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異世界誤爆ライン 前編
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王宮の廊下を歩きながら、クローディアは不思議に思った。
(アラン第二王子からの突然の呼び出しなんて……一体なんだろう。私、なにかやらかしたかしら)
今朝、突然部屋にメイドが来て「アラン様が執務室にクローディア様をお呼びです」とわざわざ伝えに来た。そんなに緊急な用事なのかと不安になる。
ここはロマン・ス王国。マロン王が治めている平和な国で、王には三人の子供がいる。その二番目が、アラン第二王子だ。
クローディアはそんなロマン・ス王国に仕える女性騎士である。肩書は「女性騎士団・隊長」。
今日クローディアは休日だった。昨日飲みすぎで少し頭が痛い。だけど王子の呼び出しに逆らうわけにはいかず、わざわざ騎士団の制服に着替えたクローディアは、二日酔いをこらえながらアランの執務室に向かっていた。
(せっかくラ・ラインを交換したんだから、ラ・ラインで呼び出してくれても良かったのに)
クローディアはそんなことをふと思った。
ラ・ラインとは、最近エリートホンに実装された、使用者同士が無料でメッセージのやりとりができる機能のことである。(エリートホンはスマートホンのことだと思って下さい)。
IDを交換することによって、お互いにメッセージを送り合うことができる。クローディアは昨日、騎士団の務めを終えたあと、第二王子から「緊急時のためにラ・ラインを交換しよう」と提案され、交換したのだった。
「アラン第二王子殿下、ロマン・ス王国女性騎士団隊長、クローディア・マーティン、只今参りました」
アランの執務室の前に来たクローディアは、声を張り上げた。
「どうぞ、入っていいよ」
普段通りのクールですました声。クローディアは緊張した面持ちで、入室した。第二王子アランは、部屋の中央に一人、厳しい表情で立っていた。
(え? アラン様一人? しかもなんか怒ってる?)
クローディアは冷や汗をかいた。固唾を吞んで立っていると、アランは唐突にこう言った。
「どうだ? 今日の僕は? 完璧な髪型と服装だろう?」
「え?」
アランは僕をよく見ろと言わんばかりに両手を広げた。クローディアより二つ年上で二十五歳のアランは、王妃譲りの綺麗なお顔と、サラサラの黒髪をしている。いつ見ても見とれちゃう……とクローディアは心をときめかせ、ぼうっとした。
しかし次のアランの言葉で、ときめいている場合ではないことを悟った。
「寝癖もついてないし、ボタンもかけ間違えていない! それに僕を『クールなのに天然で可愛い』とは何事だ? クローディア・マーティン隊長!」
(え? それって、昨日オリビア(女性騎士副隊長)に送ったラ・ラインの内容……!!)
アランはポケットからエリートホンを取り出し、読み上げた。
「昨日の夜中、君から来たラ・ラインだぞ! 『オリビア、今日も任務お疲れ~、ところで今日のアラン様見た? ぴょこんと後ろ、寝癖ついちゃってるの、しかもシャツのボタンかけ間違えてるのに気がついてないし、ほんとクールなのに天然で可愛い!! もう大好き! でね、なんとアラン様とラ・ライン交換できたの! 愛しのアラン様と交換できるなんて夢みた
「ぎゃああああ、やめて下さい、アラン殿下!」
失礼なのは承知で、クローディアはアランの言葉を遮った。
(嘘でしょ、親友のオリビアに送ったはずのラ・ラインなのに! 私ってば酔っぱらって、誤爆しちゃった!)
(アラン第二王子からの突然の呼び出しなんて……一体なんだろう。私、なにかやらかしたかしら)
今朝、突然部屋にメイドが来て「アラン様が執務室にクローディア様をお呼びです」とわざわざ伝えに来た。そんなに緊急な用事なのかと不安になる。
ここはロマン・ス王国。マロン王が治めている平和な国で、王には三人の子供がいる。その二番目が、アラン第二王子だ。
クローディアはそんなロマン・ス王国に仕える女性騎士である。肩書は「女性騎士団・隊長」。
今日クローディアは休日だった。昨日飲みすぎで少し頭が痛い。だけど王子の呼び出しに逆らうわけにはいかず、わざわざ騎士団の制服に着替えたクローディアは、二日酔いをこらえながらアランの執務室に向かっていた。
(せっかくラ・ラインを交換したんだから、ラ・ラインで呼び出してくれても良かったのに)
クローディアはそんなことをふと思った。
ラ・ラインとは、最近エリートホンに実装された、使用者同士が無料でメッセージのやりとりができる機能のことである。(エリートホンはスマートホンのことだと思って下さい)。
IDを交換することによって、お互いにメッセージを送り合うことができる。クローディアは昨日、騎士団の務めを終えたあと、第二王子から「緊急時のためにラ・ラインを交換しよう」と提案され、交換したのだった。
「アラン第二王子殿下、ロマン・ス王国女性騎士団隊長、クローディア・マーティン、只今参りました」
アランの執務室の前に来たクローディアは、声を張り上げた。
「どうぞ、入っていいよ」
普段通りのクールですました声。クローディアは緊張した面持ちで、入室した。第二王子アランは、部屋の中央に一人、厳しい表情で立っていた。
(え? アラン様一人? しかもなんか怒ってる?)
クローディアは冷や汗をかいた。固唾を吞んで立っていると、アランは唐突にこう言った。
「どうだ? 今日の僕は? 完璧な髪型と服装だろう?」
「え?」
アランは僕をよく見ろと言わんばかりに両手を広げた。クローディアより二つ年上で二十五歳のアランは、王妃譲りの綺麗なお顔と、サラサラの黒髪をしている。いつ見ても見とれちゃう……とクローディアは心をときめかせ、ぼうっとした。
しかし次のアランの言葉で、ときめいている場合ではないことを悟った。
「寝癖もついてないし、ボタンもかけ間違えていない! それに僕を『クールなのに天然で可愛い』とは何事だ? クローディア・マーティン隊長!」
(え? それって、昨日オリビア(女性騎士副隊長)に送ったラ・ラインの内容……!!)
アランはポケットからエリートホンを取り出し、読み上げた。
「昨日の夜中、君から来たラ・ラインだぞ! 『オリビア、今日も任務お疲れ~、ところで今日のアラン様見た? ぴょこんと後ろ、寝癖ついちゃってるの、しかもシャツのボタンかけ間違えてるのに気がついてないし、ほんとクールなのに天然で可愛い!! もう大好き! でね、なんとアラン様とラ・ライン交換できたの! 愛しのアラン様と交換できるなんて夢みた
「ぎゃああああ、やめて下さい、アラン殿下!」
失礼なのは承知で、クローディアはアランの言葉を遮った。
(嘘でしょ、親友のオリビアに送ったはずのラ・ラインなのに! 私ってば酔っぱらって、誤爆しちゃった!)
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