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【9】強かな配信者達 ※
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叶多の運転で灯里のアパートへと戻ってきた二人は、なんともいえない雰囲気でアパートのドアを開けた。
バタンとドアが閉まると同時に、叶多が灯里の身体を再び強く抱き締めた。
「か、叶多君!? 」
「――砂原さんが、無事で良かった……」
心から叶多は安堵の溜め息を吐いた。
心なしか彼の身体が小刻みに震えていた。
「無事に決まってる……とも言えなかったよね。叶多君が来てくれて本当に助かった」
「いえ、そんなの……砂原さんのピンチなら俺、どこだって駆け付けるつもりなんで」
健気な叶多の言葉に灯里の胸がキュンと甘く締めつけられる。
(この子はどうしてこうも毎回、私の心をかき乱すのだろう……)
「うん……。ありがとう、すごく嬉しい……」
そう言って初めて灯里の方から叶多へとそっと口付ける。
「す、砂原さんっ!? 」
初めての灯里のキスに叶多が驚きの声を漏らした。
「名前で呼んで欲しい」
恥ずかしそうに灯里からそう告げる。
「あ、灯里、さん」
「はい。叶多君」
「灯里さん……」
「ん……」
お互い名前を呼び合い、どちらからともなく顔を寄せる。玄関のドアの前で二人は熱く抱き合いキスを交わした。
やがて、叶多の手が服越しに灯里の胸の膨らみへと伸ばされる。
「あ……」
上から掬い、捏ね回す。叶多の手に徐々に力が込められていき、口付ける吐息が熱を帯びていく。
叶多の舌が灯里の口内に侵入し、灯里の舌に絡まる。
「あ、あのね? 前から聞きたかったんだけど……」
再び腰が砕けそうになる直前、慌てて灯里が叶多へ言葉を投げかけた。
「はい、何でしょう?」
キスが中断され熱を持て余した叶多は、物欲しそうに灯里をじっと見つめると、唾液に濡れた唇をぺろりと舌で舐めながら、言葉を返した。
叶多の放つ強烈な色気にあてられ、灯里はくらくらと目眩を覚えた。
「な、なんか、叶多君って、キスとか、え、えっちとか凄く上手だよね。ど、どこで覚えたのかな~、なんて気になっちゃって……」
初めて叶多と結ばれた日から、ずっと気になっていたことを遂に灯里は口にした。
日頃は地味めに正体を隠しているが、実はイケメンでスパダリな叶多である。
当然、灯里と付き合う前に彼女の一人や二人もしくはそれ以上、いたに違いない。
自分以外の女性を抱く叶多の姿を想像して、自分で聞いておきながら、灯里は内心激しい嫉妬に襲われると同時に落ち込んだ。
しかし、そんな灯里に対して叶多はあっさりと驚きの事実を述べた。
「俺、灯里さんが初めてですけど」
「へ? 」
叶多の答えに灯里は一瞬叶多が何を言っているのか理解できず、間抜けな声を漏らした。
「俺、ずっと初めての相手は灯里さんって決めてたんで。あ、勿論、この先の俺の人生で、抱く相手は灯里さん唯一人だけって決めてますから! 」
(重いっ! いや、まさか! あんなに、あ、あんなこともこんなこともしといて、私が初めて? )
「う、嘘!? 」
思わず灯里の口から疑問の声が漏れる。
「俺が灯里さんに嘘なんて言うわけないじゃないですか」
珍しく叶多がムッと口を尖らせ抗議する。
「だ、だって、キスだってこんなに上手だし――」
「満足してくれましたか、それなら嬉しいです。俺、ずっと灯里さんを想って、その、一人で脳内シミュレーションしてたんで……」
「あわわわ、そ、そこまで話さなくてもいいよっ!!」
次々飛び出す叶多の赤裸々な告白に、灯里の方が恥ずかしくなってきて、とっさに叶多の口を両手で塞いだ。
「あ~……やっぱり灯里さん、可愛いなぁ」
「んぅ……っ」
灯里の両手を外しながら、うっとりと叶多が再び口付ける。
「誰にも渡したくない。というか、渡しません」
「……叶多君、意外と独占欲強い? 」
「こんな俺、嫌ですか? 」
灯里の質問に、叶多が心配そうに灯里をじっと見つめる。
不安そうな叶多を見つめ返し、灯里は小さくふるふると首を振った。
「嫌なわけないよ。……というか、大好き……」
恥ずかしすぎて叶多を直視できず、灯里は羞恥にまみれた顔を叶多の肩口にぽふりと埋めた。
「ああ……くそ、可愛すぎだろ……」
ぼそり低い声で叶多が呟いた。
聞いたことのない叶多の声と乱暴な言葉に、反射的に灯里が顔を上げる。
灯里は自分を上から見下ろす、発情した大人の男の顔をした叶多と目が合った。
「ごめん、灯里さん。俺、ちょっと今夜は手加減出来ないかも。壊さないようにするけど、多分、寝かせないし、無理させる」
「え? 」
恐ろしいことを口走る叶多に再び横抱きにされる。
叶多はそのまま一直線に灯里を寝室へと連れていく。
どさりとベッドに灯里を下ろすと、ギシリと叶多の体重にベッドが軋む。
叶多は着ている服をさっさと脱ぐと、上半身裸で灯里に覆い被さった。
「え? ちょ、ちょっと待って、叶多君! 私仕事帰りでまだシャワー浴びてない。汗いっぱい掻いたからきっと汗臭いからっ! 」
物凄い勢いで灯里の服を剥いていく叶多に、焦ったように灯里がお風呂を懇願する。
「俺、灯里さんの匂い、大好きです! 」
「やめて! 変なこと言わないで!? 」
理性が半分飛んでしまっている叶多に、灯里が半泣きで訴える。
そんな灯里をうっとりと見下ろしながら、叶多は欲を孕んだ表情で、堪らず自身の唇をペロリと舐めた。
「今日も灯里さんをたっぷり愛したいです。 覚悟して下さいね」
「ひぇ……。お、お手柔らかに……ね?」
その時、灯里の目に映ったのは可愛く尻尾や耳を振るワンコではなく、口を大きく開け、涎を垂らした獰猛な狼のような雄丸出しの叶多の姿だった。
* * *
「ところで、叶多君って一体何者なの? 」
事後、半日ほど寝て起きた灯里は、相変わらず灯里よりも早く起きて食事を作る叶多に向かって、疑問を口にした。
「何者って……、なんですかいきなり」
「だって、あの宏哉を一瞬で黙らせちゃったじゃない。宏哉に何かを見せてたみたいだけど……」
「ああ、そのことですか」
くすりと叶多は灯里に微笑むと、料理の手を一旦止めて、パタパタと灯里の座るソファーへとやって来る。
そして、ポケットからスマホを取り出すと、宏哉に見せた時と同じように、銀行アプリを開き、灯里に通帳の預金残高を見せた。
「え? 何、これ……」
叶多の預金残高の高額な金額に、灯里の目が釘付けになる。
「振り込み元がGoogleって……」
「はい。実は俺も趣味と実益を兼ねてちょっと配信活動やってまして」
「ちょっとって額じゃないよ、これ……」
「そうですか? でも、まだ登録者数は25万人ほどなので……。まだまだ駆け出しのひよっ子ですよ」
「にじゅう……っ!? 」
さらりと驚きの事実を口にする叶多に、灯里はあんぐりと口を開く。
(えっと……、私の登録してるひまりさんのチャンネルって登録者数何人だっけ……? )
呆然としながら灯里がテレビのリモコンに手を伸ばす。
ひだまりキッチンが15万人の登録者数だと確認し、それよりも遥か上の登録者数に、灯里は信じられないと言うように、もう一度叶多を振り返った。
「叶多君のチャンネル名って何? 」
「え? それ聞いちゃいます? 」
意味深に叶多が灯里に問い掛ける。
なんだか嫌な予感がして、灯里はふるふると小さく首を振った。
「えっと、やっぱりやめとく」
「“灯りのともるごはん”です」
さらりと叶多がチャンネル名を告げる。
「う、あ……」
なんとなくそんな予感はしたものの、案の上、自分の名前が入っているチャンネル名に、灯里は叶多からのたっぷりの愛を感じた。
じっ、と灯里が真っ赤な顔で叶多を見つめる。
「実はレシピ本出版の話も出ていて、どうしようか悩んでいたんです。だってそうなると、いよいよ副業隠して働いているのが難しくなってくるじゃないですか」
畳み掛けるように、ツラツラと現実味離れした話を続ける叶多に、全く灯里の思考が追い付かない。
「だから、灯里さん。俺が病院辞めたら灯里さんも看護師辞めてもいいですよ。それこそ、灯里さんの面倒はおれが一生見ていくつもりなんで」
チュッと叶多は灯里の額にキスをした。
とんでもない秘密を隠していたスパダリ彼氏を呆然と見つめる灯里。
ふと、つけっぱなしにしていたテレビから、ひだまりキッチンの動画が流れ始めた。
「え? 」
いつもの見慣れた動画の変化に気付き、灯里は思わず画面を二度見した。
動画の主であるひまりさんより、ひだまりキッチンに、新しい家族が加わったとテロップで紹介される。
新しい家族は何とも愛らしい子犬であった。
子犬の映像をちょこちょこ挟みながら、いつものひまりさんの料理のシーンになる。
「……宏哉がいない」
「え? 」
灯里がぽつりと呟く。
灯里の言葉に釣られて叶多もテレビに視線を向けた。
確かにそこには、いつも一緒にご飯を食べる夫の姿が映されていなかった。
いつもの「いってきます」のシーンもない。
動画のコメントには
《旦那さんは出張中ですか? 》
《ワンパターンな夫婦動画も飽きてきていたので、新しい家族のワンちゃん、大歓迎です!》
《ワンちゃん、可愛いですね》
等が書かれていたが、ひまりさんからの返信はひとつもなかった。
灯里と叶多は何となく状況を察すると、顔を見合せ、そっとひまりさんのチャンネルに“いいね”を押した。
バタンとドアが閉まると同時に、叶多が灯里の身体を再び強く抱き締めた。
「か、叶多君!? 」
「――砂原さんが、無事で良かった……」
心から叶多は安堵の溜め息を吐いた。
心なしか彼の身体が小刻みに震えていた。
「無事に決まってる……とも言えなかったよね。叶多君が来てくれて本当に助かった」
「いえ、そんなの……砂原さんのピンチなら俺、どこだって駆け付けるつもりなんで」
健気な叶多の言葉に灯里の胸がキュンと甘く締めつけられる。
(この子はどうしてこうも毎回、私の心をかき乱すのだろう……)
「うん……。ありがとう、すごく嬉しい……」
そう言って初めて灯里の方から叶多へとそっと口付ける。
「す、砂原さんっ!? 」
初めての灯里のキスに叶多が驚きの声を漏らした。
「名前で呼んで欲しい」
恥ずかしそうに灯里からそう告げる。
「あ、灯里、さん」
「はい。叶多君」
「灯里さん……」
「ん……」
お互い名前を呼び合い、どちらからともなく顔を寄せる。玄関のドアの前で二人は熱く抱き合いキスを交わした。
やがて、叶多の手が服越しに灯里の胸の膨らみへと伸ばされる。
「あ……」
上から掬い、捏ね回す。叶多の手に徐々に力が込められていき、口付ける吐息が熱を帯びていく。
叶多の舌が灯里の口内に侵入し、灯里の舌に絡まる。
「あ、あのね? 前から聞きたかったんだけど……」
再び腰が砕けそうになる直前、慌てて灯里が叶多へ言葉を投げかけた。
「はい、何でしょう?」
キスが中断され熱を持て余した叶多は、物欲しそうに灯里をじっと見つめると、唾液に濡れた唇をぺろりと舌で舐めながら、言葉を返した。
叶多の放つ強烈な色気にあてられ、灯里はくらくらと目眩を覚えた。
「な、なんか、叶多君って、キスとか、え、えっちとか凄く上手だよね。ど、どこで覚えたのかな~、なんて気になっちゃって……」
