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私の願いは (完)
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七夕終わっちゃいましたけど、七夕のお話です。
「フェリシア、はいこれ」
団長室でいつものようにお茶していると、ミランが長方形の紙を、フェリシアに差し出した。水色で、上部に紐か何かを通せるくらいの、小さな穴が開いている。フェリシアは首を傾げた。
「なんですか、これ」
「短冊だよ。東の方の国では、これに願い事を書いて、笹竹に飾るという風習があるらしくて、最近国民の間でも話題なんだ。そこで、エルドゥ王国でもやってみることにした」
ミランは「七夕」について、フェリシアに簡単に説明した。
「へえ……そんな風習が異国にはあるんですね」
「王宮内に大きな笹竹が用意されているから、空いた時間に自分で好きな場所に括り付けてくれ。王宮内のみんなにも、そう言ってある」
「わかりました。ミラン殿下も書くんですね」
「王宮内のみんな書くよ。僕はもう書いて、括り付けた。黄色の短冊だよ」
そう言うと、明日は早く学校に行かなければならないというミランはおやすみの挨拶をして、去って行った。
(願い事かあ)
部屋に一人になると、フェリシアは天井を見上げて考えた。そして、私の願い事はひとつしかないな、と思って、水色の短冊に丁寧にペンで書いた。
『ずっと、ミラン殿下の傍にいられますように』
書いてしまってから、なにやってんだ、王宮のみんなに誰が書いたんだと見られたらどうする、と後悔したが、魔法で書き直すのもズルなような気がして、結局そのまま笹竹に飾ることにした。
次の日、朝の訓練の前に、フェリシアは短冊を笹竹に飾りに行った。
ミランが言ったとおり、とても大きく見事な笹竹で、すでにたくさんの短冊が飾られている。フェリシアは浮遊魔法で飛び、下からは絶対に見えない位置に自分の短冊を括り付けた。
飾り終えてふと見ると、黄色い短冊が目に入った。特徴のあるくせ字は、ミランのものだった。
『これからも、エルドゥ王国が平和であるように』
黄色の短冊に、大きな文字で書かれていた。フェリシアはその短冊を見つめて、恥ずかし気にうつむいた。
(ミラン殿下……なんてご立派な……。てっきり「剣術が上達したい」とか「もう少し背を伸ばしたい」とかだと思っていたのに。ごめんね、ミラン殿下)
個人的な願いを書いてしまった自分が恥ずかしくなる。フェリシアが黄色い短冊に向かって謝罪していると、
「フェリシア!」
背後から聞きなれた声がした。振り向くと貴族学校の制服を着たミランが立っていた。
「探したよ。昨日、君に言い忘れたことがあって。この笹竹、最終的には王都の広場に飾って、一般公開することになってるんだ。上空から魔道具で撮影して、魔法動画で全国民に配信する予定なんだけど……だから、短冊に書く内容には気を使って……」
ミランが言い終わらないうちに、フェリシアは浮遊魔法を発動させ、秒で自分の短冊を外してきた。そして、長い金髪をなびかせながら、何事もなかったかのように、いつものクールさで、ミランの前に降り立つ。
「承知しました。わざわざお知らせいただき、ありがとうございます。お気を付けて学校へいってらっしゃいませ、ミラン第三王子殿下」
「ちょっと待った、何今の動き? 短冊もぎ取ってたよね? 君、どんな願い事書いたんだ?」
「普通の願い事です。ミラン殿下がお気になさることではありません」
「二人しかいないのに、なんでフェリクス・ブライトナーモードになってんの?」
「今私は仕事の時間です。殿下、公私混同はダメ、ぜった……わーー! 普通の願い事ですってば!」
今度はミランが、フェリシアが言い終わらないうちにフェリシアの右手の中にある水色の短冊をひったくろうとした。すんでのところでフェリシアはガードする。
「み、見ないでください、プライバシーの侵害です!」
「僕のは見たんだろう? なんて書いたのさ? 君のことだから……『面白い本に出会えますように』かな? あ、わかったぞ『給料がもっと増えますように』だ!」
ミラン殿下の私に対するイメージって!?
フェリシアは短冊をしっかりと握りしめたまま、浮遊魔法でその場から逃げた。ミランはこれから学校に行かなければならないので、追ってはこないだろう。
団長室に戻ったフェリシアは、くしゃくしゃになった短冊を魔法で元通りにし、文字も消した。そして、改めて書き直した。
『魔法師団として、もっと強くなれますように』
その後、ミランがもういなくなったのを確認してから、笹竹のほどよい高さに飾ったのだった。
私の願いは 終わり。
「フェリシア、はいこれ」
団長室でいつものようにお茶していると、ミランが長方形の紙を、フェリシアに差し出した。水色で、上部に紐か何かを通せるくらいの、小さな穴が開いている。フェリシアは首を傾げた。
「なんですか、これ」
「短冊だよ。東の方の国では、これに願い事を書いて、笹竹に飾るという風習があるらしくて、最近国民の間でも話題なんだ。そこで、エルドゥ王国でもやってみることにした」
ミランは「七夕」について、フェリシアに簡単に説明した。
「へえ……そんな風習が異国にはあるんですね」
「王宮内に大きな笹竹が用意されているから、空いた時間に自分で好きな場所に括り付けてくれ。王宮内のみんなにも、そう言ってある」
「わかりました。ミラン殿下も書くんですね」
「王宮内のみんな書くよ。僕はもう書いて、括り付けた。黄色の短冊だよ」
そう言うと、明日は早く学校に行かなければならないというミランはおやすみの挨拶をして、去って行った。
(願い事かあ)
部屋に一人になると、フェリシアは天井を見上げて考えた。そして、私の願い事はひとつしかないな、と思って、水色の短冊に丁寧にペンで書いた。
『ずっと、ミラン殿下の傍にいられますように』
書いてしまってから、なにやってんだ、王宮のみんなに誰が書いたんだと見られたらどうする、と後悔したが、魔法で書き直すのもズルなような気がして、結局そのまま笹竹に飾ることにした。
次の日、朝の訓練の前に、フェリシアは短冊を笹竹に飾りに行った。
ミランが言ったとおり、とても大きく見事な笹竹で、すでにたくさんの短冊が飾られている。フェリシアは浮遊魔法で飛び、下からは絶対に見えない位置に自分の短冊を括り付けた。
飾り終えてふと見ると、黄色い短冊が目に入った。特徴のあるくせ字は、ミランのものだった。
『これからも、エルドゥ王国が平和であるように』
黄色の短冊に、大きな文字で書かれていた。フェリシアはその短冊を見つめて、恥ずかし気にうつむいた。
(ミラン殿下……なんてご立派な……。てっきり「剣術が上達したい」とか「もう少し背を伸ばしたい」とかだと思っていたのに。ごめんね、ミラン殿下)
個人的な願いを書いてしまった自分が恥ずかしくなる。フェリシアが黄色い短冊に向かって謝罪していると、
「フェリシア!」
背後から聞きなれた声がした。振り向くと貴族学校の制服を着たミランが立っていた。
「探したよ。昨日、君に言い忘れたことがあって。この笹竹、最終的には王都の広場に飾って、一般公開することになってるんだ。上空から魔道具で撮影して、魔法動画で全国民に配信する予定なんだけど……だから、短冊に書く内容には気を使って……」
ミランが言い終わらないうちに、フェリシアは浮遊魔法を発動させ、秒で自分の短冊を外してきた。そして、長い金髪をなびかせながら、何事もなかったかのように、いつものクールさで、ミランの前に降り立つ。
「承知しました。わざわざお知らせいただき、ありがとうございます。お気を付けて学校へいってらっしゃいませ、ミラン第三王子殿下」
「ちょっと待った、何今の動き? 短冊もぎ取ってたよね? 君、どんな願い事書いたんだ?」
「普通の願い事です。ミラン殿下がお気になさることではありません」
「二人しかいないのに、なんでフェリクス・ブライトナーモードになってんの?」
「今私は仕事の時間です。殿下、公私混同はダメ、ぜった……わーー! 普通の願い事ですってば!」
今度はミランが、フェリシアが言い終わらないうちにフェリシアの右手の中にある水色の短冊をひったくろうとした。すんでのところでフェリシアはガードする。
「み、見ないでください、プライバシーの侵害です!」
「僕のは見たんだろう? なんて書いたのさ? 君のことだから……『面白い本に出会えますように』かな? あ、わかったぞ『給料がもっと増えますように』だ!」
ミラン殿下の私に対するイメージって!?
フェリシアは短冊をしっかりと握りしめたまま、浮遊魔法でその場から逃げた。ミランはこれから学校に行かなければならないので、追ってはこないだろう。
団長室に戻ったフェリシアは、くしゃくしゃになった短冊を魔法で元通りにし、文字も消した。そして、改めて書き直した。
『魔法師団として、もっと強くなれますように』
その後、ミランがもういなくなったのを確認してから、笹竹のほどよい高さに飾ったのだった。
私の願いは 終わり。
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