[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き

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第5章 ついに始まった本当の戦い。

第10話 悪魔祓いの儀式がはじまる。(狂った行動の理由の3割が判明編)2

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 焼くか!
 それが、会議場での出席者の9割から自然と出た第一声だった。
 あの黒いモノを焼いたら、ガス国王も何か変わるかも?
 そんな意見が出た。

 その噂はすぐに広まる。
 もちろん、公開牢屋エリアにも広まった。

ガス宰相
「なんて事だ。くそ!
 おい警備兵よ、娘のメリーを呼んでくれ!
 た、確かワールドルールで決まっていたはずだ。」

 ワールドルール。
 このワードが、出たために仕方なく警備兵は上司に確認して、伝達する事になった。

 ガス宰相が、失敗出来ない切り札を切る。
 その時ガス貴族の嫡男達が、「なぜ!召喚した貴族に絶対服従のはずの勇者達に命令しない!」とか、言い出したのだ。

 警備兵達は、槍を向ける。
 ここは、新生ガス王国。
 ガス王国ではもうないのだ。
 そして、ガス貴族達は捕虜としてではなくて、邪神の手下として捕まっていた。
 槍を向けても、不敬罪は成立しない。
 それどころか、ラッド国王よりカザトに対する侮辱は不敬罪として、刺せ!と命令されていた。

 で?警備兵は?
 元ガス貴族にこき使われていた警備兵たちは、嬉々として槍を向ける。

 侯爵や子爵達が牢屋の中でとりおさえた。
 ガス宰相が、苦言をいう。
「貴様ら、また邪神戦争を起こすつもりか。」

 ガス貴族の嫡男や若い男爵などが、反発する。
 ガス国王よりも若い世代と、ガス国王よりも生きている世代とが、ケンカを始めたのだ。

 どういう事だ?
 槍を向けた警備兵達も、この奇妙な現象に首を傾ける。
 そして、魔導師班はこの模様を全土放送し始めた。


 そんな頃、マトの街の城でも議論がおこっていた。

「ぞ!そんな馬鹿な!」

「いや、確かにカザト様から聞いた、ワンダフル王国の国王の言葉は本当です。
 私も、実家のガス侯爵家から[役立たずスキル]だとして、追放されるまでの教育に、邪神戦争の事は(勇者が暴れ出した。)の一行しか、習っていませんでした。」

「私もなんだ。」
「われも、ケロ。」
「私もです。」

 なんと、ガス国王の世代から若い世代は、邪神戦争の事を絵本で知っている庶民未満の知識しか、知らなかったのだ。
 ワンダフル王国の防衛戦の後、国王達とカザトが話している時に判明した事実。
 ワンダフル国王は、言った。
「カザト殿、ラッド国王はその世代ではないが、もしかしてガス国王の世代は邪神戦争の事を捻じ曲げて教育されている可能性がある。」

 誰だ!そんな歪な歴史改変というか、捻じ曲げようとしたバカ者は!

ラッド国王
「まさか、やつ(ガス先王)か!」

 急遽、ワンダフル王国と魔導通信で繋がれた会議場。
 そこで、前ワンダフル国王と、前ウマンゴー国王から衝撃の歴史を聞くことになった。


 マトの街の公開牢屋エリア

ガス老公爵
「つまりだな、ワシの兄のガス先王は元々スキル(王紋)は持っていなかったのだ。
 ガス先王の兄がその当時居てな、その長兄が国王になるはずだったのよ。
 だが、代理として今のガス先王が第5王子の時代に代理として出席した、国王サミットの時に異変が起きた。

 忍び込ませたワシのスパイによると、フェイク様の部下天使が、降臨したらしい。
 そして、勇者の決めた法律が最終決定になっていた世の中を、フェイク様の決めた事が至上の決定に戻すように命令したらしいのだ。
 その前の日が、最後の前勇者の生き残りが姿を消した日でな、その途端にフェイク様がうごきだしたのだ。」

 ガス貴族の若い者達は、動揺する。

ガス老公爵
「その時に、ガス先王はスキル(王紋)を獲得して国王になれば実行できるが、国王就任が決定している長兄がいれば、政策転換なんてしないから無理だと発言して、取引をしたらしいのだ。
 その3日後に、今のガス先王は急遽即位する。
 当時のガス国王、つまりだなワシの父親と長兄は行方不明だ。
 そして、既に生まれていた長兄の子供達も全て行方不明だ。
 その時、既にラッド国王やガス宰相は生まれていたな?」

ガス宰相
「ええ、当時5歳ですよ。
 そういえば、あの即位はおかしかったな。
 え?!
 つまりだな、弟のガス国王ですら邪神戦争の本当の教育はされていないということか?」

「おい、どういう事だよ!
 絶対服従の使い魔の勇者を召喚したのではないのかよ!」

「ふ、復讐されて貴族がぶっ殺されただと。
 そう言えば、家系図でもいきなり1人に集約されている世代があったけど、あれか!」

「どうするのだよ!
 国王が、知りませんでした。で済むもんだじゃないだろ!」

「おっ俺たちの責任じゃない!
 そうだろ!ガス先王に責任を取らせたら、俺達は釈放だよな。」

「無理だな。
 貴族が知りませんでした!なんて理屈が通るわけがないだろ!
 庶民でも、知っていることなのに。」

 もはや、公開牢屋エリアはカオスだ。

 
 そして、ガス王都では。

ガス国王
「そ、そういうことだったのか。
 つまりだな、食中毒で全滅したのは嘘で、家系図(この場合権力の順番図も入っている)が、いきなり1人に集約されていたのは邪神戦争の後始末であり、前勇者達騙したという話も本当で、そのせいで邪神戦争が起こったということかよ!

 じゃあ、カザトの先祖が錯乱したのではなく、国王達が騙した為に勇者達が抵抗して戦い出したったことかよ。
 全面的に、俺たちが悪いって事じゃないか!
 この、ガス老公爵が話していることも全て全土に知られたのだろ?
 どうするつもりなのだ!」

ガス先王
「わしは、命令に従っただけだ!
 何も悪くない。
 何も悪くないぞ!
 カザトを従わせのが、一番の解決の近道だ!
 軍を出して、カザトを捕まえろ!」

ブレーダー王女
「無理じゃボケ!」
 棍棒でブレーダー王女に叩かれる、ガス先王。

勇者ゴン太
「ガス宰相があの油で煮られて、処刑されたら俺達もやばいぞ。
 どうする?
 何か、本当にネタがないのかよ?
 おい!ホビットの大王よ!
 テメェのその指輪!まさかマジックポーチみたいな収納道具じゃないだろうな!
 ガス国王!命令しろ!」

 こうして、勇者ゴン太の嗅覚が優れている事は証明された。
 実は、カザトの研究所から盗んだ物が沢山収納されたマジックリング(地球最低価格3兆円相当)だったのだ。

ガス国王
「道具が出てきても、貢物が出てこないと話にならん。
 なんとか、処刑を回避させないと。」

 勇者ゴン太は、日本語の毛筆で書かれた前勇者達が書いたっぽく書かれた説明書を呼んでいる。
 筆跡は、カザトが前勇者達の記憶を使った為に、本物ト同じである。
 それは、カザトが前勇者が残した遺産というシチュエーションで、ガス国王達の望みを叶えてあげようとする新開発の薬であった。

 まんまと、何も考えずにゴン太は鵜呑みにする。

勇者ゴン太
「我、幕府の…
 そのために、信用のできない王国に…
 この世界の勇者が存在していない理由…
 隠され封印された、勇者のジョブを…
 覚醒させる薬を完成させた…

 なんだこれは?
 魔王ホイホイってなんだよ?
 確か、前に少し聞いたよな?
 おい!ブレーダー王女よ?話してくれないか?」

ブレーダー王女
「ま、魔王ホイホイって聞いたことはあるけど、わかったわよ!
 簡単に言うと、フェイク様を早く昇進させる計画よ!
 それで、なにが書いてあるのよ。
 勇者って言葉が聞こえたけど!」

 カザトが、書いた偽の前勇者の置き手紙を読む勇者ゴン太。

ブレーダー王女
「確かに、確かにフェイクランドではジョブ勇者はいないわよ!
 ガス王家因子を使って、カザトが復活させた薬ですって!
 大体、前勇者たちがそんなモノを開発した記録なんてないわよ!
 ちょっと聞いているの!?」

勇者ゴン太 
「うるせえ!
 つまりだな!
 フェイク様によって、勇者がいなくなったのが、こんな状態になった原因でもある。」

ブレーダー王女
「なぜ、そんな理屈になる!
 確かに、魔王ホイホイ計画でお前たちが経験値を献上することで、フェイク様に早く昇進してもらう事で私達が幸福になるのよ!
 だから、え?え~と…。」

勇者ゴン太
「あ~。
 なぜ前勇者たちがキレたかわかってきたぞ。
 テメェら、人を使い魔や、奴隷扱いして、早く魔王を倒せとか言ったのだろうな。
 なるほどね。
 俺も、やっとカザトが言っていた事の真実がわかってきたよ。
 そりゃ、俺でもキレるぞ!
 
 頭の悪いブレーダー王女に説明してやるよ!
 大体、魔王が一体づつ出現するなんて決まりはない!
 今の状態が、それを証明している。
 それが、その魔王ホイホイ計画の穴!
 今は、勇者が沢山必要な状態。
 しかし、フェイク様によってジョブ勇者を持つものがいない。
 なら、この危機を脱出する方法は?
 簡単だよな。
 勇者の封印を解くことだ!
 そして、全ての邪神を討伐させる。
 これしかない。

 カザトの事は、カザトのご先祖と同じくわからんが、ガス国王がラッド国王を攻めた時にラッド国王側で戦っていた事から、こちらにつかない(味方しない)のはわかっている。

 なら、どうする?
 こちらが、力をつけないといけない。
 違うかも?
 邪神と戦う力がいる。
 カザトに頼る以外の力が!」

ガス国王
「そ!そうだな。続けてくれ。」

勇者ゴン太
「これを、使わないか?
 そこに、今回の原因がいるから責任を取って、この薬を使わせてもらう。」

ブレーダー王女
「何よ?それ?」

勇者ゴン太
「勇者覚醒薬(ガス王家血筋限定)らしい。
 牢屋のガス貴族や宰相達も、親戚が多いのだろ?
 これが有効なら、邪神討伐のワールドルールを使って、釈放させられるぞ!」

ガス国王
「そ!そうか!
 なるほど!
 邪神討伐の戦力として、変身というか覚醒したら、処刑はよっぽどの罪を重ねなければ処刑されない。
 まして、処刑すれば邪神討伐の戦力をなくすことになってしまうから、ラッドの兄貴でも処刑出来ないのか!
 よ、よくやった!ゴン太よ!」

ブレーダー王女
「え?そんな事できるの?」

勇者ゴン太
「待て!
 この説明書だとな、覚醒確率は0.001%が10%になるとかいてある。
 つまりだな、10人にこの注射を打ち込んで、1人って計算だよな。」

ガス国王
「心配するな!
 ガス貴族は、8割方王家の血を引いている。
 この親父(ガス先王)の隠し子だけでも100人を超えている。
 そいつらの子供は2人づついるから、200人はいるぞ!」

ブレーダー王女
「ハァ?
 ちょっとお祖父様(ガス先王)!
 どういう事よ!
 全滅しそうな村から、時々慈善事業だとか言って王都に匿った者たちがいたけど、あれ全て隠し子や隠し孫だったの?」

ガス先王
「そうじゃ!
 フェイク様の命令を実行する者が、行使出来る福利厚生のいっかんじゃ!」

勇者ゴン太
「なにが、福利厚生だ。
 いいぜ!そこまでフェイク様の部下と言うなら、フェイク様の命令は絶対だよな!
 よし、陛下!
 そのエロジジィを抑えとけよ!
 え~AアンプルとBアンプルを混ぜて、全量注射すること。
 血管に直接打つと、変身が激しくなり心臓が保たない為に、筋肉注射にすること。
 なるほどね!
 喜べ!ガス先王よ!
 お前の大好きな尻に注射する。
 (尻=筋肉量が多い事が有名)
 いくぜ!」

(良い子のみんなは、お医者様以外マネをしてはいけないよ!)

ガス先王
「や!やめてくれ!
 既に撃たれて、うぎゃー!」

 ブスリ!
 という音と共に、青いやばそうな液が注射されてしまったガス先王。

 それを、全土放送で見るフェイクランドの人達。

 会議中のカザト達も、見ていた。
 
 ✱~!

 ガス先王の聞きたくない叫び声が響く。
 メキ!
 メキメキメキメキ!

 なんだ?
 ガス先王の身体の筋肉が隆起している。
 何が起こるのだ?
 ブレーダー王女達も、見ていた。
 だが、それを見逃さなかった勇者ゴン太!

 ブスリ!
 ブスリ!

 ドレスの上から、ブレーダー王女の尻に注射2本を刺した勇者ゴン太!

ブレーダー王女
「き!貴様!
 い!いやーーーー!」

 青い液が、ブレーダー王女にも注射された。
 
勇者ゴン太
「これで、勇者が誕生すれば処刑回避だ!
 いいよな?陛下?」

ガス国王
「そうだな。
 なに?全土放送されていた?
 ちょうどいい!
 ラッドの兄貴よ!見ているか!
 コイツラで成功したら、兵として、邪神討伐の戦力として、ワールドルールに基づいて処刑回避と、戦力としてのガス貴族の開放をもとめる。
 隷属の首輪付きで構わない。
 だから、釈放してくれ!
 頼む!」



 マトの街の会議室では、皆苦い物を噛んだ顔になる。

ラッド国王
「ざけんなよ!」

カザト
「とりあえず、様子を見るか?」

スントー新生ガス王国宰相
「そうするしかあるまい。
 なぜ?2回目でガス先王に変化が出てきたのだ?」

魔導師団 団長
「おそらくですが、分量が足りなかったかもしれません。 
 ガス先王は、肝臓と腎臓と精力が一般人の36.2倍強い事がわかっています。」

カザト
「30倍を越えるのか…。」 

 変なところで、呆れ返るカザト。
 さて、この後どうなるのやら。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
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