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「・・・・・くっ・・!」
背中が燃えるように痛い。
叫び出しそうになるのを懸命にこらえる。
早く帰って治癒してもらわなければ、自分はこのまま消滅してしまうのではないかと恐怖がよぎる。
だがもう、一歩も歩けないし、そもそも飛べない。自分には飛ぶための羽根がもうない。
飛べなければ天界の門をくぐることができない。
転移も、あれは羽根に宿る光の力を使うものだから無理だな。
今夜はガブリエルと飲もうと約束をしていた。
いつまでも来ない私を人界まで探しに来るだろうか。
羽根は、人の子にあげた。いや、交換したというべきか。
背負った覚えはないが、今背にあるのは人の子が枝と布、鳥の羽で作った玩具のような、双葉の形に似た小さな羽根。
羽根には裂いた布で編まれた背負い紐が二つ括られていて、とても良くできている。
とても小さな子が作ったとは思えない、いい出来なのだ。
神の尊い力が働いたのか、その羽根は、ピタリと肩甲骨に根を生やしているかのように、途切れがちな私の呼吸に合わせ、上下しているようだった。
『・・・天使様の羽根なら空を飛んで、遠くまで、あっという間に着くのでしょう?母さんに会いたいのです・・・母さんは船に乗って向こうの国に行ってしまったそうです・・・何度も抜け出して・・会いに行こうとしたけど、すぐに連れ戻されてしまうんです。・・・空を飛べたらと羽根を作ったけど、飛べな、カッタ。・・・クダサイ。・・・羽根。カエッコ、トリカエッコ。母さんに会えたらカエシマス。・・・アイたい。アイタイ。大きな羽根で。カアサン。・・・アイニ、イク』
小さなその子は今にも崩れそうな物置小屋に押し込められ命の灯が消える寸前だった。
会いたいと願う母はすでに亡くなっていると私にはわかっていた。
もう救えないほど弱った子供の、魂だけでも救いたくて頷いた。
『ああ、いいとも。私の羽根を使うがいい』
跪き、半身を抱き寄せながら頷くと、子供はほっとしたような表情を見せ、こと切れた。
その瞬間、背中から羽根を凄まじい力で引き千切られるような痛みを感じ、私は絶叫を上げた。
これも神の意志なのか・・・。
私はそのまま気を失った。
───思い出した。
遠い昔に自分の身に起こったことを。
しかし、気を失った、のではなく、一度死んだのではないかな?その後の助かった記憶はなく、次は唐突にこの体の記憶から始まる。
生まれ変わったということなのだろうか?
うーん、エンジェルにしては育ち過ぎだな。
エンジェルは生まれてから光に帰るまで、ずっと赤子のままだ。
でも僕は、もう少し大きい。人の子の3歳位の体型なのだ。
多分、もう一度子供からやり直してまた大天使になるのだろう。何千年かかるか分からないが、今は魔界との戦争もなく平和だから時間がかかってもいいだろう。
かつての僕の席は未だ空席のままのようだし。
しかし、生まれ変わったのなら羽根も生え変わってて良さそうなものだが。
ふるふると左右の羽根をこすり合わせるように震わせてみる。
継ぎ接ぎだらけの布に貼られた鳥の羽根。茶色、黄緑、黄色、白。色とりどりだ。
昔の自分は、体の倍ほどもある神々しいほどに立派な、純白のたっぷりとした羽根だったが。
今の羽根はそれと比べるのもおかしいくらいみすぼらしい。
だけど僕はこの羽根が大好きだ。うん、この羽根がいい。
神様は生まれ変わらせる時、この羽根を特別にプレゼントしてくれたのかも。
あの子は僕の羽根で母親の元へたどり着いたかな?
まだかもしれないな。会えたら返すと約束してくれたもの。
叶うことのない約束だとわかっていてもそう思わずにいられない。
神様、あの子が黄泉の国で母親に会うことができますように。どうぞお願い致します。
手を組み、しばし祈りを捧げた。
さて、思い出せたのは良しとして、次は僕のことをなんとかしないと。
ここは、魔界?
多分、ベッドに寝かせられている。
そして、あの悪魔に抱っこされながら寝ている状況に目がうつろになる。
「ガブリエル~・・・」
さすがの大天使ガブリエルも魔界までは迎えに来れない。天界のものは魔界に入ると消滅してしまうのだ。逆もまた然り。
──僕が消滅しなかったのは謎だ。
天使ちゃんの僕は、残念ながらこの羽根では満足に飛べないので、一人で帰ることは出来ない。飛べても魔界からの帰り方はわからないが。
お務めの時はいつもガブリエルに送迎してもらっていたのだ。
ありがとう、ガブリエル。過保護だね、ガブリエル。
むむ、どうも昔のガブリエルとの関係も思い出したせいか敬意を表せない。
「目が覚めたか?」
僕がもぞもぞしていたからか、隣から声をかけられた。正確には隣というよりもうほぼ一体化した耳元に。
「あ、悪魔は殲滅する・・・」
「転移酔いになって、そのまま寝てしまったのだ。腹は減ってないか?もうすぐ夕食の時間だ」
「悪魔からの施しは受けない。僕をさっきの場所に帰し」
ぐーーー。
僕のお腹は正直だ。
「くっくっくっく」
枕に顔を埋め笑う悪魔。
「ごはん食べたら帰る」
つーんとそっぽを向いたまま宣言した。
熱くなった頬は見られていないはず!
