32 / 72
そして誰もいなくなった? 7
しおりを挟む
大型掃除魔道具は、もの凄い速さでこちらに突進してきた。
突進しながらクリーナーヘッド(吸い込み口)を持ち上げたかと思うと、クリーナーヘッドが廊下いっぱいに巨大化した!
フェリクスは危険を感じ、瞬時に後ろに下がったが、うかれ団員は遅れた。
次の瞬間、吸い込み口からゴオオオオオオオオオ、という音がしたかと思うと、団員は「うわああああああ」という悲鳴と共に、掃除魔道具に吸い込まれてしまった。
うそでしょ。ありえない。
フェリクスは迂闊にも、茫然としてしまった。
魔道具が巨大化し、団員を吸い込んだ、という事実を彼女の頭が容認できないのだった。
どうして吸い込み口が巨大化するの? 吸い込まれた団員はどうなったの? あの小さな本体に入るわけないのに。
巨大化したのは吸い込み口だけで、掃除魔道具の本体部分(ゴミが溜まる部分)はそのままの大きさだ。
一体どういう理屈なんだ?
フェリクスは混乱した。
その間、掃除魔道具は、フェリクスをも吸い込もうと、吸い込み口を再び持ち上げた。
「!」
まずい……。
フェリクスがそう思ったとき、
「走れ! 逃げるぞ!!」
そう声がして、誰かに腕を強く引かれた。
「ぼんやりするんじゃない! 君まで吸い込まれるぞ!」
――フェリクスを助けたのは……ミランだった。
「ミラン殿下、どうして」
「やっぱり心配だったから、見に来たんだ。そうしたら『は~るがき~た』とかいう歌が聞こえてきて……って、話は後だ! 逃げるぞ!」
「は、はい。すみません、私としたことが、理論的にあり得ないことに出会って、フリーズしてしまって」
フェリクスとミランは掃除魔道具から必死に逃げたが、あっけなく追いつかれてしまった。
何しろ掃除魔道具はズルズルと這う蛇のように、とても速い動きで的確に二人を追いかけてくるのだ。
――ついに二人は行き止まりに追い詰められてしまった。
「くそ、この魔道具、意思を持っているな」
ミランがフェリクスの腕をつかんだまま言った。
「ありえませんよ、ミラン殿下。魔道具が意思を持つなんて」
フェリクスはまだ信じられない。これじゃホラーだ。
「いや、事実だフェリシア。現に、この魔道具、魔力源コードに繋いでないのに動いている」
ミランの言葉にフェリクスははっとした。
まさか、この掃除魔道具は、吸い込んだ団員の魔力を動力源にしてるんじゃ? だから、高い魔力を持つ、魔法師団ばかり狙った? そんなことを、魔道具が考えるっていうの?
とかなんとかフェリクスが考えているうちに、また吸い込み口がバーンと大きくなり、二人を吸い込もうとした。
フェリクスは魔法の鎖を自分の右手から具現化させ、王宮の柱に巻き付けた。
間一髪、鎖で繋がれ、二人は吸い込み口の手前で止まった。
「フェリシアもういい。僕を放せ。このままでは君の右手が千切れてしまう」
吸い込む力はとてつもなく強い。
フェリクスは魔力を使って自分の身体を強化しているが、左手でミランを抱え、右手に鎖を巻いている状態は、かなり辛い態勢だった。
「フェリシア、逃げろ! このままじゃ共倒れだ。これは命令だぞ!」
ミランが怒鳴った。
「嫌です、ミラン殿下が吸い込まれちゃうなんて……絶対に放しません!」
「君は理論的・合理的な性格じゃなかったのか!? プロフィールを変更しろー!」
「何わけのわからないこと言ってるんですか! 絶対に嫌……嫌だから!」
「分からず屋!」
「嫌なものは嫌なのっ。ミラン殿下がいなくなっちゃうなんて、嫌だっ」
「ミラン第三王子殿下、フェリクス・ブライトナー魔法師団団長、どうしました!」
夜間警備の兵士が何事かと、駆けつけてきた。
掃除魔道具の注意が一瞬、そちらに向かう。吸い込む力がほんの一瞬だけ、弱まった。
フェリクスはその一瞬を見逃さなかった。
素早く鎖を消してミランを下ろすと、ありったけの攻撃魔法を巨大吸い込み口に叩き込んだ。
何発か打ち込むと、吸い込み口が折れた。
やった!
とフェリクスが思った瞬間、彼女は魔力切れでふらりとよろめく。
しっかりと抱きとめられた。
薄目を開けると、心配そうなミランの顔があった。
「ミ……ラン殿下、掃除魔道具は……」
「元の大きさに戻って、止まったよ。一安心だ」
「! いや、まだ安心じゃないです、吸い込まれた団員たちは……?」
「あ、そうか、忘れてた!」
ミランは声を上げた。
突進しながらクリーナーヘッド(吸い込み口)を持ち上げたかと思うと、クリーナーヘッドが廊下いっぱいに巨大化した!
