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第4部 数百年後に生まれ変わっても
第4話
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――そのとき。
空間が、軋んだ。
音もなく、五つの気配が、現れる。
見目麗しい、五人の女性。
揃いのメイド服。
その中心に立つ一人が、静かに、膝をついた。
「・・・・・申し訳、ありません」
声は、震えていた。
「ご主人様」
ホワイトは、かすかに目を開ける。
(ご主人様?)
状況が、理解できない。
それでも、その声には不思議な安心感があった。
「文句なら、どうか、ご存分に」
「必要とあらば、この身に、罰を・・・・」
「ですが・・・」
顔を上げたメイド長――エクレアの目には、涙があった。
「いまは、どうか、生きてくださいませ・・・・」
他の四人も、次々に声を重ねる。
「麗しきご主人様・・」
「誇らしき、ご主人様・・・・・」
「どうか、どうかお許しを・・」
「ご主人様、生きて、下さいませ・・・・」
その光景に、メイズが動いた。
「何者だぁ?」
威圧するように、魔力を高める。
「その者は、われの宿命の相手だぁ」
「立ち去れぇ」
だが、エクレアは振り返らない。
ただ、右手を上げた。
指先が、メイズを指す。
それだけ。
次の瞬間――
メイズは、塵となって消えた。
「邪魔をしないでください。魂までは、抹消いたしません。頃合いを見て、新しい生を与えます」
淡々と告げ、エクレアは再びホワイトを抱き留めた。
――命の灯は、消えかけている。
「やっと」
エクレアの声が、震える。
「やっとご主人様をみつけましたのに、なぜ、かように生命力を失った状態でいらせられるのか・・・・」
ホワイトの顔は青をとおりこして白くなっている。
頭を支えていたイオニアが魔力をこめる。
すると、身体全体を魔力が包み込み、ホワイトの体はずいぶん楽になった。
すかさずシェラは果実水をホワイトの口に持っていった。
のどが潤い、身体が楽になったホワイトは微笑んで「ありがとう」と笑う。
ホワイトは、ゆっくりと目を向けた。
「ねえ?」
「君たちは、誰なんだい」
「どうして・・・・僕なんかに・・・・」
エクレアと4人のメイドは残り僅かな時間で必死に、ホワイトこそが自分たちの仕えるご主人様であることを説明した。
にもかかわらずホワイトをご主人様と見抜けずいままで守れなかったために理不尽な目に合わせてしまったことを謝罪した。
ホワイトはそれを聞いてもわかったようなわからないようなあいまいな表情を浮かべたままだった。
「・・・・そう」
短い返事。
そして、静かに言う。
「・・・・・もういい」
ホワイトは、なんの抑揚もない声で、
「いまさら長く生きても仕方がない。僕は人から嘲笑と侮蔑を受けることに疲れたんだ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その言葉に、わたくしエクレアを始め、四人の顔が青ざめました。
ご主人様であるホワイト様の心がここまで傷ついていることを知ったわたくしどもは、悲しくて仕方がありません。
わたくしはご主人様の心に傷をつけた者たちに報復を与えようと考えましたが、原因の大部分はわたくしどもであることに気づきました。
そこまでの思いをご主人様に持たせてしまったわたくしどものおろかさ、無能さにお詫びのしようもございません。
わたくしは再びご主人様に罰を乞いました。
「親愛なるご主人様。どうか愚かな私たちを罰してくださいませ」
「・・・罰、なんて与えられないよ。それよりも僕の願いを聞いてくれ」
「は、はい・・・。何でも、仰って・・・」
「僕の願いはね、このまま死なせてほしいということなんだ。・・・・もうこの世で生きたいとは思わない」
それを聞いたわたくしと四人のメイドは全員、真っ青な表情になりました。
目には涙が浮かびます。
「しょ・・・・承知いたし・・・ました。で、では、もし死んだとしてもこの世からあの世へ行き、再びこの世へ生まれ変わるかもしれません」
「もし生まれ変われば、再びお仕えしてようございますか?」
わたくしは涙を流しながらご主人様に懇願しました。
「・・・そんな・・・・こと、がある、なら、いいよ」
言葉が途切れ途切れになって。
回復魔法も効かなくなってきた様子。
そんななか、ご主人様は、わたくしどもに最後の言葉を向けました。
「代わりに・・・・君たちに、おね、がいが、ある。ゴホッ」
「ゴールド王国を、守って、くれ」
「そして、スレートと、ベルフラワーを、助け、てやって」
「もし生きて帰れたなら僕が手伝おうと、ごほっ、ごほっ、おもっ、ていたから」
いよいよ死が目前に。
最後の力を振り絞って、
「それから・・・・」
「生まれ変わっ、ても・・・・十歳までは、待って」
「家族と・・・・暮らした・・・・」
言葉は、そこで途切れました・・・・
ご主人様が、息を引き取った瞬間でした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
エクレアが口を開く。
「・・・・いま、ご主人様の魂が身体を離れました」
「このあと、ご主人様の魂はわたくしがあの世へご案内いたします」
「ご主人様がつぎにこの現界に生まれてくるのはおそらく数百年先になるでしょう」
「・・・・それまではご主人様から下されたご命令を実行してください」
「ご主人様がこの現界に再びうまれてきたら、今度こそご主人様にお仕えできるようにするのです」
エクレアの目から大きな涙が一粒こぼれ落ちた。
「それまではご主人様をお迎えするための準備期間としましょう」
「・・・・シェラはスレートのほうを手伝ってください。イオニアにはベルフラワーのほうをお願いしましょうか」
「・・ふふ、あなた方が協力すれば、男爵領の領地どころか、1つの国すら造ってしまうかもしれませんね。でも、それもいいかもしれません」
「そのほうが、わたしがかねてから考えていた計画通りになる」
「残る2人も引き続きホーネットはゴールド王国を、リューシェはエリューシオン教会と聖女を担当してください」
「・・・それでは皆様、ご主人様が生まれる日までそれぞれの立場で励みましょう」
そう言い終わった後、5人のメイドたちは転移でその場を立ち去った。
・・・・・・・そして500年後、物語の幕が開く。
僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です2 本編 終わり
空間が、軋んだ。
音もなく、五つの気配が、現れる。
見目麗しい、五人の女性。
揃いのメイド服。
その中心に立つ一人が、静かに、膝をついた。
「・・・・・申し訳、ありません」
声は、震えていた。
「ご主人様」
ホワイトは、かすかに目を開ける。
(ご主人様?)
状況が、理解できない。
それでも、その声には不思議な安心感があった。
「文句なら、どうか、ご存分に」
「必要とあらば、この身に、罰を・・・・」
「ですが・・・」
顔を上げたメイド長――エクレアの目には、涙があった。
「いまは、どうか、生きてくださいませ・・・・」
他の四人も、次々に声を重ねる。
「麗しきご主人様・・」
「誇らしき、ご主人様・・・・・」
「どうか、どうかお許しを・・」
「ご主人様、生きて、下さいませ・・・・」
その光景に、メイズが動いた。
「何者だぁ?」
威圧するように、魔力を高める。
「その者は、われの宿命の相手だぁ」
「立ち去れぇ」
だが、エクレアは振り返らない。
ただ、右手を上げた。
指先が、メイズを指す。
それだけ。
次の瞬間――
メイズは、塵となって消えた。
「邪魔をしないでください。魂までは、抹消いたしません。頃合いを見て、新しい生を与えます」
淡々と告げ、エクレアは再びホワイトを抱き留めた。
――命の灯は、消えかけている。
「やっと」
エクレアの声が、震える。
「やっとご主人様をみつけましたのに、なぜ、かように生命力を失った状態でいらせられるのか・・・・」
ホワイトの顔は青をとおりこして白くなっている。
頭を支えていたイオニアが魔力をこめる。
すると、身体全体を魔力が包み込み、ホワイトの体はずいぶん楽になった。
すかさずシェラは果実水をホワイトの口に持っていった。
のどが潤い、身体が楽になったホワイトは微笑んで「ありがとう」と笑う。
ホワイトは、ゆっくりと目を向けた。
「ねえ?」
「君たちは、誰なんだい」
「どうして・・・・僕なんかに・・・・」
エクレアと4人のメイドは残り僅かな時間で必死に、ホワイトこそが自分たちの仕えるご主人様であることを説明した。
