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コルムの決意 2
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母の死が俺の転機だった。
俺は初めて自分の足でしっかりと立ち、霧が晴れるように自分の心をしっかりと受け止めたのだ。
ベイラは俺の一番大事な人。かけがえのない唯一無二の人。
幼い俺は『恋』という言葉など知らなかった。
学園に慣れてきた辺りからベイラが放課後、時々呼び出されているのには気付いてはいた。
背が急に伸び、かといって男くさくなるわけではなく、しなやかに伸びる若木のような瑞々しさを感じさせるベイラは、爵位はもとより、温厚で成績も良く、見目麗しいと女子の間で人気が高まっていた。
もちろん面白くはなかったが、ベイラはモテて当たり前だと思っていたし、なによりベイラはそういうことに無頓着で、嬉しがっている様子も、俺以上に心を許している人間がいる様子もなかったから安心していた。
それが、全くの勘違いだったとベイラから聞かされ耳を疑った。
ベイラは告白をされていたのではなく、俺との仲を女子(時に複数人)に非難されていたというのだ。
さらにベイラは俺との関係を断とうとまで思い詰めていたのだ。なんてことだ。不覚。
言い訳をさせてもらえば、俺は学園に入るまで公の場に出る機会がほとんどなく、周りの自分に向けられる評価というものがよくわからなかったし、2年で騎士科に進み、日々実技重視の慣れない授業についていくのに必死だった。だからベイラの小さな変化に気付けなかったのかもしれない。
平民も2学年で多く騎士科に編入してくることもあり、今まで意識していなかった貴族と平民の軋轢に戸惑い、さらに少しばかり剣が上手いこともあって先輩からの手合わせの申し出(絶対断れないやつだ)を受け、毎日が慌ただしかった。
俺はベイラと同じく一人息子で、自動的に跡取りとして育てられた。幼少期から教師を付けられたのは領地経営の分野だった。ベイラとの交流も嫡男であればこそのものだった。
だが、成長につれ俺が興味を持ったのは剣であり、戦略を立てたりすることだった。──ああ、ちなみに学園に入ってからずっと俺とベイラが同室なのはもちろん偶然じゃない。貧乏子爵の息子にコネなど無いに等しいが、入学前に少し動いた結果だ。
そしていつからか、武官の道でベイラのそばにいられる方法を模索し始めた。ベイラに想いが届かなくてもベイラのそばにいることが俺の幸せなのだ。
──それなのに、ベイラにそんな嫌な思いをさせていたなんて本末転倒もいいところだ。
俺は自分のことばかりだった。側にいる為にはどうしたらいいか、ベイラに必要とされるにはどうしたらいいのか、少しずつ育っていく猛々しい恋情を抑え込むにはどうしたらいいのか、そんなことばかりぐるぐると考えて。
だが、半裸のベイラを見て、抑えきれずその肌に触れてしまった。ずっと秘めてきた想いを告白してしまった。
ベイラは当たり前だがとても狼狽えていた。だけど、やっぱりベイラはさすがで。
少しするといつものベイラに戻って笑っていた。
そんなベイラを見て俺は決めた。というかもう後戻りはできない。───しない。
180°方向転換だ。俺はベイラへの熱い想いを誰にも隠さないことに決めた。
そしてベイラを守る。二度と俺が理由でベイラが傷つくことはさせない。もしそんなことが起こるなら、そんな奴らにはこの手で天誅を下す。
手始めに寮生が集まっているところでわざとベイラに想いの丈を告白した。
ベイラの焦る表情を堪能しつつ、そっと視線だけで周りを窺うと、ほとんどが俺たちを娯楽として楽しんでいる中に、取り繕った表情を見せるのが3人ほどいた。
素早く記憶しその場を離れる。
頬をピンク色に染める可愛いベイラをこれ以上見せたくはない。
しかし、一つの寮内に3人の不穏分子がいるのは多くないか?
翌日からは学園でもベイラ大好きアピールを続け、その結果何が起こったか。
───俺は放課後、多くの女子と握手を交わすようになった。握手会だ。
俺はようやく自分が本当にモテていることを知ったのだ。キラキラした好奇の視線が多すぎて、ヤバい視線への直感が働かない。まずはこのうるさい視線をどうにかするのが先だった。今まで気付けなかったのは、騎士科は女子がほぼいないからか。
多くの女子は見ているだけで充分、手を握ってもらえるなら一生の思い出に親の決めた婚約者のもとへ嫁ぐとけなげに微笑み、また少数派だが、歴史部の腐女子先輩を筆頭にした俺とベイラの仲を応援するグループ、そこまで思い入れはないけどしてくれるなら握手してもらおうという不思議な女子たちとも握手をした。
毎日十数人と握手をし、1週間ほどで握手会は落ち着いた。
そして俺はなんとか、俺とベイラに向ける不穏な視線を感じ取ることができるようになった。
嫌な視線の先には実は女子ではなく、男子であることが多かった。
俺は1年からのベイラとの共通の友人、アルヴィンを巻き込み、嫌な視線を向ける奴らを一人、また一人と潰していった。
アルヴィンは人懐っこい表情が子犬のような印象を与える小柄な男だが、学園中の人間の交友関係や成績、趣味特技なんかを何故か把握している変態だ。ベイラが親しくしなければ俺からは絶対に近付くことはなかっただろう。
だがこんな時は何より頼れる奴だ。タダ働きなどしない奴だがベイラの為ならと無償で協力してくれた。
ベイラ、もしくは俺に好意や興味を持つ、あるいは持ち過ぎる騎士科の連中には模擬剣片手に直接話し(脅し)た。他にも嫡男である俺の騎士科入りを面白く思っていない連中とも、ついでに手合わせをした。
文系の学科の生徒たちにはそんな手は使えないのでアルヴィンからの情報を元に合いそうな相手を見繕い、裏から二人が出会うよう画策したりした。こんな時、アルヴィンはとても役に立つ。
そんなアルヴィンが学園一のイカれた奴を教えてくれた。
騎士科3年のフランツ=グロスだ。
俺は初めて自分の足でしっかりと立ち、霧が晴れるように自分の心をしっかりと受け止めたのだ。
ベイラは俺の一番大事な人。かけがえのない唯一無二の人。
幼い俺は『恋』という言葉など知らなかった。
学園に慣れてきた辺りからベイラが放課後、時々呼び出されているのには気付いてはいた。
背が急に伸び、かといって男くさくなるわけではなく、しなやかに伸びる若木のような瑞々しさを感じさせるベイラは、爵位はもとより、温厚で成績も良く、見目麗しいと女子の間で人気が高まっていた。
もちろん面白くはなかったが、ベイラはモテて当たり前だと思っていたし、なによりベイラはそういうことに無頓着で、嬉しがっている様子も、俺以上に心を許している人間がいる様子もなかったから安心していた。
それが、全くの勘違いだったとベイラから聞かされ耳を疑った。
ベイラは告白をされていたのではなく、俺との仲を女子(時に複数人)に非難されていたというのだ。
さらにベイラは俺との関係を断とうとまで思い詰めていたのだ。なんてことだ。不覚。
言い訳をさせてもらえば、俺は学園に入るまで公の場に出る機会がほとんどなく、周りの自分に向けられる評価というものがよくわからなかったし、2年で騎士科に進み、日々実技重視の慣れない授業についていくのに必死だった。だからベイラの小さな変化に気付けなかったのかもしれない。
平民も2学年で多く騎士科に編入してくることもあり、今まで意識していなかった貴族と平民の軋轢に戸惑い、さらに少しばかり剣が上手いこともあって先輩からの手合わせの申し出(絶対断れないやつだ)を受け、毎日が慌ただしかった。
俺はベイラと同じく一人息子で、自動的に跡取りとして育てられた。幼少期から教師を付けられたのは領地経営の分野だった。ベイラとの交流も嫡男であればこそのものだった。
