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第二章 ようこそ、獣王国へ
第九話 つくっちゃう?
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「じゃあさ、こういうのはどう?」
想太にそう言われるが、直後に自分達が玄関に立ちぱなしだったことに気付いた想太がソファに座ろうと提案してきたので、パパも想太の後からソファへと向かう。
改めて、パパがソファに座ると想太は台所でお茶を煎れて戻ってくる。
「無理して飲まなくてもいいから」
想太がそう断り、パパの前に緑茶を出す。
「また、面白い色だな」
「やっぱり、紅茶がメジャーなのかな」
「まあ、似たようなもんだが、普段飲むのはハーブティーだな」
そう言って、パパが目の前に置かれた緑茶が入った湯呑みを手に持ち、一口啜る。
「ふむ、悪くないな」
「でしょ」
想太もお茶を飲み、少し落ち着いたところで、パパが話を切り出す。
「ソウタ。さっきの話の続きを話してくれ」
「さっきの……ああ、あれね。ちょっと待って」
想太はお茶を飲み干すと湯呑みを置き、パパを見据えると話し出す。
「自分達の国を作ればいいんじゃない」
「は?」
「だから、不満があるのなら、自分達の国を興せばいいんじゃないの」
「お前、そう簡単に言うがな、それが出来れば苦労しない」
「そうなの? でもさ、今のこの土地なら中央から離れている辺境だから国を興すには最適なんじゃないの?」
「でも、土地が痩せているのはどうしようもないぞ」
「それは、肥料とか使えばどうにかなるでしょ」
「土地がなんとかなっても、ここはシャムニ王国との国境の近くだぞ。それはどうするんだ?」
「それはね……っていう風になると思うんだけど」
「確かにな。実現すればの話だけどな」
「出来ないと思うの?」
想太がニヤリと笑うとパパはその笑みを見てゾクッとする。
「でも、その前には、やっぱり一度は王様に会って話したいんだ。そこで話が決裂したら国興しに走ればいいし、上手くいったのなら不平不満を解消してもらえるようにすればいいしね」
「まあ、ソウタの考えは分かった。それにどっちに転んでも俺達に損はないように思える」
「じゃあ「だが、疑問もある」……まだ何かあるの?」
纏めようとした想太を遮り、パパが言う。
「お前の目的はなんだ? 俺達を助けて英雄扱いされて悦に浸るのか? それともただ単に自分の力を見せびらかしたいだけなのか?」
「ん~信じてもらえないかもしれないけど正直に言うね」
「ああ、言ってくれ」
「ただ助けたいだけなんだ」
「……」
「何? 黙ってないでなんか言ってよ。俺は正直に嘘偽りなく言ったんだけど」
「お前、変わっているな」
想太はパパに目的を聞かれたので、その質問に対し正直に自分の気持ちをパパに伝えたつもりだったが、まだ半信半疑のようだった。
「それ、嘘じゃないわよ」
「朝香、帰ってたんだ」
「ええ、ついさっきね。料理を教えていたら、こんな時間になったわよ。あ~疲れた。リリ達に癒してもらおうと思ったのにいないのね」
「うん。今はママさんと二階にいてもらってる」
「そうなのね」
朝香が想太の隣に座るとパパが朝香に質問する。
「さっきの言葉の意味だが……」
「ああ、あれ。そのままよ。想太のいいところなんだけど、悪いところでもあるのよね」
「そういう言い方はないんじゃない」
「あら? これでも一応は褒めているつもりなんだけどね。つまりは、そういうことなの。想太は自分が助けたいって思ったら、自分の得とか、何かを貰おうとかそういうのは何も考えていないのよ。気が付いたら、体が動いているんだからね」
「あ~ようするに考えなしのお人好しってことか」
朝香が話してくれた想太の性格をパパがいい感じにまとめ上げ、それに朝香も納得する。
「そうね。結局はそういうことなの。想太がもう少し損得勘定が出来れば、こんなことはしないわよ。とっとと見限って違うところで生活拠点を探しているハズよ。でも、もし想太がそんな風になっていれば私はここにはいなかったわね」
そう言って、朝香が想太の腕を取り、自分の腕を絡ませる。
「ん? どういうこと? 結局は褒められてるのか貶されているのか分からないんだけど」
「ふっ……はっはっはっ。いや、悪い。うん、分かった。想太の気持ちは十分に分かった。じゃあ、明日は頼むな」
「うん、いいけどさ。ご飯はどうする?」
「ご飯……あ!」
想太の質問に思い出した様にパパと想太のお腹の虫が『きゅるる』と鳴り出す。
「え~今まで食べてなかったの?」
「まあね。リリ達も食べてないはずだよ」
「もう、小さい子に何するのよ。私が呼んでくるから、想太は用意してね」
「分かった。お願いね」
二階に上がって行く朝香に声を掛け、想太は食事の準備の為に台所に立つとパパも立ち上がる。
「何か手伝うことはあるか?」
「今日はお客さんでいいから、ジッとしてて。その内、リリ達が下りてくるだろうから相手してあげてよ」
「分かった。すまない」
「いいって」
想太が手早く準備を進めていると、次第に階段の方が賑やかになりリリ達がママと朝香のそれぞれに抱かれて階段を下りてくる。
「眠い……ふぁ」
想太がパパ達と話している間にリリ達は寝てしまったようで、それを起こされたからまだ眠そうに瞼を擦っている。
「すまないなアサカ」
「別にいいわよ。はい、交代」
パパが朝香に礼を言うと、朝香の腕の中で眠そうにしていたリリを受け取る。
それからしばらくして想太から声が掛かり、食堂のテーブルに移動すると皆での食事となった。
「あれ? 朝香は食べてきたんじゃないの?」
「想太の作った料理は別腹なの。ん~おいしい!」
「まあ、いいけど。太らないようにね」
「ぐっ……アツコ、脂肪燃焼のスキルってないのかな」
『存じません』
想太にそう言われるが、直後に自分達が玄関に立ちぱなしだったことに気付いた想太がソファに座ろうと提案してきたので、パパも想太の後からソファへと向かう。
改めて、パパがソファに座ると想太は台所でお茶を煎れて戻ってくる。
「無理して飲まなくてもいいから」
想太がそう断り、パパの前に緑茶を出す。
「また、面白い色だな」
「やっぱり、紅茶がメジャーなのかな」
「まあ、似たようなもんだが、普段飲むのはハーブティーだな」
そう言って、パパが目の前に置かれた緑茶が入った湯呑みを手に持ち、一口啜る。
「ふむ、悪くないな」
「でしょ」
想太もお茶を飲み、少し落ち着いたところで、パパが話を切り出す。
「ソウタ。さっきの話の続きを話してくれ」
「さっきの……ああ、あれね。ちょっと待って」
想太はお茶を飲み干すと湯呑みを置き、パパを見据えると話し出す。
「自分達の国を作ればいいんじゃない」
「は?」
「だから、不満があるのなら、自分達の国を興せばいいんじゃないの」
「お前、そう簡単に言うがな、それが出来れば苦労しない」
「そうなの? でもさ、今のこの土地なら中央から離れている辺境だから国を興すには最適なんじゃないの?」
「でも、土地が痩せているのはどうしようもないぞ」
「それは、肥料とか使えばどうにかなるでしょ」
「土地がなんとかなっても、ここはシャムニ王国との国境の近くだぞ。それはどうするんだ?」
「それはね……っていう風になると思うんだけど」
「確かにな。実現すればの話だけどな」
「出来ないと思うの?」
想太がニヤリと笑うとパパはその笑みを見てゾクッとする。
「でも、その前には、やっぱり一度は王様に会って話したいんだ。そこで話が決裂したら国興しに走ればいいし、上手くいったのなら不平不満を解消してもらえるようにすればいいしね」
「まあ、ソウタの考えは分かった。それにどっちに転んでも俺達に損はないように思える」
「じゃあ「だが、疑問もある」……まだ何かあるの?」
纏めようとした想太を遮り、パパが言う。
「お前の目的はなんだ? 俺達を助けて英雄扱いされて悦に浸るのか? それともただ単に自分の力を見せびらかしたいだけなのか?」
「ん~信じてもらえないかもしれないけど正直に言うね」
「ああ、言ってくれ」
「ただ助けたいだけなんだ」
「……」
「何? 黙ってないでなんか言ってよ。俺は正直に嘘偽りなく言ったんだけど」
「お前、変わっているな」
想太はパパに目的を聞かれたので、その質問に対し正直に自分の気持ちをパパに伝えたつもりだったが、まだ半信半疑のようだった。
「それ、嘘じゃないわよ」
「朝香、帰ってたんだ」
「ええ、ついさっきね。料理を教えていたら、こんな時間になったわよ。あ~疲れた。リリ達に癒してもらおうと思ったのにいないのね」
「うん。今はママさんと二階にいてもらってる」
「そうなのね」
朝香が想太の隣に座るとパパが朝香に質問する。
「さっきの言葉の意味だが……」
「ああ、あれ。そのままよ。想太のいいところなんだけど、悪いところでもあるのよね」
「そういう言い方はないんじゃない」
「あら? これでも一応は褒めているつもりなんだけどね。つまりは、そういうことなの。想太は自分が助けたいって思ったら、自分の得とか、何かを貰おうとかそういうのは何も考えていないのよ。気が付いたら、体が動いているんだからね」
「あ~ようするに考えなしのお人好しってことか」
朝香が話してくれた想太の性格をパパがいい感じにまとめ上げ、それに朝香も納得する。
「そうね。結局はそういうことなの。想太がもう少し損得勘定が出来れば、こんなことはしないわよ。とっとと見限って違うところで生活拠点を探しているハズよ。でも、もし想太がそんな風になっていれば私はここにはいなかったわね」
そう言って、朝香が想太の腕を取り、自分の腕を絡ませる。
「ん? どういうこと? 結局は褒められてるのか貶されているのか分からないんだけど」
「ふっ……はっはっはっ。いや、悪い。うん、分かった。想太の気持ちは十分に分かった。じゃあ、明日は頼むな」
「うん、いいけどさ。ご飯はどうする?」
「ご飯……あ!」
想太の質問に思い出した様にパパと想太のお腹の虫が『きゅるる』と鳴り出す。
「え~今まで食べてなかったの?」
「まあね。リリ達も食べてないはずだよ」
「もう、小さい子に何するのよ。私が呼んでくるから、想太は用意してね」
「分かった。お願いね」
二階に上がって行く朝香に声を掛け、想太は食事の準備の為に台所に立つとパパも立ち上がる。
「何か手伝うことはあるか?」
「今日はお客さんでいいから、ジッとしてて。その内、リリ達が下りてくるだろうから相手してあげてよ」
「分かった。すまない」
「いいって」
想太が手早く準備を進めていると、次第に階段の方が賑やかになりリリ達がママと朝香のそれぞれに抱かれて階段を下りてくる。
「眠い……ふぁ」
想太がパパ達と話している間にリリ達は寝てしまったようで、それを起こされたからまだ眠そうに瞼を擦っている。
「すまないなアサカ」
「別にいいわよ。はい、交代」
パパが朝香に礼を言うと、朝香の腕の中で眠そうにしていたリリを受け取る。
それからしばらくして想太から声が掛かり、食堂のテーブルに移動すると皆での食事となった。
「あれ? 朝香は食べてきたんじゃないの?」
「想太の作った料理は別腹なの。ん~おいしい!」
「まあ、いいけど。太らないようにね」
「ぐっ……アツコ、脂肪燃焼のスキルってないのかな」
『存じません』
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