初めて叶多と結ばれた日から、ずっと気になっていたことを遂に灯里は口にした。
日頃は地味めに正体を隠しているが、実はイケメンでスパダリな叶多である。
当然、灯里と付き合う前に彼女の一人や二人もしくはそれ以上、いたに違いない。
自分以外の女性を抱く叶多の姿を想像して、自分で聞いておきながら、灯里は内心激しい嫉妬に襲われると同時に落ち込んだ。
しかし、そんな灯里に対して叶多はあっさりと驚きの事実を述べた。
「俺、灯里さんが初めてですけど」
「へ? 」
叶多の答えに灯里は一瞬叶多が何を言っているのか理解できず、間抜けな声を漏らした。
「俺、ずっと初めての相手は灯里さんって決めてたんで。あ、勿論、この先の俺の人生で、抱く相手は灯里さん唯一人だけって決めてますから! 」
(重いっ! いや、まさか! あんなに、あ、あんなこともこんなこともしといて、私が初めて? )
「う、嘘!? 」
思わず灯里の口から疑問の声が漏れる。
「俺が灯里さんに嘘なんて言うわけないじゃないですか」
珍しく叶多がムッと口を尖らせ抗議する。
「だ、だって、キスだってこんなに上手だし――」
「満足してくれましたか、それなら嬉しいです。俺、ずっと灯里さんを想って、その、一人で脳内シミュレーションしてたんで……」
「あわわわ、そ、そこまで話さなくてもいいよっ!!」
次々飛び出す叶多の赤裸々な告白に、灯里の方が恥ずかしくなってきて、とっさに叶多の口を両手で塞いだ。
「あ~……やっぱり灯里さん、可愛いなぁ」
「んぅ……っ」
灯里の両手を外しながら、うっとりと叶多が再び口付ける。
「誰にも渡したくない。というか、渡しません」
「……叶多君、意外と独占欲強い? 」
「こんな俺、嫌ですか? 」
灯里の質問に、叶多が心配そうに灯里をじっと見つめる。
不安そうな叶多を見つめ返し、灯里は小さくふるふると首を振った。
「嫌なわけないよ。……というか、大好き……」
恥ずかしすぎて叶多を直視できず、灯里は羞恥にまみれた顔を叶多の肩口にぽふりと埋めた。
「ああ……くそ、可愛すぎだろ……」
ぼそり低い声で叶多が呟いた。
聞いたことのない叶多の声と乱暴な言葉に、反射的に灯里が顔を上げる。
灯里は自分を上から見下ろす、発情した大人の男の顔をした叶多と目が合った。
「ごめん、灯里さん。俺、ちょっと今夜は手加減出来ないかも。壊さないようにするけど、多分、寝かせないし、無理させる」
「え? 」
恐ろしいことを口走る叶多に再び横抱きにされる。
叶多はそのまま一直線に灯里を寝室へと連れていく。
どさりとベッドに灯里を下ろすと、ギシリと叶多の体重にベッドが軋む。
叶多は着ている服をさっさと脱ぐと、上半身裸で灯里に覆い被さった。
「え? ちょ、ちょっと待って、叶多君! 私仕事帰りでまだシャワー浴びてない。汗いっぱい掻いたからきっと汗臭いからっ! 」
物凄い勢いで灯里の服を剥いていく叶多に、焦ったように灯里がお風呂を懇願する。
「俺、灯里さんの匂い、大好きです! 」
「やめて! 変なこと言わないで!? 」
理性が半分飛んでしまっている叶多に、灯里が半泣きで訴える。
そんな灯里をうっとりと見下ろしながら、叶多は欲を孕んだ表情で、堪らず自身の唇をペロリと舐めた。
「今日も灯里さんをたっぷり愛したいです。 覚悟して下さいね」
「ひぇ……。お、お手柔らかに……ね?」
その時、灯里の目に映ったのは可愛く尻尾や耳を振るワンコではなく、口を大きく開け、涎を垂らした獰猛な狼のような雄丸出しの叶多の姿だった。
* * *
「ところで、叶多君って一体何者なの? 」
事後、半日ほど寝て起きた灯里は、相変わらず灯里よりも早く起きて食事を作る叶多に向かって、疑問を口にした。
「何者って……、なんですかいきなり」
「だって、あの宏哉を一瞬で黙らせちゃったじゃない。宏哉に何かを見せてたみたいだけど……」
「ああ、そのことですか」
くすりと叶多は灯里に微笑むと、料理の手を一旦止めて、パタパタと灯里の座るソファーへとやって来る。
そして、ポケットからスマホを取り出すと、宏哉に見せた時と同じように、銀行アプリを開き、灯里に通帳の預金残高を見せた。
「え? 何、これ……」
叶多の預金残高の高額な金額に、灯里の目が釘付けになる。
「振り込み元がGoogleって……」
「はい。実は俺も趣味と実益を兼ねてちょっと配信活動やってまして」
「ちょっとって額じゃないよ、これ……」
「そうですか? でも、まだ登録者数は25万人ほどなので……。まだまだ駆け出しのひよっ子ですよ」
「にじゅう……っ!? 」
さらりと驚きの事実を口にする叶多に、灯里はあんぐりと口を開く。
(えっと……、私の登録してるひまりさんのチャンネルって登録者数何人だっけ……? )
呆然としながら灯里がテレビのリモコンに手を伸ばす。
ひだまりキッチンが15万人の登録者数だと確認し、それよりも遥か上の登録者数に、灯里は信じられないと言うように、もう一度叶多を振り返った。
「叶多君のチャンネル名って何? 」
「え? それ聞いちゃいます? 」
意味深に叶多が灯里に問い掛ける。
なんだか嫌な予感がして、灯里はふるふると小さく首を振った。
「えっと、やっぱりやめとく」
「“灯りのともるごはん”です」
さらりと叶多がチャンネル名を告げる。
「う、あ……」
なんとなくそんな予感はしたものの、案の上、自分の名前が入っているチャンネル名に、灯里は叶多からのたっぷりの愛を感じた。
じっ、と灯里が真っ赤な顔で叶多を見つめる。
「実はレシピ本出版の話も出ていて、どうしようか悩んでいたんです。だってそうなると、いよいよ副業隠して働いているのが難しくなってくるじゃないですか」
畳み掛けるように、ツラツラと現実味離れした話を続ける叶多に、全く灯里の思考が追い付かない。
「だから、灯里さん。俺が病院辞めたら灯里さんも看護師辞めてもいいですよ。それこそ、灯里さんの面倒はおれが一生見ていくつもりなんで」
チュッと叶多は灯里の額にキスをした。
とんでもない秘密を隠していたスパダリ彼氏を呆然と見つめる灯里。
ふと、つけっぱなしにしていたテレビから、ひだまりキッチンの動画が流れ始めた。
「え? 」
いつもの見慣れた動画の変化に気付き、灯里は思わず画面を二度見した。
動画の主であるひまりさんより、ひだまりキッチンに、新しい家族が加わったとテロップで紹介される。
新しい家族は何とも愛らしい子犬であった。
子犬の映像をちょこちょこ挟みながら、いつものひまりさんの料理のシーンになる。
「……宏哉がいない」
「え? 」
灯里がぽつりと呟く。
灯里の言葉に釣られて叶多もテレビに視線を向けた。
確かにそこには、いつも一緒にご飯を食べる夫の姿が映されていなかった。
いつもの「いってきます」のシーンもない。
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《旦那さんは出張中ですか? 》
《ワンパターンな夫婦動画も飽きてきていたので、新しい家族のワンちゃん、大歓迎です!》
《ワンちゃん、可愛いですね》
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灯里と叶多は何となく状況を察すると、顔を見合せ、そっとひまりさんのチャンネルに“いいね”を押した。
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