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40年後? 3 (完)
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「すみません、ミラン殿下。今の魔法で魔力を使いすぎたみたいです。はは、私も歳ですね、ごほっごほっ。どうやらお迎えが来たみたいです」
目の前の、ホットケーキみたいに丸いミランの顔が霞んで見える。死期が迫っているんだろう。断じて老眼だからじゃない。フェリクスは自身の最後を覚悟した。
「ええ~!? そんな、僕が重いばっかりに……死ぬな、フェリシア、老後は二人で世界一周食べ歩きしようって約束したじゃないか」
ホットケーキがくしゃっと歪む。
「そうだよビアンカ君、退職金たくさん出すから、死ぬんじゃない」
リステアードも杖にすがりながら励ます。フェリクスは二人の想いに感動して、思わず青い目に涙を浮かべた。二人で世界一周……退職金――!!
「ありがとうございます、二人とも。私、まだ、こんなところで死ねません。100歳まで、魔法師団団長として、がんばります――!!」
フェリクスは自分から抜けていく魔力を再び集め、がばと、ミランの腕から起き上がった――。
――はっ。
フェリシアは目を覚ました。そこは、見慣れた自分の部屋だった。
あ、あれ? 私、魔力切れで死にかけてたんじゃなかった? リステアード王太子がよぼよぼで、ミラン殿下が風船で、私は還暦、腰痛で……。フェリシアは自分の腰をさすってみた。
腰、痛くない……。
続いて自分の手の甲を見た。多少骨ばっているが、21歳のみずみずしくすべすべした手の甲だ。
長い髪をつまんで顔の前に持って来てみる。白髪の一本もない、美しいつややかな金色の髪だった。
「夢……」
フェリシアはすべてを悟り、脱力した。今の今まで、40年後のエルドゥ王国の夢を見ていたのだ。
「びっくりした……って、まずい、今何時?」
フェリシアは時間を確認すると、ベッドから飛び起きて、すぐにシャワーを浴びた。シャワーを終えると、髪を乾かし、リボンでひとつにまとめ、魔法師団の制服に着替える。
今日は王城で、大事な魔法師団ショーがあるのに! 観客だって呼んでるのに! 遅刻しちゃう!
フェリシアは転がる勢いで団長室を出て、廊下を駆け出した。とても急いでいたので、曲がり角で誰かとぶつかってしまった。
「いてえっ。なんだ、フェリシアか。どうしたんだよ、そんなに急いで」
エルドゥ王国第二王子、ユリアンだった。
「ユリアン……」
フェリシアはあっけにとられた顔をしている第二王子に向かって、殊勝な態度でこう言った。
「ごめんね、ユリアン。長生きしてね」
ぽかんとする第二王子を残し、フェリクスは王城に向かうため、一旦外に出た。外にいたのはミラン第三王子だった。
「フェリシア殿、もう朝の訓練終わっちゃったよ。君がいつまでたっても来ないから、心配したよ」
ひと汗かいた風のミランは、もちろん風船ではなく、やや小柄な、いつもの可愛い系第三王子だった。
「もしかして寝坊か? 珍しいな」
「今日は王城で魔法師団ショーがある日じゃないんですか」
「それは明日だろう。今日はリハーサルが午後にあるだけだよ。もしかして、勘違いしたの、フェリシア」
ミランが面白そうにフェリシアの顔を覗き込む。それを聞いたフェリシアは一気に脱力した。
「そんな……明日……? 今日じゃなくて?」
今朝見た夢が衝撃過ぎて、頭がこんがらがってしまったらしい。
「まったく、君はしっかりしているようで抜けてるなあ」
夢のことなんてまるで知らないミランは、からかうようにけらけら笑った。フェリシアはそんなミランをじっと見つめているうちに、いつのまにか、ぎゅーっと抱きしめていた。
「フェリシア?」
「ああ、このサイズ、ミラン殿下だ。夢の中のミラン殿下もまるまるしてて、可愛……いや、魅力的なお姿だったけど、やっぱりこっちのほうがいい。あれは……さすがに太りすぎです」
「??? なんなんだ、フェリシア、わけが分からないな」
ミランは「このサイズってなんだよ」とちょっと不機嫌な声を上げた。
二人の40年後はどうなっていることやら――。
40年後? 終わり。
目の前の、ホットケーキみたいに丸いミランの顔が霞んで見える。死期が迫っているんだろう。断じて老眼だからじゃない。フェリクスは自身の最後を覚悟した。
「ええ~!? そんな、僕が重いばっかりに……死ぬな、フェリシア、老後は二人で世界一周食べ歩きしようって約束したじゃないか」
ホットケーキがくしゃっと歪む。
「そうだよビアンカ君、退職金たくさん出すから、死ぬんじゃない」
リステアードも杖にすがりながら励ます。フェリクスは二人の想いに感動して、思わず青い目に涙を浮かべた。二人で世界一周……退職金――!!
「ありがとうございます、二人とも。私、まだ、こんなところで死ねません。100歳まで、魔法師団団長として、がんばります――!!」
フェリクスは自分から抜けていく魔力を再び集め、がばと、ミランの腕から起き上がった――。
――はっ。
フェリシアは目を覚ました。そこは、見慣れた自分の部屋だった。
あ、あれ? 私、魔力切れで死にかけてたんじゃなかった? リステアード王太子がよぼよぼで、ミラン殿下が風船で、私は還暦、腰痛で……。フェリシアは自分の腰をさすってみた。
腰、痛くない……。
続いて自分の手の甲を見た。多少骨ばっているが、21歳のみずみずしくすべすべした手の甲だ。
長い髪をつまんで顔の前に持って来てみる。白髪の一本もない、美しいつややかな金色の髪だった。
「夢……」
フェリシアはすべてを悟り、脱力した。今の今まで、40年後のエルドゥ王国の夢を見ていたのだ。
「びっくりした……って、まずい、今何時?」
フェリシアは時間を確認すると、ベッドから飛び起きて、すぐにシャワーを浴びた。シャワーを終えると、髪を乾かし、リボンでひとつにまとめ、魔法師団の制服に着替える。
今日は王城で、大事な魔法師団ショーがあるのに! 観客だって呼んでるのに! 遅刻しちゃう!
フェリシアは転がる勢いで団長室を出て、廊下を駆け出した。とても急いでいたので、曲がり角で誰かとぶつかってしまった。
「いてえっ。なんだ、フェリシアか。どうしたんだよ、そんなに急いで」
エルドゥ王国第二王子、ユリアンだった。
「ユリアン……」
フェリシアはあっけにとられた顔をしている第二王子に向かって、殊勝な態度でこう言った。
「ごめんね、ユリアン。長生きしてね」
ぽかんとする第二王子を残し、フェリクスは王城に向かうため、一旦外に出た。外にいたのはミラン第三王子だった。
「フェリシア殿、もう朝の訓練終わっちゃったよ。君がいつまでたっても来ないから、心配したよ」
ひと汗かいた風のミランは、もちろん風船ではなく、やや小柄な、いつもの可愛い系第三王子だった。
「もしかして寝坊か? 珍しいな」
「今日は王城で魔法師団ショーがある日じゃないんですか」
「それは明日だろう。今日はリハーサルが午後にあるだけだよ。もしかして、勘違いしたの、フェリシア」
ミランが面白そうにフェリシアの顔を覗き込む。それを聞いたフェリシアは一気に脱力した。
「そんな……明日……? 今日じゃなくて?」
今朝見た夢が衝撃過ぎて、頭がこんがらがってしまったらしい。
「まったく、君はしっかりしているようで抜けてるなあ」
夢のことなんてまるで知らないミランは、からかうようにけらけら笑った。フェリシアはそんなミランをじっと見つめているうちに、いつのまにか、ぎゅーっと抱きしめていた。
「フェリシア?」
「ああ、このサイズ、ミラン殿下だ。夢の中のミラン殿下もまるまるしてて、可愛……いや、魅力的なお姿だったけど、やっぱりこっちのほうがいい。あれは……さすがに太りすぎです」
「??? なんなんだ、フェリシア、わけが分からないな」
ミランは「このサイズってなんだよ」とちょっと不機嫌な声を上げた。
二人の40年後はどうなっていることやら――。
40年後? 終わり。
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