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【番外編☆側近達の番物語☆フォルクス編】子ぎつねはお団子を食べて恋を知る
君が素敵な理由
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サリエとのデートはフォルクスの休日に決まった。
甘味屋へ迎えに出向いたフォルクスの前に、淡いグリーンのワンピースにレースのボレロを羽織ったサリエが現れた。
両サイドの髪は捻って後ろで纏めて、あの白い造花のピンで留めてある。
フォルクスはどこか落ち着かない心地で彼女の隣に立った。
「楽しんでおいで」
いつかと同じように店主に送り出され、フォルクスは気恥ずさを隠しつつ会釈して歩き出す。
「フォル君、今日は楽しみだった?」
傍らから嗅いだことの無い甘い香りを放つサリエが訊ねる。
いつもの醤油を焦がした香ばしい匂いではない。
決して不快なものではないが、胸がザワめく不思議な香りだ。
「はい、漸く謎を解明出来るのかと思うと嬉しく思います」
「はい、駄目~!」
サリエはフォルクスの正面に回り込んで、人差し指を立てて説教をした。
「フォル君、ここは、楽しみだった、会いたかったって言うところよ。その言葉でグンと親密さが増すしこの後も盛り上がる」
「なるほど」
サリエはスタスタと前を歩き、装飾品が売られている店を指差す。
「あの店を見て良い?」
「どうぞ」
フォルクスはサリエの後をついていくが、ふと、気付く。
なぜ、サリエはフォルクスの腕に掴まらないのだろう。
他の雄とはそうしていたのに。
その後もサリエの言われるがままに街を散策するが、サリエはいつまで経ってもフォルクスに触れない。
そのうち、サリエは再びフォルクスに向き合うと、腕を組んでため息をついた。
「フォル君、全然駄目よ」
「サリエさんにずっと従ってましたよ」
「ええそうね。だけど、とても私に興味があるようには思えないわ。何を訊いても“ 良いと思います”しか言わないじゃない」
「でも、サリエさんの選ぶものは全部サリエさんに似合っていました。とても素敵でしたよ?」
サリエはグッと言葉を呑み、僅かにたじろぐ。
「…この天然…」
サリエの呟きに、フォルクスは首を傾げた。
「天然とは?」
「無自覚に異性を引きつける言動を取る獣人の事よ!何だか私が教えるまでもない気がしてきた」
フォルクスは慌ててサリエに向かって踏み出した。
「困ります!まだ全然学んでいませんし、サリエさんの魅力の謎も解明してない」
「私は…基本的に来るもの拒まずだから、人気があるように見えてるだけよ。だからって誰とでも深い仲になる訳じゃないわよ?そこはちゃんと線引きしてるわ」
サリエはフォルクスに背中を向けて歩き出す。
鮮やかな赤毛に咲く髪留めの白い花をフォルクスはじっと見つめる。
「サリエさんは番を探しているんでしょう?」
「それだけじゃないわよ。獣人と話すのが好きなの。雄雌関係なくね。たくさんの人と親しくなりたいの」
フォルクスはサリエに走り寄り、腕を掴む。
「サリエさんは私とは親しくなりたくないんですか」
「は?」
責めるような口調になってしまう自分に戸惑いながらも、止められない。
「だって、サリエさんは私の腕を掴まないじゃないですか」
「へ?腕?」
「他の雄とは腕を組んでいました!」
サリエは唖然としてフォルクスを見上げている。
フォルクスはその視線から逃げるように顔を背けた。
「フォル君、私と腕を組みたいの?」
フォルクスはムスッとして黙り込む。
子供のような態度をとる自分が恥ずかしい。
だが、取り繕えない。
通常装着している筈のそつがない自分が発動しない。
掴んだ腕にそっと触れる感触を感じ、フォルクスはそろそろとサリエに視線を戻す。
サリエはフォルクスを覗き込むように見上げて微笑んでいた。
それを見た瞬間、鼓動が跳ね上がる。
「フォル君、可愛い」
サリエはフォルクスの手をそっと剥がすと、その腕に自らの腕を絡ませた。
「これで良い?」
フォルクスは俯いたまま小さく頷く。
頬がとてつもなく熱くなっている事に気付いていたので、顔を上げることが出来なかった。
その後のことは実は良く覚えていない。
サリエは二人で郊外の公園を散歩して、食事をしたというのだが、フォルクスが覚えているのは、サリエのつむじと時々見上げる眩しい笑顔、それと、腕から伝わるささやかな躍動だけ。
始終ふわふわと夢心地だった。
今から思い返せば、サリエに対して明らかに特別な反応をしていたのだが、当時のフォルクスは全くその可能性に思い至らなかった。
「じゃあね、フォル君、楽しかったわ。今日学んだことを活かして雌を誘ってみてね」
夕暮れの通りを、サリエが手を振って去っていく。
フォルクスはそれに手を上げて応えながら、引き止めたくなる衝動と戦っていた。
これが、サリエの魅力なのか。
フォルクスは通りの真ん中に立ちながら、サリエの良いところをひとつずつ挙げてみる。
良い匂いがする。
髪が綺麗。
どんな表情でも美しい。
心地よい声。
話題が尽きない。
