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そして誰もいなくなった? 8
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フェリクスとミランは掃除魔道具の「本体」に近寄った。
「理論的に言うと、この小さな『本体』に、三十七人の魔法師団団員が入っているということになりますね」
フェリクスが淡々と事実を告げる。
「ああ。吸い込まれた団員は、ここに収まるからね。どういう原理で、ここに三十七人も入るのか、不思議だけど」
ミランが『本体』のふたを開ける。と同時に、ぼん、という音がして、三十七人の魔法師団団員が山になって姿を現した。みんな魔力切れを起こしてぐったりしているが、特に外傷はなさそうだった。
「みんな……無事でよかった!」
内心、「本体」の中でバラバラのぐちゃぐ……とかになってるんじゃと思っていたフェリクスは安堵した。
だからミランに吸い込まれてほしくなかったのだ。
衰弱が激しい団員は、夜間警備の兵士たちが救護室に連れて行ってくれた。自力で部屋に戻れる団員は、わけがわからない、という顔をしながらも、ミランとフェリクスに敬礼して、戻っていった。
「フェリシア、報告は夜が明けてからにして、僕らも団長室に戻ろう。壊れた掃除魔道具は、夜間警備の兵士が片づけてくれる」
「……そうですね」
フェリクスも魔力をたくさん使って、くたくただった。
魔法師団団長室に、当然のごとく、ミランもついて来た。
フェリクスは魔法師団の制服を着替え、私室のベッドに倒れ込んだ。ミランも一緒に倒れ込んだ。
「殿下、あの大型掃除魔道具は、一体、何がしたかったんでしょう」
フェリシアは自分のベッドに仰向けに寝ている恋人に問うた。
「やっぱり、王宮の掃除がしたかったんじゃないのか? ルルンバに代わって、お払い箱になっても、今まで掃除してたのは自分なんだから」
ミランは天井を見つめながら言った。もう解決したんだから、理屈はどうでもいいという感じが口調から読み取れた。
「だけど魔力がないと動けないから、魔法師団を狙って、吸い込んで、魔力を頂いたってことですか。魔道具に、そんな意思があるなんて、信じられません。しかも、昼に姿を現さなかった」
フェリシアの方はどうしても、大型掃除魔道具の動機が気になってしまう。
「昼に姿を現したらさすがにすぐ気がつかれて騒ぎになるだろう。だからじゃないの?」
ミランは幾分投げやりに言った。
「そうですけど……」
ミランのその言い方に、ちょっとフェリシアは不満だった。もうちょっと真面目に考えてくれたらいいのに。
ミランはそんなフェリシアの想いをよそに、同じベッドに横になるフェリシアを抱きよせた。フェリシアの耳元でそっとささやく。
「フェリシア、あんまり危険なことをしないでくれ」
「うーん、それは今後の魔法師団の活動次第ですね」
「ちょっと、僕がこんな決めゼリフを言ってるのに、その返し?」
「あはは、私を助けに来てくれたミラン殿下は、とても格好良かったですよ。いつもと違って、ギャップ萌え、です」
「な、なんだよ、いつもと違ってって!」
憤慨するミランの腕の中でフェリシアはクスクス笑った。
「私を助けに来てくれて、ありがとうございます、ミラン殿下」
フェリシアはミランにそのまま抱きついた。失った魔力も、そうしていると、どんどん補充されていく気がした。
自分が満たされていく気がする――。
「――ああ、もう!」
ミランが突然叫んだ。
「君だってギャップ萌えじゃないか!」
「?」
フェリシアはきょとんとして、青い目をミランに向ける。
「いつもクールで合理的、なのに、今日はずいぶん感情的だったね」
「あ……」
フェリシアは二人して掃除魔道具に吸い込まれそうになったときのことを、思い出す。
『――嫌なものは嫌なのっ。ミラン殿下がいなくなっちゃうなんて、嫌だっ――』
あのときは無我夢中で、とにかくミランを離すまいとした。
結局は吸い込まれても助かったわけだけど、あの時点では吸い込まれたらどうなるか分からなかったから。
団員がどんどん欠けていってしまうのもショックだったけど、ミランがいなくなってしまったら、立ち直れそうにない。
(愛しています、ミラン殿下)
フェリシアはミランの胸の鼓動を聞きながら、目を閉じた。
「理論的に言うと、この小さな『本体』に、三十七人の魔法師団団員が入っているということになりますね」
フェリクスが淡々と事実を告げる。
「ああ。吸い込まれた団員は、ここに収まるからね。どういう原理で、ここに三十七人も入るのか、不思議だけど」
ミランが『本体』のふたを開ける。と同時に、ぼん、という音がして、三十七人の魔法師団団員が山になって姿を現した。みんな魔力切れを起こしてぐったりしているが、特に外傷はなさそうだった。
「みんな……無事でよかった!」
内心、「本体」の中でバラバラのぐちゃぐ……とかになってるんじゃと思っていたフェリクスは安堵した。
だからミランに吸い込まれてほしくなかったのだ。
衰弱が激しい団員は、夜間警備の兵士たちが救護室に連れて行ってくれた。自力で部屋に戻れる団員は、わけがわからない、という顔をしながらも、ミランとフェリクスに敬礼して、戻っていった。
「フェリシア、報告は夜が明けてからにして、僕らも団長室に戻ろう。壊れた掃除魔道具は、夜間警備の兵士が片づけてくれる」
「……そうですね」
フェリクスも魔力をたくさん使って、くたくただった。
魔法師団団長室に、当然のごとく、ミランもついて来た。
フェリクスは魔法師団の制服を着替え、私室のベッドに倒れ込んだ。ミランも一緒に倒れ込んだ。
「殿下、あの大型掃除魔道具は、一体、何がしたかったんでしょう」
フェリシアは自分のベッドに仰向けに寝ている恋人に問うた。
「やっぱり、王宮の掃除がしたかったんじゃないのか? ルルンバに代わって、お払い箱になっても、今まで掃除してたのは自分なんだから」
ミランは天井を見つめながら言った。もう解決したんだから、理屈はどうでもいいという感じが口調から読み取れた。
「だけど魔力がないと動けないから、魔法師団を狙って、吸い込んで、魔力を頂いたってことですか。魔道具に、そんな意思があるなんて、信じられません。しかも、昼に姿を現さなかった」
フェリシアの方はどうしても、大型掃除魔道具の動機が気になってしまう。
「昼に姿を現したらさすがにすぐ気がつかれて騒ぎになるだろう。だからじゃないの?」
ミランは幾分投げやりに言った。
「そうですけど……」
ミランのその言い方に、ちょっとフェリシアは不満だった。もうちょっと真面目に考えてくれたらいいのに。
ミランはそんなフェリシアの想いをよそに、同じベッドに横になるフェリシアを抱きよせた。フェリシアの耳元でそっとささやく。
「フェリシア、あんまり危険なことをしないでくれ」
「うーん、それは今後の魔法師団の活動次第ですね」
「ちょっと、僕がこんな決めゼリフを言ってるのに、その返し?」
「あはは、私を助けに来てくれたミラン殿下は、とても格好良かったですよ。いつもと違って、ギャップ萌え、です」
「な、なんだよ、いつもと違ってって!」
憤慨するミランの腕の中でフェリシアはクスクス笑った。
「私を助けに来てくれて、ありがとうございます、ミラン殿下」
フェリシアはミランにそのまま抱きついた。失った魔力も、そうしていると、どんどん補充されていく気がした。
自分が満たされていく気がする――。
「――ああ、もう!」
ミランが突然叫んだ。
「君だってギャップ萌えじゃないか!」
「?」
フェリシアはきょとんとして、青い目をミランに向ける。
「いつもクールで合理的、なのに、今日はずいぶん感情的だったね」
「あ……」
フェリシアは二人して掃除魔道具に吸い込まれそうになったときのことを、思い出す。
『――嫌なものは嫌なのっ。ミラン殿下がいなくなっちゃうなんて、嫌だっ――』
あのときは無我夢中で、とにかくミランを離すまいとした。
結局は吸い込まれても助かったわけだけど、あの時点では吸い込まれたらどうなるか分からなかったから。
団員がどんどん欠けていってしまうのもショックだったけど、ミランがいなくなってしまったら、立ち直れそうにない。
(愛しています、ミラン殿下)
フェリシアはミランの胸の鼓動を聞きながら、目を閉じた。
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