4 / 6
3ページ
しおりを挟む面倒臭いな。
夢子はまだ社会に出て働きだしたばかりだ。
特にやりたいことがなくだらだらと親に依存して目的もなく取り敢えず大学など進学するのが嫌で高校を卒業したらすぐに社会へと飛び出した。
近所にある老人ホームで働いている。
夢子と武治はおじいちゃんとおばあちゃんを知らない。夢子と武治の両親は結婚するのを反対されて、家を飛び出して結婚したのだ。
おじちゃん、おばあちゃん、その世代の人とふれ合ってみたい。
そう思って介護の仕事についた。
きつい、きたない、きけん、みんなが嫌がるけれども夢子は3Kは人生という道を歩いていると避けては通れないものだと思っている。
それに一見綺麗に見えても中が汚いものもある。危険だったり精神的にきつかったり。
楽しい、そんな時間を過ごせるのはほんの少しの間だけだ。
まだまだ覚えることが多くて人様を無償で助ける余裕がない。
「姉ちゃん、このボランティアやってもいいでしょ?困っているひとがいたら手を差し伸ばして助けなきゃだめじゃん!」
「武治はいい子過ぎて眩しくて見えない!!」
「人助け いい事としたら 気持ちいい!」
「出た!武治の季語がない俳句!!」
一つだけ年が離れている弟の武治は内向的な夢子とは違い社交的で友達がたくさんいる。
人が嫌がることを武治は積極的に手をあげてやるタイプである。
「でもさ、モンスター退治とかあったら困るじゃん。私と武治は普通の人間だよ。魔法とか使えないし、痛い経験は転んだりお腹痛くなったりだしさ」
「モンスター退治はございま、すん」
もごもごもごもご。
「あるんだな。危険じゃん!」
「お二人には守護神がいます、その方が守ってくださるので大丈夫でございます」
マンゼはやたら早口で言った。
「守護神っておじいちゃんじゃない?だってさ、お寺の住職だったらしいじゃん。詳しくは知らないけど」
一度、敬老の日でおじいちゃんとおばあちゃんの絵を描こう、という学校のミッションがあり、見たことがない人達の特徴をきいたのだ。
その時、父がぼうず、と不機嫌そうな低い声で一言ですべてを教えてくれた。
頭が固くて寺の住職と茶髪のいい子ちゃんの道を踏み外した不良のちゃらちゃらバカ息子の父、三郎。
そりゃあ、折り合いが悪いだろう。
勝手に好き勝手想像して納得した。
夢子のなかで一度も見たことがないおじいちゃんは鷲のような鼻をして目は鷹のように鋭く毛がない頭は怪しく光っている坊主になっている。
「まあ、おじいちゃんが何とかしてくれるんなら何とかなるか」
しゃべるライオンが出てきた時点で夢子は今、夢を見ていると頭の片隅で思っているので楽観的である。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる