四宮部長が深々とため息をついている。そして注意をするつもりなのか口を開きかける。
「はいはい。ここは職場。婚活会場じゃないんだからそんなことしないの。ほら、小鳥遊君行くよー。俺の営業スタイルしっかり見て勉強しなさい。」
「え!な!ちょっと、何勝手に引き剥がしてるのさ!触るなよ、おっさん!」
無理やり小鳥遊君と瀬尾君の体を引き剥がしてやった。そして小鳥遊くんの手を掴んで、ズンズンと歩き出す。
「おっさんって言うのやめてよ。おっさんにおっさんって言うと傷付くんだからね。」
「うるさい!僕は瀬尾先輩と一緒に行きたいの!あんたなんかと一緒に行きたくなんかない!離せよ!」
「おーおー、元気だねぇ。いいことだよ。年がいっている取引相手って結構元気な若者が好きだからね。ご飯モリモリ食べるの好きな人もいるよ。あれ何なんだろうね。若者にご飯食べさせたくなるの。俺も結構その域に達しようとしてるんだけど。」
「知るかよ、おっさん!離せ!離せって言ってるだろ!セクハラで訴えるぞ。」
「ビチビチ動いて魚みたいだね。活きがいい。」
「誰が魚だよ!こんなに可愛い僕を魚に例えるなんて頭がおかしいんじゃないの!」
「頭がおかしいおじさんと一緒に行こうねー。」
「離せよーーー!」
自分たちのやり取りの四宮部長も瀬尾君も呆然としている。
「ほら、2人とも行きますよー。取引相手待たせたりなんかしたらこっちが不利になりますから。」
「お、おう。」
「い、今行きます。」
ギャーギャーと暴れる小鳥遊君を御しながら、4人で取引相手の会社に向かったのだった。
「やぁ、瀬尾君。」
驚いて口が開いたままになっている瀬尾君を見てクスクスと笑ってしまう。
「今日の取引には山口にも来てもらうことになった。取引相手は山口が営業にいた時に担当していた会社だからな。関係もかなり良好だったし、話もスムーズにいくだろう。山口は残業扱いになるのが申し訳ないがな。」
「いえ、俺は大丈夫です。ありがとうございます、四宮部長。」
会社の花形、営業部をまとめ上げる四宮道隆(しのみや・みちたか)部長に頭を下げると「こちらこそ助かる」と微笑んでくれた。
四宮部長はバリバリのαで、年齢は45歳。現役のラグビー選手で体格もかなり良い。頭も良くて一流の大学を卒業している、αの中のαだ。
数日前に瀬尾君に四宮部長に話を通すようにお願いしたのは今日のことだ。瀬尾君が自分の以前担当していた会社との取引に苦戦しているという話を聞いて、自分が何か助けになれないかと考えていたのだ。そ
それに以前はそんなに難しい会社ではなかったはずなのに、今では結構な無理難題をふっかけてくるような会社になってしまっているらしく、その真相も知りたいという本音もある。それに加えて小鳥遊君の営業のやり方について自分で見極めたかった。
「や、山口さんも行くんですか?」
「そうだよ。四宮部長から許可ももらってるし、問題ないでしょ?」
瀬尾君に近づいて上目遣いで言ってやると、少しだけ頬を赤くしてうっとたじろいだ。
「も、問題はないですけど。というかむしろ山口さんの営業スタイルをまた見られて俺としては嬉しい限りなんですが。」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ!」
瀬尾君の言葉に心が弾む。思わず抱きつこうしてしまったところで、慌ててここが職場なことを思い出してたたらを踏んだ。
「…。」
そんな自分を怒りの表情で見つめているのが小鳥遊君だった。彼はピッタリと瀬尾君の隣をキープしていて、あろうことか腕に自分のそれを巻きつけている、まるでカップルのような状態になってしまっていた。
「小鳥遊、離せ。」
「えー、いいじゃないですか!Ωの僕とαの瀬尾先輩がこんな風になるのは自然なことなんです。だから恥ずかしがることなんてないんですよ?」
「そういうことじゃない!いいから離せ!」
「えー、嫌ですぅ!」
まるでカップルがいちゃついてるいるようで、四宮部長が深々とため息をついている。そして注意をするつもりなのか口を開きかける。
「はいはい。ここは職場。婚活会場じゃないんだからそんなことしないの。ほら、小鳥遊君行くよー。俺の営業スタイルしっかり見て勉強しなさい。」
「え!な!ちょっと、何勝手に引き剥がしてるのさ!触るなよ、おっさん!」
無理やり小鳥遊君と瀬尾君の体を引き剥がしてやった。そして小鳥遊くんの手を掴んで、ズンズンと歩き出す。
「おっさんって言うのやめてよ。おっさんにおっさんって言うと傷付くんだからね。」
「うるさい!僕は瀬尾先輩と一緒に行きたいの!あんたなんかと一緒に行きたくなんかない!離せよ!」
「おーおー、元気だねぇ。いいことだよ。年がいっている取引相手って結構元気な若者が好きだからね。ご飯モリモリ食べるの好きな人もいるよ。あれ何なんだろうね。若者にご飯食べさせたくなるの。俺も結構その域に達しようとしてるんだけど。」
「知るかよ、おっさん!離せ!離せって言ってるだろ!セクハラで訴えるぞ。」
「ビチビチ動いて魚みたいだね。活きがいい。」
「誰が魚だよ!こんなに可愛い僕を魚に例えるなんて頭がおかしいんじゃないの!」
「頭がおかしいおじさんと一緒に行こうねー。」
「離せよーーー!」
自分たちのやり取りの四宮部長も瀬尾君も呆然としている。
「ほら、2人とも行きますよー。取引相手待たせたりなんかしたらこっちが不利になりますから。」
「お、おう。」
「い、今行きます。」
ギャーギャーと暴れる小鳥遊君を御しながら、4人で取引相手の会社に向かったのだった。
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