94 / 94
両思い 13
しおりを挟む
どきどきしながら、そっとミランの方を窺うと、ミランは嬉しそうな顔を真っ赤にして、フェリシアに抱きついて来た。
「うん、うん! フェリシア殿! そうするよ、フェリシアフェリシアフェリシア」
二人してソファに倒れ込むような形になってしまった。
フェリシアに覆いかぶさるように抱きつくミランは、なかなか彼女を離そうとしない。
この展開は、まさか……。
フェリシアの心臓は跳ね上がった。
「だ、ダメです。ミラン殿下。ここは団長室ですよ、こんなところで……だ、ダメです」
公私混同! ダメ、絶対!!
「そうだね、こんなところじゃだめだ。フェリシア殿、君の私室に行こう」
わ、わわわわわ私の部屋!?
「あの、その、ミラン殿下、私、まだ心の準備が……」
「フェリシア殿、今日は魔力を僕のためにたくさん使って疲れただろう? ティータイムに付き合ってくれてありがとう。今日はもう早めに休んだ方がいい」
「……え」
体をフェリシアからぱっと離すと、ミランは無邪気な笑顔で言った。
「ソファなんかで寝たら、風邪を引くよ」
「あ、はい」
「? どうかした? 心の準備って?」
「何でもありません! お気遣いありがとうございます!」
「うん、ゆっくりおやすみ。それとさ、今度二人の休みが重なったら」
ミランは改まった態度で、もじもじしだした。
「デート、しよう。護衛は何人か、くっついてきちゃうけど、フェリシアとして、僕とデートしてほしい」
子供っぽさを引っ込めた、真剣な顔で、フェリシアを見つめた。
「はい、ご一緒します。フェリシアとして」
フェリシアが微笑むと、ミランも照れるように笑った。少し笑い合ったあと、二人は静かに、ゆっくりと、唇を重ねた。
――エルドゥ王国魔法師団は今日も国のPRのため、忙しく活動している。
狸型魔物……子狸はすっかりフェリシアに懐き、団員からは「ポン助」の名で親しまれている。
「人間に化ける」魔法も、今ではすっかり使いこなせるようになり、パフォーマンスで大活躍だ。
なぜかミランに化けるときだけは、福笑いみたいな顔になってしまうが。
魔法師団に入りたかったイケメン男は、その後釈放され、移動販売クレープ屋を再開した。
魔法師団入りは諦めたが、そのイケメンっぷりで、たくさんの女性客を獲得し、またクレープも美味しいので、王宮が発行する「月刊・王都グルメ」にとりあげられるまでになった。
エルドゥ王国は少し寒い時期から、少し暖かい時期に入ろうとしていた。
小さな公園では、子供たちが「魔法師団ごっこ」をして遊んでいる。
「来たな! 魔物め! 魔法師団が相手だ!」
「フェリクスペシャル・ラ・アターック!!」
「ずるいぞ、今度は僕がフェリクス団長をやるんだ」
「この前の魔法動画でも、団長格好よかったよね。ママがファンなんだ」
そんな子供たちの傍ら、ベンチに並んでクレープを食べている、一組の恋人同士がいた。
男性の方はライトブラウンの髪をなびかせ、明るく元気にしゃべっている。よく見れば、端正な顔立ちに、どこか高貴な雰囲気を読み取れるかもしれない。
女性の方はロングワンピースを着こなす、長身の美人だ。編み上げられた長い金の髪が美しい。物静かな様子で、男性の話を微笑みながら聞いている。
暖かな日差しの中寄り添う二人は、とても幸せそうで、お似合いの恋人同士だった。
両思い おわり。
「うん、うん! フェリシア殿! そうするよ、フェリシアフェリシアフェリシア」
二人してソファに倒れ込むような形になってしまった。
フェリシアに覆いかぶさるように抱きつくミランは、なかなか彼女を離そうとしない。
この展開は、まさか……。
フェリシアの心臓は跳ね上がった。
「だ、ダメです。ミラン殿下。ここは団長室ですよ、こんなところで……だ、ダメです」
公私混同! ダメ、絶対!!
「そうだね、こんなところじゃだめだ。フェリシア殿、君の私室に行こう」
わ、わわわわわ私の部屋!?
