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怒りのフェリシア 3 (完)
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「分かるよ、フェリシア。780ページまで読んで、残りの20ページがそれじゃあね、フェリシアの怒りはごもっともだよ。店でスペシャルプリンパフェを頼んだのに、豪華なのはうわずみだけで、プリンの下は雑なクッキーとクリームだけだった、みたいな感じだろう? 分かるよ」
「もういいです」
フェリシアはそっけなく、そう言った。
「ちょっと!」
ミランはそんなフェリシアの様子に抗議の声を上げたが、フェリシアはいつのまにかいつもの冷静な顔に戻っていた。
「不満を口に出したら、なんだかスッキリしました……手紙を送るのはやめます。780ページまではすごく、才能を感じさせる作者だったので、こんなトリックで惜しいと思って、つい頭に血が上ってしまったんです。作者の次回作に期待します」
次回作が期待ハズレだったら手紙を書くんだな……ミランは内心呆れながら、ふと思ったことを言った。
「フェリシア、君は16歳のとき、魔力が発現して、魔法学校に転入したんだよね。魔法学校には、もっと大人になってから、魔力が発現した人はいた?」
若干期待を込めた、ミランの質問だった。いれば、魔力を持っていないミランにも今後魔力が発現する可能性がある、ということだ。
だが、フェリシアの返答は非情だった。
「いません。私が知っている限り、成人後に魔力が発現した人はゼロです。ほとんどの人は、生まれたときに魔力を持っていますから」
「なんだ、そうなのか」
ミランは明らかに落胆した。実兄であるリステアードが魔力を持っているので、自分にもいつか魔力が、と思っていたのだ。実際には、魔力は遺伝しない、血筋に関係ない、とされているのだが、やっぱり少し、期待してしまう。
「その点もこの小説はおかしいんですよ。犯人は25歳。25歳で、孤島に偶然取り残されたとき、突然魔力が発現して、これは日ごろ恨みを抱いていた5人を殺すチャンスだ、と魔法による殺人の計画を思いつくんです。それで、殺害のために使うナイフを魔法で具現化するんですけど、これまたおかしい。魔力を持っていたって、すぐに魔法を使えるわけじゃないんです。ちゃんと練習しなきゃ。個人の特性だってあるし。特に具現化魔法は難しいんです。何もないところからナイフを魔法で出すなんて、魔力が発現したばっかりの人間には無理です」
「そうか……君が色々な魔法を使えるのは、日ごろの練習の賜物なんだな。えらいえらい、フェリシア」
ミランがふざけて頭を撫でてきたので、また熱くなってしまった、とフェリシアははっとして、口をつぐんだ。
「もう、茶化さないで」
「君に魔力が発現したおかげで、僕たちは出会えたってわけだ。君に魔力がなかったら、君は魔法師団に入団することもなかっただろうし。そして、僕に魔力がなかったから、僕は、君に惚れ薬作りを頼んだ……。全てが必然だったわけだね! 魔力がある君と、魔力がない僕に感謝!」
「雑にまとめないで……」
フェリシアは、そう言いながらも、口調は少しも怒っていなかった。それどころか、笑っていた。「話が長くなってしまいました。お待たせして申し訳ありませんミラン殿下。ティータイムにいたしましょう」
フェリシアはソファから立ち上がった。
「おかまいなく。それじゃあ僕は明日の魔法師団のスケジュールを確認するね」
ミランはそう言うと、ご自慢のスタイリッシュ手帳を取り出し、パラパラとページをめくりだした。
――フェリシアが憤慨していた800ページ小説は、フェリシアの指摘通り、結末に不満の声が多かった。しかし、小説の作者はそれにめげず、今度は主要人物全員魔力持ちという、異例の次作を発表した。その後、その作品が、エルドゥ王国で大ベストセラーになり、作者は、一流作家の仲間入りを果たすのだった――。
怒りのフェリシア・終わり。
「もういいです」
フェリシアはそっけなく、そう言った。
「ちょっと!」
ミランはそんなフェリシアの様子に抗議の声を上げたが、フェリシアはいつのまにかいつもの冷静な顔に戻っていた。
「不満を口に出したら、なんだかスッキリしました……手紙を送るのはやめます。780ページまではすごく、才能を感じさせる作者だったので、こんなトリックで惜しいと思って、つい頭に血が上ってしまったんです。作者の次回作に期待します」
次回作が期待ハズレだったら手紙を書くんだな……ミランは内心呆れながら、ふと思ったことを言った。
「フェリシア、君は16歳のとき、魔力が発現して、魔法学校に転入したんだよね。魔法学校には、もっと大人になってから、魔力が発現した人はいた?」
若干期待を込めた、ミランの質問だった。いれば、魔力を持っていないミランにも今後魔力が発現する可能性がある、ということだ。
だが、フェリシアの返答は非情だった。
「いません。私が知っている限り、成人後に魔力が発現した人はゼロです。ほとんどの人は、生まれたときに魔力を持っていますから」
「なんだ、そうなのか」
ミランは明らかに落胆した。実兄であるリステアードが魔力を持っているので、自分にもいつか魔力が、と思っていたのだ。実際には、魔力は遺伝しない、血筋に関係ない、とされているのだが、やっぱり少し、期待してしまう。
「その点もこの小説はおかしいんですよ。犯人は25歳。25歳で、孤島に偶然取り残されたとき、突然魔力が発現して、これは日ごろ恨みを抱いていた5人を殺すチャンスだ、と魔法による殺人の計画を思いつくんです。それで、殺害のために使うナイフを魔法で具現化するんですけど、これまたおかしい。魔力を持っていたって、すぐに魔法を使えるわけじゃないんです。ちゃんと練習しなきゃ。個人の特性だってあるし。特に具現化魔法は難しいんです。何もないところからナイフを魔法で出すなんて、魔力が発現したばっかりの人間には無理です」
「そうか……君が色々な魔法を使えるのは、日ごろの練習の賜物なんだな。えらいえらい、フェリシア」
ミランがふざけて頭を撫でてきたので、また熱くなってしまった、とフェリシアははっとして、口をつぐんだ。
「もう、茶化さないで」
「君に魔力が発現したおかげで、僕たちは出会えたってわけだ。君に魔力がなかったら、君は魔法師団に入団することもなかっただろうし。そして、僕に魔力がなかったから、僕は、君に惚れ薬作りを頼んだ……。全てが必然だったわけだね! 魔力がある君と、魔力がない僕に感謝!」
「雑にまとめないで……」
フェリシアは、そう言いながらも、口調は少しも怒っていなかった。それどころか、笑っていた。「話が長くなってしまいました。お待たせして申し訳ありませんミラン殿下。ティータイムにいたしましょう」
フェリシアはソファから立ち上がった。
「おかまいなく。それじゃあ僕は明日の魔法師団のスケジュールを確認するね」
ミランはそう言うと、ご自慢のスタイリッシュ手帳を取り出し、パラパラとページをめくりだした。
――フェリシアが憤慨していた800ページ小説は、フェリシアの指摘通り、結末に不満の声が多かった。しかし、小説の作者はそれにめげず、今度は主要人物全員魔力持ちという、異例の次作を発表した。その後、その作品が、エルドゥ王国で大ベストセラーになり、作者は、一流作家の仲間入りを果たすのだった――。
怒りのフェリシア・終わり。
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