(完結)異世界誤爆ライン

コーヒーブレイク

文字の大きさ
1 / 2

異世界誤爆ライン 前編

しおりを挟む
 王宮の廊下を歩きながら、クローディアは不思議に思った。

(アラン第二王子からの突然の呼び出しなんて……一体なんだろう。私、なにかやらかしたかしら)

 今朝、突然部屋にメイドが来て「アラン様が執務室にクローディア様をお呼びです」とわざわざ伝えに来た。そんなに緊急な用事なのかと不安になる。

 ここはロマン・ス王国。マロン王が治めている平和な国で、王には三人の子供がいる。その二番目が、アラン第二王子だ。
 クローディアはそんなロマン・ス王国に仕える女性騎士である。肩書は「女性騎士団・隊長」。

 今日クローディアは休日だった。昨日飲みすぎで少し頭が痛い。だけど王子の呼び出しに逆らうわけにはいかず、わざわざ騎士団の制服に着替えたクローディアは、二日酔いをこらえながらアランの執務室に向かっていた。

(せっかくラ・ラインを交換したんだから、ラ・ラインで呼び出してくれても良かったのに)

 クローディアはそんなことをふと思った。

 ラ・ラインとは、最近エリートホンに実装された、使用者同士が無料でメッセージのやりとりができる機能のことである。(エリートホンはスマートホンのことだと思って下さい)。
 IDを交換することによって、お互いにメッセージを送り合うことができる。クローディアは昨日、騎士団の務めを終えたあと、第二王子から「緊急時のためにラ・ラインを交換しよう」と提案され、交換したのだった。

「アラン第二王子殿下、ロマン・ス王国女性騎士団隊長、クローディア・マーティン、只今参りました」

 アランの執務室の前に来たクローディアは、声を張り上げた。

「どうぞ、入っていいよ」

 普段通りのクールですました声。クローディアは緊張した面持ちで、入室した。第二王子アランは、部屋の中央に一人、厳しい表情で立っていた。

(え? アラン様一人? しかもなんか怒ってる?)

 クローディアは冷や汗をかいた。固唾を吞んで立っていると、アランは唐突にこう言った。

「どうだ? 今日の僕は? 完璧な髪型と服装だろう?」

「え?」

 アランは僕をよく見ろと言わんばかりに両手を広げた。クローディアより二つ年上で二十五歳のアランは、王妃譲りの綺麗なお顔と、サラサラの黒髪をしている。いつ見ても見とれちゃう……とクローディアは心をときめかせ、ぼうっとした。
 しかし次のアランの言葉で、ときめいている場合ではないことを悟った。

「寝癖もついてないし、ボタンもかけ間違えていない! それに僕を『クールなのに天然で可愛い』とは何事だ? クローディア・マーティン隊長!」

(え? それって、昨日オリビア(女性騎士副隊長)に送ったラ・ラインの内容……!!)

 アランはポケットからエリートホンを取り出し、読み上げた。

「昨日の夜中、君から来たラ・ラインだぞ! 『オリビア、今日も任務お疲れ~、ところで今日のアラン様見た? ぴょこんと後ろ、寝癖ついちゃってるの、しかもシャツのボタンかけ間違えてるのに気がついてないし、ほんとクールなのに天然で可愛い!! もう大好き! でね、なんとアラン様とラ・ライン交換できたの! 愛しのアラン様と交換できるなんて夢みた

「ぎゃああああ、やめて下さい、アラン殿下!」

 失礼なのは承知で、クローディアはアランの言葉を遮った。

(嘘でしょ、親友のオリビアに送ったはずのラ・ラインなのに! 私ってば酔っぱらって、誤爆しちゃった!)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います

下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。 御都合主義のハッピーエンドです。 元鞘に戻ります。 ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。 小説家になろう様でも投稿しています。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

処理中です...