この世界が終わるまで 勇者の僕は恋をする

すなぎ もりこ

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戦いの後

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「魔国には常に瘴気が充満している。それが俺たちの魔力の源になっているんだが……」
 魔族の中には、瘴気を魔力に変換できない者が一定数いるのだとセルジュは言う。その者たちは瘴気に蝕まれ、やがて命を落とす。
「魔力の弱い者も同様だ。俺のように魔力が強ければ、瘴気の吸収もコントロールできるんだが、弱い魔族はそれができない。必要以上に瘴気を吸ってしまうんだ」
「それを調整できるのが『下魔の薬』というわけか」
「そうだ。あれを服用することで瘴気を解毒することができる。毎日飲めば耐性もつく。俺たちにはあの薬が必要なんだ」
 しかし、絶えず瘴気を浴びている魔国の植物では『下魔の薬』は作れない。ズーガリアに自生する数種の薬草を純度の高い水で栽培し、健全な日光の下で乾燥させたものしか効果がないらしい。
 『下魔の薬』が開発されたのはおよそ二千二百年前。魔国の事情を知り、善意で研究を申し出てくれた者がズーガリアにいた。その頃はズーガリアとの関係も良好で、公にはされていなかったが『石の者』を通じて頻繁に行き来があったという。『石の者』は王国騎士団に所属する騎士で、主に魔国との連絡係を務めていた。薬を届けついでに魔族と腕試しをし、それがいつしか恒例となり、魔族と『石の者』との娯楽になっていった。
「魔聖対戦のはじまりは娯楽試合だったのか。『石の者』がそのようなことを言っていたけど、本当だったんだな」
 だが、ズーガリア王朝は徐々に弱体化していった。それに伴い『石の者』の訪れも減り、ついには途絶える。
 魔族は『下魔の薬』の入手先を失い途方に暮れた。
「そんな時、ひょっこりと『石の者』が現れた。教皇から託されたという書簡を携えてな」
「『下魔の薬』と引き換えに、八百長の『魔聖対戦』を持ち掛ける内容だったんだな」
 セルジュは頷くと、胡坐をかいた腿の上に肘をつく。そこに顎を乗せ、憂いを帯びた表情で語った。
「当時の魔王は正義感の強い性格で、かなり悩んだそうだがな。結局は、同族を救うためには致し方ないと引き受けたらしい」
 きっと、その頃のズーガリアは荒れていたのだろう。教会にあった歴史書はすべて改ざんされていたから、推測するしかないが。
 王がぼんくらだったのか災害でも起きたのか原因はわからないが、求心力を失ったズーガリア王朝は、崩壊の危機に陥っていた。それを機に国政に介入することを狙ったのが教団だ。
 危険な魔力を持つ蛮族を制圧すれば、離れかけた国民の信頼を取り戻すことが叶う。そればかりか周辺国に恩を売ることができる……とでも囁いたのか。何にせよ、王はその提案に飛びついた。そして、魔聖対戦のシナリオが完成したのだ。
 実際のところ、その思惑は大当たりした。ズーガリアは『神の名代を務める国』と自ら名乗り、大陸において強い影響力を持つに至った。
「……て、わけだから、今更止められないだろう。お前の提案は到底受理されない。いや、それだけじゃ済まねぇよ。国家を揺るがす秘密を知ってしまったんだ。オリバー、お前、下手すりゃ消されちまうぞ」
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