60 / 72
辞める団員 3
しおりを挟む
不意を突かれた言葉に、フェリシアは団員をまじまじと見た。
「辞める……そうか、分かった。急な話だけれど、そういうことなら仕方がない」
「あれ、引き止めてくれないんですね。形だけでも」
団員はおどけるように言う。「俺は団長と違って人気ランキングトップ5入りしてないもんな~」
「そういうわけじゃない。私は……引き止めないよ。君の新たな出発だもの。って、まだプロポーズもしていないのに、気が早くないか」
フェリシアは気づけばなんとなく「フェリクス」の口調になっていた。
「それもそうですね、あはは」
きっと、団員の話や態度から見るに、プロポーズはほぼ成功確定なんだろう。彼女もそれを待っている……。
フェリシアの口元が自然と緩む。
「彼女、俺が魔法師団に入るって言ったとき、おめでとうって言ってくれたけど、なんだか寂しそうだったんです。きっと俺が遠くの存在になってしまうと思ったんじゃないですかね。だから、故郷に帰って、魔力を生かして彼女の仕事を助けて、安心させてやりたいんです。彼女も魔力持ちだけど、野生の魔物退治は大変ですからね」
団員は大人びた表情をした。しっかりと地に足を付けている人間の顔だ、とフェリシアは思った。
彼はまだ若い。王宮の花形職「魔法師団」としてもっともっと活躍できるはずだ。
なのに、それよりも彼女を選ぶ。辺境の町で働くことを選ぶ。
「とりあえず、プロポーズしないと始まりませんからね。断られて、この話はなかったことになったら笑って下さい。じゃあ、団長、待ち合わせ場所で彼女が待ってますので、お先に! 一緒に探してくれてどうもありがとうございました!」
団員は敬礼をして去って行った。希望にあふれたその背中を見つめていると、フェリシアまでなんとなく嬉しい気持ちになる。
プロポーズかあ……。
フェリシアの愛しい恋人との待ち合わせ時間ももうすぐだ。
今日はどこに二人で出かけるか、決めていない。
ミランが「内緒だ」と言ったからだ。
どこに連れて行ってくれるんだろう。
フェリシアはロングスカートの裾を整え(団員の探し物に付き合ったため、しわくちゃだ)外へと急いだ。
「フェリシア」
外に出ると、ミランが待っていた。
いつもより大人っぽい服装と、髪型をしている。
いつもの変装を兼ねたカジュアルファッションじゃない。どうしたんだろう。
「お待たせして申し訳ありません、ミラン殿下」
「いや、僕も今来たところだよ。さあ、乗って」
「え?」
ミランの横に、一台の車が止まっていた。エルドゥ王国に一般的に普及している魔力で動く乗用車だ。
ミランは恭しく助手席のドアを開けた。
「フェリシア、僕は運転免許を取ったんだ。今日はドライブしよう!」
「辞める……そうか、分かった。急な話だけれど、そういうことなら仕方がない」
「あれ、引き止めてくれないんですね。形だけでも」
団員はおどけるように言う。「俺は団長と違って人気ランキングトップ5入りしてないもんな~」
「そういうわけじゃない。私は……引き止めないよ。君の新たな出発だもの。って、まだプロポーズもしていないのに、気が早くないか」
フェリシアは気づけばなんとなく「フェリクス」の口調になっていた。
「それもそうですね、あはは」
きっと、団員の話や態度から見るに、プロポーズはほぼ成功確定なんだろう。彼女もそれを待っている……。
フェリシアの口元が自然と緩む。
「彼女、俺が魔法師団に入るって言ったとき、おめでとうって言ってくれたけど、なんだか寂しそうだったんです。きっと俺が遠くの存在になってしまうと思ったんじゃないですかね。だから、故郷に帰って、魔力を生かして彼女の仕事を助けて、安心させてやりたいんです。彼女も魔力持ちだけど、野生の魔物退治は大変ですからね」
団員は大人びた表情をした。しっかりと地に足を付けている人間の顔だ、とフェリシアは思った。
彼はまだ若い。王宮の花形職「魔法師団」としてもっともっと活躍できるはずだ。
なのに、それよりも彼女を選ぶ。辺境の町で働くことを選ぶ。
「とりあえず、プロポーズしないと始まりませんからね。断られて、この話はなかったことになったら笑って下さい。じゃあ、団長、待ち合わせ場所で彼女が待ってますので、お先に! 一緒に探してくれてどうもありがとうございました!」
団員は敬礼をして去って行った。希望にあふれたその背中を見つめていると、フェリシアまでなんとなく嬉しい気持ちになる。
プロポーズかあ……。
フェリシアの愛しい恋人との待ち合わせ時間ももうすぐだ。
今日はどこに二人で出かけるか、決めていない。
ミランが「内緒だ」と言ったからだ。
どこに連れて行ってくれるんだろう。
フェリシアはロングスカートの裾を整え(団員の探し物に付き合ったため、しわくちゃだ)外へと急いだ。
「フェリシア」
外に出ると、ミランが待っていた。
いつもより大人っぽい服装と、髪型をしている。
いつもの変装を兼ねたカジュアルファッションじゃない。どうしたんだろう。
「お待たせして申し訳ありません、ミラン殿下」
「いや、僕も今来たところだよ。さあ、乗って」
「え?」
ミランの横に、一台の車が止まっていた。エルドゥ王国に一般的に普及している魔力で動く乗用車だ。
ミランは恭しく助手席のドアを開けた。
「フェリシア、僕は運転免許を取ったんだ。今日はドライブしよう!」
0
あなたにおすすめの小説
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました
さら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。
裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。
「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。
恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……?
温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。
――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!?
胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!
婚約破棄の慰謝料として『王国の半分』を要求したら、本当にくれたので、今日から私があなたの女王様です
唯崎りいち
恋愛
婚約破棄の慰謝料に
「王国の半分」を要求したら、
ゴミみたいな土地を押し付けられた。
ならば――関所を作りまくって
王子を経済的に詰ませることにした。
支配目当ての女王による、
愛なき(?)完全勝利の記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる