33 / 38
第六章 告発
第二話 告白
しおりを挟む
「私は悪くない。悪いのはアイツだ! ふぅふぅ~」
「アイツ?」
坂本の言葉に激昂した千原管理官はまだ興奮していたが、アイツがと繰り返す。なので、山本はアイツとはと聞き返す。
「ああ、アイツだよ。いきなり子供を産みたいとか言いやがった」
「十七歳の彼女のことですね。それに未成年に対する飲酒と淫行ですか。逮捕状には書かなかったですね。請求しても求刑は加算じゃなく一番大きい罪で求刑されますからね。あ、でも取材記者には話してもいいですよね」
「ぐぬぬ……」
千原管理官が激昂していた相手の『アイツ』は最初の被害者の女性だった。だが、することはしているクセに何故子供が出来ただけで、そこまで激昂する必要があるのかと山本達は思った。
だが、当事者の千原管理官本人からしてみれば、冗談じゃ済まされないことだ。
自身が父親の力を使っての未成年ホステスに公安が所有する部屋を宛てがい、車を乗り回し、その公安の金を使ってのやりたい放題の事実が、この少女の妊娠で全てが世間に晒されてしまう。また、少女に堕胎させたとしてもどこから話が漏れてしまうか分からない。更には少女自身がいつ世間に対し公表するかも知れない。そして父親に知られたら、愛想を尽かされ今まで好き放題使っていた父親の力が使えなくなるかも知れないと考えてしまった。
「昌行、私妊娠した」
「絶対に産みたい」
「迷惑は掛けないから」
少女はまだ学生だった千原にそう言ったそうだが、告白された千原は『バレたらどうしよう』とそのことだけが頭の中をグルグル回り、気が付いたら近くに置いてあった果物ナイフで少女のお腹、全ての種でもあるそのお腹の中の存在を許すことが出来ずに何度も何度も刺した。
「どうして……」
少女はそう呟き、やがて動かなくなると千原は血だらけの自分の体と握りしめていたナイフをその場に落とす。
「どうしよう……どうすればいい……そうだ、パパだ。パパに頼めば……」
千原は先ずは手を洗い、返り血を洗い流し、返り血を浴びた衣服も部屋に置いてあった服に着替えると携帯電話を手に取り、父親に電話する。
『昌行。お前か。こんな遅い時間になんだ? また、金か?』
「パパ、どうしよう。殺っちゃった」
『おい、落ちつけ。最初から話せ!』
「うん、パパ。あのね……」
千原は父親に起こった全てを話すと、父親は嘆息すると「見られてはいないんだな」と確認してきた。
「うん、部屋の中だから大丈夫だよ」
『部屋に入るところは見られたのか?』
「それは分からない」
『そうか。なら、出来るだけ証拠を残さないように指紋を拭き取ってから、誰にも見られないように、その部屋から出るんだ。後から誰か寄越すから』
「分かったよパパ。ありがとう」
携帯電話を切ると、父親に言われた様に誰にも見られないように注意しながら部屋から出るとエレベーターで下まで下りる。
「どうしよう、どうすればいい……ん?」
マンションのエントランスから出た所で道路横の植え込みに持たれるように寝ているサラリーマンの中年男性が視界に入る。
その酔い潰れている中年男性を認めると千原は「大丈夫?」と介抱するフリをしながら近付くと肩を貸し、出て来たマンショのエントランスへと向かう。
エレベーターを使い、部屋の前に来ると鍵を開けると酔い潰れた中年男性をすでに冷たくなった少女の横に寝かせると、その右手に少女の血が付いたままの果物ナイフをしっかりと握らせる。
「よし、これで大丈夫なハズだ」
千原はニヤリと笑い部屋を出ると鍵を掛けエレベーターに飛び乗り、マンションを後にすると再度、携帯電話に父親に電話すると「パパ、上手くいったよ」と身代わりを用意したことを伝えると父親は『そうか。後は任せろ』とだけ言って電話を切った。
それからの話は山本も経験した話だからよく知っている。
知らない内に少女……報道では二十一歳女性……を痴情のもつれから刺殺したとされていた中年男性は縁もゆかりもない単にマンションの前で酔い潰れていただけの会社員だった。
「巫山戯るな!」
「やめなさい坂本警部!」
そして、その事実を聞かされた坂本警部は急に千原管理官を殴りつけようとして山本に止められる。
「アイツ?」
坂本の言葉に激昂した千原管理官はまだ興奮していたが、アイツがと繰り返す。なので、山本はアイツとはと聞き返す。
「ああ、アイツだよ。いきなり子供を産みたいとか言いやがった」
「十七歳の彼女のことですね。それに未成年に対する飲酒と淫行ですか。逮捕状には書かなかったですね。請求しても求刑は加算じゃなく一番大きい罪で求刑されますからね。あ、でも取材記者には話してもいいですよね」
「ぐぬぬ……」
千原管理官が激昂していた相手の『アイツ』は最初の被害者の女性だった。だが、することはしているクセに何故子供が出来ただけで、そこまで激昂する必要があるのかと山本達は思った。
だが、当事者の千原管理官本人からしてみれば、冗談じゃ済まされないことだ。
自身が父親の力を使っての未成年ホステスに公安が所有する部屋を宛てがい、車を乗り回し、その公安の金を使ってのやりたい放題の事実が、この少女の妊娠で全てが世間に晒されてしまう。また、少女に堕胎させたとしてもどこから話が漏れてしまうか分からない。更には少女自身がいつ世間に対し公表するかも知れない。そして父親に知られたら、愛想を尽かされ今まで好き放題使っていた父親の力が使えなくなるかも知れないと考えてしまった。
「昌行、私妊娠した」
「絶対に産みたい」
「迷惑は掛けないから」
少女はまだ学生だった千原にそう言ったそうだが、告白された千原は『バレたらどうしよう』とそのことだけが頭の中をグルグル回り、気が付いたら近くに置いてあった果物ナイフで少女のお腹、全ての種でもあるそのお腹の中の存在を許すことが出来ずに何度も何度も刺した。
「どうして……」
少女はそう呟き、やがて動かなくなると千原は血だらけの自分の体と握りしめていたナイフをその場に落とす。
「どうしよう……どうすればいい……そうだ、パパだ。パパに頼めば……」
千原は先ずは手を洗い、返り血を洗い流し、返り血を浴びた衣服も部屋に置いてあった服に着替えると携帯電話を手に取り、父親に電話する。
『昌行。お前か。こんな遅い時間になんだ? また、金か?』
「パパ、どうしよう。殺っちゃった」
『おい、落ちつけ。最初から話せ!』
「うん、パパ。あのね……」
千原は父親に起こった全てを話すと、父親は嘆息すると「見られてはいないんだな」と確認してきた。
「うん、部屋の中だから大丈夫だよ」
『部屋に入るところは見られたのか?』
「それは分からない」
『そうか。なら、出来るだけ証拠を残さないように指紋を拭き取ってから、誰にも見られないように、その部屋から出るんだ。後から誰か寄越すから』
「分かったよパパ。ありがとう」
携帯電話を切ると、父親に言われた様に誰にも見られないように注意しながら部屋から出るとエレベーターで下まで下りる。
「どうしよう、どうすればいい……ん?」
マンションのエントランスから出た所で道路横の植え込みに持たれるように寝ているサラリーマンの中年男性が視界に入る。
その酔い潰れている中年男性を認めると千原は「大丈夫?」と介抱するフリをしながら近付くと肩を貸し、出て来たマンショのエントランスへと向かう。
エレベーターを使い、部屋の前に来ると鍵を開けると酔い潰れた中年男性をすでに冷たくなった少女の横に寝かせると、その右手に少女の血が付いたままの果物ナイフをしっかりと握らせる。
「よし、これで大丈夫なハズだ」
千原はニヤリと笑い部屋を出ると鍵を掛けエレベーターに飛び乗り、マンションを後にすると再度、携帯電話に父親に電話すると「パパ、上手くいったよ」と身代わりを用意したことを伝えると父親は『そうか。後は任せろ』とだけ言って電話を切った。
それからの話は山本も経験した話だからよく知っている。
知らない内に少女……報道では二十一歳女性……を痴情のもつれから刺殺したとされていた中年男性は縁もゆかりもない単にマンションの前で酔い潰れていただけの会社員だった。
「巫山戯るな!」
「やめなさい坂本警部!」
そして、その事実を聞かされた坂本警部は急に千原管理官を殴りつけようとして山本に止められる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる