13 / 22
13 誓い
しおりを挟む
『はい。瑛人様、いかがされましたか?』
「和也。奴は捕まえたか?」
『ええ。帰宅したところを首尾よく』
薄暗い寝室に、密やかな声が響く。
「いままで香月にしてきた所業を思い知らせてから、例のヤミ金に引き渡せ」
『もちろんです。それにしても、ずいぶんうまく逃げていましたね。カードも銀行も使用していなかったので、探し当てるのに苦労しましたが、まさかあんなことをしてお金を稼いでいたとは』
「自分の子供を使って金稼ぎとは、本当に反吐が出る。朝から晩まで稼がせて、本人には少しの金を渡すだけ。香月はかなり痩せてしまっているよ、落ち着いたら病院に連れて行こうと思ってる。手配を頼む」
瑛人は窓の近くで立ちながら電話で話していたが、ベッドで寝ている香月のそばに近寄りそっと頬をなでる。
頬にもほとんど肉がついてなく、体も痩せ細っている。碌なものを食べていなかったのだろう。いや、食べれていなかったのだ。稼いだ金の大半を持っていかれ、手元に残ったわずかな金でなんとか生きながらえてきたのだ。
報告を聞いた時、瑛人は耳を疑った。香月の置かれている状況に言葉が出なかった。
自分から逃げられないように限界ぎりぎりまで搾取して、金を稼ぐ道具として子供を使う父親。何よりも大切な香月がそんな目に遭っていたなんて、父親への怒りとともに、どうしてもっと早く探し出せなかったのかと自分自身への怒りも湧いた。
小学生の時になんの前触れもなくいなくなった香月。当時子供だった瑛人にはまだ力もなく、何もできなかった。
父に頼んで探してもらったが、会社の跡取りとして高校からは海外で勉強しなくてはならなくなり、瑛人自身が探すことができなくなった。
しばらく経っても、香月に関する情報は少ししか分からなかった。父親がギャンブル好きで借金が膨れ上がったため、あの日に夜逃げをしたということのみ。借金先のサラ金も行方が分からずに困っていたようだったので、裏で協力しながら捜索を進めてもらった。
早く捜索に加わりたくて、大学も飛び級で卒業し、瑛人がやっと日本に帰国して探しているときだった。香月と同じ特徴の子の話が飛び込んできたのだ。
売りをしており、一晩2万でどんなプレイも行えるとの話だった。まさか、そんなはずはないと思いながら、その話を辿っていくと、とある小さな工場の責任者に突き当たる。
なんとか接触し酔わせながら話を聞くと、「あの子が15の時から俺が仕込んでやった。今でも、とても喜んでヤラせてくれる」と偉そうに自慢しながら語ってきて、写真を見せてきたのだ。違ってくれと祈ったが、そこに映っていたのは香月だった――
香月を見つけるまでは我慢しろと自分に言い聞かせ、その男を殴りつけるのはなんとか抑えた。
瑛人は会社の後継者としての仕事が忙しくなってきたため、その後の詳しい調査については部下に任せるしかなかった。それでも、居ても立っても居られずに、少しでも時間ができると、話を聞いた男が責任者をやっている工場の近くを通るようにしていた。そんな時、香月と出会ったのだ。
後ろから呼ばれているような気がして振り返った先に、香月がいたのだが、すぐに走り出して逃げてしまったのだ。
瑛人は動揺を隠せなかった。自分を見かけたら駆け寄ってきて、嬉しがってくれると浅ましくも思っていたのだ。迎えが遅かった瑛人に怒っているのか、この距離で香月の匂いが感じられなかったということは別のαと番になってしまったのか、と思案に暮れた。もしかしたら、あの男が語っていたように、喜んで他人に体を差し出しており、気まずくなって逃げてしまったのかと一瞬でも疑ってしまった。
――そんなことあるはずがないのに
後日、詳しい調査報告を聞いて衝撃を受けた。瑛人が想像していたよりも状況は酷く、香月は肉体的にも精神的にも支配され抑圧されている中で必死に生きていたのだと知ったからだ。
一刻も早く保護しなくてはならないと、急いで迎えに行き、そのまま強引に車に乗せてマンションまで連れてきた。
香月は見てるこっちが悲しくなるくらいに怯えていた。車で移動している最中はずっと下を向いて口も開かずに、ただただ震えていた。マンションに着いて瑛人と話をして、ようやく顔を上げ、泣いてくれたのだ。
――もう二度と手放さないし、必ず幸せにするから
穏やかに眠る香月の寝顔に瑛人は心の中で誓った。
「和也。奴は捕まえたか?」
『ええ。帰宅したところを首尾よく』
薄暗い寝室に、密やかな声が響く。
「いままで香月にしてきた所業を思い知らせてから、例のヤミ金に引き渡せ」
『もちろんです。それにしても、ずいぶんうまく逃げていましたね。カードも銀行も使用していなかったので、探し当てるのに苦労しましたが、まさかあんなことをしてお金を稼いでいたとは』
「自分の子供を使って金稼ぎとは、本当に反吐が出る。朝から晩まで稼がせて、本人には少しの金を渡すだけ。香月はかなり痩せてしまっているよ、落ち着いたら病院に連れて行こうと思ってる。手配を頼む」
瑛人は窓の近くで立ちながら電話で話していたが、ベッドで寝ている香月のそばに近寄りそっと頬をなでる。
頬にもほとんど肉がついてなく、体も痩せ細っている。碌なものを食べていなかったのだろう。いや、食べれていなかったのだ。稼いだ金の大半を持っていかれ、手元に残ったわずかな金でなんとか生きながらえてきたのだ。
報告を聞いた時、瑛人は耳を疑った。香月の置かれている状況に言葉が出なかった。
自分から逃げられないように限界ぎりぎりまで搾取して、金を稼ぐ道具として子供を使う父親。何よりも大切な香月がそんな目に遭っていたなんて、父親への怒りとともに、どうしてもっと早く探し出せなかったのかと自分自身への怒りも湧いた。
小学生の時になんの前触れもなくいなくなった香月。当時子供だった瑛人にはまだ力もなく、何もできなかった。
父に頼んで探してもらったが、会社の跡取りとして高校からは海外で勉強しなくてはならなくなり、瑛人自身が探すことができなくなった。
しばらく経っても、香月に関する情報は少ししか分からなかった。父親がギャンブル好きで借金が膨れ上がったため、あの日に夜逃げをしたということのみ。借金先のサラ金も行方が分からずに困っていたようだったので、裏で協力しながら捜索を進めてもらった。
早く捜索に加わりたくて、大学も飛び級で卒業し、瑛人がやっと日本に帰国して探しているときだった。香月と同じ特徴の子の話が飛び込んできたのだ。
売りをしており、一晩2万でどんなプレイも行えるとの話だった。まさか、そんなはずはないと思いながら、その話を辿っていくと、とある小さな工場の責任者に突き当たる。
なんとか接触し酔わせながら話を聞くと、「あの子が15の時から俺が仕込んでやった。今でも、とても喜んでヤラせてくれる」と偉そうに自慢しながら語ってきて、写真を見せてきたのだ。違ってくれと祈ったが、そこに映っていたのは香月だった――
香月を見つけるまでは我慢しろと自分に言い聞かせ、その男を殴りつけるのはなんとか抑えた。
瑛人は会社の後継者としての仕事が忙しくなってきたため、その後の詳しい調査については部下に任せるしかなかった。それでも、居ても立っても居られずに、少しでも時間ができると、話を聞いた男が責任者をやっている工場の近くを通るようにしていた。そんな時、香月と出会ったのだ。
後ろから呼ばれているような気がして振り返った先に、香月がいたのだが、すぐに走り出して逃げてしまったのだ。
瑛人は動揺を隠せなかった。自分を見かけたら駆け寄ってきて、嬉しがってくれると浅ましくも思っていたのだ。迎えが遅かった瑛人に怒っているのか、この距離で香月の匂いが感じられなかったということは別のαと番になってしまったのか、と思案に暮れた。もしかしたら、あの男が語っていたように、喜んで他人に体を差し出しており、気まずくなって逃げてしまったのかと一瞬でも疑ってしまった。
――そんなことあるはずがないのに
後日、詳しい調査報告を聞いて衝撃を受けた。瑛人が想像していたよりも状況は酷く、香月は肉体的にも精神的にも支配され抑圧されている中で必死に生きていたのだと知ったからだ。
一刻も早く保護しなくてはならないと、急いで迎えに行き、そのまま強引に車に乗せてマンションまで連れてきた。
香月は見てるこっちが悲しくなるくらいに怯えていた。車で移動している最中はずっと下を向いて口も開かずに、ただただ震えていた。マンションに着いて瑛人と話をして、ようやく顔を上げ、泣いてくれたのだ。
――もう二度と手放さないし、必ず幸せにするから
穏やかに眠る香月の寝顔に瑛人は心の中で誓った。
297
あなたにおすすめの小説
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
花いちもんめ
月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。
ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。
大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。
涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。
「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
文章がおかしな所があったので修正しました。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄をするから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
長年の恋に終止符を
mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。
そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。
男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。
それがあの人のモットーというやつでしょう。
どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。
これで終らせることが出来る、そう思っていました。
妹に奪われた婚約者は、外れの王子でした。婚約破棄された僕は真実の愛を見つけます
こたま
BL
侯爵家に産まれたオメガのミシェルは、王子と婚約していた。しかしオメガとわかった妹が、お兄様ずるいわと言って婚約者を奪ってしまう。家族にないがしろにされたことで悲嘆するミシェルであったが、辺境に匿われていたアルファの落胤王子と出会い真実の愛を育む。ハッピーエンドオメガバースです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる