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第一章 終わる世界
船医 モニカ
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暗闇の中、小さな明かりが見える。
明かりは少しずつ大きくなり、やがて視界いっぱいまで広がった。
「何?」
明るい室内…ベッドと医療器具…ここは医務室?
どこ? ここ。
「あ、気が付いた!」
目の前にアップになった、可愛い女の子の顔。
えっと…あ、ナオミだ。
「副長! ジェニファーが意識を回復しました!」
ナオミは、天井に向かって叫んだ。
「あら、良かった」
天井のモニターに映ったのは、副長のアニーダ。
背景は「歌姫」の艦橋。
目が見えない彼女は、今日も微笑んでいる。
「心配してたのよ。なかなか意識が回復しないから」
「あの…そんなに長い時間…気を失っていたんですか?」
「そうね。まる一日ってとこかしら」
何だそれは。
そんなに長い間寝てたなんて、どうかしてる。
これが本当の戦闘だったら、私はもうこの世にいない。
「ジェニファー、無理しないで。気分が良くなるまで寝てたら良いよ」
ベッドの横にいたのは、白衣を着た40代くらいの女性。
短いドレッドヘアと濃い小麦色の肌、かなりボリュームのある体。口にはタバコみたいな棒を咥えてる。
誰だろう? 白衣の胸元がゆるくて、ハスッパな感じがする。
「ありがとうございます…えっと」
「『歌姫』の船医、モニカ。よろしく」
「よろしくお願いします。あ、まず艦長に謝らなきゃ。模擬戦と言っても戦闘中に気を失うなんて失態、取り返しがつかない…」
「きゃはははは!」
空中に浮かんだナオミが、お腹を抱えて大声で笑った。
アニーダ副長も、モニカ医師も笑ってる。
「え、な、何?」
副長が笑いをこらえながら言った。
「艦長に謝るのは無理ね。だってレクシーは今、艦内の独房に入ってるから」
「えええっ!」
ど、どういうこと!?
「『舞姫』の花乙女、アレハンドラがね、模擬戦に負けたことに腹を立てて、大きな積乱雲を作ったの。で、その積乱雲からあなたに特大の雷を落としたの」
「かみ…なり?」
ぼんやり覚えてる。
あの時身体を貫いた、衝撃と熱を。
「あなたは咄嗟に白蓮を集めてガードしたから雷の直撃は免れたけど、気を失ったの」
「ええっ…」
たぶんあの時、仮想空間に逃げていれば何事もなく済んだと思う。
でも、もし失敗していれば気を失った上に仮想空間に取り残されていた。
そうなったら、花乙女以外誰も私を見つけられなくなる。
だから私の咄嗟の決断は間違っていなかった。たぶん。
「それで艦長が激怒したの。模擬戦の後であなたを攻撃したのはあまりにもアンフェアだって」
モニカ医師が引き継いだ。
「艦長はすぐにあんたを回収するように言って、私は救急無人機ですぐに歌姫を出たの。そしたらね…」
「まさかの」
天井に映った副長が、くすくす笑った。
「そう、まさかの」
ナオミが、空中で笑いながら踊った。
「『歌姫』が『舞姫』に『跳躍砲』を突きつけてたの」
「えええっ!! 味方なのに!?」
モニカ医師が引き継いだ。
「そう。味方なのに。あれは自分の目を疑うね。『舞姫』の至近距離まで近づいて、すんごい音を立ててチャージまで始めちゃってさ…ただの脅しじゃないってわかったよ」
「跳躍砲」は、艦隊の中で唯一、「歌姫」と姉妹艦の「舞姫」にだけ装備された強力な兵器。
船底に格納された大きな主砲で、発射の時だけ外に出てくる。
一番の特徴は、射線の延長上に文字通り跳躍して攻撃できる、というところ。空中船のシールド「ラ・フィールド」を飛び越えて相手にダメージを与えることができる。
だから、どんな空中船の、どんな強力なシールドでも防御できない。文字通り最強の兵器。
それを僚艦に突きつけた、レクシー艦長。
「艦長、怒ってたね、ありゃ」
モニカがタバコみたいな棒を口から離して、肩をすくめてみせた。
「艦内にいたらわからなかったでしょうけど、チャージ中の跳躍砲はとんでもない音を立てていたよ。しかもそれをすぐ目の前の『舞姫』に突きつけてさ」
モニカ医師は、私を見てにやっと笑った。
「認められてるんだね、あんた。この船の仲間として」
明かりは少しずつ大きくなり、やがて視界いっぱいまで広がった。
「何?」
明るい室内…ベッドと医療器具…ここは医務室?
