『そうぞうしてごらん』っていうけどさ。どうしろっていうのさ!

ももがぶ

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第一章 ようこそ、異世界へ

第十話 女子の会話は秘密です

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「ん……ふぁ~いつの間にか寝ていたみたいだ」
いつの間にかソファの上で寝てしまった想太が目を擦りながらゆっくりと意識を覚醒していく。
「確か、昨日は……だったね」
想太の上で気持ちよさそうに涎を垂らして寝ている幼馴染みの朝香が目に入る。
とりあえず、このままの状態では何も出来ないし、男子特有の早朝の通過儀礼が朝香に知られるのも恥ずかしいのでなんとか起こさないようにゆっくりと体をずらしながら、朝香の体をすこしずつ横にずらそうとすると「うぅうぅん……」と朝香が首に腕を回し拘束を強める。
「あ~余計に酷くなっちゃったよ」
「何が酷くなったの?」
「え? 起きてたの? いつから?」
「想太が起きる前からかな」
「なら、俺が朝香をなんとか、どかそうとしてるのは分かっていたの?」
「うん」
「それで、まだどいてくれないの?」
「うん」
「なんで?」
「どうして、どいて欲しいの?」
「なんでって……生理現象が限界だから?」
「あ~これがそうなんだ。見てもいい?」
朝香が想太に乗ったまま、想太の下半身に注目するのに気付き、想太が慌てる。
「何言ってるの? ダメに決まってるでしょ! ちょっと、昨夜から変だよ。とりあえずどいて、もういろいろ限界だから」
朝香がしょうがないといった感じで、やっと想太の上から下りながら想太に質問する。
「もう、分かったわよ。でも、どこでするの? この部屋にはないでしょ?」
「だから、外に出て」
「え~じゃあ、私にも外でしろっていうの? そして、想太はそれを見るの?」
「いや、見ないし。でも、言いたいことも分かるよ。じゃ、亜空間生成『便所トイレット』を創造&接続!」
想太が唱えるとリビングの壁に扉が設置され、その扉には『便所』と書かれたプレートが貼られていたのを見て朝香が訴える。
「それじゃダメ! 足りない! あと、『便所』はない!」
「え? なんで希望通りのトイレを作ったのに……」
「だって、これじゃリビングから丸見えだし、下手すれば中の音も聞こえるんじゃないの? それに手も洗えないじゃない」
「そっか。言われてみれば確かにそうだね。ちょっと待って。ついでに欲しいものも追加するから」
想太は自分の頭の中で間取りを考えると、朝香を連れて『居間』から出る。
「想太、どうしたの? やっぱり外でするしかないの?」
「違うから、ちょっと待って。え~と、よし! 考えろ! 念じるんだ。俺に出来ないことはない! 作れるはずだ! よし、イメージ出来た。創造! 『我が家マイホーム』」
想太が唱えた瞬間にそこには朝香も見覚えのある『思井家』が存在していた。

「うわぁ~想太の家だ~毎日見てたのに、なんだか懐かしいわね」
「確かに。こっちに連れて来られて三日目だけど、もう懐かしく感じるよ。でも、とりあえず入ろう。もう限界だよ」
想太が慌てて玄関を開け、トイレへとダッシュする。
「もう、私だって限界だってのに~」
やがて、スッキリした様子で想太が出てくると、朝香が入れ替わりに入っていく。

「朝香もガマンしていたんだね」
このままトイレの前にいたらダメだよねと想太は思い直し、洗面所に向かい顔を洗い、横にあったタオルで顔を拭くと、そのままリビングへ向かいソファに腰掛ける。
「うん、やっぱり家は落ち着くよね」
「私は落ち着かないんだけど?」
「朝香……ごめん。でも俺は朝香の家のことそんなに知らないし。間取りさえ教えてくれたらいつでも作るよ」
「違うの……そりゃ想太の家は知っているし、この雰囲気も覚えているから、全然落ち着かないわけじゃないの。でも、自分の家じゃないのよ」
「だから、教えてくれ「それも違うの!」たら……え~じゃあどうしたらいいの?」
「一緒に考えて作ろう。想太と私の家を……だめ?」
「……だめじゃないけど。でも、今はこの家でガマンして。とりあえず風呂とか入りたいし」
「あ、そうだ。私も入ってなかったんだ。もしかして、臭う?」
「そ、そんなことは……なかったよ」
「え? なんで、もしかして嗅いだの?」
「いや、だってあれだけ密着されたら、自然と嗅いじゃうというか、鼻に入ってくるよね」
「あ、そうか。まあ、私も想太の匂いを思いっ切り嗅いだしお相子だね」
「そうなるの?」
「いいの!」
「そう。それじゃ、お風呂沸かしてくるけど、替えの服は……ないよね。母さんのならあるから、サイズ的には十分だとおもうけど、朝香には大きいよね」
「なんで、オバさんの下着まであるのかは聞かないけど、確かに私には大きすぎるわね」
想太もなんで母さんの下着があるのか不思議だったけど、アツシが言うには「そういうモノ」らしい。
想太は今朝香が着けているのを見せてもらえば魔力で作れるかもと思ったがアツシに諭される。
『ソウタ、いくらなんでも女性に使用済みの下着を見せて欲しいというのは、さすがにどうかと思いますが……』
「そうだよね。俺もそう思う」
「想太、さすがにそれはちょっと引くわ」
「だよね~って、アツシとの会話なのになんで朝香に聞こえてるの?」
「それはアツコちゃんにちょっとお願いしてね。中継してもらったの」
「え~そんな~」
朝香からの告白にそんなことが可能なのかと想太はアツシに尋ねると『出来ますよ』と軽く言われたので
なら俺も」とアツシに頼むが、即答で断られる。
『私に女子達の会話を盗み聞きしろと? それに私自身にもプライドがありますので』
「なんか納得いかない」
『そういうものだと納得して下さい』
アツシとの脳内会話を終わらせると、朝香に問われる。
「それで、どうするの?」
「えっまた、それ……」
「そうよ。それで私の下着はどうするの?」
「うん、思ったんだけど、俺が作るのは抵抗があるから、朝香が作って」
「私が?」
「そう。朝香が自分で作るの。どう? 出来そう?」
「出来ると思う?」
「やっぱり無理か~」

幼馴染みなので想太は朝香の家事能力についてはある程度理解している。
小学生時代に家庭科の課題で雑巾を提出するというのがあったが、朝香が泣きながら、想太の家を訪ね課題を手伝って欲しいと言ってきた。そして、その朝香の手には何をどうしたらこうなったのか不思議なぼろ切れがあった。
それを見た想太は全てを理解して、家に招き入れてから運針を手解きしたが、布きれが雑巾になることはなく、朝香の指が傷だらけになるだけだった。
「ホントはダメなんだけど……」
そう言って、雑巾の課題を朝香の代わりに仕上げて渡したのだった。

どうしたのものかと悩む想太にアツシがアドバイスする。
『ソウタ、忘れましたか? あなたに不可能はないのですよ』
「でも、あそこまで不器用なのは……」
『なら、『器用』にすればいいでしょ?』
「どうやって……あ、そういうことか!」
『ええ、です。そうですね、まずは『器用』スキル、それに『縫製』、『料理』に『清掃』『整頓』が含まれる『家事』スキルがあればいいでしょう。では、『家事』スキル取得&付与! これでどうでしょう?』
「朝香、どうかな?」
「うん、今ならなんでも作れそう! 想太、布と糸と針を作って」
「分かった。もろもろ『創造』! はい、どうぞ」
朝香に言われた通りに布と糸に針を作って渡す。
「ありがとう。でも、これちょっと薄くない? ふ~ん、そうか。これが想太の趣味なのね」

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