背中が燃えるように痛い。
叫び出しそうになるのを懸命にこらえる。
早く帰って治癒してもらわなければ、自分はこのまま消滅してしまうのではないかと恐怖がよぎる。
だがもう、一歩も歩けないし、そもそも飛べない。自分には飛ぶための羽根がもうない。
飛べなければ天界の門をくぐることができない。
転移も、あれは羽根に宿る光の力を使うものだから無理だな。
今夜はガブリエルと飲もうと約束をしていた。
いつまでも来ない私を人界まで探しに来るだろうか。
羽根は、人の子にあげた。いや、交換したというべきか。
背負った覚えはないが、今背にあるのは人の子が枝と布、鳥の羽で作った玩具のような、双葉の形に似た小さな羽根。
羽根には裂いた布で編まれた背負い紐が二つ括られていて、とても良くできている。
とても小さな子が作ったとは思えない、いい出来なのだ。
神の尊い力が働いたのか、その羽根は、ピタリと肩甲骨に根を生やしているかのように、途切れがちな私の呼吸に合わせ、上下しているようだった。
『・・・天使様の羽根なら空を飛んで、遠くまで、あっという間に着くのでしょう?母さんに会いたいのです・・・母さんは船に乗って向こうの国に行ってしまったそうです・・・何度も抜け出して・・会いに行こうとしたけど、すぐに連れ戻されてしまうんです。・・・空を飛べたらと羽根を作ったけど、飛べな、カッタ。・・・クダサイ。・・・羽根。カエッコ、トリカエッコ。母さんに会えたらカエシマス。・・・アイたい。アイタイ。大きな羽根で。カアサン。・・・アイニ、イク』
小さなその子は今にも崩れそうな物置小屋に押し込められ命の灯が消える寸前だった。
会いたいと願う母はすでに亡くなっていると私にはわかっていた。
もう救えないほど弱った子供の、魂だけでも救いたくて頷いた。
『ああ、いいとも。私の羽根を使うがいい』
跪き、半身を抱き寄せながら頷くと、子供はほっとしたような表情を見せ、こと切れた。
その瞬間、背中から羽根を凄まじい力で引き千切られるような痛みを感じ、私は絶叫を上げた。
これも神の意志なのか・・・。
私はそのまま気を失った。
───思い出した。
遠い昔に自分の身に起こったことを。
しかし、気を失った、のではなく、一度死んだのではないかな?その後の助かった記憶はなく、次は唐突にこの体の記憶から始まる。
生まれ変わったということなのだろうか?
うーん、エンジェルにしては育ち過ぎだな。
エンジェルは生まれてから光に帰るまで、ずっと赤子のままだ。
でも僕は、もう少し大きい。人の子の3歳位の体型なのだ。
多分、もう一度子供からやり直してまた大天使になるのだろう。何千年かかるか分からないが、今は魔界との戦争もなく平和だから時間がかかってもいいだろう。
かつての僕の席は未だ空席のままのようだし。
しかし、生まれ変わったのなら羽根も生え変わってて良さそうなものだが。
ふるふると左右の羽根をこすり合わせるように震わせてみる。
継ぎ接ぎだらけの布に貼られた鳥の羽根。茶色、黄緑、黄色、白。色とりどりだ。
昔の自分は、体の倍ほどもある神々しいほどに立派な、純白のたっぷりとした羽根だったが。
今の羽根はそれと比べるのもおかしいくらいみすぼらしい。
だけど僕はこの羽根が大好きだ。うん、この羽根がいい。
神様は生まれ変わらせる時、この羽根を特別にプレゼントしてくれたのかも。
あの子は僕の羽根で母親の元へたどり着いたかな?
まだかもしれないな。会えたら返すと約束してくれたもの。
叶うことのない約束だとわかっていてもそう思わずにいられない。
神様、あの子が黄泉の国で母親に会うことができますように。どうぞお願い致します。
手を組み、しばし祈りを捧げた。
さて、思い出せたのは良しとして、次は僕のことをなんとかしないと。
ここは、魔界?
多分、ベッドに寝かせられている。
そして、あの悪魔に抱っこされながら寝ている状況に目がうつろになる。
「ガブリエル~・・・」
さすがの大天使ガブリエルも魔界までは迎えに来れない。天界のものは魔界に入ると消滅してしまうのだ。逆もまた然り。
──僕が消滅しなかったのは謎だ。
天使ちゃんの僕は、残念ながらこの羽根では満足に飛べないので、一人で帰ることは出来ない。飛べても魔界からの帰り方はわからないが。
お務めの時はいつもガブリエルに送迎してもらっていたのだ。
ありがとう、ガブリエル。過保護だね、ガブリエル。
むむ、どうも昔のガブリエルとの関係も思い出したせいか敬意を表せない。
「目が覚めたか?」
僕がもぞもぞしていたからか、隣から声をかけられた。正確には隣というよりもうほぼ一体化した耳元に。
「あ、悪魔は殲滅する・・・」
「転移酔いになって、そのまま寝てしまったのだ。腹は減ってないか?もうすぐ夕食の時間だ」
「悪魔からの施しは受けない。僕をさっきの場所に帰し」
ぐーーー。
僕のお腹は正直だ。
「くっくっくっく」
枕に顔を埋め笑う悪魔。
「ごはん食べたら帰る」
つーんとそっぽを向いたまま宣言した。
熱くなった頬は見られていないはず!
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