【完結】告発【続編の『挑発』もよろしくお願いします】

ももがぶ

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第六章 告発

第二話 告白

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「私は悪くない。悪いのはアイツだ! ふぅふぅ~」
「アイツ?」

 坂本の言葉に激昂した千原管理官はまだ興奮していたが、がと繰り返す。なので、山本はアイツとはと聞き返す。

「ああ、アイツだよ。いきなり子供を産みたいとか言いやがった」
「十七歳の彼女のことですね。それに未成年に対する飲酒と淫行ですか。逮捕状には書かなかったですね。請求しても求刑は加算じゃなく一番大きい罪で求刑されますからね。あ、でも取材記者には話してもいいですよね」
「ぐぬぬ……」

 千原管理官が激昂していた相手の『アイツ』は最初の被害者の女性だった。だが、することはしているクセに何故子供が出来ただけで、そこまで激昂する必要があるのかと山本達は思った。

 だが、当事者の千原管理官本人からしてみれば、冗談じゃ済まされないことだ。

 自身が父親の力を使っての未成年ホステスに公安が所有する部屋を宛てがい、車を乗り回し、その公安の金を使ってのやりたい放題の事実が、この少女の妊娠で全てが世間に晒されてしまう。また、少女に堕胎させたとしてもどこから話が漏れてしまうか分からない。更には少女自身がいつ世間に対し公表するかも知れない。そして父親に知られたら、愛想を尽かされ今まで好き放題使っていた父親の力が使えなくなるかも知れないと考えてしまった。

「昌行、私妊娠した」
「絶対に産みたい」
「迷惑は掛けないから」

 少女はまだ学生だった千原にそう言ったそうだが、告白された千原は『バレたらどうしよう』とそのことだけが頭の中をグルグル回り、気が付いたら近くに置いてあった果物ナイフで少女のお腹、全ての種でもあるそのお腹の中の存在を許すことが出来ずに何度も何度も刺した。

「どうして……」

 少女はそう呟き、やがて動かなくなると千原は血だらけの自分の体と握りしめていたナイフをその場に落とす。

「どうしよう……どうすればいい……そうだ、パパだ。パパに頼めば……」

 千原は先ずは手を洗い、返り血を洗い流し、返り血を浴びた衣服も部屋に置いてあった服に着替えると携帯電話を手に取り、父親に電話する。

『昌行。お前か。こんな遅い時間になんだ? また、金か?』
「パパ、どうしよう。殺っちゃった」
『おい、落ちつけ。最初から話せ!』
「うん、パパ。あのね……」

 千原は父親に起こった全てを話すと、父親は嘆息すると「見られてはいないんだな」と確認してきた。

「うん、部屋の中だから大丈夫だよ」
『部屋に入るところは見られたのか?』
「それは分からない」
『そうか。なら、出来るだけ証拠を残さないように指紋を拭き取ってから、誰にも見られないように、その部屋から出るんだ。後から誰か寄越すから』
「分かったよパパ。ありがとう」

 携帯電話を切ると、父親に言われた様に誰にも見られないように注意しながら部屋から出るとエレベーターで下まで下りる。

「どうしよう、どうすればいい……ん?」

 マンションのエントランスから出た所で道路横の植え込みに持たれるように寝ているサラリーマンの中年男性が視界に入る。

 その酔い潰れている中年男性を認めると千原は「大丈夫?」と介抱するフリをしながら近付くと肩を貸し、出て来たマンショのエントランスへと向かう。

 エレベーターを使い、部屋の前に来ると鍵を開けると酔い潰れた中年男性をすでに冷たくなった少女の横に寝かせると、その右手に少女の血が付いたままの果物ナイフをしっかりと握らせる。

「よし、これで大丈夫なハズだ」

 千原はニヤリと笑い部屋を出ると鍵を掛けエレベーターに飛び乗り、マンションを後にすると再度、携帯電話に父親に電話すると「パパ、上手くいったよ」と身代わりを用意したことを伝えると父親は『そうか。後は任せろ』とだけ言って電話を切った。

 それからの話は山本も経験した話だからよく知っている。

 知らない内に少女……報道では二十一歳女性……を痴情のもつれから刺殺したとされていた中年男性は縁もゆかりもない単にマンションの前で酔い潰れていただけの会社員だった。

「巫山戯るな!」
「やめなさい坂本警部!」

 そして、その事実を聞かされた坂本警部は急に千原管理官を殴りつけようとして山本に止められる。
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