「あの、その、ミラン殿下、私、まだ心の準備が……」
「フェリシア殿、今日は魔力を僕のためにたくさん使って疲れただろう? ティータイムに付き合ってくれてありがとう。今日はもう早めに休んだ方がいい」
「……え」
体をフェリシアからぱっと離すと、ミランは無邪気な笑顔で言った。
「ソファなんかで寝たら、風邪を引くよ」
「あ、はい」
「? どうかした? 心の準備って?」
「何でもありません! お気遣いありがとうございます!」
「うん、ゆっくりおやすみ。それとさ、今度二人の休みが重なったら」
ミランは改まった態度で、もじもじしだした。
「デート、しよう。護衛は何人か、くっついてきちゃうけど、フェリシアとして、僕とデートしてほしい」
子供っぽさを引っ込めた、真剣な顔で、フェリシアを見つめた。
「はい、ご一緒します。フェリシアとして」
フェリシアが微笑むと、ミランも照れるように笑った。少し笑い合ったあと、二人は静かに、ゆっくりと、唇を重ねた。
――エルドゥ王国魔法師団は今日も国のPRのため、忙しく活動している。
狸型魔物……子狸はすっかりフェリシアに懐き、団員からは「ポン助」の名で親しまれている。
「人間に化ける」魔法も、今ではすっかり使いこなせるようになり、パフォーマンスで大活躍だ。
なぜかミランに化けるときだけは、福笑いみたいな顔になってしまうが。
魔法師団に入りたかったイケメン男は、その後釈放され、移動販売クレープ屋を再開した。
魔法師団入りは諦めたが、そのイケメンっぷりで、たくさんの女性客を獲得し、またクレープも美味しいので、王宮が発行する「月刊・王都グルメ」にとりあげられるまでになった。
エルドゥ王国は少し寒い時期から、少し暖かい時期に入ろうとしていた。
小さな公園では、子供たちが「魔法師団ごっこ」をして遊んでいる。
「来たな! 魔物め! 魔法師団が相手だ!」
「フェリクスペシャル・ラ・アターック!!」
「ずるいぞ、今度は僕がフェリクス団長をやるんだ」
「この前の魔法動画でも、団長格好よかったよね。ママがファンなんだ」
そんな子供たちの傍ら、ベンチに並んでクレープを食べている、一組の恋人同士がいた。
男性の方はライトブラウンの髪をなびかせ、明るく元気にしゃべっている。よく見れば、端正な顔立ちに、どこか高貴な雰囲気を読み取れるかもしれない。
女性の方はロングワンピースを着こなす、長身の美人だ。編み上げられた長い金の髪が美しい。物静かな様子で、男性の話を微笑みながら聞いている。
暖かな日差しの中寄り添う二人は、とても幸せそうで、お似合いの恋人同士だった。
両思い おわり。
1
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
あなたにおすすめの小説
見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない
みん
恋愛
精霊に護られた国ルテリアル。精霊の加護のお陰で豊かで平和な国ではあったが、近年ではその精霊の加護も薄れていき、他国から侵略されそうになる。戦いを知らない国王は、スネフリング帝国に助けを求めるが、その見返りに要求されたのは──。
精霊に護られた国の王女として生まれたにも関わらず、魔力を持って生まれなかった事で、母である王妃以外から冷遇されているカミリア第二王女。このカミリアが、人質同然にスネフリング帝国に行く事になり─。
❋独自設定有り。
❋誤字脱字には気を付けていますが、あると思います。すみません。気付き次第修正していきます。
【完結】男運ゼロの転生モブ令嬢、たまたま指輪を拾ったらヒロインを押しのけて花嫁に選ばれてしまいました
Rohdea
恋愛
──たまたま落ちていた指輪を拾っただけなのに!
かつて婚約破棄された過去やその後の縁談もことごとく上手くいかない事などから、
男運が無い伯爵令嬢のアイリーン。
痺れを切らした父親に自力で婚約者を見つけろと言われるも、なかなか上手くいかない日々を送っていた。
そんなある日、特殊な方法で嫡男の花嫁選びをするというアディルティス侯爵家のパーティーに参加したアイリーンは、そのパーティーで落ちていた指輪を拾う。
「見つけた! 僕の花嫁!」
「僕の運命の人はあなただ!」
──その指輪こそがアディルティス侯爵家の嫡男、ヴィンセントの花嫁を選ぶ指輪だった。
こうして、落ちていた指輪を拾っただけなのに運命の人……花嫁に選ばれてしまったアイリーン。
すっかりアイリーンの生活は一変する。
しかし、運命は複雑。
ある日、アイリーンは自身の前世の記憶を思い出してしまう。
ここは小説の世界。自分は名も無きモブ。
そして、本来この指輪を拾いヴィンセントの“運命の人”になる相手……
本当の花嫁となるべき小説の世界のヒロインが別にいる事を───
※2021.12.18 小説のヒロインが出てきたのでタグ追加しました(念の為)
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉
狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。
「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。
フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。
対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。
「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」
聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。
「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」
そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。
イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。
ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼
そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ!
イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。
しかし……。
「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」
そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
おっ、サブタイトルに両想いが(笑)。ついに?😳。
いつも感想ありがとうございます。
お待たせしました、ついに、なります(笑)。
あれ、女とバレてない?😂。えー?(笑)。
感想ありがとうございます。本編56話でミランには女だとバレてます。魔法師団の団員は、女だと知ってる人もいれば、知らない団員もいる(主に新しく入った人)、という設定になってます。
惚れ薬使ったら軟弱者どころかクズに落ちますけどね( ̄▽ ̄;)。
ご高覧ありがとうございます。ミランはクズになりかけてます(笑)惚れ薬使ったら、幸せには一生なれないでしょう。