男装魔法師団団長は第三王子に脅され「惚れ薬」を作らされる

コーヒーブレイク

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両思い 9

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「ミラン……様!」

 フェリクスは思わずミランの名前を呼んでしまった。

「ミラン? そういえばこの国の王子もそんな名前だったな。たしか婚約者にウザがられてフラれた間抜けな第三王子」

 男はミランを見下ろしながら、けらけら笑った。名前が同じだけで、本人だとは気がついていないようだ。

「へ、へえ~。間抜けな王子もいたもんだね。同じ名前として情けないよ。それより、クレープ屋の主人、フェリクス団長はこう言っているし、諦めたらどうなんだ。クレープ屋は繁盛してるし、それでいいじゃないか」

 フェリクスからミランの顔は見えないが、ミランが必死に怒りを抑えているのがフェリクスには分かった。

「なんだ、子供のくせに生意気な。お前に何が分かる。俺はクレープ屋じゃなくて、魔法師団に入りたいんだよ! 邪魔だ」

 瞬間、ミランはボールみたいに遠くに吹っ飛ばされた。男は魔力がちょっとはあるから、やっぱりちょっと魔法が使えるらしい。フェリクスはミランのもとへ飛ぼうとしたが、男がサッと立ちふさがった。

「くそう、こうなったら、フェリクス・ブライトナー、お前を倒して、俺が魔法師団団長になってやるーー!」

 男はやけくそ気味に叫びながら、攻撃魔法をフェリクスに向かって放った。

「スペシャルホイップダブルチョコ・ラ・トッピング・アターック!!」

 フェリクスは体内の魔力を高めて、自身を強化した。
 どれだけ気合を入れて必殺技を叫ぼうとも、男の攻撃魔法は目に見えてしょぼい。
 これくらいの威力なら大丈夫。バリアを張るまでもなく、受け止められる――。

「フェリクス殿ーー!!」

 ――え?

 気がつくと、目の前に、ミランの背中があった。フェリクスを庇ったのだ。

「ミラン殿下!」

 フェリクスは倒れるミランを受け止めた。フードがはらりと外れる。その顔は攻撃魔法の直撃を受けて、見るも無残だった。

「そんな……私を庇うなんて、ミラン殿下、しっかりして下さい!」

 ミランはぐったりとして、動かない。
 フェリクスはミランを地面に寝かせ、すぐさま治癒魔法を発動させた。

 どう見てもたいした攻撃魔法じゃなかったけど、魔力を持っていないミラン殿下には耐えられなかったんだ。そうに違いない。ミラン殿下、こんなにボロボロな顔になっちゃって……。


 ――いつまでもこのままではいられない。このままでは恋は成就せず、今は近くにいても、いずれあんたの想い人は遠い存在になってしまう――


 まさか、占い師のおばあさんが言っていたのは、このこと? 遠い存在になってしまうって、ミラン殿下が、死……。

「い、嫌です、ミラン殿下、死んじゃいやだ、何とか言って下さい!」

 ミランは答えない。フェリクスはミランに覆いかぶさるようにして、魔力を増大させた。なのに、ミランの落書きのような顔は、一向に治る気配がない。

「ミラン殿下、お願い、私嫌です、このままさよならなんて。私、わたし」

 フェリクスは叫んだ。

「わたし、ミラン殿下のことが、好きです」
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