34 / 72
そして誰もいなくなった? 9 (完)
しおりを挟む
――数日後、魔法師団の活動は再開された。
吸い込まれた全ての団員がただの魔力切れで、すぐに元気になったからだ。
数日間飲まず食わずで閉じ込められていた団員も、多少衰弱していただけだった。
どうなってるんだ? あの「本体」の中は? 異空間だったとでもいうのだろうか。
ますます謎な「大型掃除魔道具事件」であった。
団員たちは、吸い込まれたあとのことをまるで覚えていなかった。
ただ、吸い込まれるまでの過程は皆似たり寄ったりだった。
みんな、べろべろに酔っぱらっていたのである。
王宮内の酒場、王都での夜遊び、飲んだ場所はさまざまだが、とにかく夜中、酔っぱらって王宮の廊下を歩いていたら、大型掃除魔道具に出くわして、訳も分からぬまま吸い込まれたらしい。
酔っぱらっているので、大型掃除魔道具の素早い出現に対応できなかった。
仕事中はそれなりにちゃんとしているが、夜、プライベートな時間は無防備な魔法師団であった……。
ちなみに、大型掃除魔道具は取り込んだ魔法師団団員の魔力で動いていたので、近づいてくれば、魔力持ちは魔力を感知できるはずである。
ただ、いくら感知できるとは言っても、別のことに気を取られていたり、近くに魔力持ちがいたりすると、どれが誰の魔力か分からないのである。
黒髪ヘアピン団員が被害に遭ったとき、大型掃除魔道具が近くにいたにもかかわらず、フェリクスが気がつかなかったのも、まわりが魔法師団団員たちの部屋だったからなのだ。
「――というわけで、今日から一か月、魔法師団は禁酒することになった」
とある日、団員を全員集めて、フェリクスはそう宣言した。
当然、団員たちからは大ブーイングだ。
「横暴だ!」
「国のために働いている俺たちのささやかな楽しみを奪うなんて」
「団長がそんな人だとは思わなかった」
「明日から生きていけない」
たった一か月の禁酒でオーバーな……。今回の事件はもとより、最近の魔法師団はたるみすぎだ。毎夜毎夜酔っぱらって、二日酔い。ここで軌道修正しなくては。
それにフェリクスは、心の中で、何となく思っていることがあった。
大型掃除魔道具が魔法師団団員を吸い込もうとしたのは、夜中、べろべろに酔っぱらった団員たちを「ゴミ」と判断したためではないだろうかと。
魔力を補充するために魔法師団を狙ったわけではなく、魔法師団の制服を着て、夜中に酔っぱらってふらついている=ゴミ
と、大型掃除魔道具が結論づけたとしたら?
フェリクスの考えはこうだ。
大型掃除魔道具には、意思が生まれていた。……非理論的だが、ミランによると、大型掃除魔道具は修理を重ねて、五十年くらい王宮の掃除に使っていたらしいから、その間に自我が生まれたと考える。
ルルンバに王宮掃除の仕事を奪われたが、大型掃除魔道具は掃除がしたかった。その思いから、魔力源コードに繋がなくても、動けるようになった。
そこに、べろべろに酔っぱらった魔法師団の団員が登場する。
あ、ゴミだ、ととっさに思って団員を吸い込む。魔力を得て、パワーアップ!
そしてそれをくり返す。昼はみんなの目があるから、主に夜中に……。
大型掃除魔道具は、エルドゥ王国に危機をもたらしたということで、あの後破棄されてしまった。
だからもう、本当のことは分からない。
ただ、フェリクスが出した答えがこれだった。
「団長、厳しすぎますよ、禁酒は二日にして下さい!」
団員たちがフェリクスに詰め寄る。
「二日じゃただの休肝日じゃないか」
フェリクスは呆れて言った。あんな目にあったのに立ち直りが早い団員たちである。あ、記憶が無いのか。
「フェリクス団長!」
「しょうがないな。禁酒じゃなくて、ちょっとなら飲んでもいいことにするよ。これからは、節度を守って飲むこと。二日酔いで仕事に支障をきたさないように!」
「やったー!」
今日も、エルドゥ王国は、平和である。
そして誰もいなくなった? 終わり。
※ 長い話のわりに無理矢理なんとか終わらせた感じになってしまいました(^^;
腑に落ちない点が色々とあると思いますが、ご容赦ください。
吸い込まれた全ての団員がただの魔力切れで、すぐに元気になったからだ。
数日間飲まず食わずで閉じ込められていた団員も、多少衰弱していただけだった。
どうなってるんだ? あの「本体」の中は? 異空間だったとでもいうのだろうか。
ますます謎な「大型掃除魔道具事件」であった。
団員たちは、吸い込まれたあとのことをまるで覚えていなかった。
ただ、吸い込まれるまでの過程は皆似たり寄ったりだった。
みんな、べろべろに酔っぱらっていたのである。
王宮内の酒場、王都での夜遊び、飲んだ場所はさまざまだが、とにかく夜中、酔っぱらって王宮の廊下を歩いていたら、大型掃除魔道具に出くわして、訳も分からぬまま吸い込まれたらしい。
酔っぱらっているので、大型掃除魔道具の素早い出現に対応できなかった。
仕事中はそれなりにちゃんとしているが、夜、プライベートな時間は無防備な魔法師団であった……。
ちなみに、大型掃除魔道具は取り込んだ魔法師団団員の魔力で動いていたので、近づいてくれば、魔力持ちは魔力を感知できるはずである。
ただ、いくら感知できるとは言っても、別のことに気を取られていたり、近くに魔力持ちがいたりすると、どれが誰の魔力か分からないのである。
黒髪ヘアピン団員が被害に遭ったとき、大型掃除魔道具が近くにいたにもかかわらず、フェリクスが気がつかなかったのも、まわりが魔法師団団員たちの部屋だったからなのだ。
「――というわけで、今日から一か月、魔法師団は禁酒することになった」
とある日、団員を全員集めて、フェリクスはそう宣言した。
当然、団員たちからは大ブーイングだ。
「横暴だ!」
「国のために働いている俺たちのささやかな楽しみを奪うなんて」
「団長がそんな人だとは思わなかった」
「明日から生きていけない」
たった一か月の禁酒でオーバーな……。今回の事件はもとより、最近の魔法師団はたるみすぎだ。毎夜毎夜酔っぱらって、二日酔い。ここで軌道修正しなくては。
それにフェリクスは、心の中で、何となく思っていることがあった。
大型掃除魔道具が魔法師団団員を吸い込もうとしたのは、夜中、べろべろに酔っぱらった団員たちを「ゴミ」と判断したためではないだろうかと。
魔力を補充するために魔法師団を狙ったわけではなく、魔法師団の制服を着て、夜中に酔っぱらってふらついている=ゴミ
と、大型掃除魔道具が結論づけたとしたら?
フェリクスの考えはこうだ。
大型掃除魔道具には、意思が生まれていた。……非理論的だが、ミランによると、大型掃除魔道具は修理を重ねて、五十年くらい王宮の掃除に使っていたらしいから、その間に自我が生まれたと考える。
ルルンバに王宮掃除の仕事を奪われたが、大型掃除魔道具は掃除がしたかった。その思いから、魔力源コードに繋がなくても、動けるようになった。
そこに、べろべろに酔っぱらった魔法師団の団員が登場する。
あ、ゴミだ、ととっさに思って団員を吸い込む。魔力を得て、パワーアップ!
そしてそれをくり返す。昼はみんなの目があるから、主に夜中に……。
大型掃除魔道具は、エルドゥ王国に危機をもたらしたということで、あの後破棄されてしまった。
だからもう、本当のことは分からない。
ただ、フェリクスが出した答えがこれだった。
「団長、厳しすぎますよ、禁酒は二日にして下さい!」
団員たちがフェリクスに詰め寄る。
「二日じゃただの休肝日じゃないか」
フェリクスは呆れて言った。あんな目にあったのに立ち直りが早い団員たちである。あ、記憶が無いのか。
「フェリクス団長!」
「しょうがないな。禁酒じゃなくて、ちょっとなら飲んでもいいことにするよ。これからは、節度を守って飲むこと。二日酔いで仕事に支障をきたさないように!」
「やったー!」
今日も、エルドゥ王国は、平和である。
そして誰もいなくなった? 終わり。
※ 長い話のわりに無理矢理なんとか終わらせた感じになってしまいました(^^;
腑に落ちない点が色々とあると思いますが、ご容赦ください。
1
あなたにおすすめの小説
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました
さら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。
裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。
「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。
恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……?
温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。
――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!?
胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる