悪魔と魔獣と天使に溺愛される、ぼく。

13

イングは血と肉、争いを好む魔獣だ。
肩幅が広く骨格も人並み以上で雄々しい。血の気が溢れて漲っている。イングの雄のフェロモンに当てられた雌は発情して足を開いて鳴きながら交尾を懇願する。
魔獣のイングにとっては己の強い遺伝子をこの世に残すのは雄の本能であり使命である。乞われれば子種を注いでいた。
子を孕ませた雌に愛情を抱いたことはなく、生ませた子供の顔を見たことがない。

天使と悪魔が争い、長い間、いがみ合いをしていた。魔獣は中立の立場をとり、どちらにも力を貸さずにいた。

「仔犬ちゃん、私の使い魔になれよ」

「貴様の使い魔になどならない。断る」

甘く悪魔のザニアスが魔獣の力を得ようとして魅了の力を使ってイングの耳元で囁くが、首を縦には振らなかった。

交尾を行うも物足りなさを感じていたある日。
一匹の雄の悪魔と出会った。
身体の線が細く、汚れを知らぬような見目麗しい容姿をしている。まだ未成熟な青臭さがあった。
冷めた眼差しをイングに向けていた。
視線が合った瞬間、どくり、と大きくイングの心臓が脈打った。

「……兄上が執着している魔獣ってどんなに素晴らしい魔獣かと興味持って顔を見に来たけど、アホっぽいただの犬だな」

悪魔は口元を歪めて、イングにわざと意地悪な言葉をきかせるように言った。
イングの雄を刺激して股間を疼かせる可愛らしい声での毒舌。怒り、腹を立てるよりも新鮮さを感じた。