2 / 2
異世界誤爆ライン 後編
しおりを挟む
昨日の夜。
愛しいアラン第二王子とラ・ラインを交換できたことが嬉しくてたまらず、自室でクローディアはいつもよりかなり多くアルコールを飲んでいた。
そして高ぶる嬉しさそのままに、親友であるオリビアにラ・ラインを送ってしまったのだ。
正確には送ったつもりだった……。
「クローディア騎士隊長、これは本当かどうか、説明してもらおうか」
昨日のことを思い返していたクローディアはアランの声ではっと我に返った。気がつくと目の前にアランが立って、クローディアのことを切れ長の目で見つめている。その目の下にはくっきりとクマがあった。
「は、はい……」
クローディアは騎士らしく毅然として立っていたが、心では泣いていた。
(終わりだ……、きっと、不敬罪に問われて、騎士団をクビになる。せっかくラ・ラインを交換して、アラン様と少しお近づきになれたと思ったのに。三年前、騎士団に入団したときから、ずっとアラン様を見てたのに)
「クローディア騎士隊長、本当かどうか、聞いてるんだ」
「はい、アラン殿下の寝癖やボタンかけ間違えが可愛かったのは本当です」
「そこじゃない。この『もう大好き!』『愛しのアラン様』の部分だ。君は僕のことを」
「申し訳ありません。分不相応な思いを、三年前から抱いていました。私は騎士として、少しでも近くでアラン殿下のお顔を見られればそれで良かったのです。職務上交換したラ・ラインとはいえ、とても嬉しくて、酔った勢いで友人にこのようなラ・ラインを送ってしまったんです。まさか間違えて、アラン殿下に送ってしまうなんて……こうなった以上、どんな処罰でも覚悟いたします、アラン殿下」
クローディアはもうヤケを起こし、どうでもいいことまでべらべらしゃべりだした。どうせこの恋は終わりなのだ。
「処罰……そうだな」
アランは完璧にセットされた黒髪をくしゃりとかき乱すと、少しの間沈黙した。そして、思いついたようにこう言った。
「今すぐ騎士団の制服を着替えて、町へ出かける準備をしなさい。今日一日、僕の外出に付き合ってもらおう」
「……え?」
クローディアはアランが言った言葉の意味が分からず、ぼかんとした。
アランはそんなクローディアに対し、小さくため息をつくと、今度は表情をきりりと引き締め、命令した。
「何度も言わせないでくれ。君は今日休日だろう? はやく外出着に着替えてくるんだ。ちゃんと女性らしい格好をするんだよ? 僕も準備するから。いいか、クローディア・マーティン騎士隊長!」
「は、はい、今すぐに!」
クローディアははじかれたようにアランの執務室をあとにした。頭の中は疑問符だらけだったが、王子がそう命令するなら、そうするしかない。
(じょ、女性らしい服装で? アラン殿下と? なんだかデートみたい……いやいや、そんなはずは)
急いで自室に戻るクローディアだった。
一方クローディアを見送ったアランはよろよろと執務机に右手をつくと、緊張が解けたように、長く息を吐き出した。
そして、改めてクローディアからのラ・ラインを見る。
(クローディア騎士隊長……昨日の夜、このラ・ラインを受け取った僕がどれほど舞い上がったと思っているんだ……。嬉しくて、一睡もできなかった)
アランの胸は高鳴っていた。
(今日一日、クローディアに説教してやる。どうして僕がこの三年間、数々の縁談の話を断り、用もないのにちょくちょく女性騎士団に顔を出したりしていたか、まったく彼女は察していない。職務上の交換だと? 僕がどれだけ勇気をだして、君にラ・ラインの交換を申し出たと思っているんだ、まったく!)
心の中ではそんなことを思いながらも、いつもクールですましている、でもちょっと天然で可愛い第二王子は、どこかうきうきした足取りで、デートの支度をするのであった。
おわり。
愛しいアラン第二王子とラ・ラインを交換できたことが嬉しくてたまらず、自室でクローディアはいつもよりかなり多くアルコールを飲んでいた。
そして高ぶる嬉しさそのままに、親友であるオリビアにラ・ラインを送ってしまったのだ。
正確には送ったつもりだった……。
「クローディア騎士隊長、これは本当かどうか、説明してもらおうか」
昨日のことを思い返していたクローディアはアランの声ではっと我に返った。気がつくと目の前にアランが立って、クローディアのことを切れ長の目で見つめている。その目の下にはくっきりとクマがあった。
「は、はい……」
クローディアは騎士らしく毅然として立っていたが、心では泣いていた。
(終わりだ……、きっと、不敬罪に問われて、騎士団をクビになる。せっかくラ・ラインを交換して、アラン様と少しお近づきになれたと思ったのに。三年前、騎士団に入団したときから、ずっとアラン様を見てたのに)
「クローディア騎士隊長、本当かどうか、聞いてるんだ」
「はい、アラン殿下の寝癖やボタンかけ間違えが可愛かったのは本当です」
「そこじゃない。この『もう大好き!』『愛しのアラン様』の部分だ。君は僕のことを」
「申し訳ありません。分不相応な思いを、三年前から抱いていました。私は騎士として、少しでも近くでアラン殿下のお顔を見られればそれで良かったのです。職務上交換したラ・ラインとはいえ、とても嬉しくて、酔った勢いで友人にこのようなラ・ラインを送ってしまったんです。まさか間違えて、アラン殿下に送ってしまうなんて……こうなった以上、どんな処罰でも覚悟いたします、アラン殿下」
クローディアはもうヤケを起こし、どうでもいいことまでべらべらしゃべりだした。どうせこの恋は終わりなのだ。
「処罰……そうだな」
アランは完璧にセットされた黒髪をくしゃりとかき乱すと、少しの間沈黙した。そして、思いついたようにこう言った。
「今すぐ騎士団の制服を着替えて、町へ出かける準備をしなさい。今日一日、僕の外出に付き合ってもらおう」
「……え?」
クローディアはアランが言った言葉の意味が分からず、ぼかんとした。
アランはそんなクローディアに対し、小さくため息をつくと、今度は表情をきりりと引き締め、命令した。
「何度も言わせないでくれ。君は今日休日だろう? はやく外出着に着替えてくるんだ。ちゃんと女性らしい格好をするんだよ? 僕も準備するから。いいか、クローディア・マーティン騎士隊長!」
「は、はい、今すぐに!」
クローディアははじかれたようにアランの執務室をあとにした。頭の中は疑問符だらけだったが、王子がそう命令するなら、そうするしかない。
(じょ、女性らしい服装で? アラン殿下と? なんだかデートみたい……いやいや、そんなはずは)
急いで自室に戻るクローディアだった。
一方クローディアを見送ったアランはよろよろと執務机に右手をつくと、緊張が解けたように、長く息を吐き出した。
そして、改めてクローディアからのラ・ラインを見る。
(クローディア騎士隊長……昨日の夜、このラ・ラインを受け取った僕がどれほど舞い上がったと思っているんだ……。嬉しくて、一睡もできなかった)
アランの胸は高鳴っていた。
(今日一日、クローディアに説教してやる。どうして僕がこの三年間、数々の縁談の話を断り、用もないのにちょくちょく女性騎士団に顔を出したりしていたか、まったく彼女は察していない。職務上の交換だと? 僕がどれだけ勇気をだして、君にラ・ラインの交換を申し出たと思っているんだ、まったく!)
心の中ではそんなことを思いながらも、いつもクールですましている、でもちょっと天然で可愛い第二王子は、どこかうきうきした足取りで、デートの支度をするのであった。
おわり。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる