スノウ・ホワイトは家出中

すなぎ もりこ

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「どう思う?」
「知りませんよ。グリンバルド様に直接お聞きになればいいでしょう?」
ジャックは猟銃を磨きながら、面倒くさそうに突っぱねた。
「グリンバルドは何をするつもりなんだろう?」
「坊ちゃんの望み通りにすると言ってたんでしょう? なら、やるべき事は決まってますよね?」
「まさか、本当にドワーフ家に僕をやるつもりなのか?」
  憂いを帯びた表情で戸口に寄りかかる主に一寸視線をやって、ジャックは作業を再開する。
「希望が通って良かったじゃないですか。そろそろそこを退いてくれませんかね。手元が影になって見えにくいんですよ」
スノウはムッとして戸口に立ちはだかった。
「つくづく無礼な奴だ! どうせお前も僕なんていなくなればいいと思っているんだろう!」
ジャックは肩にかけた手縫いで鼻を拭う。
「そんなの俺が言えることじゃありませんよ。まあでも不思議ではありますね。グリンバルド様があっさり折れるなんて」
スノウは鼻を鳴らして、斜め上を向いた。
「復讐するより富を独り占めする方がいいに決まっている。そのことにようやく気付いたんだろう」
ジャックは銃をテーブルに置くと、スノウを見上げる。
「なんですか? 復讐って」
「アイツは僕を恨んでいる。当然だろう?」
「……グリンバルド様は誰も恨んでなどいませんよ」
「あんな目に遭わされて?」
怯えたように両腕を抱くスノウを見つめながら、ジャックは片眉を上げる。
「坊ちゃん、あれは……確かに不幸な出来事でしたが、グリンバルド様は旦那様のことも奥様のことも恨んじゃいない。むしろ、自分を責めておいででした」
「……口ではなんとでも言える」
「俺にはわかります。あの方は友達でもあるので」
スノウは眉を寄せてジャックを睨んだ。ジャックはテーブルに頬杖をつき、不遜な態度でスノウと対峙する。
「義弟の貴方より、よっぽどあの方を知ってますよ」
スノウはギリッと歯を噛み締めた。
「グリンバルドには確かに貴族の血が流れてはいるが、生立ちを考えれば、感覚が近いのは俺の方です。いや、俺なんかよりずっと従順か」
「……従順なふりをしているだけだろう。腹の中では無能な僕を馬鹿にしているに違いない」
ジャックは銃身を片手で持ち、立ち上がると、壁に立て掛ける。
「認めたくない気持ちもわかりますがね。坊ちゃんは恨まれた方が楽なんでしょ」
自分より頭ひとつ分大きい男が、スノウを見下ろした。負けじと睨見返すが、力強い雄の前に心は怖気づく。
「あの方が何を考えて生きてきたのか、貴方のことを本当はどう思っているのか、知るのが怖いんでしょう?」
「怖くなどない!」
ジャックは鼻をすすると、スノウの肩を押した。
「無礼な!」
憤るスノウの横をすり抜け、ジャックは戸口の横に転がる水桶を拾う。
「俺は忙しいんです。坊ちゃんと違ってね。いつまでも構ってられませんよ。とにかく、うだうだ悩むより先に、グリンバルド様と話した方がいい。俺はそう思います」
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