優しい気配り。
····柔らかそうな身体。
「なるほど、非の打ち所がない」
フォルクスは呟く。
これで検証が終わり、胸のモヤモヤからも開放されるはずだった。
甘味屋へ迎えに出向いたフォルクスの前に、淡いグリーンのワンピースにレースのボレロを羽織ったサリエが現れた。
両サイドの髪は捻って後ろで纏めて、あの白い造花のピンで留めてある。
フォルクスはどこか落ち着かない心地で彼女の隣に立った。
「楽しんでおいで」
いつかと同じように店主に送り出され、フォルクスは気恥ずさを隠しつつ会釈して歩き出す。
「フォル君、今日は楽しみだった?」
傍らから嗅いだことの無い甘い香りを放つサリエが訊ねる。
いつもの醤油を焦がした香ばしい匂いではない。
決して不快なものではないが、胸がザワめく不思議な香りだ。
「はい、漸く謎を解明出来るのかと思うと嬉しく思います」
「はい、駄目~!」
サリエはフォルクスの正面に回り込んで、人差し指を立てて説教をした。
「フォル君、ここは、楽しみだった、会いたかったって言うところよ。その言葉でグンと親密さが増すしこの後も盛り上がる」
「なるほど」
サリエはスタスタと前を歩き、装飾品が売られている店を指差す。
「あの店を見て良い?」
「どうぞ」
フォルクスはサリエの後をついていくが、ふと、気付く。
なぜ、サリエはフォルクスの腕に掴まらないのだろう。
他の雄とはそうしていたのに。
その後もサリエの言われるがままに街を散策するが、サリエはいつまで経ってもフォルクスに触れない。
そのうち、サリエは再びフォルクスに向き合うと、腕を組んでため息をついた。
「フォル君、全然駄目よ」
「サリエさんにずっと従ってましたよ」
「ええそうね。だけど、とても私に興味があるようには思えないわ。何を訊いても“ 良いと思います”しか言わないじゃない」
「でも、サリエさんの選ぶものは全部サリエさんに似合っていました。とても素敵でしたよ?」
サリエはグッと言葉を呑み、僅かにたじろぐ。
「…この天然…」
サリエの呟きに、フォルクスは首を傾げた。
「天然とは?」
「無自覚に異性を引きつける言動を取る獣人の事よ!何だか私が教えるまでもない気がしてきた」
フォルクスは慌ててサリエに向かって踏み出した。
「困ります!まだ全然学んでいませんし、サリエさんの魅力の謎も解明してない」
「私は…基本的に来るもの拒まずだから、人気があるように見えてるだけよ。だからって誰とでも深い仲になる訳じゃないわよ?そこはちゃんと線引きしてるわ」
サリエはフォルクスに背中を向けて歩き出す。
鮮やかな赤毛に咲く髪留めの白い花をフォルクスはじっと見つめる。
「サリエさんは番を探しているんでしょう?」
「それだけじゃないわよ。獣人と話すのが好きなの。雄雌関係なくね。たくさんの人と親しくなりたいの」
フォルクスはサリエに走り寄り、腕を掴む。
「サリエさんは私とは親しくなりたくないんですか」
「は?」
責めるような口調になってしまう自分に戸惑いながらも、止められない。
「だって、サリエさんは私の腕を掴まないじゃないですか」
「へ?腕?」
「他の雄とは腕を組んでいました!」
サリエは唖然としてフォルクスを見上げている。
フォルクスはその視線から逃げるように顔を背けた。
「フォル君、私と腕を組みたいの?」
フォルクスはムスッとして黙り込む。
子供のような態度をとる自分が恥ずかしい。
だが、取り繕えない。
通常装着している筈のそつがない自分が発動しない。
掴んだ腕にそっと触れる感触を感じ、フォルクスはそろそろとサリエに視線を戻す。
サリエはフォルクスを覗き込むように見上げて微笑んでいた。
それを見た瞬間、鼓動が跳ね上がる。
「フォル君、可愛い」
サリエはフォルクスの手をそっと剥がすと、その腕に自らの腕を絡ませた。
「これで良い?」
フォルクスは俯いたまま小さく頷く。
頬がとてつもなく熱くなっている事に気付いていたので、顔を上げることが出来なかった。
その後のことは実は良く覚えていない。
サリエは二人で郊外の公園を散歩して、食事をしたというのだが、フォルクスが覚えているのは、サリエのつむじと時々見上げる眩しい笑顔、それと、腕から伝わるささやかな躍動だけ。
始終ふわふわと夢心地だった。
今から思い返せば、サリエに対して明らかに特別な反応をしていたのだが、当時のフォルクスは全くその可能性に思い至らなかった。
「じゃあね、フォル君、楽しかったわ。今日学んだことを活かして雌を誘ってみてね」
夕暮れの通りを、サリエが手を振って去っていく。
フォルクスはそれに手を上げて応えながら、引き止めたくなる衝動と戦っていた。
これが、サリエの魅力なのか。
フォルクスは通りの真ん中に立ちながら、サリエの良いところをひとつずつ挙げてみる。
良い匂いがする。
髪が綺麗。
どんな表情でも美しい。
心地よい声。
話題が尽きない。
優しい気配り。
····柔らかそうな身体。
「なるほど、非の打ち所がない」
フォルクスは呟く。
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