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「ああ、王宮の西棟にある、書庫室だよ。もう誰も読まないような、古い本が保管されている」
「聞いてもいいですか。ミラン殿下は、どうしてそのような所に?」
「あそこは個人が書いたようなレアな本も収められていてね。僕の結構お気に入りの場所なんだ。僕もマルガレーテも読書は嫌いじゃない。長期休暇中に、マルガレーテが好みそうな詩集でも見つけられないかと、出入りしていたんだ。マルガレーテは古書が好きなんだよ」
ミランはうっとりするように顔を綻ばせた。
本なんか読みそうにないこの王子が、自分と同じく読書好きだったことには少し驚いたが、それ以上に「健気なことだなあ」とフェリクスは思った。それで惚れ薬の本なんて見つけて、舞い上がってしまったのか。
するとミランは急に黙って、小さくため息をついた。
「実は先日、マルガレーテに手紙を出したんだ。会えなくてさみしいって。マルガレーテへの愛を書いていたらいつのまにか三十枚ぐらいの量になってて、さすがに長すぎるって側近に注意されたから泣く泣く十枚に減らした」
「はあ」
「だけど今日の朝来たマルガレーテからの返事は、また貴族学校で会えるじゃない、という実に短いものだった。たったの一枚。……そっけない」
いかに婚約者と言っても、結婚したわけではないので、もちろん、毎日一緒ではない。
「まあ、そっけないですね」
フェリクスは自分でも間抜けな返答をしてるな、と思った。と、同時に、自分だったら十枚の愛の手紙を貰ったら何と相手に返すかなあ、とふと考えて、そんなことは一生ないだろうとすぐに打ち消す。
「なぜだ、なぜ、僕の愛情が伝わらないんだ……」
ミランは一転、まんじゅうを握りつぶす勢いで憤り始めた。
今まで疑問だったことを、フェリクスは思い切ってミランに聞いてみた。
「ミラン殿下は……マルガレーテ様のどこに惹かれたのですか」
話や噂を聞くに、ミランはビアンカに毎日アプローチしていたユリアンのように、一方的にマルガレーテを追いかけていたようだ。ただ、努力が実って成就したユリアンと違い、マルガレーテの態度は最後まで変わらなかったらしい。
だからミランはかなり強引に婚約を取り付けた。マルガレーテは貴族女性らしく、王命に従った。ただしミランを愛しているわけではない……。
そんなふうにそっけなくされ続けたら、くじけて途中で気持ちが冷めてしまわないだろうか。マルガレーテ嬢とは、それほどに魅力的な女性なのだろうか。
フェリクスには、一向に振り向かない恋人を追い続けるミランの気持ちは分からなかった。
男性というものは、女性を追いかけるハンターだ、と何かの本に書いてあったけれど、自分は女だから、その気持ちは分からないのかもしれない。
そんなことを思っていると、ミランの顔色が変わったのに気がつき、フェリクスはしまった、と思った。
「聞いてもいいですか。ミラン殿下は、どうしてそのような所に?」
「あそこは個人が書いたようなレアな本も収められていてね。僕の結構お気に入りの場所なんだ。僕もマルガレーテも読書は嫌いじゃない。長期休暇中に、マルガレーテが好みそうな詩集でも見つけられないかと、出入りしていたんだ。マルガレーテは古書が好きなんだよ」
ミランはうっとりするように顔を綻ばせた。
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「はあ」
「だけど今日の朝来たマルガレーテからの返事は、また貴族学校で会えるじゃない、という実に短いものだった。たったの一枚。……そっけない」
いかに婚約者と言っても、結婚したわけではないので、もちろん、毎日一緒ではない。
「まあ、そっけないですね」
フェリクスは自分でも間抜けな返答をしてるな、と思った。と、同時に、自分だったら十枚の愛の手紙を貰ったら何と相手に返すかなあ、とふと考えて、そんなことは一生ないだろうとすぐに打ち消す。
「なぜだ、なぜ、僕の愛情が伝わらないんだ……」
ミランは一転、まんじゅうを握りつぶす勢いで憤り始めた。
今まで疑問だったことを、フェリクスは思い切ってミランに聞いてみた。
「ミラン殿下は……マルガレーテ様のどこに惹かれたのですか」
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そんなふうにそっけなくされ続けたら、くじけて途中で気持ちが冷めてしまわないだろうか。マルガレーテ嬢とは、それほどに魅力的な女性なのだろうか。
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