33 / 72
そして誰もいなくなった? 8
しおりを挟む
フェリクスとミランは掃除魔道具の「本体」に近寄った。
「理論的に言うと、この小さな『本体』に、三十七人の魔法師団団員が入っているということになりますね」
フェリクスが淡々と事実を告げる。
「ああ。吸い込まれた団員は、ここに収まるからね。どういう原理で、ここに三十七人も入るのか、不思議だけど」
ミランが『本体』のふたを開ける。と同時に、ぼん、という音がして、三十七人の魔法師団団員が山になって姿を現した。みんな魔力切れを起こしてぐったりしているが、特に外傷はなさそうだった。
「みんな……無事でよかった!」
内心、「本体」の中でバラバラのぐちゃぐ……とかになってるんじゃと思っていたフェリクスは安堵した。
だからミランに吸い込まれてほしくなかったのだ。
衰弱が激しい団員は、夜間警備の兵士たちが救護室に連れて行ってくれた。自力で部屋に戻れる団員は、わけがわからない、という顔をしながらも、ミランとフェリクスに敬礼して、戻っていった。
「フェリシア、報告は夜が明けてからにして、僕らも団長室に戻ろう。壊れた掃除魔道具は、夜間警備の兵士が片づけてくれる」
「……そうですね」
フェリクスも魔力をたくさん使って、くたくただった。
魔法師団団長室に、当然のごとく、ミランもついて来た。
フェリクスは魔法師団の制服を着替え、私室のベッドに倒れ込んだ。ミランも一緒に倒れ込んだ。
「殿下、あの大型掃除魔道具は、一体、何がしたかったんでしょう」
フェリシアは自分のベッドに仰向けに寝ている恋人に問うた。
「やっぱり、王宮の掃除がしたかったんじゃないのか? ルルンバに代わって、お払い箱になっても、今まで掃除してたのは自分なんだから」
ミランは天井を見つめながら言った。もう解決したんだから、理屈はどうでもいいという感じが口調から読み取れた。
「だけど魔力がないと動けないから、魔法師団を狙って、吸い込んで、魔力を頂いたってことですか。魔道具に、そんな意思があるなんて、信じられません。しかも、昼に姿を現さなかった」
フェリシアの方はどうしても、大型掃除魔道具の動機が気になってしまう。
「昼に姿を現したらさすがにすぐ気がつかれて騒ぎになるだろう。だからじゃないの?」
ミランは幾分投げやりに言った。
「そうですけど……」
ミランのその言い方に、ちょっとフェリシアは不満だった。もうちょっと真面目に考えてくれたらいいのに。
ミランはそんなフェリシアの想いをよそに、同じベッドに横になるフェリシアを抱きよせた。フェリシアの耳元でそっとささやく。
「フェリシア、あんまり危険なことをしないでくれ」
「うーん、それは今後の魔法師団の活動次第ですね」
「ちょっと、僕がこんな決めゼリフを言ってるのに、その返し?」
「あはは、私を助けに来てくれたミラン殿下は、とても格好良かったですよ。いつもと違って、ギャップ萌え、です」
「な、なんだよ、いつもと違ってって!」
憤慨するミランの腕の中でフェリシアはクスクス笑った。
「私を助けに来てくれて、ありがとうございます、ミラン殿下」
フェリシアはミランにそのまま抱きついた。失った魔力も、そうしていると、どんどん補充されていく気がした。
自分が満たされていく気がする――。
「――ああ、もう!」
ミランが突然叫んだ。
「君だってギャップ萌えじゃないか!」
「?」
フェリシアはきょとんとして、青い目をミランに向ける。
「いつもクールで合理的、なのに、今日はずいぶん感情的だったね」
「あ……」
フェリシアは二人して掃除魔道具に吸い込まれそうになったときのことを、思い出す。
『――嫌なものは嫌なのっ。ミラン殿下がいなくなっちゃうなんて、嫌だっ――』
あのときは無我夢中で、とにかくミランを離すまいとした。
結局は吸い込まれても助かったわけだけど、あの時点では吸い込まれたらどうなるか分からなかったから。
団員がどんどん欠けていってしまうのもショックだったけど、ミランがいなくなってしまったら、立ち直れそうにない。
(愛しています、ミラン殿下)
フェリシアはミランの胸の鼓動を聞きながら、目を閉じた。
「理論的に言うと、この小さな『本体』に、三十七人の魔法師団団員が入っているということになりますね」
フェリクスが淡々と事実を告げる。
「ああ。吸い込まれた団員は、ここに収まるからね。どういう原理で、ここに三十七人も入るのか、不思議だけど」
ミランが『本体』のふたを開ける。と同時に、ぼん、という音がして、三十七人の魔法師団団員が山になって姿を現した。みんな魔力切れを起こしてぐったりしているが、特に外傷はなさそうだった。
「みんな……無事でよかった!」
内心、「本体」の中でバラバラのぐちゃぐ……とかになってるんじゃと思っていたフェリクスは安堵した。
