彼女はだれ?

ももがぶ

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第二章 夏休み

どうしてここに?

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「それで朋姉ちゃんはどうして、こんな所に?」
「ふふふ、聞きたい?」
「いや、別に。じゃあ、また今度」
「あ、ちょっとまーちゃん。そこは無理してでも聞くところでしょ! そうでしょ、太からもなんとか言ってやって!」
 平日の昼過ぎとはいえ、まだ大学に行っている時間だろうと思い、朋姉ちゃんに聞いてみるが、朋姉ちゃんからの返事に面倒くさいものを感じて拒否する。すると、そういう風に返されると思ってなかったのか朋姉ちゃんは太を使って俺に何か言えという。
「姉ちゃん。面倒くさいよ」
「太! お前はお姉ちゃんに向かって、なんてこと言うの!」
「わっ! ごめん、姉ちゃん!」
「なあ、朋姉ちゃんに太も。こんな所でいつまで寸劇をするつもり。もう結構なお客さんも見てるけどさ」
「「え?」」
 俺の言葉に朋姉ちゃんと太が回りをゆっくり見渡すと、口元を隠し、クスクスと笑う人達が二人というか、俺達を囲っていることに気付いたようだ。
「どうする?」
「そんなの姉ちゃんが考えろよ。年上だろ!」
「でも、私は一番、小さいのよ。だから一番大きい太が私を助けなさいよ!」
「何、その理不尽!」
「そんなのいいから、ほら移動するよ」
「ブル!」
「まーちゃん!」
 二人がまた寸劇を始めたお陰でまた、回りの人達の注目を集め始めたので、もうこの辺が限界かなと思い二人の手を引いて、取り敢えずはと、この場所から移動することにした。

 これだけの人数なのでどこかに入ろうかと考えたが、小遣いも厳しかったので、近くの公園へと移動する。

「それで、姉ちゃんはなんであんな所にいたの? もし学校をサボったのならチクっちゃうよ」
「もう、太ったら。そんなところはいつまでもお子様ね。もう、私は大学生なのよ。少しサボったくらいでどうってことないわよ」
「へえ~で、その見た目小学生な大学生の大人なお姉さまがどうしてあんな場所にいたのか教えてもらえますか?」
「キ~!太のクセにナマイキよ!」
「俺だって、いつまでも姉ちゃんにいいようには使われないからね」
 太が珍しく朋姉ちゃんに口答えする。多分だが、俺だけじゃなく奈美達もいるから多少の格好を付けたいんだろうけど、大丈夫かな。相手は朋姉ちゃんだからな。
「へぇ~そんなこと言うんだ。じゃあ、もうコレクションはいらないのよね」
「「「コレクション?」」」
「ば、バカ! こんなところでなんでそんなことを言うんだよ!」
「なんか最近、数が減ったから、もう収集は止めたのかと思ったんだけど、また増えだしたのよね。しかも褐「止めろ!」……フガ」
 予想通りに朋姉ちゃんが太が隠しておきたい何か大事なことを言おうとしたところで、太が朋姉ちゃんの口を塞ぐ。だが、太よ。お前のその手じゃ朋姉ちゃんの口だけじゃなく鼻まで塞いでいるからな。
「……ふ……と……し……」
 俺の予想通りに朋姉ちゃんが口と鼻を塞いでいる太の腕を激しくタップする。
「太、死んじゃうから! 朋姉ちゃんが死んじゃうから、手を放して!」
「え……あ!」
 太が自分の腕を必死にタップしている朋姉ちゃんに気付いて、慌てて朋姉ちゃんの口を塞いでいた手を放す。
「ゴホッゴホッ……私を殺す気なの! バカ太!」
「……ごめん、姉ちゃん。でも、姉ちゃんも悪いんだぞ。俺の隠していたのを何もこの場で言うことないじゃないか!」
「それは……ごめん。悪かったわよ」
 このままじゃまた二人が言い合いを始めてしまいそうなので、俺が二人の間に割って入る。
「はい、そこまで。朋姉ちゃんも太を揶揄いたい気持ちは分かるけど、そこまでにしてね。それと安易に人の秘密をバラさないように!」
「でも、まーちゃん……」
「ダメだから!」
「はい……」
「それで、最初の話に戻るけど、なんでここっていうか、図書館の近くにいたの?」
「ふふふ、聞きたい?」
「もう、面倒だから。話さないのなら、それでいいから。じゃあね」
「あ、待って。言うから。話すから」
 また、最初の騒動に戻ろうとするから、もういいと朋姉ちゃんを突き放して帰ろうとしたのを朋姉ちゃんに話すからと引き留められる。
「分かったよ。で?」
「ふふふ、驚く用意はいい? コレよ!」
 そう言って朋姉ちゃんが財布から出したのは『運転免許証』だった。
「どう? 驚いた?」
 朋姉ちゃんが俺達に感想を求めてきたので、驚いた俺と太に奈美達もただ単に首を縦に振る。
「ふふふ、驚いたようね。そうよ、これが運転免許証よ! どうよ!」
「それはいいけど、それがなんであそこにいた理由になるの?」
「聞く? 聞いちゃう?」
「太、もう面倒臭いから帰ってもいいかな?」
「ブル、俺を一人にしないでくれよ。俺だって面倒なんだよ」
「何よ! 太もまーちゃんも私のことを面倒だなんて! ちょっと、ひどいじゃない!」
「じゃあ、そんな面倒な駆け引きなんてやめて、正直にスッと言えばいいじゃない」
「いいじゃない。少しくらい勿体付けても!」
「じゃあ、もう本当に面倒臭いので帰ってもいい? 太がいるからいいでしょ」
「ダメ! 分かったわよ。言うわよ。だから、まーちゃんも聞きなさい!」
「なんで俺まで……」
「頼む、ブル」
 朋姉ちゃんが話すと言うので、俺も大人しく朋姉ちゃんの話を聞くことにするが、後で聞かなきゃよかったと後悔する。
「でね、なんであそこにいたかと言うと、コレなの!」
 そう言って、朋姉ちゃんが出してきたのは地図。いわゆるロードマップという奴で、すでに朋姉ちゃんの行きたい場所には付箋がしてあった。
「ふ~ん、いいじゃない。じゃあ、話は聞いたし、もういいよね」
「そんな訳ないでしょ」
「ブル、お前は俺の親友だよな」
 朋姉ちゃんに断り帰ろうとする俺の腕を朋姉ちゃんと太の二人にガッシリと握られる。
「え? なんで?」
「だって、ドライブに弟と二人っきりなんてイヤじゃない。それにこの体格差だと重さ的にもバランスが悪いでしょ」
「ブル、頼む。俺だって怖いんだ。分かってくれるよな?」
「え? なんで? あ、そうだ。朋姉ちゃんの友達を呼べばいいんじゃないの?」
「ふふふ、もちろん最初に誘ったわよ」
 俺が朋姉ちゃんの友達を誘えばいいんじゃないかと言えば、最初に誘ったそうだが、皆一様にお断りしてきたそうだ。どうやら一緒の教習所に通っていた友達に「あれはヤバい」というのが伝わっていたようで、学内で助手席に座ってくれる殊勝な人はいなかったらしい。
 ならば、俺じゃなくても女の子どうしならいいんじゃないかと奈美を見ると一歩、後ずさり、なら怖いものしらずの由美ならと見れば、更に一歩後ずさる。なら、太と少しでも仲良くなりたいはずの中山ならと見れば、こっちは一歩どころか木陰からこっちの様子を見ていた。
 残りは土田だけなので、覚悟を決めようとしたら。
「私も一緒にいいですか?」
 そう言って、自ら走る棺桶に乗りたいと土田が申し出てきた。
「「「え?」」」
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