にもかかわらずホワイトをご主人様と見抜けずいままで守れなかったために理不尽な目に合わせてしまったことを謝罪した。
ホワイトはそれを聞いてもわかったようなわからないようなあいまいな表情を浮かべたままだった。
「・・・・そう」
短い返事。
そして、静かに言う。
「・・・・・もういい」
ホワイトは、なんの抑揚もない声で、
「いまさら長く生きても仕方がない。僕は人から嘲笑と侮蔑を受けることに疲れたんだ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その言葉に、わたくしエクレアを始め、四人の顔が青ざめました。
ご主人様であるホワイト様の心がここまで傷ついていることを知ったわたくしどもは、悲しくて仕方がありません。
わたくしはご主人様の心に傷をつけた者たちに報復を与えようと考えましたが、原因の大部分はわたくしどもであることに気づきました。
そこまでの思いをご主人様に持たせてしまったわたくしどものおろかさ、無能さにお詫びのしようもございません。
わたくしは再びご主人様に罰を乞いました。
「親愛なるご主人様。どうか愚かな私たちを罰してくださいませ」
「・・・罰、なんて与えられないよ。それよりも僕の願いを聞いてくれ」
「は、はい・・・。何でも、仰って・・・」
「僕の願いはね、このまま死なせてほしいということなんだ。・・・・もうこの世で生きたいとは思わない」
それを聞いたわたくしと四人のメイドは全員、真っ青な表情になりました。
目には涙が浮かびます。
「しょ・・・・承知いたし・・・ました。で、では、もし死んだとしてもこの世からあの世へ行き、再びこの世へ生まれ変わるかもしれません」
「もし生まれ変われば、再びお仕えしてようございますか?」
わたくしは涙を流しながらご主人様に懇願しました。
「・・・そんな・・・・こと、がある、なら、いいよ」
言葉が途切れ途切れになって。
回復魔法も効かなくなってきた様子。
そんななか、ご主人様は、わたくしどもに最後の言葉を向けました。
「代わりに・・・・君たちに、おね、がいが、ある。ゴホッ」
「ゴールド王国を、守って、くれ」
「そして、スレートと、ベルフラワーを、助け、てやって」
「もし生きて帰れたなら僕が手伝おうと、ごほっ、ごほっ、おもっ、ていたから」
いよいよ死が目前に。
最後の力を振り絞って、
「それから・・・・」
「生まれ変わっ、ても・・・・十歳までは、待って」
「家族と・・・・暮らした・・・・」
言葉は、そこで途切れました・・・・
ご主人様が、息を引き取った瞬間でした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
エクレアが口を開く。
「・・・・いま、ご主人様の魂が身体を離れました」
「このあと、ご主人様の魂はわたくしがあの世へご案内いたします」
「ご主人様がつぎにこの現界に生まれてくるのはおそらく数百年先になるでしょう」
「・・・・それまではご主人様から下されたご命令を実行してください」
「ご主人様がこの現界に再びうまれてきたら、今度こそご主人様にお仕えできるようにするのです」
エクレアの目から大きな涙が一粒こぼれ落ちた。
「それまではご主人様をお迎えするための準備期間としましょう」
「・・・・シェラはスレートのほうを手伝ってください。イオニアにはベルフラワーのほうをお願いしましょうか」
「・・ふふ、あなた方が協力すれば、男爵領の領地どころか、1つの国すら造ってしまうかもしれませんね。でも、それもいいかもしれません」
「そのほうが、わたしがかねてから考えていた計画通りになる」
「残る2人も引き続きホーネットはゴールド王国を、リューシェはエリューシオン教会と聖女を担当してください」
「・・・それでは皆様、ご主人様が生まれる日までそれぞれの立場で励みましょう」
そう言い終わった後、5人のメイドたちは転移でその場を立ち去った。
・・・・・・・そして500年後、物語の幕が開く。
僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です2 本編 終わり
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