だからミランに吸い込まれてほしくなかったのだ。
衰弱が激しい団員は、夜間警備の兵士たちが救護室に連れて行ってくれた。自力で部屋に戻れる団員は、わけがわからない、という顔をしながらも、ミランとフェリクスに敬礼して、戻っていった。
「フェリシア、報告は夜が明けてからにして、僕らも団長室に戻ろう。壊れた掃除魔道具は、夜間警備の兵士が片づけてくれる」
「……そうですね」
フェリクスも魔力をたくさん使って、くたくただった。
魔法師団団長室に、当然のごとく、ミランもついて来た。
フェリクスは魔法師団の制服を着替え、私室のベッドに倒れ込んだ。ミランも一緒に倒れ込んだ。
「殿下、あの大型掃除魔道具は、一体、何がしたかったんでしょう」
フェリシアは自分のベッドに仰向けに寝ている恋人に問うた。
「やっぱり、王宮の掃除がしたかったんじゃないのか? ルルンバに代わって、お払い箱になっても、今まで掃除してたのは自分なんだから」
ミランは天井を見つめながら言った。もう解決したんだから、理屈はどうでもいいという感じが口調から読み取れた。
「だけど魔力がないと動けないから、魔法師団を狙って、吸い込んで、魔力を頂いたってことですか。魔道具に、そんな意思があるなんて、信じられません。しかも、昼に姿を現さなかった」
フェリシアの方はどうしても、大型掃除魔道具の動機が気になってしまう。
「昼に姿を現したらさすがにすぐ気がつかれて騒ぎになるだろう。だからじゃないの?」
ミランは幾分投げやりに言った。
「そうですけど……」
ミランのその言い方に、ちょっとフェリシアは不満だった。もうちょっと真面目に考えてくれたらいいのに。
ミランはそんなフェリシアの想いをよそに、同じベッドに横になるフェリシアを抱きよせた。フェリシアの耳元でそっとささやく。
「フェリシア、あんまり危険なことをしないでくれ」
「うーん、それは今後の魔法師団の活動次第ですね」
「ちょっと、僕がこんな決めゼリフを言ってるのに、その返し?」
「あはは、私を助けに来てくれたミラン殿下は、とても格好良かったですよ。いつもと違って、ギャップ萌え、です」
「な、なんだよ、いつもと違ってって!」
憤慨するミランの腕の中でフェリシアはクスクス笑った。
「私を助けに来てくれて、ありがとうございます、ミラン殿下」
フェリシアはミランにそのまま抱きついた。失った魔力も、そうしていると、どんどん補充されていく気がした。
自分が満たされていく気がする――。
「――ああ、もう!」
ミランが突然叫んだ。
「君だってギャップ萌えじゃないか!」
「?」
フェリシアはきょとんとして、青い目をミランに向ける。
「いつもクールで合理的、なのに、今日はずいぶん感情的だったね」
「あ……」
フェリシアは二人して掃除魔道具に吸い込まれそうになったときのことを、思い出す。
『――嫌なものは嫌なのっ。ミラン殿下がいなくなっちゃうなんて、嫌だっ――』
あのときは無我夢中で、とにかくミランを離すまいとした。
結局は吸い込まれても助かったわけだけど、あの時点では吸い込まれたらどうなるか分からなかったから。
団員がどんどん欠けていってしまうのもショックだったけど、ミランがいなくなってしまったら、立ち直れそうにない。
(愛しています、ミラン殿下)
フェリシアはミランの胸の鼓動を聞きながら、目を閉じた。
1
あなたにおすすめの小説
崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜
束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。
家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。
「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。
皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。
今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。
ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……!
心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する
紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!!
完結済み。
毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる