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ポッコチーヌ様のお世話係

お世話係になりました②

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そうこう話している間に、便所からマクシミリアンが姿を現した。股間のポッコチーヌは大人しくなっている。

「俺は訓練に参加せずとも良いのだろう?」

 マクシミリアンは浮かない表情を浮かべながら、下着を掴み身につけていく。

「たまに相手をしてやれよ。あいつら、お前との手合わせを心待ちにしてるんだぞ」
「めんどくさい。疲れる」
「……まあ、無理にとは言わねぇけどよ」

 ゲルダは、クローゼットからジャケットを取り出すと、シャツのボタンを留めるマクシミリアンに近付く。

「ゲルダはお前と同じ大剣使いなんだぜ?かなりの手練って評判だ」

 マクシミリアンは顔を上げて、ゲルダを見た。ゲルダは至近距離で見る美貌に思わず息を呑む。その瞳はまるで森の中にある泉のようだった。神秘的で深いエメラルド。
 ゲルダがまともにその瞳に映るのは初めてのことだ。
 
 しかし、マクシミリアンはその目を剣呑に眇めた。

「シャンピニ?」
「はい」

 ゲルダの手首に目をやったマクシミリアンは、手からジャケットを奪い取った。

「奴隷風情が俺のものに触るな!」
「マクシミリアン!! 」

 ニコライが咎める声を、ゲルダは目で制す。

「宜しいのです。慣れておりますから。やはり私は団長の世話係には相応しくないようですね」

 数歩下がり、頭を垂れた。

「お気分を害してしまい申し訳ございません」
「謝る必要など無い。シャンピニは身分制度から解放されている。等しく我が国の民だ。非礼を詫びるのはマクシミリアンの方だ」
「染み付いた印象というものは、中々拭い去れるものではないようです。団長がお悪い訳ではありません。私は気にしておりませんので」

 マクシミリアンは唇を噛み、わななきながらゲルダを睨んでいる。ゲルダはその視線を真っ向から受け止め、背筋を伸ばした。

「しかし、誰にどう思われようと私は自分を蔑む事は致しません。私がシャンピニであることは紛れもない事実、そして、我等には差別を受ける理由などない。私はシャンピニである自分を誇りに思っております」

 袖を捲り手首を掲げて見せる。そこに刻まれているのは、この国に生息する羽のない鳥ヴードゥーを象ったケロイド。かつて押された隷属の焼印だ。
 エメラルドグリーンの瞳が僅かに揺らぐ。マクシミリアンは胸を押え、顔を逸らした。
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