伯爵令嬢は平民になりたい

ゆうま

文字の大きさ
9 / 19

初恋の君

しおりを挟む
二人の生活は1ヶ月が経過していた。
小さな一軒家は小さな町から少し離れた森の中にあった。
部屋数は三個あり、お互いプライベートな部屋は確保されていたので不便など感じなかった。
家の近くには小川がったり、果物がなった木もあり、不自由もしていない。
生活に必要な物はウィルが買いに行ったりしていた。
彼の話では都や村でもウィークバルト家の騒動から落ち着き人々の噂も少なくなってきていたと言っていた。
ウィルはとても良くしてくれた。慣れない生活で迷惑をかけまくっていたが、嫌な顔せず色々な事を教えてくれた。環境の変化で体調を崩した時も優しく看病してくれた。
ウィルの手は温かく心地よい。彼の側にいられたら良いなぁと思っていたが口には出せなかった。
優しい彼はきっと自分を押し殺しても着いてきてくれるだろう。
しかし、没落した自分には何もない。
アリアはため息を吐くと畑から野菜を取り井戸の水を使い綺麗に洗う。
水滴がついた野菜はとても綺麗で美味しそうだった。

「ウィル何処行ったのかな?」

ウィルは時々いなくなる。狩りをしている事もあるが町や村に行き情報を仕入れてくる事もある。
大抵は行き先を言うが言わない時もあった。
何度か行き先を聞いた事があったが話を反らす彼を感じて話題に出すのは止めた。
いつか話してくれると言ってくれたので、アリアは彼を信じる事にした。

「アリア」

名前を呼ばれ振り替えると、1ヶ月ぶりに見る元婚約者がいた。

「カーティスさ……ま?」

「やっと見つけた……私の大切な婚約者」

いつの間にか目の前まで来たカーティスに力一杯抱き締められた。
婚約中にもこんなに抱き締められた事はなかったので驚いたが、一瞬脳裏にウィルの姿が浮かんだ。
アリアは離れようとするが、彼の腕の力が強く離れられない。

「カーティス様くるしっ……」

「あぁ、ごめん嬉しくて」

彼の腕からようやく解放され、アリアは一歩彼から離れた。
カーティスと久し振りに会うが何か違和感を感じたからだ。
微笑んでいる彼がとても怖く感じた。彼が纏う空気は冷たく
近付けば凍えてしまいそうな雰囲気だった。

「あの、何故カーティス様がここに?」

「何故って婚約者を迎えに来たんだよ」

「私はもう婚約者ではありませんよね?」

「いいや婚約者だよアリア」

「私の家は無くなりますし、カーティス様は義妹が好きだったのでは?」

キャシーの名を聞いた瞬間、カーティスは表情を曇らせた。

「私は幼い頃からアリア一筋だよ」

カーティスは手に持っていた小瓶の蓋を取り口に含むと、アリアにキスをした。
唇が重なり液体が口移しで流し込まれる。本能的に飲んではいけないと思ったが、唇が離れずアリアはとうとう呑み込んでしまった。

「あぁ……アリア……」

唇が解放されると、カーティスの顔が目の前にあった。
トロンとした彼の表情が、あの夜の記憶を呼び起こした。
庭で襲ってきた男の姿と重なる。アリアは声を上げ逃げようとするが、簡単に捕まってしまった。

「この薬はね媚薬ともう一つの効果がある薬なんだよ」

クスクスと笑いながらアリアの両手首を木に押し付ける。
手首をきつく掴まれ背中にはゴツゴツした木に押し付けられアリアは逃げる事が出来なかった。

「なん……の?」

恐る恐る聞くとカーティスは嬉しそうにアリアのスカートを捲り上げ、下腹部を愛撫する。

「妊娠しやすくする薬だよ……」

その言葉を聞いた瞬間、これから行われる行為に血の気が引いた。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

数年振りに再会した幼馴染のお兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなった日

プリオネ
恋愛
田舎町から上京したこの春、5歳年上の近所の幼馴染「さわ兄」と再会した新社会人の伊織。同じく昔一緒に遊んだ友達の家に遊びに行くため東京から千葉へ2人で移動する事になるが、その道中で今まで意識した事の無かったさわ兄の言動に初めて違和感を覚える。そしてその夜、ハプニングが起きて………。 春にぴったりの、さらっと読める短編ラブストーリー。※Rシーンは無いに等しいです※スマホがまだない時代設定です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...