必殺のグロースー最弱からの急成長―

ヒラメキカガヤ

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第一章 最弱の始まり

LV.2 奇跡

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放課後。

 俺は、学校の訓練室で、魔物を討伐していた。

 体育館と同じくらい大きな空間で魔物を討伐し、レベルを上げたり戦闘に慣れるための施設。

 食堂でミツキと話した1週間前からここに通い続けた。

 入学当初、一緒にいた連中とは、興味本位で最初は行っていたものの、興味が薄れるにつれて立ち寄らなくなった。
 しかし、相変わらずリョウばかりが認められるのが気に食わなくてひたすらに、目の前の最弱魔物『スライム』の群れを狩り続けている。

 もう1つの理由として、中間試験が1週間後に行われるからだ。

 この、入学して最初の試験で生徒たちの大半の将来が決まる。

 
 俺の夢は、この国の『キング』になること。
 国で一番の権限と立場を持つ存在。

 『キング』になって、国民を守りたいとか、より良い国にしたいとか、そういう目的はなく、ただ強くなりたい、立派な存在になりたい、その一心だった。

 そんな単純なものじゃないと、大人は言うかもしれないけど、俺の心がそうしたいと決めた以上は、それに向かって進みたい、己の人生を賭けて、それに心中したい。

 俺にとって、キングになることはそれぐらい大きな目標だった。

 その目標に近づくための試験が、始まろうとしていた。

 仮想エリアでの模擬対人戦闘で、ランダムに決められた相手と一対一で勝負する。

 そのためにも、レベルを上げないと、まずい。

 今のクラス平均はレベル9。圧倒的なレベル差で、ダメージはろくに与えられないし、俺は一発で致命傷をもらうことになる。

 レベルが1に戻るのをどうにかしないと…。

 簡素な直剣で切って倒してレベルアップ。
 それでも、一定時間経つとレベルは1に戻ってしまう。

 倒して、倒して、また倒して…。
 
 このまま元に戻るレベルを上げ続けても意味が無いことはわかってる。わかってるんだ。

 でも、気持ちが身体に歯止めをかけない。


 見返したい。

 強くなりたい。

 リョウに勝ちたい。


 奇跡は、起こらないと思ってきた。むしろ、反対の方向で、今回のレベル1にリセットのような悪運はよく起こる。

 俺の人生は、残酷だ。

 昔から、幼馴染のあいつらと比べられて、卑下されて、見下されて、しまいには上がらないレベル。
 誰にも期待されない、空気のような存在。

 永久にレベル1の俺をよく思わない家族の、あのガッカリした顔。


 俺が死んでも、誰も悲しまない。


 それでも。

 それでも、俺は見返したい。

 俺の落ちこぼれように期待する周りのやつら。
 そんな落ちこぼれの事情なんて全く知らずに、楽に生きてそうな天才肌。

 死んでたまるか。

 そいつらが、俺に負けるまで、俺に驚くまで…

 絶対に、死んでたまるか!


 直剣を振りすぎて、マメだらけの手。柄を強く握りしめ、剣を水平に構える。

 疲れきった身体を鞭打つように、ピンと張り上げる。

 そして、右足で強く地面を蹴って、全速力で走る。

 「うおおおおおお!!!」

 目の前のスライム1匹に狙いを定めて。

 「らぁ!!」

 切る。


 レベル1とはいえ、俺に渾身の一撃を浴びせられたスライムは消滅した。

 青い粒子が身体を飛び交う。

 リセットされて、レベル1になった俺は再び2にレベルアップした。

 はずだった。

 「あれ、レベルが…」

 スライムは、経験値が全ての魔物の中で最も少ない最弱の魔物。

 最弱とはいえ、レベル1の俺なら、1体倒しただけでも2になるのだが…。


 レベルは、頭上に出てくるが、自分でも感覚として数値を確認できるようになっている。

 その感覚で、感じ取った時には自分を疑った。

 錯覚なのでは無いかと。


 感じ取ったレベルは…。

 3だった。

 スライム1匹だけで、レベルは3に上がっていた。


 数秒経つと、また1に戻ってしまった。

 「これは…、まさか」


 俺は、平凡な能力と恵まれないレベリング体質でありながらも、直感だけは数少ない長所だった。

 だから、今のレベル3の事態を瞬時に察する。

 「よし」

 疲れきった身体をもう一度奮い立たせ、再び孤立するスライムに切りかかった。

 今度は、がむしゃらではなく、「確かめる」ために。


 青い粒子が身体の周りを飛び交う。


 感じ取ったレベルは…。

 
 3。
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