8 / 19
隠れ家での生活
しおりを挟む
アリアが目を覚ますと知らないベットの上にいた。
ベットの横にある窓から外を覗くと、知らない景色が広がっていた。
木々に囲まれ、この家の横には小さな畑と井戸があり生活感が感じられた。
ベッドから起きようと床に足をつけた瞬間、部屋の扉が開いた。
「気が付きましたか?」
「ウ……ィル?」
執事服ではないウィルを見てアリアは驚いた。皺もない執事服を着こなしていたが、いま目の前にいるウィルは茶色い上着に黒いズボンとラフな姿だった。
子供の時以来、自然な彼を見てアリアは何故かくすぐったくなった。
「あれ、ウィル……私のドレスは?」
ふと、自分に視線を向けると見たことない寝間着を着ていた。薄いピンク色の生地は厚くしっかりとした物だった。
そう言えばいつ着替えたのか記憶がない。むしろここに来た記憶もない。
あの時ドレスは破かれたので、着替えるしかないがここにはメイドはいなさそうだった。
「あ、色々あって着替えさせました」
「誰が??」
「…………」
無言のウィルに色々察したアリアは顔を真っ赤にさせた。
小さい頃から一緒だったが、肌を見せた事は一度もない。
着替えはメイドがやってくれていたし、最低限自分でも出来る。
「目を閉じていましたから見てません」
「嘘!絶対そんなの無理でしょ!!」
アリアはベットに潜り込むとシーツにくるまる。
チラリと視線を向けると、ウィルが困った表情で頭をかいていた。屋敷にいた頃は困った表情など見たことなかったが、目の前にいる彼は今時の青年なのだとアリアは実感した。
その姿が幼少時に重なりトクンと胸の奥が高鳴る。
子供の頃にずっと隣にいた少年の笑顔が好きだった。母と乳母が亡くなってから見ることがなくなった彼の一面が見れて嬉しい気持ちになった。
何度か屋敷を抜け出して町へ遊びに行ったりと、悪いことも良いことも二人でやっていた。
褒められる事も怒られる事もいつも一緒だった。
「アリア様……紅茶を飲みながら話をしませんか?今どうなっているのか説明します」
アリアはシーツにくるまったまま身体を起こすと、ベッドサイドに置かれた紅茶に手を伸ばす。恥ずかしくてウィルの顔は見れなかったが、紅茶の味は何時も通りで安心した。
アリアの好きな茶葉を選び適温で出される紅茶はとても優しい味がした。
紅茶を飲みながら聞くには衝撃的な話だった。
アリアを襲った男は親しい友人などに事が上手く行けばキャシーから金とキャシー自身を手に入れる事が出来ると言い残していた。
また、キャシーが手配した証拠が見つかりカーティスはウィークバルト家の全ての人間を地下牢に投獄し、ウィークバルト家は没落寸前になっている事など教えてくれた。
「ねぇ、私の事どうなってるの?」
「行方不明って事で捜索願いが出されています」
王家主催のパーティーでの事件だった為、皇太子が指揮を取り捜索隊が出ていた。その影響で王都では騒ぎになっていて警備が厳しくなっていた。
カーティスも捜索に加わり行方不明の婚約者を探す姿は痛ましいと新聞にも書かれているそうだ。
「そう言えばここって?」
「王都から離れた所です。私の遠い親戚の家を借りました」
「ねぇ……私がこのまま見つからなければ市井で暮らしても問題ないんじゃない?」
「まぁ、ウィークバルト家は没落すると思うので……」
家に未練がないと言えば嘘になる。母との大切な思い出が詰まった屋敷に行けないのは悲しい。
母や優しくしてくれた人達との優しい思いでがある場所や人に会えないのはとても寂しかった。
「アリア様これを」
ウィルが胸ポケットから取り出したのは小さな指輪とネックレスだった。
ネックレスは母の形見だった。銀で作られたロケットに蒼い石が散りばめられた物で、母が祖母、曾祖母から受け継いだネックレスだ。継母に取り上げられた大切な大切な母親の物。
小さな指輪は子供の頃一緒に屋敷を抜け出したウィルと屋台で買った物だった。
屋敷を抜け出した事はとても怒られたが、自分が市井で暮らしたいと思ったきっかけになる物だった。
活気溢れる町に優しい人達、もちろん悪い人もいるが人々の町は魅力溢れる所だった。
溢れ出る涙を手で拭うが追い付かなかった。どうしたら止まるか考えていると、優しく抱き締められた。
ウィルの温もりは心地よかったが、彼の胸元が濡れている事に気が付き離れようとするが、腕で固定されていて離れる事が出来なかった。
「気にせず俺の胸で泣いて下さい」
その声色が優しく、ポンポンと背中を撫でられアリアのは泣き続けた。
泣き疲れ腕の中で眠る少女を優しく抱き締めると、涙で濡れた目尻にキスを落とす。
小さい頃から大切にしていた少女。
これから、少しずつ関係を深くしていける事にウィルは喜びを感じていた。
もう、誰も邪魔する者はいない。あの下衆な親子も婚約者も……。
ベットの横にある窓から外を覗くと、知らない景色が広がっていた。
木々に囲まれ、この家の横には小さな畑と井戸があり生活感が感じられた。
ベッドから起きようと床に足をつけた瞬間、部屋の扉が開いた。
「気が付きましたか?」
「ウ……ィル?」
執事服ではないウィルを見てアリアは驚いた。皺もない執事服を着こなしていたが、いま目の前にいるウィルは茶色い上着に黒いズボンとラフな姿だった。
子供の時以来、自然な彼を見てアリアは何故かくすぐったくなった。
「あれ、ウィル……私のドレスは?」
ふと、自分に視線を向けると見たことない寝間着を着ていた。薄いピンク色の生地は厚くしっかりとした物だった。
そう言えばいつ着替えたのか記憶がない。むしろここに来た記憶もない。
あの時ドレスは破かれたので、着替えるしかないがここにはメイドはいなさそうだった。
「あ、色々あって着替えさせました」
「誰が??」
「…………」
無言のウィルに色々察したアリアは顔を真っ赤にさせた。
小さい頃から一緒だったが、肌を見せた事は一度もない。
着替えはメイドがやってくれていたし、最低限自分でも出来る。
「目を閉じていましたから見てません」
「嘘!絶対そんなの無理でしょ!!」
アリアはベットに潜り込むとシーツにくるまる。
チラリと視線を向けると、ウィルが困った表情で頭をかいていた。屋敷にいた頃は困った表情など見たことなかったが、目の前にいる彼は今時の青年なのだとアリアは実感した。
その姿が幼少時に重なりトクンと胸の奥が高鳴る。
子供の頃にずっと隣にいた少年の笑顔が好きだった。母と乳母が亡くなってから見ることがなくなった彼の一面が見れて嬉しい気持ちになった。
何度か屋敷を抜け出して町へ遊びに行ったりと、悪いことも良いことも二人でやっていた。
褒められる事も怒られる事もいつも一緒だった。
「アリア様……紅茶を飲みながら話をしませんか?今どうなっているのか説明します」
アリアはシーツにくるまったまま身体を起こすと、ベッドサイドに置かれた紅茶に手を伸ばす。恥ずかしくてウィルの顔は見れなかったが、紅茶の味は何時も通りで安心した。
アリアの好きな茶葉を選び適温で出される紅茶はとても優しい味がした。
紅茶を飲みながら聞くには衝撃的な話だった。
アリアを襲った男は親しい友人などに事が上手く行けばキャシーから金とキャシー自身を手に入れる事が出来ると言い残していた。
また、キャシーが手配した証拠が見つかりカーティスはウィークバルト家の全ての人間を地下牢に投獄し、ウィークバルト家は没落寸前になっている事など教えてくれた。
「ねぇ、私の事どうなってるの?」
「行方不明って事で捜索願いが出されています」
王家主催のパーティーでの事件だった為、皇太子が指揮を取り捜索隊が出ていた。その影響で王都では騒ぎになっていて警備が厳しくなっていた。
カーティスも捜索に加わり行方不明の婚約者を探す姿は痛ましいと新聞にも書かれているそうだ。
「そう言えばここって?」
「王都から離れた所です。私の遠い親戚の家を借りました」
「ねぇ……私がこのまま見つからなければ市井で暮らしても問題ないんじゃない?」
「まぁ、ウィークバルト家は没落すると思うので……」
家に未練がないと言えば嘘になる。母との大切な思い出が詰まった屋敷に行けないのは悲しい。
母や優しくしてくれた人達との優しい思いでがある場所や人に会えないのはとても寂しかった。
「アリア様これを」
ウィルが胸ポケットから取り出したのは小さな指輪とネックレスだった。
ネックレスは母の形見だった。銀で作られたロケットに蒼い石が散りばめられた物で、母が祖母、曾祖母から受け継いだネックレスだ。継母に取り上げられた大切な大切な母親の物。
小さな指輪は子供の頃一緒に屋敷を抜け出したウィルと屋台で買った物だった。
屋敷を抜け出した事はとても怒られたが、自分が市井で暮らしたいと思ったきっかけになる物だった。
活気溢れる町に優しい人達、もちろん悪い人もいるが人々の町は魅力溢れる所だった。
溢れ出る涙を手で拭うが追い付かなかった。どうしたら止まるか考えていると、優しく抱き締められた。
ウィルの温もりは心地よかったが、彼の胸元が濡れている事に気が付き離れようとするが、腕で固定されていて離れる事が出来なかった。
「気にせず俺の胸で泣いて下さい」
その声色が優しく、ポンポンと背中を撫でられアリアのは泣き続けた。
泣き疲れ腕の中で眠る少女を優しく抱き締めると、涙で濡れた目尻にキスを落とす。
小さい頃から大切にしていた少女。
これから、少しずつ関係を深くしていける事にウィルは喜びを感じていた。
もう、誰も邪魔する者はいない。あの下衆な親子も婚約者も……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
125
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる