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──春。
王立ゲイルズ学園の裏庭の木々は花を落とした後の明るい新緑の葉が繁り、さわさわと気持ち良さそうに風に揺れている。
のんびりと木の根元で寝転がりたいところだが、そうも言ってられない。
「わかるでしょう?自分がコルム君に釣り合っていないことぐらい」
「なんでミミとコルム君が楽しそうに話しているところに割って入ってくるの?」
「コルム君はあなたのことこれっぽっちも眼中にないんだからいい加減身分をかさにコルム君を縛り付けるのはやめなさいよ!」
放課後、裏庭に呼び出されるのは何も告白に限ったことじゃない。つるし上げにもこの場は使われるのだ。
オレは4人の女の子たちと対峙していた。ピンク色の綿菓子みたいなふわふわの髪をした気弱そうな子がコルムを好きらしい。
つまり、他の3人の女の子たちはこの子のためにオレをつるし上げているということだ。
男にはわからん心理だ。
オレがコルムと一緒にいるのが嫌なら群れずに自分でそう言えばいいのに。
残念ながらこんなふうに呼び出されるのはこれが初めてじゃない。それどころか月一ペースでこの裏庭に通っている。
告白されたことは未だにない。
あまりにもこんなことに慣れすぎてしまって、対応するのも億劫になってきた。
オレはベイラ=マクローリン。夏が来れば17歳。この学園の2年生だ。
話に出てくるコルムとは、コルム=キャンベル。やっぱり同じ2年生。そして、オレと同じく男だ。──いや、まぁ、同性だからと偏見を持っているわけではないのだが、オレもコルムも貴族の長男で、順当に行けば跡を取るわけだから子孫繁栄の為にも相手は女性がいいと思うんだ。
なのに、周りはそうは思わないらしい。
あの二人は「仲がよすぎる」、「できている」と思われている。───らしい。
オレたちは領地が隣り合っている関係で子供の頃からよく遊んでいた。まぁ、幼馴染ってやつだ。歳が一緒ということもありニコイチみたいに育った。
特にあいつ、コルムは生来の優しさからか、オレの言う事をなんでもきく子分みたいなヤツだったからなおさら。
確かに、友達よりも近い関係だと思う。
──ああ、昔(学園に入る前)は良かったなあ。
コルムと連れだって歩いていても誰も何も思わなかったし、言わなかった。
全ては年頃になったコルムがメキメキと背を伸ばしたのが悪い。あっという間に女子にきゃーきゃー言われるようになった。
少しの間ぼんやりと回想に浸っていたのが悪かったのだろう。
「なんとか言いなさいよ!」
ヒートアップした子に左肩を小突かれた。
「「「「「あっ」」」」」
──足場が木の根ででこぼこしていたのが悪かった。
バランスを崩したオレは見事に尻からすっ転んだ。
女の子たちは流石に顔色を悪くした。まぁ、暴力までは考えていなかったということだろう。一応貴族のご令嬢方だ。
うちの家格より低い家の子なんかはがくがく震えている。
「わ、わかったでしょ、もうコルム君にベタベタしないでよね!」
そんな捨て台詞と共に駆けて行ってしまった。急いで転ばないといいけど。
いやそれよりオレの尻だ。
くそう、痛い。
ズボンについた土を払うふりで尻を撫でながらなんとか立ち上がった。情けなさに泣ける。
「・・・もう、嫌だ。もう、やってられるか」
低く本音が漏れた。
今までオレが何度となく女子に目の敵にされていたことをあいつにぶちまけて、お前とは縁を切る!と今日こそいうのだ。
「ホント、痛い」
痛いのは、ほぼ筋肉なんて感じられないぽにょぽにょの尻肉が悪いのかもしれないが、これもあれもみんなコルムが悪いのだ。
怒りながら寮の部屋に戻った。オレとコルムは二人部屋の同じ部屋だ。
だが、コルムはまだ帰っていない。2年生で騎士科に進んだコルムは放課後は騎士団へ顔を出し、自主鍛錬をしているのだ。
ちなみにオレは経営学科。昔はオレと一緒がいいと言って、文系を目指していたのに。
まあ、あのでかい体格を生かしたいい選択だろう。
部屋の窓を開け、向かって左の自分のベッドに座る。いい風が吹いてくる。
──そういえば、あいつは昔から体の割に手足が大きかったな。犬の子じゃあるまいし、この子は逞しく育つぞ、と父様が嬉しそうに言っていた。
ごめんよ、父様。実の息子の方は今も昔もちんまりしたままで。
それはそうと、オレは今度こそ本気で怒ったのだ。
ごろりとベッドに横たわりながらまだ痛む尻を撫でる。
それと同時に、すっ転んだ情けない姿を4人の女子に見られたという羞恥心に襲われる。
くそう、もう本当に潮時だ。
女子からの呼び出しだけじゃない。
最近、どうも一緒にいて居心地が悪いのだ。何が悪いのか、よくわからないが、そうなのだ。
あいつの笑顔もなんか取り繕っているように見えるし、なんかじろじろ見られているような気もするし。
「あ、そうだ」
コルムが戻って来る前に湿布を貼ってしまおう。場所が場所なだけにコルムの前で貼るのは嫌だ。
湿布ならコルムがたくさん常備している。
コルムの使用している棚から湿布を一枚失敬してベッドでうつ伏せに寝転びながらぺろんとズボンとパンツを一緒に下ろした。
王立ゲイルズ学園の裏庭の木々は花を落とした後の明るい新緑の葉が繁り、さわさわと気持ち良さそうに風に揺れている。
のんびりと木の根元で寝転がりたいところだが、そうも言ってられない。
「わかるでしょう?自分がコルム君に釣り合っていないことぐらい」
「なんでミミとコルム君が楽しそうに話しているところに割って入ってくるの?」
「コルム君はあなたのことこれっぽっちも眼中にないんだからいい加減身分をかさにコルム君を縛り付けるのはやめなさいよ!」
放課後、裏庭に呼び出されるのは何も告白に限ったことじゃない。つるし上げにもこの場は使われるのだ。
オレは4人の女の子たちと対峙していた。ピンク色の綿菓子みたいなふわふわの髪をした気弱そうな子がコルムを好きらしい。
つまり、他の3人の女の子たちはこの子のためにオレをつるし上げているということだ。
男にはわからん心理だ。
オレがコルムと一緒にいるのが嫌なら群れずに自分でそう言えばいいのに。
残念ながらこんなふうに呼び出されるのはこれが初めてじゃない。それどころか月一ペースでこの裏庭に通っている。
告白されたことは未だにない。
あまりにもこんなことに慣れすぎてしまって、対応するのも億劫になってきた。
オレはベイラ=マクローリン。夏が来れば17歳。この学園の2年生だ。
話に出てくるコルムとは、コルム=キャンベル。やっぱり同じ2年生。そして、オレと同じく男だ。──いや、まぁ、同性だからと偏見を持っているわけではないのだが、オレもコルムも貴族の長男で、順当に行けば跡を取るわけだから子孫繁栄の為にも相手は女性がいいと思うんだ。
なのに、周りはそうは思わないらしい。
あの二人は「仲がよすぎる」、「できている」と思われている。───らしい。
オレたちは領地が隣り合っている関係で子供の頃からよく遊んでいた。まぁ、幼馴染ってやつだ。歳が一緒ということもありニコイチみたいに育った。
特にあいつ、コルムは生来の優しさからか、オレの言う事をなんでもきく子分みたいなヤツだったからなおさら。
確かに、友達よりも近い関係だと思う。
──ああ、昔(学園に入る前)は良かったなあ。
コルムと連れだって歩いていても誰も何も思わなかったし、言わなかった。
全ては年頃になったコルムがメキメキと背を伸ばしたのが悪い。あっという間に女子にきゃーきゃー言われるようになった。
少しの間ぼんやりと回想に浸っていたのが悪かったのだろう。
「なんとか言いなさいよ!」
ヒートアップした子に左肩を小突かれた。
「「「「「あっ」」」」」
──足場が木の根ででこぼこしていたのが悪かった。
バランスを崩したオレは見事に尻からすっ転んだ。
女の子たちは流石に顔色を悪くした。まぁ、暴力までは考えていなかったということだろう。一応貴族のご令嬢方だ。
うちの家格より低い家の子なんかはがくがく震えている。
「わ、わかったでしょ、もうコルム君にベタベタしないでよね!」
そんな捨て台詞と共に駆けて行ってしまった。急いで転ばないといいけど。
いやそれよりオレの尻だ。
くそう、痛い。
ズボンについた土を払うふりで尻を撫でながらなんとか立ち上がった。情けなさに泣ける。
「・・・もう、嫌だ。もう、やってられるか」
低く本音が漏れた。
今までオレが何度となく女子に目の敵にされていたことをあいつにぶちまけて、お前とは縁を切る!と今日こそいうのだ。
「ホント、痛い」
痛いのは、ほぼ筋肉なんて感じられないぽにょぽにょの尻肉が悪いのかもしれないが、これもあれもみんなコルムが悪いのだ。
怒りながら寮の部屋に戻った。オレとコルムは二人部屋の同じ部屋だ。
だが、コルムはまだ帰っていない。2年生で騎士科に進んだコルムは放課後は騎士団へ顔を出し、自主鍛錬をしているのだ。
ちなみにオレは経営学科。昔はオレと一緒がいいと言って、文系を目指していたのに。
まあ、あのでかい体格を生かしたいい選択だろう。
部屋の窓を開け、向かって左の自分のベッドに座る。いい風が吹いてくる。
──そういえば、あいつは昔から体の割に手足が大きかったな。犬の子じゃあるまいし、この子は逞しく育つぞ、と父様が嬉しそうに言っていた。
ごめんよ、父様。実の息子の方は今も昔もちんまりしたままで。
それはそうと、オレは今度こそ本気で怒ったのだ。
ごろりとベッドに横たわりながらまだ痛む尻を撫でる。
それと同時に、すっ転んだ情けない姿を4人の女子に見られたという羞恥心に襲われる。
くそう、もう本当に潮時だ。
女子からの呼び出しだけじゃない。
最近、どうも一緒にいて居心地が悪いのだ。何が悪いのか、よくわからないが、そうなのだ。
あいつの笑顔もなんか取り繕っているように見えるし、なんかじろじろ見られているような気もするし。
「あ、そうだ」
コルムが戻って来る前に湿布を貼ってしまおう。場所が場所なだけにコルムの前で貼るのは嫌だ。
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