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怒りのフェリシア 2
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こんなに怒りをあらわにするフェリシアはめずらしいな、と、戸惑い気味のエルドゥ王国第三王子は、憤慨する恋人に対して、慎重に言葉を選びながら、低姿勢で質問した。
「僕は魔力や推理小説のことに対しては不勉強なものだから、こんな質問をして、申し訳ないんだけど、それのどこがダメなんだい?」
フェリシアは目を丸くして、隣に座るミランの方に顔を向けた。
「推理小説に魔法を出すのは、暗黙の了解で、タブーなんです。推理小説の登場人物は魔力を持っていない、というのが大前提なんです」
それを聞いたミランは合点がいったというように、膝を叩いた。
「なるほど。そうしないと魔法ですべて解決してしまう……というわけか。トリックも、なにも、あったもんじゃない」
「そうなんですよ、分かって頂けましたか、ミラン殿下! この推理小説のルールはかの有名な『ノックの十か条』にも記されています。『第5条 主要人物として、魔力持ちを登場させてはならない』」
エルドゥ王国内に限って言えば、魔力量の多寡には個人差があるが、魔力を持っている人間は、国民全体の3パーセントほどである。なので、推理小説内の主要人物が全員魔力を持っていなくても、何ら不思議はない。
「それなのに、この小説ときたら……」
フェリシアは、白い頬を上気させて、ミランに顔を近づけた。このままソファに押し倒されそうな勢いだ、とミランは思った。
「ちょっと落ち着きなよ、フェリシア。君の怒りも分かるけどさ、そのノックなんとかも、そこまで厳密にルールを守ることを強要しているわけじゃないんだろう? そんなに、絶対のルールなの?」
「そういう、わけでは……」
フェリシアは言葉に詰まり。唇を噛む。
「じゃあ、そういうトリックがあってもいいじゃない。君が納得いかなくても、ドンマイ! って感じで」
ミランはわざとらしく明るく言った。しかしフェリシアはいつのも彼女らしくなく、ぐずぐず食い下がった。
「そうはいっても、この推理小説、800ページもあるんですよ? 800ページ中、780ページまでは、本当に面白かったのに……。いわゆるクローズドサークルで、設定はありふれていますが、謎が謎を呼ぶ展開に、随所に散りばめられた伏線、巧みな心理描写と、ページをめくる手が止まりませんでした。はやく犯人とそのトリックを知りたい、そう思って私は睡眠時間を削り、食事の時間を惜しんで読み進めました。それなのに、犯人は魔力持ちで、殺害方法は魔法で具現化したナイフで刺した、魔法だから刺した後は消して証拠が残らなかった、なんて結末、納得できます?」
「ええっと……」
「この推理小説は最高傑作だと思ったのに……ひどい」
(すねてるフェリシアは、可愛いなあ)
なんて言ったら怒られるので、ミランはひとつ咳ばらいをして、こう言った。
「僕は魔力や推理小説のことに対しては不勉強なものだから、こんな質問をして、申し訳ないんだけど、それのどこがダメなんだい?」
フェリシアは目を丸くして、隣に座るミランの方に顔を向けた。
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それを聞いたミランは合点がいったというように、膝を叩いた。
「なるほど。そうしないと魔法ですべて解決してしまう……というわけか。トリックも、なにも、あったもんじゃない」
「そうなんですよ、分かって頂けましたか、ミラン殿下! この推理小説のルールはかの有名な『ノックの十か条』にも記されています。『第5条 主要人物として、魔力持ちを登場させてはならない』」
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「そういう、わけでは……」
フェリシアは言葉に詰まり。唇を噛む。
「じゃあ、そういうトリックがあってもいいじゃない。君が納得いかなくても、ドンマイ! って感じで」
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「ええっと……」
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