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13 誓い
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『はい。瑛人様、いかがされましたか?』
「和也。奴は捕まえたか?」
『ええ。帰宅したところを首尾よく』
薄暗い寝室に、密やかな声が響く。
「いままで香月にしてきた所業を思い知らせてから、例のヤミ金に引き渡せ」
『もちろんです。それにしても、ずいぶんうまく逃げていましたね。カードも銀行も使用していなかったので、探し当てるのに苦労しましたが、まさかあんなことをしてお金を稼いでいたとは』
「自分の子供を使って金稼ぎとは、本当に反吐が出る。朝から晩まで稼がせて、本人には少しの金を渡すだけ。香月はかなり痩せてしまっているよ、落ち着いたら病院に連れて行こうと思ってる。手配を頼む」
瑛人は窓の近くで立ちながら電話で話していたが、ベッドで寝ている香月のそばに近寄りそっと頬をなでる。
頬にもほとんど肉がついてなく、体も痩せ細っている。碌なものを食べていなかったのだろう。いや、食べれていなかったのだ。稼いだ金の大半を持っていかれ、手元に残ったわずかな金でなんとか生きながらえてきたのだ。
報告を聞いた時、瑛人は耳を疑った。香月の置かれている状況に言葉が出なかった。
自分から逃げられないように限界ぎりぎりまで搾取して、金を稼ぐ道具として子供を使う父親。何よりも大切な香月がそんな目に遭っていたなんて、父親への怒りとともに、どうしてもっと早く探し出せなかったのかと自分自身への怒りも湧いた。
小学生の時になんの前触れもなくいなくなった香月。当時子供だった瑛人にはまだ力もなく、何もできなかった。
父に頼んで探してもらったが、会社の跡取りとして高校からは海外で勉強しなくてはならなくなり、瑛人自身が探すことができなくなった。
しばらく経っても、香月に関する情報は少ししか分からなかった。父親がギャンブル好きで借金が膨れ上がったため、あの日に夜逃げをしたということのみ。借金先のサラ金も行方が分からずに困っていたようだったので、裏で協力しながら捜索を進めてもらった。
早く捜索に加わりたくて、大学も飛び級で卒業し、瑛人がやっと日本に帰国して探しているときだった。香月と同じ特徴の子の話が飛び込んできたのだ。
売りをしており、一晩2万でどんなプレイも行えるとの話だった。まさか、そんなはずはないと思いながら、その話を辿っていくと、とある小さな工場の責任者に突き当たる。
なんとか接触し酔わせながら話を聞くと、「あの子が15の時から俺が仕込んでやった。今でも、とても喜んでヤラせてくれる」と偉そうに自慢しながら語ってきて、写真を見せてきたのだ。違ってくれと祈ったが、そこに映っていたのは香月だった――
香月を見つけるまでは我慢しろと自分に言い聞かせ、その男を殴りつけるのはなんとか抑えた。
瑛人は会社の後継者としての仕事が忙しくなってきたため、その後の詳しい調査については部下に任せるしかなかった。それでも、居ても立っても居られずに、少しでも時間ができると、話を聞いた男が責任者をやっている工場の近くを通るようにしていた。そんな時、香月と出会ったのだ。
後ろから呼ばれているような気がして振り返った先に、香月がいたのだが、すぐに走り出して逃げてしまったのだ。
瑛人は動揺を隠せなかった。自分を見かけたら駆け寄ってきて、嬉しがってくれると浅ましくも思っていたのだ。迎えが遅かった瑛人に怒っているのか、この距離で香月の匂いが感じられなかったということは別のαと番になってしまったのか、と思案に暮れた。もしかしたら、あの男が語っていたように、喜んで他人に体を差し出しており、気まずくなって逃げてしまったのかと一瞬でも疑ってしまった。
――そんなことあるはずがないのに
後日、詳しい調査報告を聞いて衝撃を受けた。瑛人が想像していたよりも状況は酷く、香月は肉体的にも精神的にも支配され抑圧されている中で必死に生きていたのだと知ったからだ。
一刻も早く保護しなくてはならないと、急いで迎えに行き、そのまま強引に車に乗せてマンションまで連れてきた。
香月は見てるこっちが悲しくなるくらいに怯えていた。車で移動している最中はずっと下を向いて口も開かずに、ただただ震えていた。マンションに着いて瑛人と話をして、ようやく顔を上げ、泣いてくれたのだ。
――もう二度と手放さないし、必ず幸せにするから
穏やかに眠る香月の寝顔に瑛人は心の中で誓った。
「和也。奴は捕まえたか?」
『ええ。帰宅したところを首尾よく』
薄暗い寝室に、密やかな声が響く。
「いままで香月にしてきた所業を思い知らせてから、例のヤミ金に引き渡せ」
『もちろんです。それにしても、ずいぶんうまく逃げていましたね。カードも銀行も使用していなかったので、探し当てるのに苦労しましたが、まさかあんなことをしてお金を稼いでいたとは』
「自分の子供を使って金稼ぎとは、本当に反吐が出る。朝から晩まで稼がせて、本人には少しの金を渡すだけ。香月はかなり痩せてしまっているよ、落ち着いたら病院に連れて行こうと思ってる。手配を頼む」
瑛人は窓の近くで立ちながら電話で話していたが、ベッドで寝ている香月のそばに近寄りそっと頬をなでる。
頬にもほとんど肉がついてなく、体も痩せ細っている。碌なものを食べていなかったのだろう。いや、食べれていなかったのだ。稼いだ金の大半を持っていかれ、手元に残ったわずかな金でなんとか生きながらえてきたのだ。
報告を聞いた時、瑛人は耳を疑った。香月の置かれている状況に言葉が出なかった。
自分から逃げられないように限界ぎりぎりまで搾取して、金を稼ぐ道具として子供を使う父親。何よりも大切な香月がそんな目に遭っていたなんて、父親への怒りとともに、どうしてもっと早く探し出せなかったのかと自分自身への怒りも湧いた。
小学生の時になんの前触れもなくいなくなった香月。当時子供だった瑛人にはまだ力もなく、何もできなかった。
父に頼んで探してもらったが、会社の跡取りとして高校からは海外で勉強しなくてはならなくなり、瑛人自身が探すことができなくなった。
しばらく経っても、香月に関する情報は少ししか分からなかった。父親がギャンブル好きで借金が膨れ上がったため、あの日に夜逃げをしたということのみ。借金先のサラ金も行方が分からずに困っていたようだったので、裏で協力しながら捜索を進めてもらった。
早く捜索に加わりたくて、大学も飛び級で卒業し、瑛人がやっと日本に帰国して探しているときだった。香月と同じ特徴の子の話が飛び込んできたのだ。
売りをしており、一晩2万でどんなプレイも行えるとの話だった。まさか、そんなはずはないと思いながら、その話を辿っていくと、とある小さな工場の責任者に突き当たる。
なんとか接触し酔わせながら話を聞くと、「あの子が15の時から俺が仕込んでやった。今でも、とても喜んでヤラせてくれる」と偉そうに自慢しながら語ってきて、写真を見せてきたのだ。違ってくれと祈ったが、そこに映っていたのは香月だった――
香月を見つけるまでは我慢しろと自分に言い聞かせ、その男を殴りつけるのはなんとか抑えた。
瑛人は会社の後継者としての仕事が忙しくなってきたため、その後の詳しい調査については部下に任せるしかなかった。それでも、居ても立っても居られずに、少しでも時間ができると、話を聞いた男が責任者をやっている工場の近くを通るようにしていた。そんな時、香月と出会ったのだ。
後ろから呼ばれているような気がして振り返った先に、香月がいたのだが、すぐに走り出して逃げてしまったのだ。
瑛人は動揺を隠せなかった。自分を見かけたら駆け寄ってきて、嬉しがってくれると浅ましくも思っていたのだ。迎えが遅かった瑛人に怒っているのか、この距離で香月の匂いが感じられなかったということは別のαと番になってしまったのか、と思案に暮れた。もしかしたら、あの男が語っていたように、喜んで他人に体を差し出しており、気まずくなって逃げてしまったのかと一瞬でも疑ってしまった。
――そんなことあるはずがないのに
後日、詳しい調査報告を聞いて衝撃を受けた。瑛人が想像していたよりも状況は酷く、香月は肉体的にも精神的にも支配され抑圧されている中で必死に生きていたのだと知ったからだ。
一刻も早く保護しなくてはならないと、急いで迎えに行き、そのまま強引に車に乗せてマンションまで連れてきた。
香月は見てるこっちが悲しくなるくらいに怯えていた。車で移動している最中はずっと下を向いて口も開かずに、ただただ震えていた。マンションに着いて瑛人と話をして、ようやく顔を上げ、泣いてくれたのだ。
――もう二度と手放さないし、必ず幸せにするから
穏やかに眠る香月の寝顔に瑛人は心の中で誓った。
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