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第一章 終わる世界
激怒
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エンリケ王子の宇宙船が去ってやっと地上近くに降りられた空中船「薔薇」。
劉艦長が上陸用舟艇で私たちを迎えに来てくれた。
「迎えが遅くなってごめんなさい。ただの見学だったのに、とんでもない目に遭ったわね」
劉艦長の優しい笑顔。
私は、無言で涙をぽろぽろとこぼした。
泥の中から引き上げたフアニータ、ガブリエラ、アン先生、ナターシャ。他に私が助けることができた一般人は5人だけ。
まただ。
シカゴの惨劇と同じ。
また、沢山の命を救えなかった。
「薔薇」の艦内。私達はずっと無言だった。
フアニータは時々私の方を怖い顔で睨んでいたし、ガブリエラは何か言いたいことがあるのに言えないような表情でこちらを見ていた。
2人とも劉艦長に遠慮して、必死に自分を抑えているみたいだった。
「薔薇」はオークランド上空で跳躍のためのチャージを開始した。
薔薇の艦橋。モニターに映されたオークランドは真夏の太陽の下、完全に泥の海に沈んでいた。
泥の海にはあちこちに生存者や行方不明者を探す船が浮かんでいた。
あの街には人々の生活があった。
ケダモノに破壊されるまで、人々は一所懸命生きていた。
それなのに何の罪もない人々が、一瞬で日常生活を奪われた。
ジュネーヴの「学校」の校長室に帰ってきた。
私達はシガル校長に今回の「見学」の報告をした。
校長は悲しげに目頭を押さえながら私達の話を聞いた。
「ガブリエラ、フアニータ、ジェニファー。まず、3人に謝らなくてはなりません」
校長の声。
悲しみに溢れた口調。
「今回のオークランドの見学の件は私達、いえ、私の完全な見込み違いでした。全て、私の責任です」
校長は大きなため息をついた。
「何より、ケダモノの戦力を見誤っていました。まさか敵が二体ではなく三体もいて、しかもそのうちの一体が第三王子だったとは・・・」
フアニータが校長を遮った。
「シガル校長、その情報は現地で初めて判明したものです。そもそもケダモノは一つの都市に一体だけ降りて来るのが普通です」
「その『普通』という考え、思い込みが今回の事態を招きました」
校長は私達を見て、言った。
「さ、報告はもういいから早くシャワーを浴びて、ベッドに入りなさい」
「お言葉ですが、納得いきません!」
フアニータの金色の長い髪の毛が、ざわざわと逆立っていた。
「このオンナは大量虐殺をしたあのケダモノ王子と闘って、しかも勝てる勝負を中断して帰って来たのです!」
怖い。
フアニータの顔は、まだ10才の女の子とは思えないほど怒りに溢れていた。そして、憎悪に燃え上がる瞳で私を睨んだ。
「私達学校の生徒たちは皆、多かれ少なかれケダモノに家族や恋人や、大事な人達を殺された。あなたもそうでしょ? ジェニファー」
フアニータの体が、うっすら金色に光ってる。
「なのにあの時、あなたは第三王子を殺さなかった。なぜ? あなたにはそのチャンスがあったでしょ」
それは、誤解。
私は口でエンリケ王子に勝ったことにしただけで、全然勝てなかった。でもそれ以前に・・・
「だって、殺したくないもの。いくら相手がケダモノだって、私は誰も殺したくないの」
「なに綺麗事言ってるの!? ケダモノに今まで何万人殺されたか分かってないの!?」
「分かってる・・・けど、やっぱり私、誰も殺したくない。たとえ相手がケダモノでも」
「そうやって野放しにしたケダモノがまた他の人間を殺したら、あなたは犠牲者にどうやって謝るつもり!? ごめんなさいで済むと思ってるの!? 何なら、私があんたを殺してやろうか」
ジェニファーは、私の顔に噛みつきそうな表情で叫んだ。
「ちょっと待って。私もジェニファーに言いたいことがある」
ガブリエラが強引に私達の間に割って入った。
「あのケダモノは自分が第三王子って言ったのね? じゃあ何? 第一王子や第二王子もいるの? あと第三王子と考えが違う父親って何? 王子の父親だから王様ってこと?
あと、ケンタウルって何? 私たち花乙女の先祖なの?
そもそもケダモノはどこの星から来てるの? 何のために地球に来てるの? 何で地球人を殺すの?
何であなたは疑問を抱かないの? 何で第三王子に質問をぶつけないの? バカなの?」
「私だって疑問に思わないわけじゃないけど・・・」
「けど、何?」
「そういうことを考える心の余裕はなかったの。生き残ることに精一杯で・・・」
「バカ!」
私は、普段ガブリエラを尊敬はしてる。だって自分からリーダー役を買ってるから。
けど、バカって言うことはないでしょ。
「ジェニファー、一つ聞いていい? 大事なことよ」
シガル校長が2人を制し、私をじっと見つめながら尋ねた。
「あなたはケダモノと、どう付き合いたいの? どう向き合いたいの?」
劉艦長が上陸用舟艇で私たちを迎えに来てくれた。
「迎えが遅くなってごめんなさい。ただの見学だったのに、とんでもない目に遭ったわね」
劉艦長の優しい笑顔。
私は、無言で涙をぽろぽろとこぼした。
泥の中から引き上げたフアニータ、ガブリエラ、アン先生、ナターシャ。他に私が助けることができた一般人は5人だけ。
まただ。
シカゴの惨劇と同じ。
また、沢山の命を救えなかった。
「薔薇」の艦内。私達はずっと無言だった。
フアニータは時々私の方を怖い顔で睨んでいたし、ガブリエラは何か言いたいことがあるのに言えないような表情でこちらを見ていた。
2人とも劉艦長に遠慮して、必死に自分を抑えているみたいだった。
「薔薇」はオークランド上空で跳躍のためのチャージを開始した。
薔薇の艦橋。モニターに映されたオークランドは真夏の太陽の下、完全に泥の海に沈んでいた。
泥の海にはあちこちに生存者や行方不明者を探す船が浮かんでいた。
あの街には人々の生活があった。
ケダモノに破壊されるまで、人々は一所懸命生きていた。
それなのに何の罪もない人々が、一瞬で日常生活を奪われた。
ジュネーヴの「学校」の校長室に帰ってきた。
私達はシガル校長に今回の「見学」の報告をした。
校長は悲しげに目頭を押さえながら私達の話を聞いた。
「ガブリエラ、フアニータ、ジェニファー。まず、3人に謝らなくてはなりません」
校長の声。
悲しみに溢れた口調。
「今回のオークランドの見学の件は私達、いえ、私の完全な見込み違いでした。全て、私の責任です」
校長は大きなため息をついた。
「何より、ケダモノの戦力を見誤っていました。まさか敵が二体ではなく三体もいて、しかもそのうちの一体が第三王子だったとは・・・」
フアニータが校長を遮った。
「シガル校長、その情報は現地で初めて判明したものです。そもそもケダモノは一つの都市に一体だけ降りて来るのが普通です」
「その『普通』という考え、思い込みが今回の事態を招きました」
校長は私達を見て、言った。
「さ、報告はもういいから早くシャワーを浴びて、ベッドに入りなさい」
「お言葉ですが、納得いきません!」
フアニータの金色の長い髪の毛が、ざわざわと逆立っていた。
「このオンナは大量虐殺をしたあのケダモノ王子と闘って、しかも勝てる勝負を中断して帰って来たのです!」
怖い。
フアニータの顔は、まだ10才の女の子とは思えないほど怒りに溢れていた。そして、憎悪に燃え上がる瞳で私を睨んだ。
「私達学校の生徒たちは皆、多かれ少なかれケダモノに家族や恋人や、大事な人達を殺された。あなたもそうでしょ? ジェニファー」
フアニータの体が、うっすら金色に光ってる。
「なのにあの時、あなたは第三王子を殺さなかった。なぜ? あなたにはそのチャンスがあったでしょ」
それは、誤解。
私は口でエンリケ王子に勝ったことにしただけで、全然勝てなかった。でもそれ以前に・・・
「だって、殺したくないもの。いくら相手がケダモノだって、私は誰も殺したくないの」
「なに綺麗事言ってるの!? ケダモノに今まで何万人殺されたか分かってないの!?」
「分かってる・・・けど、やっぱり私、誰も殺したくない。たとえ相手がケダモノでも」
「そうやって野放しにしたケダモノがまた他の人間を殺したら、あなたは犠牲者にどうやって謝るつもり!? ごめんなさいで済むと思ってるの!? 何なら、私があんたを殺してやろうか」
ジェニファーは、私の顔に噛みつきそうな表情で叫んだ。
「ちょっと待って。私もジェニファーに言いたいことがある」
ガブリエラが強引に私達の間に割って入った。
「あのケダモノは自分が第三王子って言ったのね? じゃあ何? 第一王子や第二王子もいるの? あと第三王子と考えが違う父親って何? 王子の父親だから王様ってこと?
あと、ケンタウルって何? 私たち花乙女の先祖なの?
そもそもケダモノはどこの星から来てるの? 何のために地球に来てるの? 何で地球人を殺すの?
何であなたは疑問を抱かないの? 何で第三王子に質問をぶつけないの? バカなの?」
「私だって疑問に思わないわけじゃないけど・・・」
「けど、何?」
「そういうことを考える心の余裕はなかったの。生き残ることに精一杯で・・・」
「バカ!」
私は、普段ガブリエラを尊敬はしてる。だって自分からリーダー役を買ってるから。
けど、バカって言うことはないでしょ。
「ジェニファー、一つ聞いていい? 大事なことよ」
シガル校長が2人を制し、私をじっと見つめながら尋ねた。
「あなたはケダモノと、どう付き合いたいの? どう向き合いたいの?」
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