フェリクスは危険を感じ、瞬時に後ろに下がったが、うかれ団員は遅れた。
次の瞬間、吸い込み口からゴオオオオオオオオオ、という音がしたかと思うと、団員は「うわああああああ」という悲鳴と共に、掃除魔道具に吸い込まれてしまった。
うそでしょ。ありえない。
フェリクスは迂闊にも、茫然としてしまった。
魔道具が巨大化し、団員を吸い込んだ、という事実を彼女の頭が容認できないのだった。
どうして吸い込み口が巨大化するの? 吸い込まれた団員はどうなったの? あの小さな本体に入るわけないのに。
巨大化したのは吸い込み口だけで、掃除魔道具の本体部分(ゴミが溜まる部分)はそのままの大きさだ。
一体どういう理屈なんだ?
フェリクスは混乱した。
その間、掃除魔道具は、フェリクスをも吸い込もうと、吸い込み口を再び持ち上げた。
「!」
まずい……。
フェリクスがそう思ったとき、
「走れ! 逃げるぞ!!」
そう声がして、誰かに腕を強く引かれた。
「ぼんやりするんじゃない! 君まで吸い込まれるぞ!」
――フェリクスを助けたのは……ミランだった。
「ミラン殿下、どうして」
「やっぱり心配だったから、見に来たんだ。そうしたら『は~るがき~た』とかいう歌が聞こえてきて……って、話は後だ! 逃げるぞ!」
「は、はい。すみません、私としたことが、理論的にあり得ないことに出会って、フリーズしてしまって」
フェリクスとミランは掃除魔道具から必死に逃げたが、あっけなく追いつかれてしまった。
何しろ掃除魔道具はズルズルと這う蛇のように、とても速い動きで的確に二人を追いかけてくるのだ。
――ついに二人は行き止まりに追い詰められてしまった。
「くそ、この魔道具、意思を持っているな」
ミランがフェリクスの腕をつかんだまま言った。
「ありえませんよ、ミラン殿下。魔道具が意思を持つなんて」
フェリクスはまだ信じられない。これじゃホラーだ。
「いや、事実だフェリシア。現に、この魔道具、魔力源コードに繋いでないのに動いている」
ミランの言葉にフェリクスははっとした。
まさか、この掃除魔道具は、吸い込んだ団員の魔力を動力源にしてるんじゃ? だから、高い魔力を持つ、魔法師団ばかり狙った? そんなことを、魔道具が考えるっていうの?
とかなんとかフェリクスが考えているうちに、また吸い込み口がバーンと大きくなり、二人を吸い込もうとした。
フェリクスは魔法の鎖を自分の右手から具現化させ、王宮の柱に巻き付けた。
間一髪、鎖で繋がれ、二人は吸い込み口の手前で止まった。
「フェリシアもういい。僕を放せ。このままでは君の右手が千切れてしまう」
吸い込む力はとてつもなく強い。
フェリクスは魔力を使って自分の身体を強化しているが、左手でミランを抱え、右手に鎖を巻いている状態は、かなり辛い態勢だった。
「フェリシア、逃げろ! このままじゃ共倒れだ。これは命令だぞ!」
ミランが怒鳴った。
「嫌です、ミラン殿下が吸い込まれちゃうなんて……絶対に放しません!」
「君は理論的・合理的な性格じゃなかったのか!? プロフィールを変更しろー!」
「何わけのわからないこと言ってるんですか! 絶対に嫌……嫌だから!」
「分からず屋!」
「嫌なものは嫌なのっ。ミラン殿下がいなくなっちゃうなんて、嫌だっ」
「ミラン第三王子殿下、フェリクス・ブライトナー魔法師団団長、どうしました!」
夜間警備の兵士が何事かと、駆けつけてきた。
掃除魔道具の注意が一瞬、そちらに向かう。吸い込む力がほんの一瞬だけ、弱まった。
フェリクスはその一瞬を見逃さなかった。
素早く鎖を消してミランを下ろすと、ありったけの攻撃魔法を巨大吸い込み口に叩き込んだ。
何発か打ち込むと、吸い込み口が折れた。
やった!
とフェリクスが思った瞬間、彼女は魔力切れでふらりとよろめく。
しっかりと抱きとめられた。
薄目を開けると、心配そうなミランの顔があった。
「ミ……ラン殿下、掃除魔道具は……」
「元の大きさに戻って、止まったよ。一安心だ」
「! いや、まだ安心じゃないです、吸い込まれた団員たちは……?」
「あ、そうか、忘れてた!」
ミランは声を上げた。
1
あなたにおすすめの小説
崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜
束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。
家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。
「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。
皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。
今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。
ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……!
心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する
紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!!
完結済み。
毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる