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異世界誤爆ライン 後編
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昨日の夜。
愛しいアラン第二王子とラ・ラインを交換できたことが嬉しくてたまらず、自室でクローディアはいつもよりかなり多くアルコールを飲んでいた。
そして高ぶる嬉しさそのままに、親友であるオリビアにラ・ラインを送ってしまったのだ。
正確には送ったつもりだった……。
「クローディア騎士隊長、これは本当かどうか、説明してもらおうか」
昨日のことを思い返していたクローディアはアランの声ではっと我に返った。気がつくと目の前にアランが立って、クローディアのことを切れ長の目で見つめている。その目の下にはくっきりとクマがあった。
「は、はい……」
クローディアは騎士らしく毅然として立っていたが、心では泣いていた。
(終わりだ……、きっと、不敬罪に問われて、騎士団をクビになる。せっかくラ・ラインを交換して、アラン様と少しお近づきになれたと思ったのに。三年前、騎士団に入団したときから、ずっとアラン様を見てたのに)
「クローディア騎士隊長、本当かどうか、聞いてるんだ」
「はい、アラン殿下の寝癖やボタンかけ間違えが可愛かったのは本当です」
「そこじゃない。この『もう大好き!』『愛しのアラン様』の部分だ。君は僕のことを」
「申し訳ありません。分不相応な思いを、三年前から抱いていました。私は騎士として、少しでも近くでアラン殿下のお顔を見られればそれで良かったのです。職務上交換したラ・ラインとはいえ、とても嬉しくて、酔った勢いで友人にこのようなラ・ラインを送ってしまったんです。まさか間違えて、アラン殿下に送ってしまうなんて……こうなった以上、どんな処罰でも覚悟いたします、アラン殿下」
クローディアはもうヤケを起こし、どうでもいいことまでべらべらしゃべりだした。どうせこの恋は終わりなのだ。
「処罰……そうだな」
アランは完璧にセットされた黒髪をくしゃりとかき乱すと、少しの間沈黙した。そして、思いついたようにこう言った。
「今すぐ騎士団の制服を着替えて、町へ出かける準備をしなさい。今日一日、僕の外出に付き合ってもらおう」
「……え?」
クローディアはアランが言った言葉の意味が分からず、ぼかんとした。
アランはそんなクローディアに対し、小さくため息をつくと、今度は表情をきりりと引き締め、命令した。
「何度も言わせないでくれ。君は今日休日だろう? はやく外出着に着替えてくるんだ。ちゃんと女性らしい格好をするんだよ? 僕も準備するから。いいか、クローディア・マーティン騎士隊長!」
「は、はい、今すぐに!」
クローディアははじかれたようにアランの執務室をあとにした。頭の中は疑問符だらけだったが、王子がそう命令するなら、そうするしかない。
(じょ、女性らしい服装で? アラン殿下と? なんだかデートみたい……いやいや、そんなはずは)
急いで自室に戻るクローディアだった。
一方クローディアを見送ったアランはよろよろと執務机に右手をつくと、緊張が解けたように、長く息を吐き出した。
そして、改めてクローディアからのラ・ラインを見る。
(クローディア騎士隊長……昨日の夜、このラ・ラインを受け取った僕がどれほど舞い上がったと思っているんだ……。嬉しくて、一睡もできなかった)
アランの胸は高鳴っていた。
(今日一日、クローディアに説教してやる。どうして僕がこの三年間、数々の縁談の話を断り、用もないのにちょくちょく女性騎士団に顔を出したりしていたか、まったく彼女は察していない。職務上の交換だと? 僕がどれだけ勇気をだして、君にラ・ラインの交換を申し出たと思っているんだ、まったく!)
心の中ではそんなことを思いながらも、いつもクールですましている、でもちょっと天然で可愛い第二王子は、どこかうきうきした足取りで、デートの支度をするのであった。
おわり。
愛しいアラン第二王子とラ・ラインを交換できたことが嬉しくてたまらず、自室でクローディアはいつもよりかなり多くアルコールを飲んでいた。
そして高ぶる嬉しさそのままに、親友であるオリビアにラ・ラインを送ってしまったのだ。
正確には送ったつもりだった……。
「クローディア騎士隊長、これは本当かどうか、説明してもらおうか」
昨日のことを思い返していたクローディアはアランの声ではっと我に返った。気がつくと目の前にアランが立って、クローディアのことを切れ長の目で見つめている。その目の下にはくっきりとクマがあった。
「は、はい……」
クローディアは騎士らしく毅然として立っていたが、心では泣いていた。
(終わりだ……、きっと、不敬罪に問われて、騎士団をクビになる。せっかくラ・ラインを交換して、アラン様と少しお近づきになれたと思ったのに。三年前、騎士団に入団したときから、ずっとアラン様を見てたのに)
「クローディア騎士隊長、本当かどうか、聞いてるんだ」
「はい、アラン殿下の寝癖やボタンかけ間違えが可愛かったのは本当です」
「そこじゃない。この『もう大好き!』『愛しのアラン様』の部分だ。君は僕のことを」
「申し訳ありません。分不相応な思いを、三年前から抱いていました。私は騎士として、少しでも近くでアラン殿下のお顔を見られればそれで良かったのです。職務上交換したラ・ラインとはいえ、とても嬉しくて、酔った勢いで友人にこのようなラ・ラインを送ってしまったんです。まさか間違えて、アラン殿下に送ってしまうなんて……こうなった以上、どんな処罰でも覚悟いたします、アラン殿下」
クローディアはもうヤケを起こし、どうでもいいことまでべらべらしゃべりだした。どうせこの恋は終わりなのだ。
「処罰……そうだな」
アランは完璧にセットされた黒髪をくしゃりとかき乱すと、少しの間沈黙した。そして、思いついたようにこう言った。
「今すぐ騎士団の制服を着替えて、町へ出かける準備をしなさい。今日一日、僕の外出に付き合ってもらおう」
「……え?」
クローディアはアランが言った言葉の意味が分からず、ぼかんとした。
アランはそんなクローディアに対し、小さくため息をつくと、今度は表情をきりりと引き締め、命令した。
「何度も言わせないでくれ。君は今日休日だろう? はやく外出着に着替えてくるんだ。ちゃんと女性らしい格好をするんだよ? 僕も準備するから。いいか、クローディア・マーティン騎士隊長!」
「は、はい、今すぐに!」
クローディアははじかれたようにアランの執務室をあとにした。頭の中は疑問符だらけだったが、王子がそう命令するなら、そうするしかない。
(じょ、女性らしい服装で? アラン殿下と? なんだかデートみたい……いやいや、そんなはずは)
急いで自室に戻るクローディアだった。
一方クローディアを見送ったアランはよろよろと執務机に右手をつくと、緊張が解けたように、長く息を吐き出した。
そして、改めてクローディアからのラ・ラインを見る。
(クローディア騎士隊長……昨日の夜、このラ・ラインを受け取った僕がどれほど舞い上がったと思っているんだ……。嬉しくて、一睡もできなかった)
アランの胸は高鳴っていた。
(今日一日、クローディアに説教してやる。どうして僕がこの三年間、数々の縁談の話を断り、用もないのにちょくちょく女性騎士団に顔を出したりしていたか、まったく彼女は察していない。職務上の交換だと? 僕がどれだけ勇気をだして、君にラ・ラインの交換を申し出たと思っているんだ、まったく!)
心の中ではそんなことを思いながらも、いつもクールですましている、でもちょっと天然で可愛い第二王子は、どこかうきうきした足取りで、デートの支度をするのであった。
おわり。
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