転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい！

連載

◆謝罪されました

「遺書が必要なくらい危険だと認識してもらえればいいですから。」
「ふむ、分かった。今は我慢しとくか。それで王都はどの辺だ？」
「もうとっくに過ぎてますよ。」
「そうか、もう過ぎたか。」
「ええ、過ぎましたよ。割と早い段階で。」
「へ？本当に？」
「本当も何も位置的にはそろそろエルフの里くらいなのかな。」
「もう出鱈目だな。」

飛び始めて一時間が過ぎようとしていたので、ガンツさんに少しだけ高度を落としてもらう。
「あ！ほら、ガンツさん山の向こうに海が見えるよ。そろそろじゃない？」
「そうじゃの、その娘の言うことが本当なら、そろそろじゃな。」
「ほら、モニカさん。何か思い出さない？」
「待て！そう急かすな。」
「まあここまで来たんだし慌てなくてもいいか。ガンツさん1000mくらいまで下げてから、この辺をゆっくり旋回してみようか。」
「分かった。じゃ1000mまで下げるな。」

「じゃ、モニカさんは何か分かったら教えてね。他の人はそれっぽいのを見つけたら連絡よろしくね。」
「「「「「「は～い。」」」」」」

しばらくゆっくりと旋回しながら飛んでいるとリーサさんが「あそこに里っぽいのが見えるな。」と言うので、そこに近付き上空でしばらく待機する。
「どう、モニカさん。」
「待て、二十年近く見てないんだぞ。もう少し待ってくれよ。」
「ポンコツ…」
「ケイン、聞こえたぞ。くそっ。」
「あら、あそこに見えるのは竜人っぽいわね。」
底部カメラの映像を見ながらアンジェさんが呟く。
「どれ？」とガンツさんがズームすると「親父！」とモニカさんが叫ぶ。
「へえ、あの人がモニカさんのお父さんなんだ。」
「らしいな。で、どうするケイン。」
「降りれそうな場所を探そうか。」
「なら、あの辺はどうだ？」
「ああ、やっぱり門の前は開けているね。じゃそこで。」
「じゃ降ろすぞ。」
「いいよ。その前に『障壁展開』」とボタンを押し機体全体に障壁を張り突発的な攻撃に備える。
「ケイン、もう何でもありだな。」
「そうかな。」
「照れるな！褒めている訳じゃない。」

門の前の広場へとゆっくりと降りて行くと門からゾロゾロと里の人達が出てきてこちらを指差す。
「今回は気付かれるのが早いね。」
「そんな呑気なことを言うてる場合か。向こうは構え出したぞ。」
「大丈夫、ちゃんと盾があるから。」
「盾ってアレか？」
「そうアレ。」
「ワシはお前が時々怖いと感じるぞ。」
「そう、ありがとう。」
「いや、褒めとらんからの。」

ホーク号が地面にゆっくりと着陸すると里の人達がぐるっと取り囲む。
「ケイン、取り囲まれた様に見えるが？」
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと盾は用意してるから。」
「へ～そんなもんが用意されてるんだ。」
「そう、ここにね。」とモニカさんを扉へと押し出す。
「ここにって、あ～私のことか。そうか盾にはちょうどいいな…ってなるか！。見ろ！あれを皆んな血走った目でこっちを見てるじゃないか！見ろ、あいつなんて弓を思いっきり引き絞っているぞ。あんなの何かの拍子ですぐに指から離れるぞ。」
「だから、ここはモニカさんの里でしょ。早く出て里の皆さんと俺達を安心させて下さいよ。さあ！」
「だから、押すなって！大体二十年ぶりだぞ、絶対分かるって保証なんかないだろうが！」
「でも、同じ竜人ですよね。なら、問題ないでしょ。さあ、早く！ほら、勢いよく行っちゃいましょうよ。」
「ああ、もう分かったから、出るから押すなよ。いいな、絶対に押すなよ。いいか、フリじゃないぞ。絶対に押すなよ！」
「ねえガンツさん、これって押してもいいんだよね。」
「止めてやれ、ケイン。」

ホーク号の搭乗口がゆっくりと開かれると外の人達が『ゴクリ』と唾を飲み込む音が聞こえた様な気がする。
そこにモニカさんが顔を出すと、外が騒がしくなる。
「おい、あれを見ろ。あれは…そうだ！モニカだ。ほら、男に振られて里を飛び出して行ったモニカじゃないか？」
「ああ、そうだ振られて家出したモニカだ。」
「そうそう、振られて泣きながら家出したモニカだ。」

「えと、モニカさん大丈夫？」
「外傷はないが、心を抉られた様じゃな。」
「本当なら、ざっくりいかれてるね。」
「で、どうなんじゃモニカよ。あいつらが言ってることは本当なのか？」
「な、何を言ってるのかな～まさか、この私が振られて里を飛び出したって話を信じるっての？」
「「ああ、信じる。」」
「何でよ！あいつらの言うことが嘘かもしれないじゃん！」
「一人なら流すし、二人なら、そう言うこともあるのかなって思うけど、ほぼ全員が認識してるじゃん。もうこれって本当ってことでよくない？」
「違う！絶対に違う！そうよ里をあげてのドッキリに違いない！」
叫ぶモニカさんに近付いて来る少し白髪混じりの竜人の男性。
もう他の人は武器を下ろしている。

「モニカよ。まだそんなことを言っているのか。もうドズは結婚し子供もいる。そろそろ、お前も吹っ切っていいんじゃないのか。」
「あいつが結婚して子供が生まれたって、私が振られた事実は消えない！もう二十年経ってるから忘れていると思ったのに。皆んなして『振られたモニカ』って言うし吹っ切れるわけないじゃん！」
「「「あ～悪かった。」」」
「（あ～認めちゃったね。じゃ行きますか。）出番ですよ、デューク様。」
「え～こんな雰囲気で行くの？後でよくない？」
「今です。旦那様。」
「セバスまで。あ～もう分かったよ。あ～取り込み中すまない。少々いいだろうか？」
「何だお前は？見たところどこかの貴族の様だが…」
「ああ、私はシャルディーア領の領主を務めているデュークフリードと言う。」
「これはご丁寧に。私は、そこのモニカの父でダリルと言う。後で長にも会ってもらおう。しかし、シャルディーアと言うたか。聞き覚えはないんじゃが。どの辺かの？」
「ケイン、どの辺と言えば分かってもらえるかな。」
「分かりやすく言えば、大陸の端と端ですね。ここが西としたら東の端がシャルディーア領です。」
「そういうことらしい。」
「は～それじゃモニカは大陸の端のそこまで行っていたということか。たかが失恋で…」
「『たかが』じゃない！」
「それで、モニカは何で帰って来た？」
「それは…その…」
「俺からいいですか？」
「君は？」
「ケインと言います。今はモニカさんの雇い主の弟と言う立場とモニカさんをドワーフタウンに移住させた張本人とでも言いましょうか。」
「また面倒な。それで？」
「え～とですね、始まりは私達の王都でモニカさんに絡まれたのが最初ですね。」
「ケイン、言い方！」
「黙る！そこで竜人ドラゴニュートの里に興味があったのですが、モニカさんに道案内を頼んだところ快諾して頂いたので、今日訪問させて頂きました。」

「なら、モニカは単に道案内で本人はついでの様な感覚で里に戻って来たと。」
「そういうことですね。」
「我が娘ながら、残念すぎる。」
「え～本当に。」
「ほぉ人の娘をそういう風に言うのか？」
「ええ、本当に残念でなりません。」
「そこまで言われるほど、モニカ何をしたんだ？」
「それはもう…」とダリルさんに説明する。
最初は『娘を残念呼ばわりする男』だったのに説明が終わる頃には『娘の被害者』へと見方が変わった。
「娘がすまんかった。」