男装魔法師団団長は第三王子に脅され「惚れ薬」を作らされる 両思い編

コーヒーブレイク

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そして誰もいなくなった? 7

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 大型掃除魔道具は、もの凄い速さでこちらに突進してきた。
 突進しながらクリーナーヘッド(吸い込み口)を持ち上げたかと思うと、クリーナーヘッドが廊下いっぱいに巨大化した!
 フェリクスは危険を感じ、瞬時に後ろに下がったが、うかれ団員は遅れた。
 次の瞬間、吸い込み口からゴオオオオオオオオオ、という音がしたかと思うと、団員は「うわああああああ」という悲鳴と共に、掃除魔道具に吸い込まれてしまった。

 うそでしょ。ありえない。

 フェリクスは迂闊にも、茫然としてしまった。
 魔道具が巨大化し、団員を吸い込んだ、という事実を彼女の頭が容認できないのだった。

 どうして吸い込み口が巨大化するの? 吸い込まれた団員はどうなったの? あの小さな本体に入るわけないのに。
 巨大化したのは吸い込み口だけで、掃除魔道具の本体部分(ゴミが溜まる部分)はそのままの大きさだ。
 一体どういう理屈なんだ?
 フェリクスは混乱した。
 その間、掃除魔道具は、フェリクスをも吸い込もうと、吸い込み口を再び持ち上げた。

「!」

 まずい……。

 フェリクスがそう思ったとき、

「走れ! 逃げるぞ!!」

 そう声がして、誰かに腕を強く引かれた。

「ぼんやりするんじゃない! 君まで吸い込まれるぞ!」

 ――フェリクスを助けたのは……ミランだった。

「ミラン殿下、どうして」

「やっぱり心配だったから、見に来たんだ。そうしたら『は~るがき~た』とかいう歌が聞こえてきて……って、話は後だ! 逃げるぞ!」

「は、はい。すみません、私としたことが、理論的にあり得ないことに出会って、フリーズしてしまって」


 フェリクスとミランは掃除魔道具から必死に逃げたが、あっけなく追いつかれてしまった。
 何しろ掃除魔道具はズルズルと這う蛇のように、とても速い動きで的確に二人を追いかけてくるのだ。

 ――ついに二人は行き止まりに追い詰められてしまった。

「くそ、この魔道具、意思を持っているな」

 ミランがフェリクスの腕をつかんだまま言った。

「ありえませんよ、ミラン殿下。魔道具が意思を持つなんて」

 フェリクスはまだ信じられない。これじゃホラーだ。

「いや、事実だフェリシア。現に、この魔道具、魔力源コードに繋いでないのに動いている」

 ミランの言葉にフェリクスははっとした。
 まさか、この掃除魔道具は、吸い込んだ団員の魔力を動力源にしてるんじゃ? だから、高い魔力を持つ、魔法師団ばかり狙った? そんなことを、魔道具が考えるっていうの?

 とかなんとかフェリクスが考えているうちに、また吸い込み口がバーンと大きくなり、二人を吸い込もうとした。
 フェリクスは魔法の鎖を自分の右手から具現化させ、王宮の柱に巻き付けた。
 間一髪、鎖で繋がれ、二人は吸い込み口の手前で止まった。

「フェリシアもういい。僕を放せ。このままでは君の右手が千切れてしまう」

 吸い込む力はとてつもなく強い。
 フェリクスは魔力を使って自分の身体を強化しているが、左手でミランを抱え、右手に鎖を巻いている状態は、かなり辛い態勢だった。

「フェリシア、逃げろ! このままじゃ共倒れだ。これは命令だぞ!」

 ミランが怒鳴った。

「嫌です、ミラン殿下が吸い込まれちゃうなんて……絶対に放しません!」

「君は理論的・合理的な性格じゃなかったのか!? プロフィールを変更しろー!」

「何わけのわからないこと言ってるんですか! 絶対に嫌……嫌だから!」

「分からず屋!」

「嫌なものは嫌なのっ。ミラン殿下がいなくなっちゃうなんて、嫌だっ」

「ミラン第三王子殿下、フェリクス・ブライトナー魔法師団団長、どうしました!」

 夜間警備の兵士が何事かと、駆けつけてきた。
 掃除魔道具の注意が一瞬、そちらに向かう。吸い込む力がほんの一瞬だけ、弱まった。
 フェリクスはその一瞬を見逃さなかった。
 素早く鎖を消してミランを下ろすと、ありったけの攻撃魔法を巨大吸い込み口に叩き込んだ。
 何発か打ち込むと、吸い込み口が折れた。
 やった!
 とフェリクスが思った瞬間、彼女は魔力切れでふらりとよろめく。
 しっかりと抱きとめられた。
 薄目を開けると、心配そうなミランの顔があった。

「ミ……ラン殿下、掃除魔道具は……」

「元の大きさに戻って、止まったよ。一安心だ」

「! いや、まだ安心じゃないです、吸い込まれた団員たちは……?」

「あ、そうか、忘れてた!」

 ミランは声を上げた。
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