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素直になれない天才博士と奥手な助手のある日のお話。
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「アキモトくん! ついに完成したぞ!」
世紀の天才発明家であるミナミ博士が、助手のアキモト青年を呼びつけた。
急いで博士の元に駆け付けたアキモトはちょっと、いや、かなり驚いた。博士が化粧をしていたからだ。
若干二十五歳で世界的天才発明家に認めらたミナミ博士は、結構美人だが、発明に明け暮れて、いつもは化粧なんてしないのだ。
着ているのはいつもの白衣だが、いったいどうしたんだろう? そんなに発明が完成したのが嬉しいのかな?
そう思ったアキモトは、博士にたずねた。
「一体なにが完成したんです?」
「ふふふふ、聞いて驚け。『好きな人が分かる装置』だ」
「なんですか、それは」
アキモトの問いを無視して、ミナミ博士はいそいそとアキモト青年の頭にヘルメットのようなものを被せる。ヘルメットにはアンテナのようなものが三本、飛び出ていた。
「スイッチオン!」
博士がそう言ってスイッチを押すと、助手は苦しみだした。
「うわあああああああ、ぐおおおおおおおお」
しばらくすると、目の前のモニターに、ミナミ博士の顔が映った!
「こ、これは?」
ぐったりとしたアキモトが博士に問うと、博士は満足げに腰に手を当て「大成功だ!」と言った。腰まである長い黒髪(手入れはあまりされていない)が揺れる。
「やっぱり私は天才だ! アキモトくん、これは脳波を解析して、対象人物の『好きな人』を割り出す装置なんだ」
「え? じゃ、じゃあ、モニターに博士の顔が映ったということは、僕が好きなのは『ミナミ博士』だということですか?」
「明白だ。機械は嘘をつかない。アキモトくん、君は、私に恋しているね?」
ミナミ博士は自信満々にそう言い、アキモト助手に顔を近づけた。アキモト助手は首を振った。
「それは、違います。僕は博士に助手以上の想いを持ったことは一度もありませんよ」
「えっ」
博士の顔が急に幼くなった。助手は、俯き、ヘルメットを取ると、淡々とした口調で言った。
「失礼ながら、その装置は失敗ではないでしょうか? それでは僕は忙しいので失礼します」
「う、嘘だ。君は私に恋しているはず……どうしてそんな嘘をつくんだ?」
博士の言葉を無視して、アキモト助手はラボを出ていった。
♦♦♦
アキモトは、自室に戻ると、ベッドにどっかりと座った。
ひどいよ、ミナミ博士。あんな方法で、僕の心を覗くなんて。僕は、僕は、来週の博士の誕生日に、勇気を出して告白しようと思っていたのに。
そりゃあたしかに僕はかなり奥手で、博士に恋すること五年、何のアクションも出来なかったけどさ。何もこんなタイミングで、あんなやり方しなくたっていいじゃないか。
博士ってば、発明は天才かも知れないけれど、恋愛はポンコツだよ! だからついあんなこと言っちゃったし、これからどうしよう……。
そこまで考えて、アキモトはふと思った。
博士はどうしてあんな装置を作ったんだろう?
♦♦♦
ラボに一人残されたミナミ博士は、茫然と突っ立っていた。
なぜだ。
私の予測では「アキモトくん、君は、私に恋してるね?」「さすが博士、何でもお見通しですね! そのとおり! 僕は博士に恋してます!」「そういうことなら、結婚しようか」「はい、結婚しましょう!」
と、なるはずだったのに。
なんで? なぜこんな結果に? 五年間集めたアキモトくんの行動パターンや、私を見つめる視線の解析結果から言って、彼が私に好意を持っているのは間違いない。だが彼は奥手だ。だから、きっかけを作ってあげたのに。
今日は私とアキモトくんの結婚記念日になるはずだから、化粧までしたのに。
なんで? なんでこうなるの? アキモトくん、なんか怒っちゃった……。
「独り言が大きすぎますよ、博士。てか、結婚記念日とか、気が早すぎ」
「ずっとずっと好きだったのにー! アキモトくーん!」
「ちょっと、何泣いてるんですか、僕も好きですよ、博士が」
「アキモトくん!? いつからそこに」
化粧は崩れ、鼻水垂らしたミナミ博士は、ラボの入り口に立つアキモト助手を、驚いた顔で見つめる。
「なぜだ、私の予測では~からです。僕、博士がどうしてあんな装置作ったのか、考えてみたんです。まったく、博士は素直じゃないんですね。機械の力を借りるなんて」
「君だって、いつまでたってもはっきりしない態度で……って、アキモトくん、私のこと」
「好きですよ、五年前から。本当は来週言う予定だったんですけど」
言いながら、アキモト助手はミナミ博士に近寄り、彼女の顔を覗き込んだ。
「さあ、今度は博士の番ですよ。僕のことをどう思っているか、あなたの言葉で聞かせて下さい」
ミナミ博士は真っ赤になって、ぷいと横を向く。
「さっき言った」
「そうでした? 覚えてませーん。もう一度お願いしまーす」
「嘘つき!!」
ラボに、ミナミ博士の声がこだました。
世紀の天才発明家であるミナミ博士が、助手のアキモト青年を呼びつけた。
急いで博士の元に駆け付けたアキモトはちょっと、いや、かなり驚いた。博士が化粧をしていたからだ。
若干二十五歳で世界的天才発明家に認めらたミナミ博士は、結構美人だが、発明に明け暮れて、いつもは化粧なんてしないのだ。
着ているのはいつもの白衣だが、いったいどうしたんだろう? そんなに発明が完成したのが嬉しいのかな?
そう思ったアキモトは、博士にたずねた。
「一体なにが完成したんです?」
「ふふふふ、聞いて驚け。『好きな人が分かる装置』だ」
「なんですか、それは」
アキモトの問いを無視して、ミナミ博士はいそいそとアキモト青年の頭にヘルメットのようなものを被せる。ヘルメットにはアンテナのようなものが三本、飛び出ていた。
「スイッチオン!」
博士がそう言ってスイッチを押すと、助手は苦しみだした。
「うわあああああああ、ぐおおおおおおおお」
しばらくすると、目の前のモニターに、ミナミ博士の顔が映った!
「こ、これは?」
ぐったりとしたアキモトが博士に問うと、博士は満足げに腰に手を当て「大成功だ!」と言った。腰まである長い黒髪(手入れはあまりされていない)が揺れる。
「やっぱり私は天才だ! アキモトくん、これは脳波を解析して、対象人物の『好きな人』を割り出す装置なんだ」
「え? じゃ、じゃあ、モニターに博士の顔が映ったということは、僕が好きなのは『ミナミ博士』だということですか?」
「明白だ。機械は嘘をつかない。アキモトくん、君は、私に恋しているね?」
ミナミ博士は自信満々にそう言い、アキモト助手に顔を近づけた。アキモト助手は首を振った。
「それは、違います。僕は博士に助手以上の想いを持ったことは一度もありませんよ」
「えっ」
博士の顔が急に幼くなった。助手は、俯き、ヘルメットを取ると、淡々とした口調で言った。
「失礼ながら、その装置は失敗ではないでしょうか? それでは僕は忙しいので失礼します」
「う、嘘だ。君は私に恋しているはず……どうしてそんな嘘をつくんだ?」
博士の言葉を無視して、アキモト助手はラボを出ていった。
♦♦♦
アキモトは、自室に戻ると、ベッドにどっかりと座った。
ひどいよ、ミナミ博士。あんな方法で、僕の心を覗くなんて。僕は、僕は、来週の博士の誕生日に、勇気を出して告白しようと思っていたのに。
そりゃあたしかに僕はかなり奥手で、博士に恋すること五年、何のアクションも出来なかったけどさ。何もこんなタイミングで、あんなやり方しなくたっていいじゃないか。
博士ってば、発明は天才かも知れないけれど、恋愛はポンコツだよ! だからついあんなこと言っちゃったし、これからどうしよう……。
そこまで考えて、アキモトはふと思った。
博士はどうしてあんな装置を作ったんだろう?
♦♦♦
ラボに一人残されたミナミ博士は、茫然と突っ立っていた。
なぜだ。
私の予測では「アキモトくん、君は、私に恋してるね?」「さすが博士、何でもお見通しですね! そのとおり! 僕は博士に恋してます!」「そういうことなら、結婚しようか」「はい、結婚しましょう!」
と、なるはずだったのに。
なんで? なぜこんな結果に? 五年間集めたアキモトくんの行動パターンや、私を見つめる視線の解析結果から言って、彼が私に好意を持っているのは間違いない。だが彼は奥手だ。だから、きっかけを作ってあげたのに。
今日は私とアキモトくんの結婚記念日になるはずだから、化粧までしたのに。
なんで? なんでこうなるの? アキモトくん、なんか怒っちゃった……。
「独り言が大きすぎますよ、博士。てか、結婚記念日とか、気が早すぎ」
「ずっとずっと好きだったのにー! アキモトくーん!」
「ちょっと、何泣いてるんですか、僕も好きですよ、博士が」
「アキモトくん!? いつからそこに」
化粧は崩れ、鼻水垂らしたミナミ博士は、ラボの入り口に立つアキモト助手を、驚いた顔で見つめる。
「なぜだ、私の予測では~からです。僕、博士がどうしてあんな装置作ったのか、考えてみたんです。まったく、博士は素直じゃないんですね。機械の力を借りるなんて」
「君だって、いつまでたってもはっきりしない態度で……って、アキモトくん、私のこと」
「好きですよ、五年前から。本当は来週言う予定だったんですけど」
言いながら、アキモト助手はミナミ博士に近寄り、彼女の顔を覗き込んだ。
「さあ、今度は博士の番ですよ。僕のことをどう思っているか、あなたの言葉で聞かせて下さい」
ミナミ博士は真っ赤になって、ぷいと横を向く。
「さっき言った」
「そうでした? 覚えてませーん。もう一度お願いしまーす」
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