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14 穏やかな朝
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とても穏やかな目覚めだった。
瞼に光を感じ、目を開いた香月は驚いた。目の前に彼の顔が広がっていたのだ。
張りのある黒髪に、今は閉じられているがキリッとした切れ長の目。
こんなに穏やかな朝は初めてだと幸せに浸りながら、香月は昨日のことを思い返した。急に彼が迎えに来てくれて、マンションまで来て、話をして、たくさん泣いて。今さらながら、昨日泣きすぎた自分が恥ずかしくなる。
怒涛の一日を思い返していると、彼の目がゆっくりと開いた。優しい彼の瞳に香月が映る。
「おはよう、香月」
「……おはようございます」
笑顔で起き上がった彼に、香月も挨拶を返す。
「今日はお昼から、病院に行こうね。香月はずっとお薬を飲んでいたでしょ? 体調もよくなさそうに見えるし、一度見てもらおうね」
「……病院」
「大丈夫。痛いことはされないよ。少し検査してもらうだけだから。まず朝ご飯食べようか。おいで」
香月は、病院に行ったことがなく、あまり良いイメージを持っていない。父親から病院には絶対に行くなと言われていたため、熱が出たり、怪我をしてもそのまま耐えていたのだ。
起きて彼と一緒にリビングに行くと、「椅子に座ってて」と言われ、彼はそのままキッチンに行き、朝ご飯の準備をしてくれている。香月も手伝いたかったが、自分がしても失敗してしまいそうで怖くてそのまま座って待っていた。
「さあ、お待たせ。軽くサンドイッチにしたよ。食べれそう?」
「わぁ! おいしそう! ありがとう。用意手伝えなくてごめんなさい」
「いいよ、そんなの気にしなくて」
目の前に置かれたお皿には大きなサンドイッチが乗せられていた。レタスやトマト、玉子がたくさん挟まれているのが見える。スープも出してもらえて、こんなに色鮮やかな朝ご飯を食べれることに香月は嬉しくなった。
しばらくは食べ進めていた香月だったが、半分くらい食べたところでお腹がいっぱいになった。そのため、残りは夜ご飯にとっておこうとお皿を持って立ち上がった。
「香月、どうしたの?」
「これ、残りを夜ご飯にとっておこうと思って。どこに置いておいたらいいかな?」
「……夜は別の物を食べよう。お腹すいてるから私が食べてもいいかな?」
「食べかけだけど……いいの?」
「うん。明日からはお昼も食べようね。一食ずつを少なめにしようか。少なめに作ったはずだったんだけどね……」
香月からお皿を受けとった彼は、そのまま残ったご飯をすべて食べてしまった。
午後になり、香月は彼と一緒に病院へ向かうため、準備をする。
着て行ける服が、昨日着ていたものしかなかったため、どうしようかと悩んでいたら、昨日車を運転していた人が、香月のサイズの新しい服を持ってきて渡してくれた。
「ありがとうございます。でも、僕お金を持っていなくて……」
「こちらは瑛人様からのプレゼントですから、お金はいりませんよ」
「え、でも……」
慌てて彼を見ると、香月を見ながら頷いた。
「気にすることはないよ。再会出来たお祝いのプレゼントだよ。受け取ってほしいな」
「うん……ありがとう」
プレゼントと言われて嬉しくなり、香月はお礼を言った。ただ、今の香月には返せるものが何もないため、今後どうやって返せばいいのかと悩む。
「そうそう、彼は秘書の青木和也だ。今後香月と関わることも多くなるだろう」
「瑛人様の秘書をしております、青木です。よろしくお願いしますね、香月様」
「えっ! 僕に様はつけなくて大丈夫です。瑛人様って、えい君って偉い人だったりするの?」
様付けをされて呼ばれている彼に慌てる。冷静に考えれば、広い家に車、そして運転してくれる人がいる時点で普通の人ではなさそうだと分かる。彼は香月のことを調べて分かっているが、香月は彼のことを全然知らないことに今さら気がついた。
「父親が社長で、私が跡取りってだけ。別に気にしなくていいよ。いままで通り接してくれると嬉しいな」
「……うん」
将来社長になる人だったのか、と一瞬驚いたが、そうと分かって彼を見てみると、風格がありピッタリだと思った。少し近づいたと思った彼との距離が、まったく近づいていなかったことを思い知らされ、香月は落ち込んだ。
瞼に光を感じ、目を開いた香月は驚いた。目の前に彼の顔が広がっていたのだ。
張りのある黒髪に、今は閉じられているがキリッとした切れ長の目。
こんなに穏やかな朝は初めてだと幸せに浸りながら、香月は昨日のことを思い返した。急に彼が迎えに来てくれて、マンションまで来て、話をして、たくさん泣いて。今さらながら、昨日泣きすぎた自分が恥ずかしくなる。
怒涛の一日を思い返していると、彼の目がゆっくりと開いた。優しい彼の瞳に香月が映る。
「おはよう、香月」
「……おはようございます」
笑顔で起き上がった彼に、香月も挨拶を返す。
「今日はお昼から、病院に行こうね。香月はずっとお薬を飲んでいたでしょ? 体調もよくなさそうに見えるし、一度見てもらおうね」
「……病院」
「大丈夫。痛いことはされないよ。少し検査してもらうだけだから。まず朝ご飯食べようか。おいで」
香月は、病院に行ったことがなく、あまり良いイメージを持っていない。父親から病院には絶対に行くなと言われていたため、熱が出たり、怪我をしてもそのまま耐えていたのだ。
起きて彼と一緒にリビングに行くと、「椅子に座ってて」と言われ、彼はそのままキッチンに行き、朝ご飯の準備をしてくれている。香月も手伝いたかったが、自分がしても失敗してしまいそうで怖くてそのまま座って待っていた。
「さあ、お待たせ。軽くサンドイッチにしたよ。食べれそう?」
「わぁ! おいしそう! ありがとう。用意手伝えなくてごめんなさい」
「いいよ、そんなの気にしなくて」
目の前に置かれたお皿には大きなサンドイッチが乗せられていた。レタスやトマト、玉子がたくさん挟まれているのが見える。スープも出してもらえて、こんなに色鮮やかな朝ご飯を食べれることに香月は嬉しくなった。
しばらくは食べ進めていた香月だったが、半分くらい食べたところでお腹がいっぱいになった。そのため、残りは夜ご飯にとっておこうとお皿を持って立ち上がった。
「香月、どうしたの?」
「これ、残りを夜ご飯にとっておこうと思って。どこに置いておいたらいいかな?」
「……夜は別の物を食べよう。お腹すいてるから私が食べてもいいかな?」
「食べかけだけど……いいの?」
「うん。明日からはお昼も食べようね。一食ずつを少なめにしようか。少なめに作ったはずだったんだけどね……」
香月からお皿を受けとった彼は、そのまま残ったご飯をすべて食べてしまった。
午後になり、香月は彼と一緒に病院へ向かうため、準備をする。
着て行ける服が、昨日着ていたものしかなかったため、どうしようかと悩んでいたら、昨日車を運転していた人が、香月のサイズの新しい服を持ってきて渡してくれた。
「ありがとうございます。でも、僕お金を持っていなくて……」
「こちらは瑛人様からのプレゼントですから、お金はいりませんよ」
「え、でも……」
慌てて彼を見ると、香月を見ながら頷いた。
「気にすることはないよ。再会出来たお祝いのプレゼントだよ。受け取ってほしいな」
「うん……ありがとう」
プレゼントと言われて嬉しくなり、香月はお礼を言った。ただ、今の香月には返せるものが何もないため、今後どうやって返せばいいのかと悩む。
「そうそう、彼は秘書の青木和也だ。今後香月と関わることも多くなるだろう」
「瑛人様の秘書をしております、青木です。よろしくお願いしますね、香月様」
「えっ! 僕に様はつけなくて大丈夫です。瑛人様って、えい君って偉い人だったりするの?」
様付けをされて呼ばれている彼に慌てる。冷静に考えれば、広い家に車、そして運転してくれる人がいる時点で普通の人ではなさそうだと分かる。彼は香月のことを調べて分かっているが、香月は彼のことを全然知らないことに今さら気がついた。
「父親が社長で、私が跡取りってだけ。別に気にしなくていいよ。いままで通り接してくれると嬉しいな」
「……うん」
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