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第五章

☆5

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「にぼしうらない?おいしそうな、うらない、だのう」

先程、大きな焼魚を食べたばかりだが煮干しを頭に思い浮かべティアはごくっと唾を飲み込んだ。
きっとカリカリの食感で絶対美味しいのに違いない。ティアは言葉の響きから想像を膨らませ姿、形を頭の中で映像化する。それは、ほぼ正解に近い。ティアの能力といっても過言ではない。

「今度は私の運命のかわいこちゃんといつ出会えるか占ってもらおうかしら」

「ティアも!」

運命の、なんて素敵だ。ティアはもし、自分に運命の誰かがいたら、と考えたら胸がドキドキする。食い気の方が勝るが、ティアだって16才の素敵な恋を夢見るお年頃の女の子なのだ。

「キティちゃんは運命の王子様ね!」

「…ティアの、おうじ、さま?」

「そう!白馬に乗った王子様よ。赤い薔薇が似合う、素敵な王子様がいいわね、キティちゃんには」

エメラルドはティアとお似合いな王子様を妄想して一人できゃっきゃしている。

(おうじ、さま)

この国の国王と王妃である親に捨てられた王女だと自覚はある。王子はティアの弟だ。
ティアを生んでくれた女の人が放った言葉が忘れられない。
お母様、と呼んだら嫌がるのは簡単に想像できる。
だが、弟の顔を想像しようとしても、不思議とうまく頭の中でイメージが出来なかった。

(あの、おさかなの、おとこのこ、が、ティアのおとーとだったらいいのに)

ティアを助けてくれた少年の顔がふと、脳裏に浮かぶ。黒い花粉用のマスクでほとんど顔が見えなかったが、黄金色の瞳が忘れられない。力強く優しく輝いていた。
少しの間だったが、話していて楽しかった。
あの少年が弟なら仲良し姉弟になれるのに。

(また、あいたいな。こんどは、ティアが、かわから、おさかな、とってきて、やいて、たべさせたい、な)

喜んでくれるだろうか。ティアは楽しい想像をして頬笑む。
ティアは川で魚をとったり小動物を追い掛けるのは得意なのだ。
色々と遊びたい。ボールを投げてパンチするとか、芝生の上で寝転がってころころするのも楽しそうだ。
少年は猫化系の半獣であるから本能的には嫌いではない遊び、だと思う。

(あのこと、てをつないで、いっしょだと、なにも、こわくないきがする)

手を繋いでいる間は、無敵!っていう気持ちに不思議となれた。
酷くティアの心を苦しめるあの女の人の言葉にも。

つらつらと、ティアは少年の事を考える。

でも、自分の姿を見たら怖がるかもしれない。
少年なら怖がらないかもしれない。
ティアの心のなかで不安と期待が同時に生まれた。
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