どこ? ここ。
「あ、気が付いた!」
目の前にアップになった、可愛い女の子の顔。
えっと…あ、ナオミだ。
「副長! ジェニファーが意識を回復しました!」
ナオミは、天井に向かって叫んだ。
「あら、良かった」
天井のモニターに映ったのは、副長のアニーダ。
背景は「歌姫」の艦橋。
目が見えない彼女は、今日も微笑んでいる。
「心配してたのよ。なかなか意識が回復しないから」
「あの…そんなに長い時間…気を失っていたんですか?」
「そうね。まる一日ってとこかしら」
何だそれは。
そんなに長い間寝てたなんて、どうかしてる。
これが本当の戦闘だったら、私はもうこの世にいない。
「ジェニファー、無理しないで。気分が良くなるまで寝てたら良いよ」
ベッドの横にいたのは、白衣を着た40代くらいの女性。
短いドレッドヘアと濃い小麦色の肌、かなりボリュームのある体。口にはタバコみたいな棒を咥えてる。
誰だろう? 白衣の胸元がゆるくて、ハスッパな感じがする。
「ありがとうございます…えっと」
「『歌姫』の船医、モニカ。よろしく」
「よろしくお願いします。あ、まず艦長に謝らなきゃ。模擬戦と言っても戦闘中に気を失うなんて失態、取り返しがつかない…」
「きゃはははは!」
空中に浮かんだナオミが、お腹を抱えて大声で笑った。
アニーダ副長も、モニカ医師も笑ってる。
「え、な、何?」
副長が笑いをこらえながら言った。
「艦長に謝るのは無理ね。だってレクシーは今、艦内の独房に入ってるから」
「えええっ!」
ど、どういうこと!?
「『舞姫』の花乙女、アレハンドラがね、模擬戦に負けたことに腹を立てて、大きな積乱雲を作ったの。で、その積乱雲からあなたに特大の雷を落としたの」
「かみ…なり?」
ぼんやり覚えてる。
あの時身体を貫いた、衝撃と熱を。
「あなたは咄嗟に白蓮を集めてガードしたから雷の直撃は免れたけど、気を失ったの」
「ええっ…」
たぶんあの時、仮想空間に逃げていれば何事もなく済んだと思う。
でも、もし失敗していれば気を失った上に仮想空間に取り残されていた。
そうなったら、花乙女以外誰も私を見つけられなくなる。
だから私の咄嗟の決断は間違っていなかった。たぶん。
「それで艦長が激怒したの。模擬戦の後であなたを攻撃したのはあまりにもアンフェアだって」
モニカ医師が引き継いだ。
「艦長はすぐにあんたを回収するように言って、私は救急無人機ですぐに歌姫を出たの。そしたらね…」
「まさかの」
天井に映った副長が、くすくす笑った。
「そう、まさかの」
ナオミが、空中で笑いながら踊った。
「『歌姫』が『舞姫』に『跳躍砲』を突きつけてたの」
「えええっ!! 味方なのに!?」
モニカ医師が引き継いだ。
「そう。味方なのに。あれは自分の目を疑うね。『舞姫』の至近距離まで近づいて、すんごい音を立ててチャージまで始めちゃってさ…ただの脅しじゃないってわかったよ」
「跳躍砲」は、艦隊の中で唯一、「歌姫」と姉妹艦の「舞姫」にだけ装備された強力な兵器。
船底に格納された大きな主砲で、発射の時だけ外に出てくる。
一番の特徴は、射線の延長上に文字通り跳躍して攻撃できる、というところ。空中船のシールド「ラ・フィールド」を飛び越えて相手にダメージを与えることができる。
だから、どんな空中船の、どんな強力なシールドでも防御できない。文字通り最強の兵器。
それを僚艦に突きつけた、レクシー艦長。
「艦長、怒ってたね、ありゃ」
モニカがタバコみたいな棒を口から離して、肩をすくめてみせた。
「艦内にいたらわからなかったでしょうけど、チャージ中の跳躍砲はとんでもない音を立てていたよ。しかもそれをすぐ目の前の『舞姫』に突きつけてさ」
モニカ医師は、私を見てにやっと笑った。
「認められてるんだね、あんた。この船の仲間として」
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