だが、成長につれ俺が興味を持ったのは剣であり、戦略を立てたりすることだった。──ああ、ちなみに学園に入ってからずっと俺とベイラが同室なのはもちろん偶然じゃない。貧乏子爵の息子にコネなど無いに等しいが、入学前に少し動いた結果だ。
そしていつからか、武官の道でベイラのそばにいられる方法を模索し始めた。ベイラに想いが届かなくてもベイラのそばにいることが俺の幸せなのだ。
──それなのに、ベイラにそんな嫌な思いをさせていたなんて本末転倒もいいところだ。
俺は自分のことばかりだった。側にいる為にはどうしたらいいか、ベイラに必要とされるにはどうしたらいいのか、少しずつ育っていく猛々しい恋情を抑え込むにはどうしたらいいのか、そんなことばかりぐるぐると考えて。
だが、半裸のベイラを見て、抑えきれずその肌に触れてしまった。ずっと秘めてきた想いを告白してしまった。
ベイラは当たり前だがとても狼狽えていた。だけど、やっぱりベイラはさすがで。
少しするといつものベイラに戻って笑っていた。
そんなベイラを見て俺は決めた。というかもう後戻りはできない。───しない。
180°方向転換だ。俺はベイラへの熱い想いを誰にも隠さないことに決めた。
そしてベイラを守る。二度と俺が理由でベイラが傷つくことはさせない。もしそんなことが起こるなら、そんな奴らにはこの手で天誅を下す。
手始めに寮生が集まっているところでわざとベイラに想いの丈を告白した。
ベイラの焦る表情を堪能しつつ、そっと視線だけで周りを窺うと、ほとんどが俺たちを娯楽として楽しんでいる中に、取り繕った表情を見せるのが3人ほどいた。
素早く記憶しその場を離れる。
頬をピンク色に染める可愛いベイラをこれ以上見せたくはない。
しかし、一つの寮内に3人の不穏分子がいるのは多くないか?
翌日からは学園でもベイラ大好きアピールを続け、その結果何が起こったか。
───俺は放課後、多くの女子と握手を交わすようになった。握手会だ。
俺はようやく自分が本当にモテていることを知ったのだ。キラキラした好奇の視線が多すぎて、ヤバい視線への直感が働かない。まずはこのうるさい視線をどうにかするのが先だった。今まで気付けなかったのは、騎士科は女子がほぼいないからか。
多くの女子は見ているだけで充分、手を握ってもらえるなら一生の思い出に親の決めた婚約者のもとへ嫁ぐとけなげに微笑み、また少数派だが、歴史部の腐女子先輩を筆頭にした俺とベイラの仲を応援するグループ、そこまで思い入れはないけどしてくれるなら握手してもらおうという不思議な女子たちとも握手をした。
毎日十数人と握手をし、1週間ほどで握手会は落ち着いた。
そして俺はなんとか、俺とベイラに向ける不穏な視線を感じ取ることができるようになった。
嫌な視線の先には実は女子ではなく、男子であることが多かった。
俺は1年からのベイラとの共通の友人、アルヴィンを巻き込み、嫌な視線を向ける奴らを一人、また一人と潰していった。
アルヴィンは人懐っこい表情が子犬のような印象を与える小柄な男だが、学園中の人間の交友関係や成績、趣味特技なんかを何故か把握している変態だ。ベイラが親しくしなければ俺からは絶対に近付くことはなかっただろう。
だがこんな時は何より頼れる奴だ。タダ働きなどしない奴だがベイラの為ならと無償で協力してくれた。
ベイラ、もしくは俺に好意や興味を持つ、あるいは持ち過ぎる騎士科の連中には模擬剣片手に直接話し(脅し)た。他にも嫡男である俺の騎士科入りを面白く思っていない連中とも、ついでに手合わせをした。
文系の学科の生徒たちにはそんな手は使えないのでアルヴィンからの情報を元に合いそうな相手を見繕い、裏から二人が出会うよう画策したりした。こんな時、アルヴィンはとても役に立つ。
そんなアルヴィンが学園一のイカれた奴を教えてくれた。
騎士科3年のフランツ=グロスだ。
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