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第一章 さようなら日本、こんにちは異世界

第27話 真実は残酷でした

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 ナキは『池内 直樹いけうち なおき』だった頃に中学生活の三年間を虐められて過ごし、最後には屋上から転落死した後に女神ミルラの計らいでこの異世界に連れて来られたことまでを一気に話した。そして、その結果マリアが話を信じられないと離れてもしょうがないと思っていたが、現実としては……。

「うわぁぁぁ~ん」
「……マリア?」

 そう、マリアはナキの話を信じ、そして泣き崩れているのが今の現状だ。だけど、子供達はそんなマリアの状況は見えてはいるが話は聞こえないし、結界から出られないためにナキが何かをしたのではないかとナキに対し、怒りの目を向けている。

 それにマリアは涙を拭くために貫頭衣をたくし上げて顔を拭いているものだから、さっきから下半身は丸出しだ。

 ナキはそんな状況に耐えられず、マリアに座るように頼み泣き止むのを待ち「くれぐれも口外しないで下さい」と念を押してからマリアが頷くと子供達の結界を解除する。

 結界がなくなった途端に子供達はマリアにしがみ付く。
「「「お姉ちゃ~ん」」」
「大丈夫よ。何もないし、何もされていないから」
「でも……」
「大丈夫。ほら、何もされてないでしょ」
「……」

 マリアがそう言って涙を拭った顔で笑って見せるが、子供達は信じ切れていないようでナキの顔を睨み付ける。

「ほら、そんな怖い顔しないの。私は何もされていないから」
「分かった」

 男の子はまだ疑っているようだけど、マリアに「何もないから」と強く言われてしまっては言い返すことも出来ずに黙ってマリアにしがみ付く。

「お姉ちゃんは俺が守るから!」
「あら、ありがと。なら、強くならないとね」
「うん。絶対にソイツより強くなるから」
「あらまあ、だって。ナキ、どうする~」
「どうもしません。どうぞ、ご勝手に」
「もう、ナキってば。ここは『絶対に俺が守るから!』って言い切るところでしょう。もう、ノリが悪いんだから」
「……」

 揶揄い半分にそう言ってくるマリアに対し辟易とするが、先ずは現実問題をどうにかするべきだと思い、ナキはマリア達が必要とするであろう衣類が詰まった箱や硬貨が詰められた箱を鞄に収納するとマリア達から少し離れたところで、足下に板状の結界を長さ五メートル、幅二メートルという普通車程度の大きさで用意すると、マリア達を呼び結界の上に乗るように言う。

「えっと、ナキ?」
「どうしました?」
「だって、乗れって言われても、どこに乗ればいいのか分からないんだけど」
「あ!」

 ナキはマリアに言われ、用意した結界に色を付けていなかったことに気付き、マリア達にも分かる様に赤く色を付けると子供達は「すご~い!」と歓喜の声を上げる。

「ねえ、これってなんなの?」
「とりあえず、その色が付いた箇所に乗って下さい。小さい子は大きい子が落ちないように注意してね」
「「「は~い」」」
「じゃ、立ったままじゃ危ないから、座って下さい」
「座ればいいの? でも、これから歩くんじゃないの?」
「いいから、危ないので座って下さい」
「……分かったわ」

 ナキの言葉にマリアは訳が分からないといった様子だったが、ここは素直に従うべきと判断したのか、ナキの言葉通りにマリアは座り子供達にも座るようにと言う。

 ナキはマリア達が座ったのを確認すると、結界を地上から五十センチメートルほど浮くとマリア達が騒ぎ出すが、ナキが「危ないから」と注意すると、マリアも「大丈夫だから」と子供達を落ち着かせる。

 ナキは子供達が落ち着いたのを確認してから、今度は結界をゆっくりと進める。すると、また不安になった子供達が騒ぎ出すかなと思い後ろを見ると、騒いでいることには違いないが子供達は興奮気味にはしゃいでいた。

「これなら大丈夫みたいだな」

 そう感じたナキは少しずつ速度を速めながら、崖の前へと辿り着く。ナキは結界を地面に下ろし、マリア達に自分の住処を紹介する。

「えっと、ここに住んでいるの?」
「「「すご~い!」」」
「うん、ここなら水辺にも近いし、崖の中なら安全だと思って」
「そうね。確かに崖の中なら、入口さえ閉じれば大丈夫そうだけど、これを一人でやったの?」
「うん、そうだよ」
「……」

 マリアはナキの顔を見て、さっき聞いた話はやっぱり本当だったんだと改めて理解するが、同時に絶対に人に知られてはいけないとも思った。

「とりあえず、マリア達は横穴の中を問題ないか確認して」
「そうね。じゃ、皆探検に行くわよ」
「探検?」
「あの穴の中に行くの?」
「暗いよ」
「こわい……」
「あ、ごめんね。今、点けるから」

 ナキは横穴の中が暗くて怖いと言う子供達の声を聞き、慌てて中に用意してある照明の結界を点けると今度は一転して「眩しい」と言う。

 だが、暗いよりは明るい方がいいとばかりに子供達は競うように横穴の中へと入っていく。

 マリアはナキを見ながら「ほんと、規格外ね」と呟くと子供達の後を追う様に横穴の中へと入っていく。

 ナキはマリアが横穴の中に入っていくのを確認してから「やっぱり、取り返しに来るよね」と逃げた奴隷商がいつかはやって来るのだろうなと予想する。それと、伯爵の後妻もマリアが亡くなったと言われても何か証拠になるような物を見付けられない限りは諦めることはないだろうなとも。

「僕が考えていた異世界生活と違うんですけど」と自分を見守っているであろう女神ミルラを思い空を見上げる。

『ほら~だから言ったじゃないですか! あんな場所に下ろすからですよ。私はちゃんと言いましたよね。あんな所じゃなくて、もう少し人里に近いところにした方が良いですよって。ねえ、聞いてますか? なんで耳を塞いでいるんですか? あ~あ~聞こえないってなんですか? 今日耳日曜って、女神は不眠不休ですっていつも言っているのは女神ミルラ様ですよね?』
『もう、済んだことはいいじゃないですか。それに少年も何もないよりは多少の刺激があった方がいいと思いませんか』
『いいえ、思いません。それに多少って言いますが、どうみても多いですよね? 言うなれば過積載ですよね?』
『そうでしょうか。少年に授けた能力ならなんてことないと思いますけど』
『だから、それだと勢いづいてヒャッハーの可能性が爆上がりするでしょうが!』
『大丈夫です。少年を信じる私を信じて下さい』
『だから、その女神ミルラ様が信じられないと言っているんです!』
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