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両思い 6
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――そうは思っていても、王宮は近づいてくる。
魔物の捕獲を、魔法師団として、リステアードに報告しなくてはならない。
そうだった。私は今任務中……。他の団員にはあんな風に言っておいて、何やってるの……。
我に返りながら、食べ終えたクレープの包みを路地裏のゴミ箱に捨てていると、ミランが声を上げた。
「フェリクス殿、『占い』だって! やっていこう!」
「う、占い?」
見ると、路地裏の行き止まりに、年配の女性が一人で座っていた。前には小さな木の台があり、水晶玉のようなものが置いてある。「占い」という看板がでているが、客は誰もいない。正直うさんくさいな、とフェリクスは思った。ちゃんと営業許可取ってる?
「僕、こういうの、はじめてなんだ」
ミランはさっさと料金を払ってしまっていた。王都を護衛なしで自由に行動できて、明らかに浮かれている。
フェリクスは仕方なく、ミランに付いて行った。
占い師の女性はかなりの高齢で、いかにも占い師、というような、ミステリアスな雰囲気をかもし出しているが、あいにくフェリクスは占いと言うものを信じていなかった。
未来を予言するような魔法は聞いたことがないし、そもそも彼女から魔力は感じなかった。
「それでは、恋占いを始める!」
占い師の女性は突然宣言した。声はしわがれていたが、覇気があって、元気なおばあさんと言った感じだ。
ミランがきょとんとして、質問した。
「えっ。なんで恋占いなの? おばあさん」
「占いって言ったら、恋占いなんだよ、覚えときな、坊主」
「あっ、はい」
叱られた坊主……いや、第三王子は大人しく従った。
フェリクスはなんなんだこの人……と思いながら、ミランの後ろに控えていた。すると、
「まずは青い目のあんたからだ。こっちおいで」
占い師はミランを無視して、フェリクスを見据えた。
「え、私、ですか」
戸惑うフェリクスをよそに、占い師は水晶に両手をかざし、わざとらしく撫でまわした。
「あんたの好きな人は、今、あんたのとても近くにいるね」
フェリクスは息を飲んだ。何言いだすんだこの人。そりゃ、隣にいるけど。
「だけど、いつまでもこのままではいられない。このままでは恋は成就せず、今は近くにいても、いずれあんたの想い人は遠い存在になってしまう。あんたがそれでいいなら、いいんだけどね」
フェリクスは心臓をぎゅっと掴まれたような気がした。
その言葉は、フェリクスが今まで、もっとも恐れて、考えないようにしていた言葉だ。
いずれミラン殿下は、遠くへ行ってしまう。
だって、この国の、王子なんだもの。
いつまで魔法師団のマネージャーをやっているか、分からない。
新しい婚約者を迎えることだって……。
フェリクスは落胆した。
こんな占い、聞くんじゃなかった。
「フェリクス殿」
ミランが気づかわし気な声を掛けた。
「私は大丈夫です、ミラン殿下。せっかく占っていただいて申し訳ないのですが、私、占いと言うものを、信じていませんので」
本当だもの。占いなんて、気にしてない。気にしてないもん。
占い師は再び、水晶を撫でた。
「おやおや、現実的なお嬢さんと言うわけか。まあいい。次は、はしばみ色の目の坊主。あんたは、いい加減気が付け。自分の想いにも、相手の想いにも」
「それって占い? 何か叱られてるみたいなんだけど」
ミランは抗議したが、占い師はそう言ったっきり、石のように口をつぐんでしまった。
「帰ろう、フェリクス殿」
しびれを切らしたミランはフェリクスの腕を引き、路地裏を後にした。
魔物の捕獲を、魔法師団として、リステアードに報告しなくてはならない。
そうだった。私は今任務中……。他の団員にはあんな風に言っておいて、何やってるの……。
我に返りながら、食べ終えたクレープの包みを路地裏のゴミ箱に捨てていると、ミランが声を上げた。
「フェリクス殿、『占い』だって! やっていこう!」
「う、占い?」
見ると、路地裏の行き止まりに、年配の女性が一人で座っていた。前には小さな木の台があり、水晶玉のようなものが置いてある。「占い」という看板がでているが、客は誰もいない。正直うさんくさいな、とフェリクスは思った。ちゃんと営業許可取ってる?
「僕、こういうの、はじめてなんだ」
ミランはさっさと料金を払ってしまっていた。王都を護衛なしで自由に行動できて、明らかに浮かれている。
フェリクスは仕方なく、ミランに付いて行った。
占い師の女性はかなりの高齢で、いかにも占い師、というような、ミステリアスな雰囲気をかもし出しているが、あいにくフェリクスは占いと言うものを信じていなかった。
未来を予言するような魔法は聞いたことがないし、そもそも彼女から魔力は感じなかった。
「それでは、恋占いを始める!」
占い師の女性は突然宣言した。声はしわがれていたが、覇気があって、元気なおばあさんと言った感じだ。
ミランがきょとんとして、質問した。
「えっ。なんで恋占いなの? おばあさん」
「占いって言ったら、恋占いなんだよ、覚えときな、坊主」
「あっ、はい」
叱られた坊主……いや、第三王子は大人しく従った。
フェリクスはなんなんだこの人……と思いながら、ミランの後ろに控えていた。すると、
「まずは青い目のあんたからだ。こっちおいで」
占い師はミランを無視して、フェリクスを見据えた。
「え、私、ですか」
戸惑うフェリクスをよそに、占い師は水晶に両手をかざし、わざとらしく撫でまわした。
「あんたの好きな人は、今、あんたのとても近くにいるね」
フェリクスは息を飲んだ。何言いだすんだこの人。そりゃ、隣にいるけど。
「だけど、いつまでもこのままではいられない。このままでは恋は成就せず、今は近くにいても、いずれあんたの想い人は遠い存在になってしまう。あんたがそれでいいなら、いいんだけどね」
フェリクスは心臓をぎゅっと掴まれたような気がした。
その言葉は、フェリクスが今まで、もっとも恐れて、考えないようにしていた言葉だ。
いずれミラン殿下は、遠くへ行ってしまう。
だって、この国の、王子なんだもの。
いつまで魔法師団のマネージャーをやっているか、分からない。
新しい婚約者を迎えることだって……。
フェリクスは落胆した。
こんな占い、聞くんじゃなかった。
「フェリクス殿」
ミランが気づかわし気な声を掛けた。
「私は大丈夫です、ミラン殿下。せっかく占っていただいて申し訳ないのですが、私、占いと言うものを、信じていませんので」
本当だもの。占いなんて、気にしてない。気にしてないもん。
占い師は再び、水晶を撫でた。
「おやおや、現実的なお嬢さんと言うわけか。まあいい。次は、はしばみ色の目の坊主。あんたは、いい加減気が付け。自分の想いにも、相手の想いにも」
「それって占い? 何か叱られてるみたいなんだけど」
ミランは抗議したが、占い師はそう言ったっきり、石のように口をつぐんでしまった。
「帰ろう、フェリクス殿」
しびれを切らしたミランはフェリクスの腕を引き、路地裏を後にした。
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